StudyMed医師国家試験

歯科医師も助産師も書けない一枚―死体検案書が「医師だけ」の理由

第104回医師国家試験 H問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第104回 H問題 第12問

医師のみが交付できるのはどれか。

  1. a.診断書
  2. b.死産証書
  3. c.出生証明書
  4. d.死亡診断書
  5. e.死体検案書

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医療に関わる証明文書を「誰が交付できるか」を問う問題だ。ポイントは、医師以外に歯科医師と助産師がどの文書に関われるかを整理すること。そうすれば、医師だけに残る文書が自然に見えてくる。
医学生医学生
医師が書く書類ばかりに見えるので、全部医師のみでは、と一瞬思ってしまいました。
ドクタードクター
そう感じる人は多いよ。でも根拠となる法律を見ると、医師法のほかに歯科医師法や保健師助産師看護師法、戸籍法などで、ほかの職種にも交付が認められている文書がある。まずは歯科医師から考えよう。歯科医師が書ける文書はどれだと思う?
医学生医学生
歯科で抜歯をしたあとに診断書をもらうことはありそうなので、診断書は書けそうです。
ドクタードクター
その通り。歯科医師法の規定で、歯科医師も自分が診療した患者の診断書を交付できる。さらに死亡診断書も、歯科の診療を行っていた患者がその傷病に関連して亡くなった場合には、歯科医師が交付できるんだ。
医学生医学生
歯科医師が死亡診断書を書けるのは意外でした。口腔がんの患者さんなどが想定されるんですね。
ドクタードクター
そういうケースを想定するとイメージしやすいね。次は助産師だ。産科の実習で見たことはあるかな。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習で、助産師さんが中心になって分娩を進めている場面を見ました。出生証明書は助産師さんも書けるはずです。
ドクタードクター
正解。出生証明書は出生届に添える文書で、出産に立ち会った医師または助産師が作成する。死産証書も同じで、妊娠満12週以後の死産に立ち会った医師または助産師が作成し、死産届に添付する。つまり出産に関わる文書は助産師も扱えるわけだ。
医学生医学生
そうすると、診断書と死亡診断書は歯科医師、出生証明書と死産証書は助産師が外れて、残るのは死体検案書ですね。
ドクタードクター
その通り。死体検案書が医師だけに認められる理由は「検案」という行為にある。検案とは、死体の外表を調べて死因や死亡時刻、異状の有無を判断することで、医師法に定められた医師の業務だ。歯科医師法や保助看法には検案の規定がないから、歯科医師も助産師も死体検案書は交付できない。
医学生医学生
法医学の講義で、死亡診断書と死体検案書は同じ様式を使うと習いました。どう使い分けるんでしたっけ。
ドクタードクター
大事なところだね。自分が診療していた患者が、その傷病に関連して亡くなった場合は死亡診断書。生前に診療していなかった人の死亡や、診療中の病気とは関係のない原因、たとえば外因で亡くなった場合は、死体を検案して死体検案書を書く。同じ用紙の不要な方を二重線で消して使うんだ。
医学生医学生
最終診察から24時間を過ぎたら死亡診断書は書けない、と覚えていたのですが、それで合っていますか。
ドクタードクター
それはよくある誤解だね。医師法20条のただし書は、最終診察後24時間以内の死亡なら、改めて死後に診察しなくても死亡診断書を交付できる、という規定なんだ。24時間を過ぎていても、死後に診察して生前の傷病による死亡と判断できれば死亡診断書を交付できる。
医学生医学生
24時間は「死後診察を省略できる条件」であって、「死亡診断書が書けなくなる期限」ではないんですね。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。もう一つ、検案と深く関わるのが医師法21条の異状死体の届出だ。医師は死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。
医学生医学生
救急科を回ったとき、心肺停止で搬送された方について、指導医の先生が警察に連絡していました。あれがその届出だったんですね。
ドクタードクター
おそらくそうだろうね。外因死が疑われるときや死因が分からないときは、検案と届出の流れを意識する必要がある。最後に届出期限も整理しておこう。出生届は出生後14日以内、死産届は死産後7日以内だ。書類の種類、作成できる職種、提出期限をセットで覚えておくと、国試でも臨床でも迷わないよ。

まとめ

医療に関する証明文書のうち、死体検案書は医師のみが交付できます。死体の外表を調べて死因や異状の有無を判断する「検案」は医師法に定められた医師の業務であり、歯科医師法や保健師助産師看護師法には規定がないためです。一方、診断書と死亡診断書は歯科医師も自ら診療した患者について交付でき、出生証明書と死産証書は出産に立ち会った助産師も作成できます。死亡診断書と死体検案書は同一様式で、診療中の傷病に関連した死亡かどうかで使い分け、医師法20条の「24時間」は死後診察を省略できる条件であって交付の期限ではない点にも注意が必要です。文書ごとに交付できる職種と根拠を整理しておくことは、異状死体の届出(医師法21条)を含め、医師としての法的責任を正しく果たすための基礎になります。

解答・解説

正解はeです

本問は、医療に関する各種証明文書を「誰が交付できるか」という資格の範囲を問う問題である。 証明文書を交付できる職種は、医師法・歯科医師法・保健師助産師看護師法(保助看法)や戸籍法・死産の届出に関する規程などで定められている。整理のしかたは次のとおりである。 ・診断書、死亡診断書:診療に当たった医師に加え、歯科医師も交付できる(歯科医師は歯科の診療対象となった患者に限られる)。 ・出産に関わる文書(出生証明書、死産証書、死胎検案書):医師に加え、助産師も交付できる。 ・死体検案書:死体の外表を検査して死因などを判断する「検案」は医師法に定められた医師の業務であり、歯科医師法や保助看法には検案の規定がない。このため死体検案書を交付できるのは医師のみである。 つまり「歯科医師が関われる文書」「助産師が関われる文書」を順に除外していくと、医師だけに残るのは死体検案書となる。

選択肢考察

  1. ×a.  診断書

    診断書は、診察した医師が求めに応じて交付する文書であるが、歯科医師も歯科医師法の規定により、自ら診療した患者について診断書を交付できる。したがって医師のみが交付できる文書ではない。なお、助産師は診断書を交付できない。

  2. ×b.  死産証書

    死産証書は、妊娠満12週以後の死児の出産(死産)に立ち会った者が作成し、死産届に添付する文書である。死産の届出に関する規程により、医師のほか助産師も作成できる。したがって医師のみが交付できる文書ではない。

  3. ×c.  出生証明書

    出生証明書は出生届に添付する文書で、戸籍法に基づき、出産に立ち会った医師または助産師が作成する(医師・助産師が立ち会わなかった場合は、その他の立会者が作成することもある)。したがって医師のみが交付できる文書ではない。

  4. ×d.  死亡診断書

    死亡診断書は、生前に診療していた傷病に関連して死亡した場合に、その診療を担当した者が交付する文書である。医師のほか、歯科医師も歯科の診療を行っていた患者について交付できる。したがって医師のみが交付できる文書ではない。助産師は交付できない。

  5. ○e.  死体検案書

    死体検案書は、診療中の患者以外の死亡(生前に診療していない者の死亡、あるいは診療中の傷病と関係のない原因による死亡など)について、死体を検案(外表から死体を検査し、死因・死亡時刻・異状の有無などを判断すること)したうえで交付する文書である。検案は医師法に基づく医師の業務であり、歯科医師や助産師には検案を行う権限がない。したがって死体検案書は医師のみが交付でき、本問の正解である。

死亡診断書と死体検案書の使い分け

両者は同一の様式を用い、いずれかを二重線で消して使用する。 ・死亡診断書:自ら診療していた患者が、その傷病に関連して死亡した場合に交付する。 ・死体検案書:診療していなかった者の死亡や、診療中の傷病と関係のない原因(外因死など)による死亡の場合に、死体を検案して交付する。 医師法20条ただし書により、診療中の患者が最終診察後24時間以内に死亡した場合は、改めて死後診察をしなくても死亡診断書を交付できる。24時間を過ぎていても、死後に診察して生前の傷病による死亡と判断できれば死亡診断書を交付できる。

異状死体の届出

医師は死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない(医師法21条)。

出産関係の文書

・出生証明書:出生届(出生後14日以内に届出)に添付。医師・助産師などが作成する。 ・死産証書・死胎検案書:死産届(死産後7日以内に届出)に添付。医師または助産師が作成する。死産とは妊娠満12週以後の死児の出産をいう。

職種別の整理

・医師:上記すべて ・歯科医師:診断書、死亡診断書、処方箋など(検案書は不可) ・助産師:出生証明書、死産証書、死胎検案書(診断書・死亡診断書・死体検案書は不可)

POINT

・死体検案書を交付できるのは医師のみである(検案は医師だけに認められた業務)。 ・診断書・死亡診断書は歯科医師も交付できる。 ・出生証明書・死産証書・死胎検案書は助産師も交付できる。 ・死亡診断書と死体検案書は同一様式で、診療中の傷病による死亡か否かで使い分ける。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。