出血は「後ろ」から止める―Bellocqタンポンはどこに置くか
第104回医師国家試験 G問題 第9問
国試問題にチャレンジ
Bellocqタンポンの留置部位(①~⑤)を別に示す。 正しいのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
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ドクターまとめ
鼻出血の大部分は鼻中隔前下部のKiesselbach部位からの前方出血で、鼻翼の圧迫や血管収縮薬を浸したガーゼで止血できることが多い一方、高齢者や高血圧の患者に多い後方出血では、前から詰めるだけでは血液が上咽頭へ流れ込んでしまいます。Bellocqタンポンは、口腔から咽頭を経て導いたガーゼ塊を上咽頭側から後鼻孔に押し当てて閉鎖する後鼻タンポンで、前方のガーゼと紐で結んで固定し、鼻腔を前後から圧迫します。したがって正しい留置部位は鼻腔最後端の後鼻孔で、鼻腔内や鼻腔前方にとどまる位置は誤りです。現在はバルーンカテーテルや内視鏡下の蝶口蓋動脈処置、血管塞栓術も用いられ、留置中は感染や圧迫壊死、低酸素血症などの合併症に注意します。止血手技の原理を理解するとともに、反復する鼻出血では高血圧や抗血栓薬、血液疾患などの背景を確認する姿勢が臨床では重要です。
解答・解説
正解はeです
テーマ
Bellocq(ベロック)タンポンは、鼻腔後方からの出血(後方出血)に対して、後鼻孔をふさいで止血するための後鼻タンポンである。図は鼻腔・上咽頭の矢状断模型に、紐を付けたガーゼ塊がさまざまな位置に置かれたもので、その中から正しい留置部位を選ぶ。
鼻出血の部位と止血法の考え方
鼻出血の大部分は、鼻中隔前下部のKiesselbach(キーゼルバッハ)部位からの前方出血である。ここは複数の動脈の枝が吻合して粘膜が薄いため出血しやすいが、前方にあるので、鼻翼を外側から圧迫する用手圧迫、血管収縮薬(アドレナリン〈ボスミン〉)や局所麻酔薬を浸したガーゼの挿入、電気凝固などで止血できることが多い。 一方、鼻腔後方(蝶口蓋動脈領域など)からの出血は、高齢者や高血圧・動脈硬化のある患者に多く、出血量も多くなりやすい。前鼻孔から詰めたガーゼだけでは、血液が後方の上咽頭へ流れ込み止血できないため、後鼻孔を後ろ側からふさぐ必要がある。これがBellocqタンポンの役割である。
Bellocqタンポンの留置法
1. 硬く巻いて紐を付けたガーゼ塊(母指頭大程度)を用意する。 2. 細いカテーテル(ネラトンカテーテルなど)を出血側の鼻腔から挿入し、咽頭で口腔から引き出して、その先端にガーゼ塊の紐を結ぶ。 3. カテーテルを鼻から引き戻し、ガーゼ塊を口から咽頭へ入れて、軟口蓋の裏を回り込ませながら上咽頭へ導き、後鼻孔に後方から押し当てて完全に閉鎖する。 4. 前方から鼻腔内にガーゼタンポンを充填し、前鼻孔に当てたガーゼに紐を結び付けて固定する。口側に出した紐は抜去用として頬などに固定しておく。 したがって、ガーゼ塊は鼻腔の最後端である後鼻孔の位置(上咽頭側)にあるのが正しく、図の⑤が該当する。
選択肢考察
- ×a. ①
ガーゼ塊が外鼻孔(前鼻孔)の外側に置かれている。これは前鼻孔側で紐を結んで固定するときの位置に近く、後鼻孔は開いたままである。この位置では鼻腔後方の出血点を圧迫できず、血液は上咽頭から咽頭へ流れ込んでしまうため、Bellocqタンポンの留置部位としては誤りである。
- ×b. ②
ガーゼ塊が鼻腔の入り口付近(鼻前庭〜鼻腔前部)にある。前方出血に対する前鼻タンポンに近い位置であり、後鼻孔は閉鎖されていない。後方出血の止血を目的とするBellocqタンポンの位置としては誤りである。
- ×c. ③
ガーゼ塊が鼻腔の前方〜中央部の上方にとどまっている。後鼻孔までは達しておらず、後方からの出血は上咽頭へ流出し続けるため、Bellocqタンポンの留置部位としては誤りである。
- ×d. ④
ガーゼ塊が鼻腔の中央〜やや後方に位置しているが、鼻腔内にとどまっており、後鼻孔を後方からふさいでいない。後鼻孔との間に隙間が残り、出血が上咽頭へ抜けてしまうため誤りである。
- ○e. ⑤
ガーゼ塊が鼻腔の最後端、軟口蓋の上方にあたる後鼻孔の位置に置かれ、上咽頭側から後鼻孔を閉鎖している。口腔・咽頭経由で導いたガーゼ塊を後方から後鼻孔に押し当てることで、鼻腔後方からの出血が咽頭へ流れ込むのを防ぎ、前方から充填するガーゼとの間で鼻腔全体を圧迫できる。これがBellocqタンポンの正しい留置部位である。
鼻腔の血管支配
鼻腔には外頸動脈系(顎動脈の枝である蝶口蓋動脈、顔面動脈の枝である上唇動脈など)と内頸動脈系(眼動脈の枝である前・後篩骨動脈)の両方から血液が供給される。これらが鼻中隔前下部で吻合してKiesselbach部位を形成する。
前方出血と後方出血
・前方出血: 主にKiesselbach部位から。小児や若年者に多く、鼻いじり、乾燥、上気道炎などが誘因となる。前屈位で鼻翼を10分程度圧迫する、血管収縮薬を含むガーゼを挿入する、化学焼灼や電気凝固を行う、などで対処する。 ・後方出血: 主に蝶口蓋動脈領域など鼻腔後方から。高齢者、高血圧・動脈硬化、抗血栓薬内服例に多い。出血点の確認が難しく、血液が咽頭へ流れるため、誤嚥や気道確保にも注意を要する。
後方出血の止血法
・後鼻タンポン: Bellocqタンポンのほか、現在ではバルーンカテーテル(尿道用バルーンや専用の鼻出血用バルーン)を後鼻孔に留置して膨らませる方法もよく用いられる。 ・内視鏡下の電気凝固、内視鏡下の蝶口蓋動脈結紮・焼灼術 ・経カテーテル動脈塞栓術(顎動脈系の塞栓)
後鼻タンポン留置中の注意
留置は通常数日程度とし、長期留置は避ける。咽頭痛や嚥下困難、中耳炎・副鼻腔炎、感染(毒素性ショック症候群を含む)、鼻腔粘膜や軟口蓋の圧迫壊死、低酸素血症などの合併症に注意する。気道への影響があるため入院管理とすることが多い。
全身的な確認
繰り返す鼻出血では、高血圧、抗凝固薬・抗血小板薬の内服、血液疾患(血小板減少、血友病など)、遺伝性出血性毛細血管拡張症(Osler病)、鼻・副鼻腔腫瘍や上咽頭の若年性血管線維腫などの有無を確認する。
POINT
・Bellocqタンポンは後方出血に対して後鼻孔を後ろから閉鎖する後鼻タンポンである。 ・ガーゼ塊は口腔から咽頭を経て上咽頭側へ導き、後鼻孔に押し当てて留置し、前鼻孔側のガーゼと紐で結んで固定する。 ・鼻出血の大部分はKiesselbach部位からの前方出血で、鼻翼の圧迫や血管収縮薬含浸ガーゼで止血できることが多い。 ・後方出血は高齢者・高血圧患者に多く、出血量が多くなりやすい。
