「誰が」「どの法律で」健診を行う?―医療保険者の義務は特定健康診査
第104回医師国家試験 G問題 第32問
国試問題にチャレンジ
医療保険者に実施が義務付けられているのはどれか。
- a.がん検診
- b.生活機能評価
- c.特定健康診査
- d.肝炎ウイルス検診
- e.結核の定期健康診断
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
特定健康診査と特定保健指導は、2008年施行の高齢者医療確保法に基づき、医療保険者が40〜74歳の加入者に実施することを義務付けられたもので、メタボリックシンドロームに着目して生活習慣病を予防し医療費の伸びを抑えることを狙いとしています。がん検診や肝炎ウイルス検診は市町村が健康増進法に基づいて行い、生活機能評価は介護保険の地域支援事業として市町村が行っていたもの(現在は基本チェックリストに移行)、結核の定期健康診断は感染症法に基づき事業者・学校長・施設長・市町村長が実施します。このほか、一般健康診断は事業者(労働安全衛生法)、学校健診は学校保健安全法、乳幼児健診は市町村(母子保健法)と、健診ごとに実施主体と根拠法をセットで整理しておくと混同を防げます。この整理は試験対策にとどまらず、健診結果を保健指導や受診につなげる臨床医の役割を理解する基礎にもなります。
解答・解説
正解はcです
本問は、各種健診・検診の「実施主体」と「根拠法」を整理できているかを問うている。 医療保険者とは、健康保険組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)、共済組合、市町村国民健康保険などのように、保険料を集めて加入者の医療費を給付する運営主体のことである。 2008年(平成20年)4月、「高齢者の医療の確保に関する法律」(高齢者医療確保法、旧老人保健法を改正・改称したもの)の施行により、医療保険者は40〜74歳の加入者(被保険者・被扶養者)に対して、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した特定健康診査と、その結果に基づく特定保健指導を実施することが義務付けられた。背景には、生活習慣病の予防によって将来の医療費の伸びを抑えるという狙いがあり、医療費を負担する保険者自身に予防の責任をもたせたのである。 それ以前は、老人保健法に基づき市町村が住民に基本健康診査を行っていた。制度改正後、市町村が行う住民向けの検診(がん検診、肝炎ウイルス検診など)は健康増進法に基づく事業として整理された。 したがって、各選択肢については「誰が」「どの法律に基づいて」実施するかを思い出せば正解に到達できる。
選択肢考察
- ×a. がん検診
がん検診(胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がん)は、健康増進法に基づく健康増進事業として市町村が実施する。医療保険者に義務付けられたものではない。なお、職場で任意にがん検診が行われることはあるが、法的な実施義務ではない。
- ×b. 生活機能評価
生活機能評価は、介護保険法の地域支援事業(介護予防事業)の一環として、要介護状態になるおそれの高い65歳以上の高齢者(当時の「特定高齢者」)を把握するために市町村が行っていた評価である。実施主体は市町村(介護保険の保険者)であり、医療保険者ではない。なお、生活機能評価は2010年度に廃止され、その後は基本チェックリストを用いた把握に移行している。
- ○c. 特定健康診査
特定健康診査(特定健診)は、高齢者医療確保法に基づき、医療保険者に実施が義務付けられている健診である。対象は40〜74歳の加入者で、腹囲・BMI(体格指数)・血圧・脂質(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)・血糖(空腹時血糖またはHbA1c)・肝機能・尿検査などを調べ、内臓脂肪の蓄積とリスク因子の数に応じて「動機付け支援」「積極的支援」の特定保健指導につなげる。医療保険者は特定健康診査等実施計画を定め、実施率などの目標を立てて取り組む。
- ×d. 肝炎ウイルス検診
肝炎ウイルス検診(B型・C型肝炎ウイルスの検査)は、健康増進法に基づく健康増進事業として市町村が実施する。ほかに保健所などでも無料検査が行われているが、いずれも医療保険者の義務ではない。
- ×e. 結核の定期健康診断
結核の定期健康診断は感染症法に基づいて行われ、実施義務者は対象者の所属によって異なる。学校・病院・社会福祉施設などの従事者には事業者が、学校の学生には学校長が、刑事施設の収容者や社会福祉施設の入所者には施設長が、それ以外の一般住民(65歳以上の者など)には市町村長が実施する。医療保険者は実施義務者に含まれない。
主な健診・検診と実施主体・根拠法
・特定健康診査・特定保健指導:医療保険者(40〜74歳)、高齢者医療確保法 ・後期高齢者の健康診査:後期高齢者医療広域連合(75歳以上)、高齢者医療確保法(努力義務) ・がん検診、肝炎ウイルス検診、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診など:市町村、健康増進法 ・一般健康診断(雇入れ時・定期):事業者、労働安全衛生法 ・学校健診(児童生徒・職員):学校設置者・学校、学校保健安全法 ・乳幼児健診(1歳6か月児・3歳児):市町村、母子保健法 ・結核の定期健康診断:事業者・学校長・施設長・市町村長、感染症法
特定保健指導の階層化の概要
腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)またはBMI 25以上で内臓脂肪蓄積の可能性ありとし、血圧・脂質・血糖の追加リスク(および喫煙歴)の数に応じて「情報提供」「動機付け支援」「積極的支援」に分ける。なお、服薬中の者は特定保健指導の対象から除かれる。
POINT
・特定健康診査・特定保健指導は医療保険者に実施義務がある(高齢者医療確保法、40〜74歳、2008年開始)。 ・がん検診・肝炎ウイルス検診は市町村(健康増進法)。 ・結核の定期健診は事業者・学校長・施設長・市町村長(感染症法)。 ・生活機能評価は介護保険の地域支援事業で市町村が行っていたもの(現在は基本チェックリストへ移行)。
