StudyMed医師国家試験

泉門の時計が告げる「いま何回旋目?」―内診所見で読み解く胎児の回旋

第104回医師国家試験 E問題 第46問

国試問題にチャレンジ

第104回 E問題 第46問

23歳の女性。妊娠38週6日。陣痛を主訴に来院した。内診で子宮口は5 cm開大しており,児頭矢状縫合は骨盤濶部にある。胎児の大泉門は8時方向に,小泉門は2時方向に触知する。  現在の状態はどれか。

  1. a.第1回旋前
  2. b.第1回旋
  3. c.第2回旋
  4. d.第3回旋
  5. e.第4回旋

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、内診所見から分娩中の胎児がどの回旋段階にあるかを判定する問題だ。注目すべきは3つ。児頭がどの高さにあるか、小泉門と大泉門がそれぞれ何時の方向にあるか、そしてそこから導かれる矢状縫合の向きだ。まずは内診の時計表示の約束事から確認しよう。12時はどちらだったかな。
医学生医学生
母体の恥骨側が12時、仙骨側が6時ですね。産婦人科の講義で、内診する側から見た時計だと習いました。
ドクタードクター
その通り。次に泉門の見分け方。小泉門と大泉門はそれぞれ児頭のどちら側を示している?
医学生医学生
小泉門は三角形で後頭側、大泉門は菱形で前頭側です。OSCEの前に分娩模型で触って覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。では今回の配置を考えよう。小泉門が2時、大泉門が8時ということは、矢状縫合はどんな向きに走っているかな。
医学生医学生
2時と8時を結ぶ線なので、斜めですね。横でも縦でもない…。正直、横向きなら第1回旋かなと思ったんですが、斜めだとどう判断すればいいのか迷います。
ドクタードクター
そこがこの問題の核心だ。回旋は骨盤腔の形に合わせて起こる、と考えると分かりやすい。骨盤入口部は横長、出口部は縦長だよね。だから児頭は入口部では矢状縫合を横径、つまり3時から9時方向に合わせて進入し、下降しながら縦径へと向きを変えていく。
医学生医学生
横から縦へ向きを変える途中が、ちょうど斜めになるということですか。
ドクタードクター
そう。その向きを変える動きが第2回旋、内回旋だ。小泉門が恥骨側へ向かって回り、3時から2時、1時を経て12時へ移っていく。しかも内回旋が起こるのは骨盤濶部から峡部にかけての高さ。今回は児頭が濶部にあって小泉門が2時だから、まさに第2回旋が進行中と判断できる。正解は第2回旋だ。
医学生医学生
なるほど。では第1回旋とはどう区別するんですか。
ドクタードクター
第1回旋は骨盤入口部で児頭が顎を胸に引きつけるように前屈し、屈位になる動きだ。これで小泉門が先進部になり、最も小さい周囲径で産道を通れるようになる。この段階では矢状縫合はまだ横径に一致している。第1回旋前はその屈曲すら起きていない段階で、前後の泉門がほぼ同じ高さにあるのが特徴だ。今回は矢状縫合がすでに斜めに向きを変え、児頭も濶部まで下降しているから、どちらも当てはまらない。
医学生医学生
第3回旋は、児頭が出てくるときの動きでしたよね。
ドクタードクター
そう。第2回旋を終えて小泉門が12時に来た児頭が、項部を恥骨結合下縁に当てて支点とし、反屈しながら前頭、顔面、顎の順に娩出される。子宮口全開大後、児頭が出口部に達して排臨・発露する分娩第2期の動きだ。第4回旋は外回旋で、児頭が娩出された後、肩甲が縦径に向かって回るのに伴って児の顔が母体の大腿内側を向く動きだね。
医学生医学生
内診で泉門を触れている時点で、児頭はまだ娩出されていないので第4回旋はあり得ないですね。子宮口5 cmというのも第2回旋で矛盾しないんでしょうか。
ドクタードクター
矛盾はしない。ただ注意してほしいのは、子宮口の開大度と回旋の段階は一対一で対応するわけではないということ。判定の主役はあくまで泉門の位置、矢状縫合の向き、児頭の高さだ。開大度は分娩第1期か第2期かを判断する材料として使う、と整理しておこう。
医学生医学生
ちなみに小泉門が2時ということは、児背は母体の左側、第1胎向ですね。
ドクタードクター
鋭いね。第1胎向なら外回旋で児の顔は母体の右大腿側を向く。最後に臨床で大事な回旋異常も押さえておこう。第2回旋で小泉門が仙骨側、6時方向へ回ってしまうのが後方後頭位。児頭が骨盤底近くまで下りても矢状縫合が横径のまま回らないのが低在横定位。逆に入口部で矢状縫合が縦径に一致してしまい進入しにくいのが高在縦定位だ。
医学生医学生
正常な回旋の流れが頭に入っていれば、異常も「どこでずれたか」で理解できそうです。臨床実習の分娩見学でも、助産師さんが内診のたびに泉門の位置を記録していました。
ドクタードクター
まさにそのためだ。回旋の進み具合は分娩進行の評価そのものだから、異常に早く気づくことが分娩停止や遷延の判断、ひいては吸引分娩や帝王切開の適応判断につながる。時計表示と泉門の形をセットで覚えておこう。

まとめ

胎児の回旋は、泉門の位置・矢状縫合の向き・児頭の高さを組み合わせて判定します。内診の時計表示は恥骨側を12時、仙骨側を6時とし、三角形の小泉門は後頭側、菱形の大泉門は前頭側を示します。第1回旋は骨盤入口部での屈曲で矢状縫合は横径に一致し、第2回旋(内回旋)では骨盤濶部〜峡部で小泉門が恥骨側へ回り、矢状縫合が斜径を経て縦径に一致します。続く第3回旋は恥骨下を支点とした反屈による児頭娩出、第4回旋は児頭娩出後の外回旋です。小泉門が2時・大泉門が8時で児頭が濶部にあれば第2回旋進行中と判断でき、正常な回旋の流れを理解しておくことが後方後頭位や低在横定位などの回旋異常を見抜く基礎になります。

解答・解説

正解はcです

所見の整理

・23歳、妊娠38週6日の正期産で、陣痛発来により来院している。 ・子宮口5 cm開大:子宮口全開大(10 cm)前であり、分娩第1期である。 ・児頭の矢状縫合(左右の頭頂骨の間の縫合)は骨盤濶部(骨盤腔の中央部)にある:児頭は骨盤入口部を通過して下降してきているが、まだ出口部には達していない。 ・大泉門が8時方向、小泉門が2時方向:内診時の時計表示は、恥骨結合側を12時、仙骨側を6時とする。矢状縫合は2時と8時を結ぶ斜めの方向(斜径)にあり、小泉門(後頭側)が母体の前方寄りに位置している。

回旋の判定の考え方

胎児の回旋は、泉門の位置と矢状縫合の向き、児頭の高さを組み合わせて判断する。 ・第1回旋が完了した時点では、児頭は屈位となって小泉門が先進し、矢状縫合は骨盤入口部の形に合わせて横径(3時−9時方向)に一致している。 ・第2回旋が完了すると、小泉門が12時(恥骨側)、大泉門が6時(仙骨側)へ移り、矢状縫合は骨盤出口部の形に合わせて縦径(前後径)に一致する。 本例では小泉門が2時方向にあり、横径(3時)から縦径(12時)へ向かう途中の斜径上に矢状縫合がある。しかも児頭は骨盤濶部にあり、ちょうど内回旋が起こる高さである。したがって、第1回旋はすでに終わり、第2回旋が進行している状態と判断できる。小泉門が母体の左前方(2時)にあることから、児背が母体左側にある第1胎向と考えられる。

選択肢考察

  1. ×a.  第1回旋前

    第1回旋前の児頭は屈曲していない(前後の泉門がほぼ同じ高さにある)状態で、骨盤入口部の横径に矢状縫合を合わせて進入しようとしている段階である。本例は小泉門が先進しうる位置関係にあり、矢状縫合もすでに斜めに向きを変え、児頭は骨盤濶部まで下降しているので、第1回旋前ではない。

  2. ×b.  第1回旋

    第1回旋は、骨盤入口部で児頭が顎を胸に近づけるように前屈し(屈位)、小泉門が先進部となる回旋である。この段階では矢状縫合は骨盤入口部の横径方向(3時−9時)にある。本例では矢状縫合が2時−8時の斜め方向へ回転しており、児頭も濶部にあるため、第1回旋より先の段階に進んでいる。

  3. ○c.  第2回旋

    第2回旋(内回旋)は、骨盤濶部から峡部を下降するにつれて、小泉門が母体前方(恥骨側)へ向かって回転し、矢状縫合が横径から斜径を経て縦径へ変わる回旋である。本例は児頭が骨盤濶部にあり、小泉門が2時方向・大泉門が8時方向と、矢状縫合が斜径上にあることから、まさに第2回旋が進行中の状態である。子宮口が全開大前の分娩第1期であることも矛盾しない。

  4. ×d.  第3回旋

    第3回旋は、第2回旋を終えて矢状縫合が縦径に一致し、小泉門が12時方向(恥骨下)に来た児頭が、項部を恥骨結合下縁に当てて支点とし、反屈(伸展)しながら前頭・顔面・顎を順に娩出する回旋である。子宮口全開大後、児頭が骨盤出口部に達して排臨・発露する分娩第2期にみられる。本例はまだ子宮口5 cm開大で児頭は濶部にあり、該当しない。

  5. ×e.  第4回旋

    第4回旋(外回旋)は、児頭娩出後に、骨盤内で肩甲が縦径に向かって回旋するのに伴い、娩出された児頭の顔面が母体の大腿内側(第1胎向なら母体の右側)を向くように回る回旋である。児頭がすでに娩出された後に起こるものであり、内診で泉門を触れている本例は該当しない。

正常分娩(第1頭位・前方後頭位)における胎児の回旋

・第1回旋(屈曲):骨盤入口部で児頭が前屈し屈位となる。先進部は小泉門となり、最も小さい周囲径(小斜径周囲)で産道を通過できるようになる。矢状縫合は骨盤入口部の横径に一致する。 ・第2回旋(内回旋):骨盤濶部から峡部で、小泉門が恥骨側へ回転し、矢状縫合が斜径を経て縦径に一致する。骨盤入口部は横長、出口部は縦長という骨盤腔の形の変化に適応した動きである。 ・第3回旋(伸展・反屈):骨盤出口部で、項部を恥骨結合下縁に当てて支点とし、児頭が反屈しながら娩出される。 ・第4回旋(外回旋):児頭娩出後、肩甲が縦径へ回旋するのに伴い、児の顔面が母体大腿の方向(第1胎向なら母体右側、第2胎向なら母体左側)を向く。

内診所見の読み方

・時計表示:恥骨側が12時、仙骨側が6時。 ・小泉門は三角形で3本の縫合が集まり、後頭側を示す。大泉門は菱形で4本の縫合が集まり、前頭側を示す。 ・胎向:児背が母体左側なら第1胎向、右側なら第2胎向。第1胎向で第2回旋が進むと、小泉門は3時方向から2時、1時を経て12時方向へ移動する。

回旋異常

・後方後頭位:第2回旋で小泉門が仙骨側(6時方向)へ回ってしまったもの。 ・低在横定位:児頭が骨盤底近くまで下降しても矢状縫合が横径に一致したまま第2回旋が起こらないもの。 ・高在縦定位:骨盤入口部で矢状縫合が縦径に一致してしまい、児頭が進入しにくいもの。

分娩の時期

分娩第1期は陣痛開始から子宮口全開大まで、第2期は子宮口全開大から児娩出まで、第3期は児娩出から胎盤娩出までである。

POINT

・内診の時計表示は恥骨側12時・仙骨側6時 ・第1回旋:屈位、矢状縫合は横径(入口部) ・第2回旋:内回旋、小泉門が恥骨側へ、矢状縫合は斜径を経て縦径へ(濶部〜峡部) ・第3回旋:恥骨下で反屈して児頭娩出 ・第4回旋:児頭娩出後の外回旋 ・小泉門2時・大泉門8時+児頭が濶部 → 第2回旋進行中

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。