StudyMed医師国家試験

糖尿病はなぜ死因上位に入らないのか―2007年の死因順位で読む統計のしくみ

第104回医師国家試験 B問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第104回 B問題 第22問

 我が国の死因別死亡数(2007年)で10位以内でないのはどれか。

  1. a.老衰
  2. b.自殺
  3. c.肺炎
  4. d.糖尿病
  5. e.腎不全

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は人口動態統計の死因順位を問う問題だ。2007年という古い年の統計だけれど、丸暗記ではなく「死因順位の大きな構造」と「死因統計がどう作られているか」を理解すると解きやすくなる。まず、上位3つはわかるかな。
医学生医学生
悪性新生物、心疾患、脳血管疾患の三大死因ですね。公衆衛生の講義で最初に叩き込まれました。
ドクタードクター
その通り。この3つが別格に多くて、当時は悪性新生物が30万人を超えていた。その次の4位が肺炎で、10万人規模。ここまでが大きな山で、5位以下は数万人から1万数千人の範囲にひしめいている。選択肢の中で、まず肺炎はどうだろう。
医学生医学生
肺炎は高齢者に多いので、4位で確実に10位以内だと思います。
ドクタードクター
正解。2007年は約11万人で4位、その後2011年には脳血管疾患を抜いて3位になった。ただ2017年から原死因の選び方のルールが改定され、誤嚥性肺炎が別に集計されるようになったことや、老衰の増加もあって順位は下がっている。では自殺はどうかな。
医学生医学生
自殺は若い人の死因というイメージが強くて、全体の10位以内に入るかは少し自信がないです。
ドクタードクター
そこは時代背景がカギになる。日本では1998年に自殺者が急増して年間3万人を超え、その状態が2011年まで続いた。2007年はまさにその時期で、自殺は約3万1千人の6位だった。2006年に自殺対策基本法ができ、2010年代以降は減少傾向にある。ただし10〜30歳代では今も死因の第1位という点は、試験でも臨床でも重要だよ。
医学生医学生
老衰はどうでしょう。最近は増えていると聞きますが、2007年だとまだ少なかったのでは。
ドクタードクター
いい疑問だね。実は2007年でも老衰は自殺とほぼ同数の約3万人で、7位に入っていた。老衰は高齢者でほかに記載すべき死因がない、いわゆる自然死に用いられる。その後、高齢化と看取りの増加で急増し、2018年には3位にまで上がった。今では悪性新生物、心疾患、老衰の順だ。
医学生医学生
腎不全も高齢者に多いので、上位にいそうです。
ドクタードクター
その通り、2007年の腎不全は約2万2千人で8位。その後も10位以内に位置し続けている。腎不全の原因疾患として大きな割合を占めるのが何か、わかるかな。
医学生医学生
糖尿病性腎症ですね。腎臓内科を回ったとき、透析導入の原因で一番多いと教わりました。……あれ、そうすると糖尿病そのものも上位に入っていそうな気がしてきました。
ドクタードクター
そこが今回の核心だね。正解は糖尿病で、2007年は約1万4千人の11位、つまり10位圏外だった。糖尿病は患者数も予備群も非常に多い疾患だけれど、死因統計に乗るのは死亡診断書に書かれた「原死因」なんだ。糖尿病で直接亡くなるのは糖尿病性昏睡などに限られ、多くの場合は心筋梗塞や脳梗塞、腎不全といった合併症として集計される。
医学生医学生
患者さんは多いのに、統計上は合併症の側に吸収されてしまうから、順位が低く出るということですね。
ドクタードクター
その理解で合っている。ちなみに2007年の9位は肝疾患、10位は慢性閉塞性肺疾患で、5位は不慮の事故だった。ここで原死因という考え方も確認しておこう。原死因とは、死亡を引き起こした一連の出来事の起点となった疾病や損傷のこと。死亡診断書をもとに、WHOのICDで分類して厚生労働省が毎年集計している。
医学生医学生
OSCEの前に死亡診断書の書き方を練習したとき、「心不全」とだけ書かないように言われました。それも関係ありますか。
ドクタードクター
大いに関係あるよ。1995年に心疾患の死亡数が一時的に大きく減ったのは、ICD-10の導入と、死亡診断書に「疾患の終末期の状態としての心不全・呼吸不全等は書かないでください」という注意書きが加わったことによる見かけ上の変化なんだ。統計の数字は、書き方のルールが変わるだけで動く。将来、死亡診断書を書く立場になったら、原死因を正しく記載することが統計の質を支えると意識してほしい。
医学生医学生
死因順位は年によって変わるので、最新の統計も確認しておく必要がありますね。
ドクタードクター
その通り。近年は老衰の急増に加えて、誤嚥性肺炎やアルツハイマー病、血管性等の認知症なども上位に顔を出している。細かな順位は年ごとに入れ替わるから、最新の人口動態統計で確かめる習慣をつけよう。

まとめ

2007年の死因順位は、悪性新生物・心疾患・脳血管疾患の三大死因に肺炎が続き、以下、不慮の事故、自殺、老衰、腎不全、肝疾患、慢性閉塞性肺疾患の順で、糖尿病は11位と10位圏外でした。当時は年間自殺者が3万人を超えていた時期で、自殺と老衰がほぼ同数で上位に入っていた点が特徴です。糖尿病は患者数が多い一方、死亡診断書の原死因としては心疾患・脳血管疾患・腎不全などの合併症が記載されやすいため、死因統計上の順位は低めに出ます。死因順位はその後も老衰の急増や原死因ルールの改定によって変化しており、統計は作られ方とあわせて理解し、最新の人口動態統計で確認することが大切です。

解答・解説

正解はdです

本問は、人口動態統計に基づく2007年(平成19年)の死因順位を問う一般問題である。死因順位は毎年公表される統計であり、年によって順位が入れ替わるため、ここで示す数値や順位は出題当時のものである。

2007年の死因順位(上位11位)

1位 悪性新生物(約33.6万人) 2位 心疾患(高血圧性を除く、約17.6万人) 3位 脳血管疾患(約12.7万人) 4位 肺炎(110,159人) 5位 不慮の事故(約3.8万人) 6位 自殺(30,827人) 7位 老衰(30,734人) 8位 腎不全(21,632人) 9位 肝疾患(約1.6万人) 10位 慢性閉塞性肺疾患(COPD、約1.5万人) 11位 糖尿病(13,999人)

考え方

上位3つ(悪性新生物・心疾患・脳血管疾患)が「三大死因」として別格に多く、4位の肺炎が10万人規模でこれに続く、という大きな構造をまず押さえる。そのうえで、5〜10位は数万人〜1万数千人の範囲にひしめいており、順位の差はわずかである。当時は自殺者数が年間3万人を超えていた時期(1998〜2011年)であり、自殺と老衰がほぼ同数で6位・7位を占めていた。糖尿病は患者数が非常に多い疾患であるが、死亡診断書の原死因としては合併症(心筋梗塞、脳梗塞、腎不全など)が記載されることが多いため、死因統計上の順位はそれほど高くならない。こうして10位圏外に落ちていたのが糖尿病である。

選択肢考察

  1. ×a.  老衰

    2007年の老衰による死亡は30,734人で第7位であり、10位以内に入っている。老衰は、高齢者でほかに記載すべき死亡原因がない、いわゆる自然死の場合に用いられる死因である。高齢化の進展と、看取りの場で老衰と診断される機会の増加により、その後急増し、現在では第3位の死因となっている。

  2. ×b.  自殺

    2007年の自殺による死亡は30,827人で第6位であり、10位以内に入っている。1998年に年間自殺者数が急増して3万人を超え、その状態が2011年まで続いた。この間、自殺は死因順位の上位に位置していた。2006年に自殺対策基本法が制定されるなどの対策もあり、2010年代以降は減少傾向となり、順位も下がっている。なお、若年層(10〜30歳代)では現在も死因の第1位を占める点が重要である。

  3. ×c.  肺炎

    2007年の肺炎による死亡は110,159人で第4位であり、10位以内に入っている。肺炎による死亡の大部分は高齢者であり、高齢化とともに増加した。2011年には脳血管疾患を抜いて第3位となった。その後、2017年から原死因の選び方のルール(ICD-10〔国際疾病分類第10版〕2013年版)が適用され、誤嚥性肺炎が別項目として集計されるようになった。これに老衰の増加も重なり、肺炎の順位は低下している。

  4. ○d.  糖尿病

    2007年の糖尿病による死亡は13,999人で第11位であり、10位以内に入っていない。したがって本問の正解である。糖尿病は患者数・予備群が多い重要な生活習慣病であるが、直接の死因となるのは糖尿病性昏睡などに限られる。多くの場合、死亡は糖尿病が危険因子となった心疾患・脳血管疾患・腎不全(糖尿病性腎症)として集計される。そのため、糖尿病そのものの死因順位は低めに出る。

  5. ×e.  腎不全

    2007年の腎不全による死亡は21,632人で第8位であり、10位以内に入っている。腎不全の原因疾患として糖尿病性腎症は大きな割合を占めている。高齢化も背景に、腎不全はその後も10位以内に位置し続けている。

死因統計の基本

死因統計は、死亡診断書(死体検案書)に記載された「原死因」(死亡を引き起こした一連の出来事の起点となった疾病・損傷)をもとに、人口動態統計として厚生労働省が毎年集計する。死因の分類にはWHO(世界保健機関)のICD(国際疾病分類)が用いられる。

主な死因の推移

・悪性新生物は1981年以降、一貫して第1位である。 ・心疾患は1985年以降、第2位である。1995年に一時的に大きく減少したが、これはICD-10の導入と、死亡診断書に「疾患の終末期の状態としての心不全・呼吸不全等は書かないでください」との注意書きが加わったことによる見かけ上の変化である。 ・脳血管疾患は1951〜1980年に第1位であったが、高血圧管理の普及などにより減少した。 ・肺炎は2011年に第3位となったが、2017年以降は誤嚥性肺炎の分離などにより順位が下がった。 ・老衰は急増し、2018年に第3位となった。

近年の死因順位(2020年代前半のおおよその傾向)

1位 悪性新生物、2位 心疾患、3位 老衰、4位 脳血管疾患、5位 肺炎と続き、その後に誤嚥性肺炎、不慮の事故、腎不全、アルツハイマー病、血管性等の認知症などが並ぶ。細かな順位は年によって異なるため、最新の人口動態統計で確認すること。

年齢階級別の特徴

10〜39歳では自殺が死因の第1位(または上位)であり、若年者の自殺は先進国の中でも深刻な問題とされている。

POINT

・死因順位は年ごとに変わるため、最新の人口動態統計を確認する。 ・2007年の上位:悪性新生物>心疾患>脳血管疾患>肺炎>不慮の事故>自殺>老衰>腎不全>肝疾患>COPD。糖尿病は11位で圏外。 ・現在は悪性新生物>心疾患>老衰>脳血管疾患>肺炎の順(老衰の急増に注意)。 ・糖尿病は合併症(心疾患・脳血管疾患・腎不全)として死因統計に表れやすく、糖尿病単独の死因順位は低い。 ・若年層の死因第1位は自殺である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。