StudyMed医師国家試験

硬く腫れた子宮と強い月経痛―MRIの「境界」が分ける子宮腺筋症と子宮筋腫

第104回医師国家試験 A問題 第38問

国試問題にチャレンジ

第104回 A問題 第38問

35歳の女性。3回経妊,2回経産。月経痛と過多月経とを主訴に来院した。子宮は硬く手拳大に腫大し,付属器は触知しない。CA125 150 U/mL(基準35以下)。骨盤部単純MRIのT2強調矢状断像を別に示す。  診断はどれか。

第104回 A問題 第38問の問題画像
  1. a.子宮筋腫
  2. b.子宮体癌
  3. c.子宮肉腫
  4. d.子宮腺筋症
  5. e.子宮内膜増殖症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、月経痛と過多月経、そして子宮の腫大をきたす疾患を見分ける問題だ。ポイントは「病変が子宮のどこにあるか」と「MRIで境界がはっきりしているか」の2点。まずは症状から、どんな疾患が思い浮かぶかな。
医学生医学生
月経痛と過多月経で子宮が大きいとなると、まず子宮筋腫を考えました。婦人科の講義でも一番多い良性腫瘍だと習いました。
ドクタードクター
自然な発想だね。実際、月経痛・過多月経・子宮腫大をきたす代表は子宮筋腫と子宮腺筋症の2つで、症状だけでは区別しにくい。だから画像が決め手になる。T2強調像で、子宮筋層はどう見えている?
医学生医学生
筋層、特に後壁側が厚くなっていて、低信号の中に点々と白い高信号が混じっています。でも、どこからどこまでが病変なのかがはっきりしません。
ドクタードクター
その「はっきりしない」こそが答えなんだ。子宮腺筋症は、子宮内膜の組織が筋層の中に入り込んで増え、周りの平滑筋が反応性に厚くなる病気。だから筋層全体が境界不明瞭な低信号域として肥厚し、その中に入り込んだ内膜や小さな出血が点状の高信号として見える。
医学生医学生
筋腫だったら、T2強調像では境界のくっきりした丸い低信号の塊になるんでしたよね。
ドクタードクター
その通り。筋腫は平滑筋由来の腫瘍で、周囲の筋層を押しのけるように育つから、境界明瞭な類円形の結節として描出される。今回の画像はそうではないので筋腫は否定的だ。ほかの所見はどうだろう。CA125の高値はどう解釈する?
医学生医学生
CA125って卵巣癌のマーカーですよね。悪性を心配しなくていいんでしょうか。
ドクタードクター
いい疑問だね。CA125は卵巣癌で上がるけれど特異性は高くなく、子宮内膜症や子宮腺筋症、月経中、骨盤内炎症などでも上昇する。今回は付属器を触れず卵巣腫大もないので、腺筋症による上昇と考えるのが自然だ。筋腫では通常正常か軽度上昇にとどまるから、これも腺筋症を支持する材料になる。
医学生医学生
30代の経産婦で、子宮が硬く均等に大きいというのも腺筋症らしいんですね。
ドクタードクター
そう。腺筋症は30〜40歳代の経産婦に多く、子宮はびまん性に腫大して硬い。筋腫だと表面が凸凹した結節状の腫大になることが多い。では悪性の選択肢も確認しよう。子宮体癌と子宮内膜増殖症はどうかな。
医学生医学生
どちらも内膜の病気なので、MRIでは内膜が厚くなったり内膜腔に腫瘤が見えたりするはずです。今回は内膜自体には異常がなさそうです。
ドクタードクター
正解。病変の主座が内膜か筋層か、という視点で切れるね。体癌は閉経前後の不正出血で見つかることが多く、未経産・肥満・糖尿病などが危険因子。内膜増殖症はエストロゲンの持続刺激で内膜が過剰に増えた状態で、異型を伴うものは体癌の前癌病変だ。どちらも子宮全体が硬く手拳大になることは説明できない。
医学生医学生
子宮肉腫はどうですか。筋層から出るなら、腺筋症と紛らわしい気もします。
ドクタードクター
鋭いね。肉腫はまれな悪性腫瘍で、閉経前後以降に急速に増大する腫瘤として見つかることが多い。MRIでは出血や壊死を伴う不均一な信号で、境界が不整な腫瘤になりやすい。月経に一致した症状を繰り返している今回の経過や画像とは合わない。ただ、画像だけで筋腫と肉腫を確実に分けるのは難しいことがある、という点は覚えておいてほしい。
医学生医学生
症状が似ていても、病変の場所と境界の性状で整理すれば絞り込めるんですね。
ドクタードクター
その通り。最後に臨床的なポイントを押さえておこう。腺筋症の治療は、鎮痛薬に加えて低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬、ジエノゲストなどの黄体ホルモン製剤、レボノルゲストレル放出子宮内システム、GnRHアゴニストやアンタゴニストによる偽閉経療法などがある。偽閉経療法は長く続けると骨量が減るので注意が必要だ。
医学生医学生
手術はどうなりますか。筋腫なら核出術がありますよね。
ドクタードクター
筋腫は境界が明瞭だから核出しやすいけれど、腺筋症は境界がないので病巣だけをきれいに取るのが難しい。挙児希望がなければ子宮全摘が根治的で、挙児希望があれば病巣切除術が検討されることもある。閉経するとエストロゲンが下がって症状は軽快するから、年齢や挙児希望を踏まえて治療を選ぶことが大切だよ。

まとめ

月経痛と過多月経に子宮の硬い均等な腫大、CA125高値を伴う30〜40歳代の経産婦では子宮腺筋症を考えます。T2強調MRIで、筋層が境界不明瞭な低信号域としてびまん性に肥厚し、内部に点状高信号が散在するのが腺筋症の特徴で、境界明瞭な類円形低信号結節を示す子宮筋腫とはここで区別します。子宮体癌や子宮内膜増殖症は内膜の病変、子宮肉腫は出血・壊死を伴う不整な腫瘤として描出されることが多く、病変の主座と境界の性状が鑑別の軸になります。治療はホルモン療法が中心で、境界がないため筋腫のような核出は難しく、根治には子宮全摘が必要です。症状が似る疾患を「どこに」「どんな境界で」できているかで整理する考え方は、婦人科画像診断の基本となります。

解答・解説

正解はdです

所見の整理

・35歳、3回経妊2回経産の女性。性成熟期で経産婦であり、子宮腺筋症の好発背景(30〜40歳代、経産婦)に一致する。 ・主訴は月経痛(月経困難症)と過多月経である。 ・内診で子宮は硬く、手拳大に腫大している。付属器(卵巣・卵管)は触知せず、卵巣の腫大はない。 ・CA125 150 U/mLと上昇している。CA125は子宮内膜症・子宮腺筋症で上昇しやすい腫瘍マーカーである(卵巣癌でも上昇するが、特異性は高くない)。 ・骨盤部MRIのT2強調矢状断像:子宮体部が全体に大きく腫大し、筋層(主に後壁側)が広く厚くなっている。肥厚した筋層は低信号で、その中に点状〜小さな嚢胞状の高信号域が散在している。低信号域と正常筋層との境界ははっきりせず、偽被膜のような明瞭な境界をもつ結節(腫瘤)としては見えない。子宮内膜は圧排されているが、内膜自体が不整に厚くなる所見はない。

診断へのプロセス

月経痛・過多月経と子宮腫大をきたす代表的疾患は子宮筋腫と子宮腺筋症である。両者は症状が似るため、画像で見分けることが重要となる。 子宮筋腫はT2強調像で境界明瞭な類円形の低信号結節として描出され、周囲の筋層との間に明瞭な境界がある。これに対し子宮腺筋症は、筋層内に子宮内膜組織が入り込み、周囲の平滑筋が反応性に増生するため、境界不明瞭でびまん性の低信号域として筋層が肥厚し、その中に異所性内膜や小出血巣を反映する点状の高信号がみられる。本例の画像はこの特徴に合致する。 さらに、子宮が硬く腫大していること、CA125が高値であること、月経痛が強いことも子宮腺筋症を支持する(子宮筋腫でも月経痛や過多月経は起こるが、月経痛の程度は腺筋症で強く、CA125は腺筋症でより上昇しやすい)。 子宮内膜そのものに厚みや不整な腫瘤がないため、子宮体癌や子宮内膜増殖症は考えにくい。以上から子宮腺筋症と診断する。

選択肢考察

  1. ×a.  子宮筋腫

    子宮筋腫は子宮平滑筋由来の良性腫瘍で、過多月経、月経痛、貧血、子宮腫大をきたす点では本例と共通する。しかしMRIのT2強調像では、正常筋層より低信号で境界明瞭な類円形の結節として描出され、周囲の筋層を圧排するように発育するのが典型である。本例のように筋層が境界不明瞭にびまん性に肥厚し、内部に点状の高信号が散在する像は筋腫には合致しない。また筋腫ではCA125の上昇は通常軽度にとどまる。

  2. ×b.  子宮体癌

    子宮体癌は子宮内膜から発生する悪性腫瘍で、閉経後や閉経前後の女性の不正性器出血で発見されることが多い。未経産、肥満、糖尿病、エストロゲン単独補充などが危険因子で、本例のような経産婦で月経痛・過多月経を主訴とする像とは異なる。MRIでは内膜の不整な肥厚や内膜腔を占める腫瘤がみられ、浸潤があれば内膜側から筋層へ連続して広がる。本例では内膜自体の異常はなく、病変は筋層内にあるため合致しない。

  3. ×c.  子宮肉腫

    子宮肉腫(平滑筋肉腫、子宮内膜間質肉腫、癌肉腫など)はまれな悪性腫瘍で、閉経前後以降の年齢に多く、急速に増大する子宮腫瘤や不正出血で発見される。MRIでは内部に出血・壊死を伴う不均一な信号を示し、境界が不整な腫瘤となることが多い。本例のような、月経に一致した症状を反復する経産婦で、筋層がびまん性に肥厚して点状高信号を伴う像は子宮腺筋症の典型であり、肉腫を積極的に疑う所見はない。なお、画像のみで子宮肉腫と筋腫を確実に鑑別するのは難しいことも知っておく。

  4. ○d.  子宮腺筋症

    子宮腺筋症は、子宮内膜組織(腺と間質)が子宮筋層内に入り込んで増殖し、周囲の平滑筋が反応性に肥厚する疾患である。30〜40歳代の経産婦に多く、強い月経痛(しばしば進行性)と過多月経、子宮の均等な腫大・硬化を示す。異所性内膜が月経周期に合わせて出血するため、CA125が上昇しやすい。MRIのT2強調像では、子宮筋層が境界不明瞭な低信号域としてびまん性(あるいは限局性)に肥厚し、その内部に異所性内膜や出血を反映する点状の高信号が散在するのが特徴である。本例の年齢・経産歴・症状・内診所見・CA125高値・MRI所見はすべてこれに合致する。

  5. ×e.  子宮内膜増殖症

    子宮内膜増殖症は、プロゲステロンの作用を伴わないエストロゲンの持続的刺激により子宮内膜が過剰に増殖する状態で、異型を伴うもの(子宮内膜異型増殖症)は子宮体癌の前癌病変とされる。不正性器出血や過多月経の原因になりうるが、病変は子宮内膜にあり、MRIでは内膜の肥厚としてみられる。子宮全体が硬く手拳大に腫大することや、筋層内の病変、CA125の著明な上昇は説明できないため合致しない。

子宮腺筋症と子宮筋腫の比較

・本態:腺筋症は筋層内の異所性子宮内膜と筋層の反応性肥厚、筋腫は平滑筋由来の良性腫瘍。 ・好発:腺筋症は30〜40歳代の経産婦、筋腫は30〜40歳代(未産婦にも多い)。 ・症状:どちらも過多月経・月経痛・貧血を起こすが、月経痛は腺筋症で強く、進行性であることが多い。不妊の原因ともなる。 ・内診:腺筋症は子宮が均等に(びまん性に)腫大して硬い。筋腫は表面が凹凸不整な結節状の腫大を示すことが多い。 ・MRI(T2強調像):腺筋症は境界不明瞭な低信号域による筋層の肥厚と点状高信号、筋腫は境界明瞭な類円形の低信号結節。 ・CA125:腺筋症で上昇しやすく、筋腫では通常正常〜軽度上昇。 ・核出術:筋腫は境界明瞭なため核出しやすいが、腺筋症は境界がないため病巣のみの切除が難しい。

子宮腺筋症の治療

・薬物療法:鎮痛薬(NSAIDs)、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬、黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト)、レボノルゲストレル放出子宮内システム、GnRHアゴニスト・アンタゴニスト(偽閉経療法、長期使用で骨量減少に注意)など。 ・手術療法:挙児希望がなければ子宮全摘術が根治的である。挙児希望があれば病巣切除術(腺筋症核出術)が行われることもある。 ・閉経後はエストロゲン低下により症状が軽快する。

CA125が上昇する主な状態

卵巣癌(特に漿液性癌)、子宮内膜症・子宮腺筋症、骨盤内炎症、月経中、妊娠初期、腹膜炎や胸腹水の貯留など。

POINT

・月経痛+過多月経+硬く均等に腫大した子宮+CA125高値 → 子宮腺筋症を考える。 ・T2強調MRIで、子宮腺筋症は境界不明瞭な低信号域による筋層肥厚と内部の点状高信号、子宮筋腫は境界明瞭な低信号結節。 ・子宮体癌・子宮内膜増殖症は内膜の病変であり、筋層内の病変とは区別する。 ・子宮腺筋症は30〜40歳代の経産婦に多い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。