名前がすべてを語る―「急性熱性好中球性皮膚症」Sweet病の血液像
第103回医師国家試験 I問題 第38問
国試問題にチャレンジ
Sweet病で末梢血に増加するのはどれか。
- a.好中球
- b.好酸球
- c.好塩基球
- d.単球
- e.リンパ球
対話形式の解説
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ドクターまとめ
Sweet病は「急性熱性好中球性皮膚症」とも呼ばれ、発熱とともに顔面・頸部・上肢に痛みを伴う浮腫性紅斑が急に出現する疾患です。末梢血では好中球優位の白血球増加、CRP陽性、赤沈亢進がみられ、皮膚生検では白血球破砕性血管炎を伴わない真皮の密な好中球浸潤が特徴です。好酸球はアレルギーや寄生虫、好塩基球は慢性骨髄性白血病、単球は結核やCMML、リンパ球はウイルス感染やCLLで増えるという整理とあわせて理解しておくと鑑別に役立ちます。急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群などの血液悪性腫瘍を合併することがあり、治療には副腎皮質ステロイドの全身投与が有効です。病名の意味から病態を読み解く姿勢は、皮膚症状の背後にある全身疾患を見逃さない臨床力につながります。
解答・解説
正解はaです
Sweet病の日本語名は「急性熱性好中球性皮膚症(acute febrile neutrophilic dermatosis)」である。この名前に病気の特徴がそのまま表れている。急に発症し(急性)、発熱を伴い(熱性)、皮膚に好中球が集まって病変をつくる(好中球性皮膚症)。 典型例では、上気道感染などをきっかけに38℃以上の発熱が出て、顔面・頸部・上肢などに、痛みを伴う赤く盛り上がった紅斑(浮腫性紅斑)が急に現れる。病変部の皮膚生検では、真皮に密な好中球の浸潤がみられる。一方、血管の壁が壊れる白血球破砕性血管炎は通常みられない。 血液検査では、白血球増加(特に好中球の増加)、CRP陽性、赤沈亢進といった強い炎症所見がみられる。したがって、末梢血で増加する白血球の種類は好中球である。 なお、Sweet病は急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)などの血液悪性腫瘍に合併することがある。その場合は基礎疾患のために末梢血の好中球が必ずしも増えないこともあるが、典型像として押さえるべきは好中球増加である。
選択肢考察
- ○a. 好中球
Sweet病は、好中球が過剰に活性化して皮膚に集まる「好中球性皮膚症」の代表である。末梢血では白血球が増え、その多くを好中球が占める(診断基準の副項目にも、白血球数8,000/μL超や好中球比率70%超が含まれている)。皮膚の病変部にも好中球が密に浸潤しており、血液と組織の両方で好中球が主役になる。
- ×b. 好酸球
好酸球が増えるのは、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー性疾患、寄生虫感染、好酸球増多症候群(HES)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、薬剤性過敏症症候群(DIHS)などである。Sweet病の特徴ではない。
- ×c. 好塩基球
好塩基球の増加は、慢性骨髄性白血病(CML)をはじめとする骨髄増殖性腫瘍で特徴的にみられる。Sweet病で増える白血球ではない。
- ×d. 単球
単球は、結核などの慢性感染症、感染症の回復期、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などで増える。Sweet病の典型的な検査所見ではない。
- ×e. リンパ球
リンパ球の増加は、伝染性単核球症などのウイルス感染症、百日咳、慢性リンパ性白血病(CLL)などでみられる。Sweet病は好中球が中心となる疾患であり、リンパ球は増加しない。
Sweet病(急性熱性好中球性皮膚症)の概要
・症状: 突然の発熱と、顔面・頸部・上肢などにできる、痛みを伴う隆起した浮腫性紅斑(局面や結節)。紅斑の表面に小さな水疱のような膨らみ(偽水疱)がみられることがある。 ・病理: 真皮に密な好中球浸潤と真皮上層の浮腫。白血球破砕性血管炎は原則としてみられない。 ・検査: 好中球優位の白血球増加、CRP上昇、赤沈亢進。 ・発症の背景: 上気道感染や消化管感染のあとに起こるものが多い。ほかに、血液悪性腫瘍(AML、MDSなど)、固形癌、炎症性腸疾患、妊娠、薬剤(G-CSF製剤など)に関連して起こる。日本人ではHLA-B54との関連が知られ、Behçet病と症状や背景が一部重なる。 ・治療: 副腎皮質ステロイドの全身投与がよく効く。ヨウ化カリウム、コルヒチンなども用いられる。基礎疾患があればその治療も行う。
診断基準の骨子
主項目(2つとも必要): 痛みを伴う紅斑・結節の急な出現、白血球破砕性血管炎を伴わない真皮の密な好中球浸潤。 副項目(2つ以上): 38℃超の発熱、関連する基礎疾患や先行感染・妊娠、全身性ステロイドがよく効くこと、検査異常(赤沈亢進、CRP陽性、白血球増加、好中球比率上昇のうち3つ以上)。
ほかの好中球性皮膚症
壊疽性膿皮症、Behçet病の皮膚病変などもまとめて好中球性皮膚症と呼ばれ、血液疾患や炎症性腸疾患を合併しやすい点が共通する。
白血球分画が増える主な疾患の整理
・好中球: 細菌感染、Sweet病、ステロイド投与、ストレス、CML ・好酸球: アレルギー性疾患、寄生虫感染、HES、EGPA、Addison病 ・好塩基球: CMLなどの骨髄増殖性腫瘍 ・単球: 結核、感染症の回復期、CMML ・リンパ球: ウイルス感染症、百日咳、CLL
POINT
・Sweet病=急性熱性好中球性皮膚症。名前から「好中球が増える」と判断できる。 ・発熱と、痛みを伴う浮腫性紅斑(顔面・頸部・上肢)が急に出現し、末梢血では好中球増加、CRP上昇がみられる。 ・生検では真皮に密な好中球浸潤があり、血管炎は伴わない。 ・AMLやMDSなどの血液悪性腫瘍の合併に注意する。治療は副腎皮質ステロイドの全身投与が有効である。
