StudyMed医師国家試験

若者が去り、医師が足りない―数字で読み解く離島の人口と医療

第103回医師国家試験 G問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第103回 G問題 第1問

我が国の離島の現状で正しいのはどれか。3つ選べ。

  1. a.人口減少が顕著である。
  2. b.生活習慣病は減少している。
  3. c.生産年齢人口の割合が少ない。
  4. d.高齢化率は25%を超えている。
  5. e.人口当たりの医師数は全国平均よりも多い。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、日本の離島が抱える人口構造と医療の問題を問う公衆衛生の問題だ。個々の数字を丸暗記するより、「若い世代が島を出て行くと何が起こるか」という因果の流れで考えると、選択肢を一つずつ判断できるよ。
医学生医学生
離島というと、高齢の方が多くて医師が少ない、というイメージがあります。
ドクタードクター
そのイメージはおおむね正しい。島は本土から離れていて交通が不便、産業の基盤も弱い。だから進学や就職を機に若い人が島外へ出て、そのまま戻らないことが多いんだ。これが出発点になる。
医学生医学生
若い人が出て行けば、島に残るのは高齢者が中心になりますね。
ドクタードクター
そう。ここで用語を確認しておこう。年少人口は0〜14歳、生産年齢人口は15〜64歳、老年人口は65歳以上。高齢化率は総人口に占める65歳以上の割合だ。
医学生医学生
公衆衛生学の講義で覚えました。高齢化率7%超で高齢化社会、14%超で高齢社会、21%超で超高齢社会でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。では離島に当てはめよう。働き盛りの世代が流出するから、生産年齢人口の割合は全国平均より低くなる。その分、高齢化率は上がる。離島全体の高齢化率は全国平均を大きく上回って30%を超え、50%を超える島も少なくない。だから「高齢化率は25%を超えている」も「生産年齢人口の割合が少ない」も正しい。
医学生医学生
全国の高齢化率も今は25%を超えているので、離島ならなおさらですね。
ドクタードクター
その通り。ただ、この問題が出題された当時の全国平均は約22%で、離島はその頃からすでにかなり高かった。いまの全国平均は約29%だけど、離島はさらにその上を行っている。
医学生医学生
人口減少も、若い人が出て行くからということでしょうか。
ドクタードクター
それに加えてもう一つ理由がある。若い世代が減れば子どもも生まれにくくなり、死亡数が出生数を上回る「自然減」が起こる。若年層の流出という「社会減」と自然減が重なるから、離島の人口は全国平均を大きく上回る速さで減り続けている。無人島になってしまった島もあるほどで、人口減少が顕著というのは正しい。
医学生医学生
高齢化が進む一方で、生活習慣病は減っていると書かれた選択肢がありますが、島の暮らしは健康的なので減っていそうな気もします。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。実際は逆で、生活習慣病は増えている。高齢者が多くなればそれだけ高血圧や糖尿病、脳血管疾患の患者は増えるし、加工食品の普及による食生活の変化や、車移動中心の生活による運動不足も重なっている。慢性疾患の継続管理は離島医療の大きな課題なんだ。
医学生医学生
人口当たりの医師数が全国平均より多い、というのは……人口が少ないから割り算すると多くなる、ということはないですか。
ドクタードクター
なるほど、分母が小さいから多く見えるのでは、という発想だね。でも実際には、医師のいない島や、医師1人の診療所が島全体の医療を担っている島も多く、人口当たりで見ても全国平均より少ない。看護師や薬剤師も不足していて、医療者の確保こそが離島医療の最大の課題なんだ。だからこれは誤り。
医学生医学生
地域医療の実習で診療所に行ったとき、先生が24時間ほぼ一人で対応していると聞いて驚きました。
ドクタードクター
離島ではそれがさらに厳しくなる。重症患者は島外の病院へ運ぶ必要があるけれど、天候が悪いと船もヘリコプターも出せないことがある。専門医の診察を受ける機会も限られ、介護の担い手や施設も足りない。
医学生医学生
そうした問題に対して、どんな対策がとられているんですか。
ドクタードクター
制度面では、1953年の離島振興法に基づく離島振興計画や、医療計画の中のへき地医療の取り組みがある。具体的には、へき地医療拠点病院やへき地診療所の整備、へき地医療支援機構による医師派遣の調整、自治医科大学や地域枠での医師養成、ドクターヘリなどの航空搬送、画像伝送やオンライン診療などの遠隔医療が組み合わされている。
医学生医学生
地域枠の同級生が、卒業後にへき地で働くことになると話していました。こういう背景があったんですね。
ドクタードクター
そう。離島は、日本全体がこれから迎える人口減少と高齢化を先取りしている場所とも言える。そこでの医療の工夫は、将来の地域医療を考えるうえでのヒントになるんだ。

まとめ

日本の離島では、進学・就職による若年層の流出(社会減)と出生数を死亡数が上回る自然減が重なり、人口減少が全国より速く進んでいます。その結果、生産年齢人口(15〜64歳)の割合は低く、高齢化率は全国平均を大きく上回って30%を超え、50%を超える島もあります。高齢化や食生活・運動習慣の変化により生活習慣病はむしろ増えており、一方で人口当たりの医師数は全国平均より少なく、医療従事者の確保が最大の課題です。対策として、へき地医療拠点病院や診療所の整備、自治医科大学・地域枠による医師養成、ドクターヘリによる搬送、遠隔医療などが進められています。「若者の流出が何を引き起こすか」という因果で考えると、離島に限らず過疎地域全体の人口構造と医療課題を理解する土台になります。

解答・解説

正解はa, c, dです

テーマ

我が国の離島が抱える人口構造と医療の問題を問う問題である。日本には数多くの有人離島がある。本土から離れて交通が不便で、産業の基盤が弱いため、多くの島で過疎化と高齢化が本土よりも早く、急激に進んでいる。

考え方

離島の現状は、次の流れで理解すると判断しやすい。 1. 進学や就職で若い世代が島外へ出て行く。 2. 残るのは高齢者が中心となり、生産年齢人口(15〜64歳)の割合が下がり、高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)が上がる。 3. 出生数が減り、死亡数が出生数を上回る(自然減)。若年層の流出(社会減)も重なって、人口は大きく減る。 4. 人口が少ない、医療機関が小さい、生活や教育の環境に不便があるといった理由で、医師や看護師などの医療従事者を確保しにくい。人口当たりの医療資源は全国平均を下回る。 5. 高齢者が多くなると、高血圧・糖尿病・脳血管疾患などの生活習慣病(慢性疾患)の患者は増える。 この流れに当てはめると、人口減少、生産年齢人口割合の低さ、高い高齢化率が正しく、生活習慣病の減少と医師数の多さは誤りとわかる。

選択肢考察

  1. ○a.  人口減少が顕著である。

    離島では、若い世代の島外流出(社会減)と、出生数より死亡数が多い状態(自然減)が重なり、人口が大きく減り続けている。離島の人口は長期にわたって減っており、減少の速さは全国平均を大きく上回る。無人島になった島もあり、過疎化は離島振興の中心課題である。

  2. ×b.  生活習慣病は減少している。

    離島でも、生活習慣病は減るどころか増えている。主な理由は、住民の高齢化、食生活の欧米化(脂質や塩分の多い加工食品が増えたこと)、自動車の利用による運動不足である。高血圧、糖尿病、脂質異常症、脳血管疾患などの慢性疾患を継続して管理することは、離島医療の重要な課題となっている。

  3. ○c.  生産年齢人口の割合が少ない。

    生産年齢人口は15〜64歳の人口である。離島では、この年代が進学・就職のために島を出て、そのまま戻らないことが多い。そのため人口に占める割合は全国平均より低い。働き手が減ると、地域の産業、行政サービス、介護の担い手が不足し、日常生活の維持にも影響が出る。

  4. ○d.  高齢化率は25%を超えている。

    高齢化率は総人口に占める65歳以上人口の割合である。離島全体の高齢化率は全国平均を大きく上回って30%を超えており、50%を超える島も少なくない。なお、全国の高齢化率は本試験の実施当時(2009年)は約22%で、その後25%を超え、現在は約29%である。離島はそれよりもさらに高い。

  5. ×e.  人口当たりの医師数は全国平均よりも多い。

    離島では人口当たりの医師数は全国平均より少なく、医師のいない島や、医師が1人だけの診療所で医療を担っている島も多い。看護師や薬剤師などほかの医療従事者も不足しており、医療者の確保は離島医療の最大の課題である。対策として、自治医科大学の卒業医師や地域枠出身医師の派遣、へき地医療拠点病院からの代診・巡回診療、ドクターヘリや自衛隊機などによる救急搬送、遠隔医療が行われている。

離島・へき地医療の主な課題

・医療従事者の不足と偏在:医師1人で島の医療を担う場合、24時間対応の負担が大きく、専門診療を受けにくい。 ・救急医療:重症患者は島外の医療機関へ搬送する必要がある。天候によって船やヘリコプターが使えないこともある。 ・高齢化への対応:在宅医療や介護サービスの担い手、介護施設が不足している。 ・慢性疾患の管理:生活習慣病の患者が多く、専門医の診察を受ける機会が限られる。

主な対策

・離島振興法(1953年制定)に基づく離島振興計画 ・へき地保健医療計画(現在は医療計画の一部として策定) ・へき地医療拠点病院、へき地診療所の整備、へき地医療支援機構による医師派遣の調整 ・自治医科大学や地域枠による医師の養成 ・ドクターヘリなどの航空搬送、情報通信技術(ICT)を用いた遠隔医療(画像伝送による診断支援、オンライン診療など)

用語

・年少人口:0〜14歳、生産年齢人口:15〜64歳、老年人口:65歳以上 ・高齢化率:総人口に占める老年人口の割合。7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会、21%を超えると超高齢社会と呼ばれる。

POINT

・離島では若年層の流出により、人口減少・生産年齢人口割合の低下・高齢化率の上昇が全国より速く進んでいる。 ・離島の高齢化率は全国平均(現在は約29%)を上回り、50%を超える島もある。 ・高齢化と生活の変化により、生活習慣病は増加している。 ・人口当たりの医師数は全国平均より少なく、医療従事者の確保が最大の課題である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。