StudyMed医師国家試験

この用紙は誰のもの?―骨突出・浮腫・失禁が指し示す「褥瘡管理チーム」

第103回医師国家試験 F問題 第8問

国試問題にチャレンジ

第103回 F問題 第8問

入院時に使用する用紙を別に示す。  主に使用するチーム(組織)はどれか。

第103回 F問題 第8問の問題画像
  1. a.医療安全管理室
  2. b.栄養サポートチーム
  3. c.感染対策チーム
  4. d.緩和ケアチーム
  5. e.褥瘡管理チーム

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、入院時に使う評価用紙を見て、それをどの院内チームが主に使うのかを推定する問題だ。用紙の細かい文言を覚えている必要はない。並んでいる項目が「何のリスク」を拾おうとしているのか、その共通点を見抜くのがポイントだよ。
医学生医学生
項目がたくさんあって、最初は入院時の一般的な問診票かと思いました。意識状態や麻痺の有無も入っていますし。
ドクタードクター
そう見えるのも無理はないね。でも一つずつ意味づけしてみよう。昏睡、鎮静、脊髄損傷、人工呼吸器、片麻痺。これらに共通するのは何だろう。
医学生医学生
……自分で体を動かせない、寝返りが打てない状態、でしょうか。
ドクタードクター
その通り。さらに「ベッド上での自力体位変換」「坐位での除圧ができるか」「長時間の全身麻酔下手術やベッド上安静の予定」も並んでいる。つまり、同じ部位に圧迫が長時間かかり続けるかどうかを見ているんだ。
医学生医学生
そこに病的骨突出や浮腫、拘縮も加わっているということは、圧がかかる場所がもともと弱いかどうかも見ているんですね。
ドクタードクター
いい読みだね。骨が突出していると皮膚と骨の間に圧が集中するし、浮腫のある組織は血流が悪く傷みやすい。拘縮があると姿勢が偏って体圧が一点にかかる。そして多汗や便・尿失禁による皮膚の湿潤、皮膚の脆弱性は、皮膚のバリア機能そのものの低下を表している。
医学生医学生
圧迫、湿潤、皮膚の弱さ……全部そろうと褥瘡ですね。病理の講義で、持続的な圧迫で阻血性壊死が起こると習いました。
ドクタードクター
そう、これは褥瘡の発生リスクを評価する用紙なんだ。自立度の確認から入って骨突出・浮腫・拘縮を点数化する構成は、日本で開発されたOHスケールの考え方とよく似ている。だから主に使うのは褥瘡管理チームということになる。
医学生医学生
栄養サポートチームも少し迷いました。低栄養は褥瘡の危険因子だと聞いたので。
ドクタードクター
鋭いところを突くね。実際、NSTと褥瘡管理チームは密接に連携する。ただ、NSTが入院時に評価するなら身長・体重、体重減少率、食事摂取量、血清アルブミン値などが中心になるはずだ。この用紙にはそうした栄養の項目がないから、主に使うチームとは言えないんだ。
医学生医学生
感染対策チームはどうでしょう。失禁は尿路感染にもつながりそうですが。
ドクタードクター
感染対策チーム、いわゆるICTは院内感染のサーベイランス、耐性菌対策、抗菌薬の適正使用などを担う。評価するなら感染症や保菌の有無が項目に入るはずで、ここでの失禁はあくまで皮膚の湿潤という観点で問われている。医療安全管理室はインシデント報告の分析や再発防止が仕事で、転倒転落歴などの項目がないから違う。緩和ケアチームなら疼痛や精神的苦痛の評価があるはずだね。
医学生医学生
各チームが「何を評価するか」を思い浮かべて、用紙の項目と照らし合わせればいいんですね。
ドクタードクター
まさにそれがこの問題の解き方だ。ここから少し発展させよう。褥瘡は仙骨部、大転子部、踵部、坐骨部、後頭部など、骨が皮膚のすぐ下にある部位に好発する。圧迫だけでなく、ずれ(剪断力)や摩擦も大きく関与するんだ。
医学生医学生
臨床実習で整形外科を回ったとき、看護師さんが2時間ごとに体位変換していて、ベッドを30度くらいまでしか上げないようにしていました。あれもずれ対策ですか。
ドクタードクター
よく観察していたね。ギャッチアップを高くすると体が足側へずり落ちて、仙骨部に強い剪断力がかかる。体位変換に加えて、体圧分散マットレスの使用、皮膚の清潔と保湿、失禁ケア、そして栄養管理を組み合わせるのが予防の基本だ。評価法としては、知覚・湿潤・活動性・可動性・栄養・摩擦とずれの6項目を見るブレーデンスケールも有名で、点数が低いほど高リスクになる。
医学生医学生
入院時に全員を評価するのは、手間がかかりそうですね。
ドクタードクター
手間はかかるけれど、わが国では褥瘡対策が入院基本料の算定要件になっていて、入院患者全員に入院時の褥瘡リスク評価が求められている。褥瘡はいったんできると治療に長期間かかり、感染の温床にもなる。予防こそ最大の治療、という意識を持っておこう。

まとめ

意識障害・麻痺・鎮静などによる体位変換能力の低下、病的骨突出・浮腫・拘縮といった局所の脆弱性、多汗や失禁による皮膚の湿潤は、いずれも褥瘡の危険因子です。これらを入院時に評価する用紙は褥瘡発生リスクの評価票であり、主に用いるのは褥瘡管理チームです。栄養サポートチームは体重や血清アルブミン値、感染対策チームは感染症や保菌、医療安全管理室はインシデントや転倒転落、緩和ケアチームは疼痛や心理的苦痛と、それぞれ評価の軸が異なります。褥瘡は仙骨部や踵部など骨突出部に好発し、体位変換、体圧分散、ずれの防止、スキンケア、栄養管理を組み合わせた予防が基本です。院内の多職種チームの役割を評価項目と結びつけて理解しておくことは、チーム医療の一員として働くうえでの土台になります。

解答・解説

正解はeです

提示された「入院時アセスメント用紙」の項目を読み取り、それが何のリスクを評価するためのものかを推定する問題である。

用紙の項目の整理

・前提情報: 日常生活自立度、6時間以上の全身麻酔下手術やベッド上安静を伴う検査の予定の有無 ・点数化される危険因子: 意識状態等(清明 0点/片麻痺・下肢牽引 1.5点/昏睡・脊髄損傷・人工呼吸器・ショック・重度末梢循環不全・鎮静 3.0点)、病的骨突出(無/軽度1.5点/高度3.0点)、浮腫、拘縮 ・その他の危険因子: ベッド上での自力体位変換(自立/部分介助/全面介助)、坐位姿勢の保持、坐位姿勢での除圧の可否、皮膚湿潤(多汗・便失禁・尿失禁)、皮膚の脆弱性など

考え方

これらはいずれも「身体の一部に長時間圧迫が加わる状況になりやすいか(自分で動けない・寝返りできない・長時間の安静が必要)」「圧迫を受ける部位が弱いか(骨が突出している、浮腫がある、関節が拘縮して体圧が一点に集中する)」「皮膚が傷みやすいか(湿潤・脆弱)」を問うている。すなわち、圧迫・ずれ・湿潤によって皮膚や皮下組織が阻血性に壊死する褥瘡(pressure ulcer / pressure injury)の発生リスクを評価する項目群である。 日常生活自立度(いわゆる寝たきり度)の確認から始まり、骨突出や浮腫・拘縮を点数化する構成は、わが国で用いられる褥瘡リスク評価法(OHスケールなど)の考え方と共通している。したがって、この用紙を主に活用するのは褥瘡の予防と管理を専門とする褥瘡管理チームである。 一方、栄養・感染・医療安全・緩和ケアに固有の評価項目(体重変化や血清アルブミン値、感染症の有無、転倒転落歴やインシデント、疼痛や精神的苦痛など)はこの用紙に含まれていない点も判断の手がかりとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  医療安全管理室

    医療安全管理室は、医療事故やインシデント(ヒヤリ・ハット)の報告の収集・分析、再発防止策の立案、職員教育などを担う部門である。用紙には医療事故・インシデント・転倒転落歴・患者からの苦情などに関する項目はなく、入院患者全員に対して医療安全管理室がこのような身体評価を行うこともない。したがって誤りである。

  2. ×b.  栄養サポートチーム

    栄養サポートチーム(NST: nutrition support team)は、医師・管理栄養士・看護師・薬剤師などで構成され、低栄養患者などの栄養評価と栄養療法の提案を行う。入院時には栄養状態の評価(入院栄養管理計画書など)も行われるが、その場合は身長・体重・体重減少率、食事摂取量、血清アルブミン値などが評価項目となる。本用紙にはこうした栄養に直接かかわる項目がないため誤りである。なお、低栄養は褥瘡の重要な危険因子であり、NSTは褥瘡管理チームと連携することが多い。

  3. ×c.  感染対策チーム

    感染対策チーム(ICT: infection control team)は、院内感染の監視(サーベイランス)、耐性菌の拡散防止、抗菌薬の適正使用の推進、感染防止策の指導などを担う。特別な対策を要する感染症患者を除き、入院時に全患者へ感染に関する独自の評価用紙を用いることは一般的でなく、本用紙にも感染症や保菌状態に関する項目はない。したがって誤りである。

  4. ×d.  緩和ケアチーム

    緩和ケアチームは、がんなど生命を脅かす疾患に伴う身体的苦痛(疼痛・呼吸困難など)、精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛を評価し、その緩和を支援する。本用紙は意識状態・骨突出・浮腫・体位変換能力・皮膚湿潤など身体面の局所リスクに限られ、疼痛や心理的苦痛の評価項目がないため、緩和ケアの評価用紙としては不適当である。したがって誤りである。

  5. ○e.  褥瘡管理チーム

    用紙の項目はすべて褥瘡の危険因子に対応している。麻痺・昏睡・鎮静・脊髄損傷・人工呼吸器装着などは自力で体位を変えられない状態を、病的骨突出は圧が集中しやすい部位の存在を、浮腫や拘縮は組織の脆弱化と体圧の偏りを示す。体位変換の自立度、坐位保持や坐位での除圧の可否は圧迫の持続時間にかかわり、多汗・便失禁・尿失禁による皮膚湿潤や皮膚の脆弱性は皮膚のバリア機能低下を示す。さらに長時間の全身麻酔下手術やベッド上安静の予定も、同一体位による圧迫を招くため評価されている。したがって、この用紙は入院時に褥瘡発生リスクを評価して予防計画を立てるためのものであり、主に使用するのは褥瘡管理チームである。

褥瘡とは

身体の一部に持続的な圧迫が加わり、その部位の血流が低下・途絶することで皮膚や皮下組織が壊死に陥った状態である。仙骨部、大転子部、踵部、坐骨部、後頭部など、骨が皮膚の直下にある部位に好発する。発生には圧迫だけでなく、ずれ(剪断力)、摩擦、湿潤、低栄養などが関与する。

主な危険因子

・可動性の低下: 意識障害、麻痺、鎮静、長時間の手術・安静 ・局所の脆弱性: 病的骨突出、浮腫、関節拘縮 ・皮膚環境の悪化: 多汗、失禁による湿潤、皮膚の菲薄化 ・全身状態: 低栄養、貧血、末梢循環不全

リスク評価法の例

・ブレーデンスケール(Braden scale): 知覚の認知、湿潤、活動性、可動性、栄養状態、摩擦とずれの6項目で評価し、点数が低いほど高リスクである。 ・OHスケール: 自力体位変換能力、病的骨突出、浮腫、関節拘縮の4項目を点数化する日本で開発された評価法で、特に寝たきり高齢者の評価に用いられる。 ・K式スケールなども用いられる。

チーム医療と入院時の書類

医療安全、感染対策、栄養サポート、褥瘡管理、緩和ケアは、いずれも診療科や臓器の枠を超えてすべての入院患者にかかわる領域であり、専門的知識をもつ多職種チームが病棟を横断的に支援する。入院時に病棟で作成される主な書類には、主治医が作成する入院診療計画書のほか、栄養状態を評価する栄養管理計画書、褥瘡リスクを評価する褥瘡対策に関する診療計画書、身体抑制の必要性を評価する書類などがある。わが国では褥瘡対策が入院基本料の算定要件とされており、入院患者全員について入院時に褥瘡リスクを評価することが求められている。

POINT

・骨突出、浮腫、拘縮、自力体位変換の可否、除圧の可否、皮膚湿潤(多汗・失禁)は褥瘡の危険因子である。 ・これらを入院時に評価する用紙は褥瘡管理チームが主に使用する。 ・栄養(NST)、感染(ICT)、医療安全、緩和ケアの各チームの役割と、それぞれに固有の評価項目を区別できるようにしておく。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。