SP+1cmはどこにいる?―坐骨棘を基準に読み解く骨盤の4区画
第103回医師国家試験 E問題 第60問(連問)
国試問題にチャレンジ
連問の共通文
次の文を読み,59~61の問いに答えよ。 33歳の初産婦。妊娠39週3日,陣痛発来を主訴に午前10時に来院した。妊娠経過は順調である。 既往歴・家族歴:特記すべきことはない。 現症:身長162cm,体重62kg。体温36.7℃。 検査所見:血液所見:赤血球360万,Hb 11.5g/dL,白血球10,000,血小板22万。CRP 0.8mg/dL。Leopold診察法第2段で大きくて板状の塊を右手に触れる。腟鏡診で子宮口から少量の出血を認める。子宮口は口唇状の柔らかさで中央に位置し,2cm開大しており,展退度は60%,児頭下降度はSP-2cmである。
入院後の経過:陣痛は次第に増強し,午後3時に自然破水した。内診で子宮口はほぼ全開大,児頭下降度はSP+1cm,矢状縫合は斜径に一致し,先進する小泉門は母体の左側に触れた。 先進部の位置はどれか。
- a.骨盤入口部
- b.産科真結合線上
- c.骨盤闊部
- d.骨盤峡部
- e.骨盤出口部
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクター
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ドクターまとめ
station(SP)は左右の坐骨棘を結ぶ線を0とし、上を−、下を+としてcmで表す児頭先進部の高さの指標です。小骨盤腔は上から入口部・闊部・峡部・出口部に区分され、目安として先進部がSP−3cmより高ければ入口部付近、−2〜0cmで闊部、+1〜+3cmで峡部、+4〜+5cmで出口部に相当するため、SP+1cmの先進部は骨盤峡部にあります。先進部がSP 0付近に達したとき児頭最大周囲径は骨盤入口を通過しており(嵌入)、先進部と最大周囲径の位置を区別することが重要です。また、入口が横長・出口が縦長という骨盤の形に合わせて児頭は矢状縫合を横径→斜径→縦径と回旋しながら下降します。stationと骨盤区分、児頭の回旋を組み合わせて理解することは、分娩進行の評価や分娩停滞の早期発見に欠かせない知識です。
解答・解説
正解はdです
経過の整理
妊娠39週3日の初産婦で、来院時は子宮口2cm開大、児頭下降度SP−2cm、Bishopスコア6点であった。入院後に陣痛が強まり、午後3時に自然破水している。この時点の内診所見は次のとおりである。 ・子宮口ほぼ全開大: 分娩第1期の終わりから第2期に移るところである。 ・児頭下降度SP+1cm: 先進部(児頭の最も低い部分)が坐骨棘を結ぶ線より1cm下にある。 ・矢状縫合が斜径に一致し、小泉門(後頭側の三角形の泉門)が先進して母体の左側に触れる: 児頭が屈曲して後頭部から下降する正常な頭位(後頭位)で、児の後頭部・背中は母体の左側を向いている(第1胎向)。来院時のLeopold触診法第2段で板状の児背を触れた側とも合う所見である。児頭は骨盤入口では矢状縫合を横径方向に向けて入り、下降に伴って斜径、さらに縦径(前後径)へと回旋していく(第2回旋)。矢状縫合が斜径にあることは、その回旋の途中であることを示す。
設問の考え方
問われているのは、SP+1cmという先進部の高さが、骨盤のどの区画に相当するかである。 ・station(SP)は、左右の坐骨棘を結ぶ線を0とし、先進部がそれより上なら−、下なら+としてcmで表す方法である。 ・小骨盤腔(産道となる骨盤の内腔)は、上から入口部、闊部、峡部、出口部の4つに区分される。坐骨棘は骨盤腔の中でも最も狭くなる高さの目安であり、station 0 のあたりが闊部と峡部の境界にあたる。 ・したがって、坐骨棘線を越えてやや下がったSP+1cmの先進部は骨盤峡部にある。 先進部の位置と児頭の最も大きな周囲(児頭最大周囲径)の位置は異なることにも注意する。児頭は先進部から最大周囲径まで数cmの厚みがあるので、先進部がSP 0付近に達したとき、最大周囲径はほぼ骨盤入口を通過したところにある(これを嵌入という)。本問は「先進部の位置」を問うている。
選択肢考察
- ×a. 骨盤入口部
骨盤入口部は、仙骨岬角と恥骨結合上縁を結ぶ面(入口面)から、それに平行で分界線の最下縁を通る面までの区画で、小骨盤腔の最上部にあたる。先進部がこの高さにあるのは、stationでおおむね−3cmより高い(坐骨棘線よりかなり上の)段階であり、SP+1cmの本例には当てはまらない。
- ×b. 産科真結合線上
産科真結合線は、仙骨岬角と恥骨結合後面の最も突出した点を結ぶ線で、骨盤入口の前後径のうち最も短く、児が通過できるかを判断する指標となる(正常ではおおむね10.5〜11cm以上)。骨盤入口の高さに位置する線であり、先進部がここにあるのは児頭がまだ高い段階である。坐骨棘線より下にあるSP+1cmの先進部とは高さが大きく異なる。
- ×c. 骨盤闊部
骨盤闊部は入口部の下に続く、骨盤腔の中で最も広い区画である。下方は坐骨棘の高さ付近までで、先進部がここにあるのはstationでおおむね−2〜0cm程度の段階である。本例はすでに坐骨棘線を越えてSP+1cmまで下降しており、闊部は通過している。
- ○d. 骨盤峡部
骨盤峡部は闊部の下に続き、下面が恥骨結合下縁と仙骨先端を結ぶ面で区切られる、骨盤腔の狭い区画である。坐骨棘線(station 0)を越えてから、先進部がおおむねSP+1〜+3cmにある段階がこの区画に相当する。本例の先進部はSP+1cmなので骨盤峡部にある。
- ×e. 骨盤出口部
骨盤出口部は峡部の下、恥骨結合下縁から左右の坐骨結節を経て尾骨先端に至る骨盤の最下部の区画である。先進部がここに達するのはおおむねSP+4〜+5cmで、陣痛発作時に外陰部から児頭が見え始める排臨・発露の時期に近い。SP+1cmではまだ出口部には至っていない。
小骨盤腔の4区分(上から順に)
・入口部: 上面は仙骨岬角と恥骨結合上縁を結ぶ入口面、下面は分界線の最下縁を通り入口面に平行な面。前後径が短く横に広い横楕円形である。 ・闊部: 入口部の下に続く最も広い部分で、ほぼ円形。 ・峡部: 闊部の下に続き、下面は恥骨結合下縁と仙骨先端を結ぶ面。坐骨棘が内側に張り出すため狭い。 ・出口部: 最下部で、恥骨結合下縁・左右の坐骨結節・尾骨先端で囲まれる。前後に長い縦楕円形である。 入口が横に長く、出口が前後に長いため、児頭は矢状縫合を横径→斜径→縦径と向きを変えながら(回旋しながら)下降する。
stationと先進部の位置(目安)
・SP −3cmより高い: 先進部は入口部付近(児頭の最大周囲径は入口より上、まだ嵌入していない) ・SP −2〜0cm: 先進部は闊部 ・SP +1〜+3cm: 先進部は峡部 ・SP +4〜+5cm: 先進部は出口部(排臨・発露が近い) SP 0付近で児頭最大周囲径が骨盤入口面を通過する(嵌入)。対応は教科書により多少の幅があるので、目安として理解する。
胎向と泉門
小泉門は後頭骨と左右の頭頂骨の間にある三角形の泉門で、大泉門は前頭骨と頭頂骨の間にある菱形の泉門である。正常の後頭位では児頭が屈曲するため小泉門が先進する。児背(後頭部)が母体の左側にあるものを第1胎向、右側にあるものを第2胎向という。第1胎向の方が頻度が高い。
POINT
・station(SP)は左右の坐骨棘を結ぶ線を0とし、それより下を+、上を−としてcmで表す。 ・先進部の位置の目安: 入口部(SP−3より高い)、闊部(−2〜0)、峡部(+1〜+3)、出口部(+4〜+5)。 ・SP+1cmは坐骨棘線を越えた直後で、先進部は骨盤峡部にある。 ・SP 0付近で児頭最大周囲径が骨盤入口を通過(嵌入)する。 ・産科真結合線は仙骨岬角と恥骨結合後面を結ぶ入口の最短前後径である。
