StudyMed医師国家試験

年齢とともに上がる血圧―「心拍出量×末梢血管抵抗」で解く生理的変動

第103回医師国家試験 C問題 第3問

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第103回 C問題 第3問

血圧で正しいのはどれか。

  1. a.起床時が最も低い。
  2. b.運動中は低下する。
  3. c.入浴後に上昇する。
  4. d.加齢とともに上昇する。
  5. e.上肢よりも下肢が低い。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は血圧の生理的な変動についての問題だ。日内変動、運動、入浴、加齢、測定部位と、日常的な場面がいろいろ並んでいるね。すべてを丸暗記するより、「血圧は心拍出量と末梢血管抵抗で決まる」という基本式から考えるのがコツだよ。
医学生医学生
生理学の講義で習った式ですね。それぞれの場面で、心拍出量と血管抵抗がどう変わるかを考えればいいということですか。
ドクタードクター
その通り。さらに大動脈のような太い動脈の弾性、つまりコンプライアンスが、収縮期と拡張期の差である脈圧に関わる。この3つを頭に置いておこう。まず日内変動から。血圧が一番低いのはいつだと思う?
医学生医学生
朝起きたときは体がまだ休んでいるので、起床時が一番低いと思っていました。
ドクタードクター
よくある誤解だね。実は最も低いのは夜間の睡眠中なんだ。明け方には起床前から交感神経活動や副腎皮質ホルモンの分泌が高まって、血圧はすでに上がり始める。起きて活動を始めるとさらに上昇する。この朝の急な上昇をモーニングサージと呼ぶよ。
医学生医学生
循環器内科の実習で、心筋梗塞や脳卒中は朝に多いと教わったのは、それと関係があるんですね。
ドクタードクター
そう、関連づけて考えられている。次は運動中。交感神経が興奮すると何が起こるかな。
医学生医学生
心拍数と心収縮力が増えるので、心拍出量が上がって血圧も上がります。運動中に低下するというのは誤りですね。
ドクタードクター
正解。ただ細かく言うと、ランニングのような動的運動では活動筋の血管が広がるので、拡張期血圧はあまり変わらないか少し下がることもある。一方、重量挙げのような静的運動では収縮期も拡張期も大きく上昇する。運動を終えた後にしばらく血圧が下がる運動後低血圧とも混同しないようにね。
医学生医学生
入浴後はどうでしょう。お風呂で温まると血行が良くなる感じがしますが。
ドクタードクター
その感覚がヒントだよ。温熱で皮膚の血管が拡張するから、末梢血管抵抗が下がって入浴後の血圧は低下するのが基本だ。浴槽から出ると水圧がなくなり、下肢に血液がたまりやすくなることも低下を助長する。だから入浴後に上昇するという記述は誤りだね。
医学生医学生
でも、冬場のヒートショックは血圧が急に上がる話ですよね。
ドクタードクター
いい指摘だ。寒い脱衣所や熱すぎる湯では、交感神経が刺激されて一時的に血圧が上がることがある。温度差による急な上がり下がりが危険なんだ。とはいえ温熱による血管拡張で下がる、というのが基本的な理解だよ。では加齢はどうかな。
医学生医学生
動脈硬化が進むので、血圧は上がると思います。これが正解でしょうか。
ドクタードクター
その通り。年齢とともに血管壁が硬くなり、細い動脈では内腔が狭くなって抵抗が増し、大動脈では拍出された血液を受け止めて圧を和らげる力が落ちる。その結果、収縮期血圧はほぼ一貫して上昇していく。ただ拡張期血圧は50〜60歳ごろを境に低下傾向となり、脈圧が広がる。高齢者に収縮期高血圧が多いのはこのためだ。
医学生医学生
最後の上肢と下肢の差ですが、下肢は心臓から遠いので低いと思っていました。
ドクタードクター
直感的にはそう思うよね。でも仰臥位で測ると、健常者では足関節の収縮期血圧は上腕より高いんだ。圧波が末梢へ伝わる途中で反射波が重なり、末梢ほど収縮期圧が高く測定されるからだよ。これを使った指標が足関節上腕血圧比、ABIだ。
医学生医学生
OSCEの前に血圧測定は練習しましたが、ABIの正常値はうろ覚えです。
ドクタードクター
正常は1.00〜1.40で、0.90以下なら末梢動脈疾患を疑う。逆に1.40を超えるときは、糖尿病や透析患者などで動脈壁が石灰化して圧迫されにくくなっている可能性を考える。下肢の血圧が上肢より低ければ、閉塞性動脈硬化症、大動脈縮窄症、高安動脈炎などを鑑別に挙げよう。また左右の上肢で差が大きいときは、鎖骨下動脈の狭窄や大動脈解離にも注意が必要だ。
医学生医学生
正常の生理を知っているからこそ、異常に気づけるということですね。
ドクタードクター
その通り。臨床では白衣高血圧や、夜間に血圧が下がらないnon-dipperのように、測る時間や場面で血圧の意味が変わる。家庭血圧や24時間血圧測定を組み合わせて評価する発想も持っておくといいよ。

まとめ

血圧は「心拍出量×末梢血管抵抗」で決まり、大動脈のコンプライアンスが脈圧を左右するため、各場面での変化はこの基本から推論できます。加齢では動脈硬化により収縮期血圧が上昇し続け、拡張期血圧は中年以降低下傾向となって脈圧が拡大し、高齢者に収縮期高血圧が多くなります。血圧は夜間睡眠中が最も低く早朝に上昇(モーニングサージ)し、運動中は心拍出量の増加で上昇、入浴後は温熱による血管拡張で低下するのが基本です。健常者では下肢の収縮期血圧は上肢より高く(ABI正常1.00〜1.40)、下肢が低ければ末梢動脈疾患や大動脈縮窄症などを疑います。正常な生理的変動を理解しておくことは、高血圧の評価や血管疾患の早期発見に直結します。

解答・解説

正解はdです

血圧の生理的な変動(日内変動、運動・入浴などの生活動作による変化、加齢変化、測定部位による差)を問う問題である。 血圧は基本的に「心拍出量 × 末梢血管抵抗」で決まり、さらに大動脈など太い動脈の弾性(コンプライアンス)が収縮期血圧と拡張期血圧の差(脈圧)を左右する。これらを規定するのは自律神経(交感神経・副交感神経)の活動、循環血液量、血管壁の性状などである。したがって各選択肢は、その状況で「心拍出量」「末梢血管抵抗」「血管の硬さ」がどう変わるかを考えれば判断できる。 ・日内変動:交感神経活動は睡眠中に最も低く、明け方から起床にかけて高まる。 ・運動:交感神経が興奮し心拍数・1回拍出量が増え、心拍出量が大きく増す。 ・入浴:温熱による皮膚血管の拡張で末梢血管抵抗が下がる。 ・加齢:動脈硬化により血管が硬くなる。 ・測定部位:末梢へ向かうほど圧波形が変化し、収縮期血圧は下肢のほうが高く測定される。 これらを踏まえると、一般的な傾向として正しいのは「加齢とともに上昇する」である。

選択肢考察

  1. ×a.  起床時が最も低い。

    誤り。血圧が1日のうちで最も低くなるのは夜間の睡眠中(特に深い睡眠の時間帯)である。明け方になると起床前から交感神経活動や副腎皮質ホルモンの分泌が高まり、血圧は徐々に上昇し始める。起床して体を起こし活動を始めると交感神経優位となってさらに上昇する。この朝の急な血圧上昇はモーニングサージと呼ばれ、脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントが早朝から午前中に多いことと関連づけられている。

  2. ×b.  運動中は低下する。

    誤り。運動中は交感神経が興奮し、心拍数と心収縮力が増して心拍出量が大きく増加するため、血圧(特に収縮期血圧)は上昇する。ウォーキングやランニングのような動的運動では、活動筋の血管が拡張して末梢血管抵抗が低下するため、拡張期血圧はほとんど変わらないか、やや低下することがある。一方、重量挙げのような静的(等尺性)運動では収縮期・拡張期ともに大きく上昇する。なお、運動を終えた後にはしばらく安静時より血圧が下がることがあり(運動後低血圧)、これと混同しないようにする。

  3. ×c.  入浴後に上昇する。

    誤り。温かい湯に浸かると皮膚の血管が拡張して末梢血管抵抗が下がり、入浴後は血圧が低下するのが一般的である。浴槽から出た直後は、体にかかっていた水圧がなくなって下肢に血液がたまりやすくなることも血圧低下を助長し、立ちくらみや失神(入浴関連事故)の一因となる。ただし、寒い脱衣所で服を脱いだとき、熱すぎる湯に入った直後などには、寒冷刺激や熱刺激による交感神経の興奮で一時的に血圧が上昇することがある。「入浴後」という表現にはやや幅があるが、温熱による血管拡張の結果として低下する、というのが基本的な理解である。

  4. ○d.  加齢とともに上昇する。

    正しい。年齢を重ねると動脈硬化が進み、血管壁の弾性が失われて硬くなる。細い動脈では内腔が狭くなって末梢血管抵抗が増し、大動脈などの太い動脈では心臓から拍出された血液を受け止めて圧を緩衝する力(コンプライアンス)が低下する。その結果、収縮期血圧は年齢とともにほぼ一貫して上昇し、高血圧の有病率も高齢になるほど高くなる。なお拡張期血圧は50〜60歳ごろまでは上昇するが、それ以降は太い動脈の硬化のためにむしろ低下傾向となり、脈圧が拡大する。高齢者で収縮期血圧だけが高い「収縮期高血圧」が多いのはこのためである。

  5. ×e.  上肢よりも下肢が低い。

    誤り。仰臥位で測定すると、健常者では下肢(足関節部)の収縮期血圧は上肢(上腕)よりも高い。圧波が中枢から末梢へ伝わる過程で、細くなる血管からの反射波が重なり合い、末梢ほど収縮期圧が高く測定されるためである。これを利用した指標が足関節上腕血圧比(ABI:ankle-brachial index、足関節収縮期血圧÷上腕収縮期血圧)で、正常は1.00〜1.40、0.90以下で下肢の閉塞性動脈疾患(末梢動脈疾患)を疑う。下肢の血圧が上肢より低いときは、下肢への血流路が狭くなる病態、すなわち閉塞性動脈硬化症、大動脈縮窄症、腹部大動脈や下肢動脈に病変が及ぶ高安動脈炎(大動脈炎症候群)などを考える。

血圧を決める因子

平均血圧 ≒ 心拍出量 × 末梢血管抵抗。心拍出量は心拍数 × 1回拍出量で表される。収縮期血圧は1回拍出量と大動脈の硬さの影響を、拡張期血圧は末梢血管抵抗の影響を強く受ける。

血圧の主な生理的変動

・日内変動:夜間睡眠中に最低、早朝から上昇(モーニングサージ)し、日中の活動時に高い。夜間に血圧が下がらないタイプ(non-dipper)は心血管リスクが高いとされる。 ・体位:臥位から立位になると下肢に血液が移動し、一時的に血圧が下がるが、圧受容器反射で速やかに補正される。この補正がうまく働かないのが起立性低血圧である。 ・運動:動的運動では収縮期血圧が上昇し、拡張期血圧は不変〜軽度低下。静的運動では両方とも上昇。 ・入浴:温熱による血管拡張で低下。寒冷刺激や熱すぎる湯では一時的に上昇。冬季の脱衣所と浴室の温度差による急な血圧変動(いわゆるヒートショック)が問題となる。 ・精神的緊張:交感神経興奮で上昇(診察室で血圧が高くなる白衣高血圧など)。 ・加齢:収縮期血圧は上昇し続け、拡張期血圧は中年以降低下傾向となり、脈圧が拡大する。

上肢と下肢の血圧差

健常者では下肢の収縮期血圧が上肢より高い(ABI 正常 1.00〜1.40)。ABI 0.90以下は末梢動脈疾患の疑い、1.40超は動脈壁の石灰化(糖尿病、透析患者など)で血管が圧迫されにくくなり、高値となることを考える。また左右の上肢で血圧差が大きい場合は、鎖骨下動脈の狭窄(高安動脈炎、動脈硬化)や大動脈解離を疑う。

POINT

・血圧は「心拍出量 × 末梢血管抵抗」で決まり、各状況での両者の変化を考えれば判断できる。 ・加齢で動脈硬化が進み、血圧(特に収縮期血圧)は上昇する。高齢者では脈圧が拡大し、収縮期高血圧が多い。 ・血圧は睡眠中が最も低く、早朝に上昇する(モーニングサージ)。 ・運動中は心拍出量の増加により血圧は上昇する。 ・入浴後は血管拡張により血圧は低下する。 ・正常では下肢の血圧は上肢より高い(ABI 1.00〜1.40)。下肢の方が低ければ末梢動脈疾患、大動脈縮窄症、高安動脈炎などを疑う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。