抗体か、T細胞か―「遅れてやってくる」Ⅳ型アレルギーを見抜く
第103回医師国家試験 A問題 第11問
国試問題にチャレンジ
Ⅳ型アレルギーはどれか。
- a.血清病
- b.気管支喘息
- c.接触皮膚炎
- d.自己免疫性溶血性貧血
- e.全身性エリテマトーデス〈SLE〉
対話形式の解説
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ドクターまとめ
アレルギーはGell-Coombs分類でⅠ〜Ⅳ型に分けられ、Ⅰ〜Ⅲ型は抗体が、Ⅳ型は感作T細胞が主役となる反応です。Ⅳ型は細胞性免疫による遅延型反応で24〜72時間で最大となり、ハプテンに感作されたT細胞が湿疹を起こすアレルギー性接触皮膚炎はその典型で、原因検索のパッチテストも48〜72時間後に判定します。これに対し、気管支喘息はIgEとマスト細胞によるⅠ型、自己免疫性溶血性貧血は細胞表面への抗体結合によるⅡ型、血清病とSLEは免疫複合体の沈着と補体活性化によるⅢ型が主体です。Ⅳ型には接触皮膚炎のほかツベルクリン反応、移植片拒絶、GVHD、結核やサルコイドーシスの肉芽腫形成も含まれます。「抗体か、T細胞か」という視点で疾患の機序を整理することは、検査の解釈や治療選択の理解にもつながる免疫学の基本です。
解答・解説
正解はcです
アレルギー(過敏反応)は、Gell と Coombs による分類でⅠ〜Ⅳ型に分けられる。Ⅰ〜Ⅲ型は抗体(液性免疫)が主役となる反応で、抗原に曝露してから数分〜数時間で症状が出る。一方、Ⅳ型は抗体を介さず、感作されたT細胞(細胞性免疫)が主役となる反応であり、抗原に触れてから症状が出るまでに24〜72時間ほどかかることから「遅延型過敏反応」とよばれる。 本問では、各疾患の主な組織障害の機序がどの型にあたるかを判断すればよい。抗体が関わるか(Ⅰ〜Ⅲ型)、T細胞が直接関わるか(Ⅳ型)という視点で整理すると、Ⅳ型に該当するのは、皮膚に接触した化学物質などに感作されたT細胞が炎症を起こす接触皮膚炎である。
選択肢考察
- ×a. 血清病
血清病は、異種動物の血清(抗毒素血清など)や一部の薬剤を投与した後、体内でつくられた抗体と残っている抗原が結合して免疫複合体を形成し、それが血管壁や関節、腎糸球体などに沈着して補体を活性化することで起こる。投与後およそ1〜2週間で発熱、蕁麻疹様の発疹、関節痛、リンパ節腫脹、蛋白尿などが現れる。免疫複合体による障害であり、Ⅲ型アレルギーの代表例である。
- ×b. 気管支喘息
アトピー型の気管支喘息では、ダニやハウスダストなどの抗原に対して産生されたIgE抗体が、気道のマスト細胞(肥満細胞)の表面に結合している。そこへ再び抗原が結合すると、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出され、気管支平滑筋の収縮、粘液分泌の亢進、気道の浮腫が起こる。これは即時型のⅠ型アレルギーである。なお、喘息ではその後数時間して生じる遅発型反応や、好酸球が関与する慢性の気道炎症も重要であるが、疾患の分類としてはⅠ型アレルギーの代表として扱われる。
- ○c. 接触皮膚炎
アレルギー性接触皮膚炎では、ニッケルなどの金属、ウルシ、化粧品、外用薬などに含まれる低分子の物質(ハプテン)が皮膚の蛋白と結合して抗原となる。これを樹状細胞(ランゲルハンス細胞など)がT細胞に提示してT細胞が感作される。再び同じ物質が皮膚に触れると、感作T細胞が集まってサイトカインを放出したり、細胞傷害性T細胞が表皮細胞を直接障害したりして、紅斑、丘疹、小水疱、かゆみを伴う湿疹が生じる。接触から1〜2日後に症状が強くなる遅延型反応であり、典型的なⅣ型アレルギーである。原因物質の同定にはパッチテスト(貼付試験)が用いられ、判定も48〜72時間後に行う。なお、刺激性接触皮膚炎は免疫を介さない直接の刺激による皮膚炎であり、アレルギー性のものとは区別される。
- ×d. 自己免疫性溶血性貧血
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は、自分の赤血球膜上の抗原に対する自己抗体(温式ではIgGが主体、寒冷凝集素症ではIgM)が赤血球に結合し、脾臓などのマクロファージによる貪食や、補体の活性化による膜の破壊によって赤血球が壊される疾患である。細胞表面の抗原に抗体が直接結合して細胞を障害するので、Ⅱ型アレルギー(細胞傷害型)に分類される。直接Coombs試験が陽性となるのは、赤血球に抗体や補体が結合していることを示している。
- ×e. 全身性エリテマトーデス〈SLE〉
SLEは、抗二本鎖DNA抗体など多彩な自己抗体が産生され、これらが抗原と結合してできた免疫複合体が腎糸球体、皮膚、血管などに沈着し、補体を活性化して炎症を起こす疾患である。ループス腎炎はその代表で、活動期には血清補体価(CH50、C3、C4)が低下する。主体となる機序は免疫複合体によるⅢ型アレルギーである。ただし、SLEに伴う自己免疫性溶血性貧血や血小板減少のように、Ⅱ型の機序で生じる病態も併せ持つ。
アレルギー反応の4分類(Gell-Coombs分類)
Ⅰ型(即時型、アナフィラキシー型): IgE抗体がマスト細胞や好塩基球の表面に結合し、抗原が結合するとヒスタミン、ロイコトリエンなどが放出される。数分〜30分程度で症状が出る。例: アナフィラキシー、気管支喘息(アトピー型)、アレルギー性鼻炎、花粉症、蕁麻疹、食物アレルギー。 Ⅱ型(細胞傷害型): IgGやIgMが細胞や組織の表面の抗原に結合し、補体の活性化、マクロファージによる貪食、NK細胞などによる抗体依存性細胞傷害(ADCC)で細胞が壊される。例: 自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血、新生児溶血性疾患、特発性血小板減少性紫斑病、Goodpasture症候群。 Ⅱ型の亜型として、抗体が受容体に結合して機能を刺激または阻害するものがあり、Ⅴ型(刺激型)として別に扱うことがある。例: Basedow病(TSH受容体を刺激する抗体)、重症筋無力症(アセチルコリン受容体を阻害する抗体)。 Ⅲ型(免疫複合体型、Arthus型): 抗原と抗体が結合した免疫複合体が組織に沈着し、補体の活性化と好中球の集積により組織が障害される。数時間程度で反応が現れる。例: 血清病、SLE、急性糸球体腎炎(溶連菌感染後)、過敏性肺炎(Ⅳ型も関与)、Arthus反応。 Ⅳ型(遅延型、細胞性免疫型): 感作されたT細胞が抗原に反応し、サイトカインでマクロファージなどを活性化したり、細胞傷害性T細胞が標的細胞を直接攻撃したりする。24〜72時間で反応が最大となる。例: ツベルクリン反応、アレルギー性接触皮膚炎、移植片拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD)、結核やサルコイドーシスでみられる肉芽腫形成。
覚え方のヒント
抗体が関与するのがⅠ〜Ⅲ型、T細胞が関与するのがⅣ型である。Ⅰ型はIgEとマスト細胞、Ⅱ型は細胞表面への抗体の結合、Ⅲ型は免疫複合体の沈着と補体の消費、Ⅳ型は時間がかかる細胞性免疫、と特徴を一言でまとめておくとよい。
POINT
・Ⅳ型アレルギーは感作T細胞による遅延型反応で、抗体は関与しない。 ・Ⅳ型の代表: 接触皮膚炎、ツベルクリン反応、移植片拒絶、GVHD、肉芽腫形成(結核、サルコイドーシス)。 ・Ⅰ型: 気管支喘息、アナフィラキシー。Ⅱ型: 自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血。Ⅲ型: 血清病、SLE、溶連菌感染後糸球体腎炎。 ・接触皮膚炎の原因検索はパッチテストで、48〜72時間後に判定する。
