StudyMed医師国家試験

「嚢胞腺腫」は上皮のサイン―卵巣腫瘍を由来細胞で3つに仕分ける

第102回医師国家試験 I問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第102回 I問題 第10問

卵巣の表層上皮性・間質性腫瘍はどれか。2つ選べ。

  1. a.線維腫
  2. b.莢膜細胞腫
  3. c.顆粒膜細胞腫
  4. d.漿液性嚢胞腺腫
  5. e.粘液性嚢胞腺腫

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は卵巣腫瘍の組織分類を問う問題だ。卵巣腫瘍は種類が多くて覚えにくいけれど、「どの細胞から生まれたか」で3つのグループに分けると、一気に整理しやすくなる。まずは、卵巣にどんな細胞があるか思い出してみよう。
医学生医学生
卵巣の表面を覆う上皮と、卵胞をつくる顆粒膜細胞や莢膜細胞、それから卵子のもとになる胚細胞……でしょうか。
ドクタードクター
その通り。それぞれに対応して、表層上皮性・間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍の3群に分かれる。このうち一番多いのはどれだと思う?
医学生医学生
若い人の卵巣腫瘍というと皮様嚢腫をよく聞くので、胚細胞腫瘍でしょうか。
ドクタードクター
惜しいね。成熟嚢胞性奇形腫、いわゆる皮様嚢腫は良性卵巣腫瘍の中では最も多い腫瘍のひとつだけれど、グループ全体で見ると表層上皮性・間質性腫瘍が最多で、卵巣腫瘍全体の6〜7割を占める。卵巣癌の大部分もこの群から生じるんだ。
医学生医学生
なるほど、個々の腫瘍とグループの頻度は分けて考える必要があるんですね。では選択肢の中で上皮性なのは、漿液性嚢胞腺腫と粘液性嚢胞腺腫ですか。
ドクタードクター
正解。名前に「腺腫」「腺癌」とつくのは腺上皮、つまり上皮由来であることを示す手がかりになる。漿液性嚢胞腺腫は卵管上皮に似た線毛上皮で覆われ、さらさらした漿液をためる嚢胞だ。単房性で壁が薄いことが多く、両側に発生することもある。
医学生医学生
病理実習で、粘液性のほうは部屋がたくさんある大きな標本を見ました。
ドクタードクター
よく覚えているね。粘液性嚢胞腺腫は粘液を産生する円柱上皮で覆われ、多房性で非常に大きくなることがある。腹腔内に粘液がたまる腹膜偽粘液腫との関連も知られているけれど、現在は虫垂原発の粘液性腫瘍が主な原因と考えられている。
医学生医学生
残りの線維腫、莢膜細胞腫、顆粒膜細胞腫は性索間質性腫瘍ですね。でも線維腫は「線維」なので、間質という意味で上皮性・間質性に入るのかと一瞬迷いました。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすいポイントだ。「表層上皮性・間質性」の間質は、上皮性腫瘍に付随する間質成分を指している。線維腫は卵巣間質の線維芽細胞が主体となって増える腫瘍で、性索間質性腫瘍に分類されるんだ。充実性の硬い腫瘍で、腹水と胸水を伴い、腫瘍摘出で消えるものをMeigs症候群と呼ぶ。
医学生医学生
Meigs症候群はCBTの問題集でよく出てきました。莢膜細胞腫と顆粒膜細胞腫はホルモンを出すんでしたよね。
ドクタードクター
そう、どちらもエストロゲンを産生することが多い。だから閉経後の不正性器出血や、子宮内膜増殖症・子宮体癌の合併につながる。顆粒膜細胞腫では小児の思春期早発症も起こりうるし、組織ではCall-Exner小体が特徴だ。成人型顆粒膜細胞腫は現在の分類では悪性腫瘍に位置づけられ、何年も経ってから再発することがある。
医学生医学生
性索間質性腫瘍は「ホルモン」、上皮性腫瘍は「嚢胞腺腫・腺癌」、胚細胞腫瘍は「若年者と腫瘍マーカー」とまとめて覚えればいいでしょうか。
ドクタードクター
いい整理だね。胚細胞腫瘍ではディスジャーミノーマでLDH、卵黄嚢腫瘍でAFP、絨毛癌でhCGが上がる、と対応づけておくといい。性索間質性ではもう一つ、セルトリ・ライディッヒ細胞腫がアンドロゲンを産生して男性化徴候を起こすことも押さえておこう。
医学生医学生
上皮性の悪性腫瘍だと、漿液性癌以外に類内膜癌や明細胞癌もありましたね。
ドクタードクター
その通り。高異型度漿液性癌は卵巣癌で最も多く、類内膜癌と明細胞癌は子宮内膜症との関連が深い。臨床では、子宮内膜症性嚢胞を経過観察している患者さんで、嚢胞の中に充実部分が出てきたら悪性化を疑って画像を詳しく見る必要がある。なお、WHO分類2014年版以降は「表層上皮性・間質性腫瘍」を単に「上皮性腫瘍」と呼ぶようになっているので、どちらの用語でも出題されると思っておこう。

まとめ

卵巣腫瘍は由来細胞により、表層上皮性・間質性腫瘍(上皮性腫瘍)、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍に大別され、上皮性腫瘍が最も多く卵巣癌の大部分もここから生じます。漿液性嚢胞腺腫・粘液性嚢胞腺腫は上皮性腫瘍の代表で、「腺腫・腺癌」という名称が上皮由来の手がかりになります。一方、線維腫(Meigs症候群)、莢膜細胞腫・顆粒膜細胞腫(エストロゲン産生)、セルトリ・ライディッヒ細胞腫(アンドロゲン産生)は性索間質性腫瘍で、ホルモン症状と結びつけて覚えると整理しやすくなります。胚細胞腫瘍は若年者に多く、LDH・AFP・hCGなどの腫瘍マーカーとの対応が重要です。由来細胞で分類する視点を持つと、画像所見・ホルモン症状・腫瘍マーカーから腫瘍の種類を推定する臨床的な思考につながります。

解答・解説

正解はd, eです

卵巣腫瘍の組織学的分類を問う問題である。 卵巣腫瘍は、どの細胞に由来するかによって大きく次の3群(およびその他)に分けられる。 ・表層上皮性・間質性腫瘍:卵巣表面を覆う上皮(およびその下の間質)に由来する。卵巣腫瘍の中で最も多く、全体の約60〜70%を占める。漿液性、粘液性、類内膜、明細胞、ブレンナー腫瘍などが含まれる。 ・性索間質性腫瘍:卵胞を構成する顆粒膜細胞・莢膜細胞や、線維芽細胞などの間質細胞に由来する。ホルモン産生腫瘍が多い。 ・胚細胞腫瘍:卵子のもとになる胚細胞に由来する。成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)、ディスジャーミノーマ、卵黄嚢腫瘍など。若年者に多い。 選択肢のうち、線維腫・莢膜細胞腫・顆粒膜細胞腫は性索間質性腫瘍であり、漿液性嚢胞腺腫・粘液性嚢胞腺腫が表層上皮性・間質性腫瘍に属する。「〇〇嚢胞腺腫(腺癌)」という名称は上皮性腫瘍であることを示す手がかりになる。

選択肢考察

  1. ×a.  線維腫

    線維腫は卵巣間質の線維芽細胞由来の良性腫瘍で、性索間質性腫瘍に分類される。充実性の硬い腫瘍で、ホルモンは通常産生しない。腹水と胸水を伴い、腫瘍摘出によって胸腹水が消失するものをMeigs症候群と呼ぶ。

  2. ×b.  莢膜細胞腫

    莢膜細胞腫は卵胞の莢膜細胞に似た細胞からなる良性腫瘍で、性索間質性腫瘍に分類される。エストロゲンを産生することが多く、閉経後の不正性器出血や子宮内膜増殖症・子宮体癌の合併の原因となる。

  3. ×c.  顆粒膜細胞腫

    顆粒膜細胞腫は卵胞の顆粒膜細胞に由来する性索間質性腫瘍である。エストロゲン産生腫瘍の代表で、小児では思春期早発症、成人では不正性器出血や子宮内膜増殖症を来す。組織学的にCall-Exner小体が特徴である。かつて境界悪性として扱われたが、現在の分類(WHO 2014以降)では成人型顆粒膜細胞腫は悪性腫瘍に位置づけられ、長期間経過後の再発がありうる。

  4. ○d.  漿液性嚢胞腺腫

    漿液性嚢胞腺腫は、卵管上皮に似た線毛をもつ上皮で内腔が覆われ、さらさらした漿液性の内容液をもつ良性嚢胞性腫瘍である。表層上皮性・間質性腫瘍に属し、卵巣の良性上皮性腫瘍として頻度が高い。単房性で壁が薄いことが多く、両側性に発生することもある。

  5. ○e.  粘液性嚢胞腺腫

    粘液性嚢胞腺腫は、粘液を産生する円柱上皮(子宮頸管腺上皮や腸上皮に類似)で覆われた良性嚢胞性腫瘍で、表層上皮性・間質性腫瘍に属する。多房性で、非常に大きくなることがある。破裂などで腹腔内に粘液が貯留する腹膜偽粘液腫との関連が知られる(現在では虫垂原発の粘液性腫瘍が主な原因と考えられている)。

卵巣腫瘍の組織分類(主なもの)

1. 表層上皮性・間質性腫瘍(最多) ・良性:漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、ブレンナー腫瘍など ・境界悪性:漿液性・粘液性境界悪性腫瘍など ・悪性:高異型度漿液性癌(卵巣癌で最多)、粘液性癌、類内膜癌、明細胞癌など。類内膜癌・明細胞癌は子宮内膜症との関連が深い。 2. 性索間質性腫瘍 ・線維腫(Meigs症候群)、莢膜細胞腫(エストロゲン産生)、顆粒膜細胞腫(エストロゲン産生、Call-Exner小体)、セルトリ・ライディッヒ細胞腫(アンドロゲン産生、男性化徴候)など 3. 胚細胞腫瘍 ・成熟嚢胞性奇形腫(良性卵巣腫瘍で最も多い。茎捻転を起こしやすい) ・ディスジャーミノーマ(未分化胚細胞腫、LDH上昇、放射線・化学療法感受性が高い) ・卵黄嚢腫瘍(AFP上昇)、未熟奇形腫、胎芽性癌、非妊娠性絨毛癌(hCG上昇)

ホルモン産生腫瘍の整理

・エストロゲン:顆粒膜細胞腫、莢膜細胞腫 ・アンドロゲン:セルトリ・ライディッヒ細胞腫 ・甲状腺ホルモン:卵巣甲状腺腫(奇形腫の一型) ・hCG:絨毛癌

名称について

WHO分類2014年版以降、「表層上皮性・間質性腫瘍」は「上皮性腫瘍」と呼ばれるようになり、日本の取扱い規約もこれに準じている。

POINT

・卵巣腫瘍は表層上皮性・間質性腫瘍(最多)、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍に大別される。 ・漿液性・粘液性・類内膜・明細胞腫瘍は上皮性腫瘍。 ・線維腫・莢膜細胞腫・顆粒膜細胞腫・セルトリ・ライディッヒ細胞腫は性索間質性腫瘍。 ・エストロゲン産生:顆粒膜細胞腫・莢膜細胞腫。線維腫はMeigs症候群。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。