ゴナドトロピンは「卵巣の悲鳴」―LH・FSH高値で読み解く卵巣性無月経
第102回医師国家試験 I問題 第11問
国試問題にチャレンジ
血中でLH値とFSH値とが高く,エストロゲン値が低いのはどれか。
- a.Turner症候群
- b.Sheehan症候群
- c.神経性食思不振症
- d.多嚢胞性卵巣症候群
- e.Chiari-Frommel症候群
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
性腺系は視床下部(GnRH)→下垂体(LH・FSH)→卵巣(エストロゲン・インヒビン)の階層で調節され、卵巣ホルモンが上位に負のフィードバックをかけています。そのため、LH・FSH高値でエストロゲン低値なら卵巣性(高ゴナドトロピン性)であり、索状性腺を来すTurner症候群のほか、早発卵巣不全や閉経後がこのパターンを示します。一方、Sheehan症候群(下垂体性)、神経性食思不振症(視床下部性)、Chiari-Frommel症候群(高プロラクチン血症)ではLH・FSHも低値〜正常となり、PCOSはLHのみ高値でLH/FSH比が上昇する点が特徴です。Turner症候群では低身長や原発性無月経に加え、大動脈縮窄症などの合併症とエストロゲン補充を含む長期管理が重要です。フィードバックの原理から障害部位を推定する考え方は、無月経に限らず内分泌疾患全般の診断の基本となります。
解答・解説
正解はaです
無月経・性腺機能低下をホルモン動態から分類する問題である。 女性の性腺系は、視床下部(GnRH:ゴナドトロピン放出ホルモン)→下垂体前葉(LH:黄体形成ホルモン、FSH:卵胞刺激ホルモン)→卵巣(エストロゲン、プロゲステロン、インヒビン)という階層で調節され、卵巣から出るエストロゲンやインヒビンが上位の視床下部・下垂体に負のフィードバックをかけている。 このため、エストロゲンが低い状態は障害部位によって次のように区別できる。 ・卵巣そのものが障害された場合(原発性性腺機能低下、卵巣性無月経):エストロゲンによる負のフィードバックが外れるため、LH・FSHはともに高値となる(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)。 ・視床下部または下垂体が障害された場合(続発性性腺機能低下):卵巣を刺激するLH・FSH自体が出ないため、LH・FSHは低値〜正常、エストロゲンも低値となる(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)。 設問の「LH・FSH高値、エストロゲン低値」は卵巣性の障害を示すパターンであり、選択肢の中では卵巣の形成不全を来すTurner症候群が該当する。他の選択肢は視床下部・下垂体レベルの障害、あるいはLHのみが高い多嚢胞性卵巣症候群である。
選択肢考察
- ○a. Turner症候群
Turner症候群は性染色体X染色体の全体または一部の欠失(45,Xやモザイクなど)による疾患で、卵巣は索状性腺(streak gonad)となり、卵胞が早期に失われる。卵巣からエストロゲンやインヒビンが分泌されないため、下垂体への負のフィードバックが働かず、LH・FSHは高値、エストロゲンは低値となる。臨床的には低身長、翼状頸、外反肘、原発性無月経、二次性徴の欠如などを呈する。
- ×b. Sheehan症候群
Sheehan症候群は分娩時の大量出血による出血性ショックで、妊娠により腫大していた下垂体前葉が虚血性に壊死し、下垂体機能低下症を来す疾患である。LH・FSHが分泌されないためエストロゲンは低値となるが、LH・FSH自体も低値である(低ゴナドトロピン性)。産後の乳汁分泌不全(プロラクチン低下)が初発症状となることが多く、甲状腺・副腎機能低下も伴いうる。
- ×c. 神経性食思不振症
神経性食思不振症(神経性やせ症)では、低栄養・体重減少により視床下部からのGnRHのパルス状分泌が抑制され、視床下部性無月経となる。LH・FSHは低値(特にLHの低下が目立つ)で、エストロゲンも低値となる。LH・FSHが高値になることはない。
- ×d. 多嚢胞性卵巣症候群
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、LHが高値である一方、FSHは正常範囲にとどまり、LH/FSH比が上昇する。LH刺激により卵巣の莢膜細胞でアンドロゲン産生が亢進し、多毛・ざ瘡などを来す。エストロゲンは著明な低値にはならず、正常〜やや高め(主に末梢でアンドロゲンから変換されるエストロンが増加)であり、設問のパターンに合わない。
- ×e. Chiari-Frommel症候群
Chiari-Frommel症候群は、分娩後に授乳を終えても乳汁漏出と無月経が持続する病態で、機能性の高プロラクチン血症を示す。プロラクチン過剰は視床下部のGnRH分泌を抑制するため、LH・FSHは低値〜正常、エストロゲンは低値となる。LH・FSHが高値になるわけではない。
無月経のホルモンパターンによる分類
・視床下部性:LH・FSH低値〜正常、エストロゲン低値。神経性食思不振症、体重減少性無月経、心因性無月経、Kallmann症候群(嗅覚低下を伴う)など。 ・下垂体性:LH・FSH低値、エストロゲン低値。Sheehan症候群、下垂体腫瘍など。GnRH負荷試験でLH・FSHの反応が乏しいことで視床下部性と区別する。 ・高プロラクチン血症:LH・FSH低値〜正常、エストロゲン低値。プロラクチノーマ、薬剤性(ドパミン拮抗薬など)、原発性甲状腺機能低下症、Chiari-Frommel症候群、Argonz-del Castillo症候群(分娩と無関係な乳汁漏出性無月経)など。 ・卵巣性:LH・FSH高値(特にFSHが著明に高値)、エストロゲン低値。Turner症候群、早発卵巣不全(40歳未満での卵巣機能停止)、両側卵巣摘出後、放射線・化学療法後。閉経後も同じパターンとなる。 ・PCOS:LH高値、FSH正常(LH/FSH比上昇)、アンドロゲン高値、エストロゲンは正常程度。
Turner症候群の要点
・核型は45,Xが約半数で、その他モザイクやX染色体構造異常がある。 ・症状:低身長(成長ホルモン治療の対象)、翼状頸、外反肘、盾状胸、第4中手骨短縮、リンパ浮腫(新生児期の手足の浮腫)、原発性無月経。 ・合併症:大動脈縮窄症・二尖大動脈弁、馬蹄腎、自己免疫性甲状腺炎、耐糖能異常など。 ・知的発達は通常正常である。 ・治療:成長ホルモン補充、適切な時期からのエストロゲン補充(二次性徴誘導・骨粗鬆症予防)。
POINT
・LH・FSH高値+エストロゲン低値=卵巣性(高ゴナドトロピン性):Turner症候群、早発卵巣不全、閉経。 ・LH・FSH低値+エストロゲン低値=視床下部・下垂体性:神経性食思不振症、Sheehan症候群、高プロラクチン血症。 ・PCOSはLH高値・FSH正常でLH/FSH比上昇。
