StudyMed医師国家試験

呼吸器に「全部任せる」か「手伝ってもらう」か―換気モードは自発呼吸で整理する

第102回医師国家試験 G問題 第40問

国試問題にチャレンジ

第102回 G問題 第40問

自発呼吸を残さない人工呼吸はどれか。2つ選べ。

  1. a.補助呼吸
  2. b.持続的気道陽圧法〈CPAP〉
  3. c.間欠的陽圧呼吸〈IPPV〉
  4. d.持続的陽圧呼吸〈CPPV〉
  5. e.間欠的強制呼吸〈IMV〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は人工呼吸の換気モードの問題だ。略語がたくさん並んでいて混乱しやすいけれど、整理の軸は1本でいい。「患者さんの自発呼吸をどれだけ利用するか」だ。この軸で並べ直すと、答えは自然に見えてくるよ。
医学生医学生
麻酔科の実習で人工呼吸器の画面を見ましたが、アルファベットばかりで正直よくわかりませんでした。
ドクタードクター
最初はみんなそうだよ。大きく3つに分けてみよう。1つ目は、回数も量もすべて人工呼吸器が決めて送り込む調節呼吸。2つ目は、自発呼吸を残しつつ、決まった回数の強制換気を加えるもの。3つ目は、自発呼吸があって初めて成り立つものだ。
医学生医学生
自発呼吸を残さないのは1つ目の調節呼吸ですね。名前に「強制」と入っている間欠的強制呼吸は、いかにも全部機械がやりそうですが。
ドクタードクター
そこが引っかけどころなんだ。間欠的強制呼吸、IMVは、設定した回数だけ強制換気を行って、その合間は患者さんが自由に自発呼吸できるようにした方式だ。つまり強制換気と自発呼吸が混在している。強制換気の回数を少しずつ減らせば、患者さん自身の呼吸の割合が増えていくから、人工呼吸器からの離脱、ウィーニングに使われてきたんだ。
医学生医学生
なるほど、「間欠的に」強制するだけで、そのあいだは自分で呼吸しているんですね。
ドクタードクター
その通り。今は強制換気を患者さんの吸気努力に合わせて同期させるSIMVが主に使われている。では、調節呼吸にあたるのはどれだと思う?
医学生医学生
間欠的陽圧呼吸、IPPVでしょうか。吸気のときに陽圧をかけて空気を押し込むと習いました。
ドクタードクター
正解。IPPVは吸気時に陽圧でガスを送り込み、呼気時には圧を大気圧に戻して、肺の弾性で受動的に息を吐かせる。回数や一回換気量は人工呼吸器側で設定するから、全身麻酔中や筋弛緩薬を使っているとき、呼吸停止のときのように自発呼吸がまったくなくても換気を維持できる。人工呼吸の基本形だね。
医学生医学生
持続的陽圧呼吸のCPPVは、IPPVと何が違うんですか。
ドクタードクター
CPPVはIPPVに呼気終末陽圧、PEEPを加えたものだ。呼気のときにも気道内圧を大気圧まで戻さず、一定の陽圧を保つ。換気そのものは人工呼吸器が回数と量を決めて行うから、IPPVと同じく自発呼吸を必要としない調節呼吸だ。だからこの2つが答えになる。
医学生医学生
PEEPをかけるメリットは、肺胞がしぼまないようにすることですよね。
ドクタードクター
そう。呼気の終わりに肺胞が虚脱するのを防ぎ、機能的残気量を増やして酸素化を改善する。急性呼吸窮迫症候群や肺水腫で重要だ。一方で、胸腔内圧が上がると静脈還流が減って、心拍出量の低下や血圧低下を起こすことがある。圧が高すぎれば気胸などの圧外傷、頭蓋内圧上昇にも注意が必要だ。
医学生医学生
残りの補助呼吸は、患者さんが吸おうとしたときに機械が手伝う方式なので、自発呼吸が前提ですね。
ドクタードクター
その理解で合っている。患者さんの吸気で生じるわずかな気道内圧や流量の変化を人工呼吸器が感知、つまりトリガーして、そのたびに陽圧換気を送る。呼吸を始めるタイミングは患者さんが決めるから、自発呼吸がなければ換気は起こらない。
医学生医学生
持続的気道陽圧法のCPAPは、睡眠時無呼吸症候群の治療で使うものですよね。呼吸器内科の外来で、患者さんが鼻マスクの使い心地を話していました。
ドクタードクター
よく覚えていたね。CPAPは自発呼吸に対して、吸気でも呼気でも一定の陽圧をかけ続けるだけで、人工呼吸器がガスを送り込んで換気することはない。換気はすべて患者さん自身の呼吸による。睡眠時無呼吸のほか、新生児呼吸窮迫症候群や、ウィーニングの最終段階でも使われるよ。
医学生医学生
重症のときは調節呼吸で肺を休ませて、良くなってきたら自発呼吸を生かすモードに移していく、という流れですね。
ドクタードクター
まさにそれがウィーニングの考え方だ。調節呼吸から始めて、自発呼吸の回復に応じてSIMVや圧支持換気、PSVに移り、CPAPを経て抜管する。今は自発呼吸トライアル、SBTで離脱できるかを判断するのが一般的だ。それから臨床では、自発呼吸があれば同調し、なければ設定回数で強制換気する補助・調節換気、A/Cも広く使われている。名前の印象ではなく、「誰が呼吸を始めるのか」「機械はガスを送り込むのか」を考える習慣をつけておこう。

まとめ

人工呼吸の換気モードは、自発呼吸をどの程度利用するかで整理すると理解しやすくなります。間欠的陽圧呼吸(IPPV)とそれにPEEPを加えた持続的陽圧呼吸(CPPV)は、回数と量を人工呼吸器が決める調節呼吸で、自発呼吸がなくても換気を維持できます。一方、IMV(SIMV)は強制換気と自発呼吸の併用、補助呼吸やPSVは患者の吸気をトリガーとする補助、CPAPは自発呼吸に持続的な陽圧をかけるだけの方法で、いずれも自発呼吸を前提とします。PEEPは肺胞虚脱を防いで酸素化を改善する反面、静脈還流減少による血圧低下や圧外傷に注意が必要です。重症期の調節呼吸から自発呼吸を生かすモードへ段階的に移行するウィーニングの流れを押さえることは、ICUや手術室での呼吸管理を理解する基盤になります。

解答・解説

正解はc, dです

人工呼吸の換気モードは、「患者の自発呼吸をどの程度利用するか」という観点で大きく整理できる。 1. 調節呼吸(強制換気): 自発呼吸がない、あるいは自発呼吸を利用しない前提で、換気の回数・量(または圧)をすべて人工呼吸器が決めて送り込む。本問の選択肢では間欠的陽圧呼吸(IPPV)と、それに呼気終末陽圧(PEEP)を加えた持続的陽圧呼吸(CPPV)がこれにあたる。 2. 自発呼吸と強制換気の併用: 自発呼吸を残しつつ、設定した回数の強制換気を加える。間欠的強制呼吸(IMV)がこれにあたる。 3. 自発呼吸を前提とするモード: 患者の吸気努力を人工呼吸器が感知して換気を補助する補助呼吸や、自発呼吸に一定の陽圧をかけ続ける持続的気道陽圧法(CPAP)がこれにあたる。自発呼吸がなければ成り立たない。 一般に、呼吸不全が重い時期や、深い鎮静・筋弛緩薬を用いて自発呼吸がない時期には調節呼吸で換気を完全に肩代わりし、状態の改善とともにIMVや補助呼吸、最終的にCPAPへと自発呼吸の比重を高め、人工呼吸器からの離脱(ウィーニング)を進める。設問はこのうち1の「調節呼吸」にあたるものを問うている。 なお、IPPVという語は広い意味では「陽圧をかける人工呼吸全般」を指すこともあるが、本問では、呼気時に気道内圧を大気圧に戻す調節呼吸(持続的強制換気)の意味で用いられている。

選択肢考察

  1. ×a.  補助呼吸

    自発呼吸を残すモードである。補助呼吸(assisted ventilation)は、患者が息を吸おうとするときに生じる気道内圧や流量のわずかな変化を人工呼吸器が感知(トリガー)し、その吸気のたびに陽圧換気を送り込んで補助する方式である。呼吸の開始(回数)は患者自身が決めるため、自発呼吸がなければ換気は行われない。

  2. ×b.  持続的気道陽圧法〈CPAP〉

    自発呼吸を残すモードである。CPAP(continuous positive airway pressure)は、患者が自分で呼吸しているあいだ、吸気・呼気を通じて気道に一定の陽圧をかけ続ける方法である。人工呼吸器は換気を送り込まず、換気はすべて患者自身の呼吸による。陽圧により肺胞の虚脱を防ぎ、機能的残気量を増やして酸素化を改善する。人工呼吸器からの離脱の最終段階のほか、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療(鼻マスクによるCPAP)や新生児呼吸窮迫症候群などにも用いられる。

  3. ○c.  間欠的陽圧呼吸〈IPPV〉

    自発呼吸を残さない人工呼吸である。IPPV(intermittent positive pressure ventilation)は、吸気時に人工呼吸器が陽圧をかけて肺にガスを送り込み、呼気時には圧を大気圧まで戻して肺の弾性で受動的に息を吐かせる方式である。換気回数や一回換気量を人工呼吸器側で設定して規則的に換気する調節呼吸であり、自発呼吸がない患者(全身麻酔中、筋弛緩薬使用時、呼吸停止など)でも換気を維持できる。人工呼吸を開始する際の基本的な方式である。

  4. ○d.  持続的陽圧呼吸〈CPPV〉

    自発呼吸を残さない人工呼吸である。CPPV(continuous positive pressure ventilation)は、IPPVに呼気終末陽圧(PEEP: positive end-expiratory pressure)を加えたもので、呼気時にも気道内圧を大気圧に戻さず一定の陽圧を保つ。換気そのものは人工呼吸器が回数・量を決めて行う調節呼吸である点はIPPVと同じである。PEEPによって呼気終末の肺胞虚脱を防ぎ、酸素化を改善できるため、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や肺水腫などで用いられる。一方、胸腔内圧の上昇により静脈還流が減り、血圧低下や心拍出量減少を起こしうる点に注意する。

  5. ×e.  間欠的強制呼吸〈IMV〉

    自発呼吸を残すモードである。IMV(intermittent mandatory ventilation)は、設定した回数だけ人工呼吸器による強制換気を行い、その合間は患者が自由に自発呼吸できるようにした方式である。自発呼吸と強制換気が混在するため、強制換気の回数を段階的に減らすことで、患者の呼吸仕事量を徐々に増やすウィーニングに用いられてきた。現在は、強制換気を患者の吸気努力に同期させる同期式間欠的強制換気(SIMV: synchronized IMV)が主に用いられる。

主な換気モードの整理

・IPPV(CMV: controlled mechanical ventilation、調節呼吸とほぼ同義): 人工呼吸器がすべての換気を担う。自発呼吸は前提としない。 ・CPPV: IPPV+PEEP。自発呼吸は前提としない。 ・A/C(assist/control、補助・調節換気): 自発呼吸があれば同調して換気し、なければ設定回数で強制換気する。現在の臨床で広く用いられる。 ・IMV/SIMV: 設定回数の強制換気+その間の自発呼吸。 ・PSV(pressure support ventilation、圧支持換気): 自発呼吸の吸気ごとに設定した圧で支える。自発呼吸が必須。 ・CPAP: 自発呼吸に持続的な陽圧をかける。換気の補助は行わない。

PEEPの効果と副作用

効果: 肺胞の虚脱防止、機能的残気量の増加、換気血流比の改善による酸素化の改善。 副作用: 胸腔内圧上昇による静脈還流減少・心拍出量低下・血圧低下、過剰な圧による圧外傷(気胸など)、頭蓋内圧の上昇。

ウィーニングの流れ(一例)

調節呼吸(IPPV/CPPV)→ 自発呼吸の回復に応じてSIMVやPSVへ → CPAP → 抜管。現在は自発呼吸トライアル(SBT)により離脱可能かを判断することが一般的である。

POINT

・自発呼吸を必要としない調節呼吸: IPPV、CPPV(=IPPV+PEEP)。 ・自発呼吸を残す(前提とする)モード: 補助呼吸、IMV/SIMV、PSV、CPAP。 ・CPAPは換気を送り込まず、自発呼吸に一定の陽圧をかけるだけである。 ・PEEPは酸素化を改善するが、静脈還流減少による血圧低下に注意する。 ・重症期は調節呼吸で開始し、改善に伴い自発呼吸を生かすモードへ移行してウィーニングする。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。