呼吸器に「全部任せる」か「手伝ってもらう」か―換気モードは自発呼吸で整理する
第102回医師国家試験 G問題 第40問
国試問題にチャレンジ
自発呼吸を残さない人工呼吸はどれか。2つ選べ。
- a.補助呼吸
- b.持続的気道陽圧法〈CPAP〉
- c.間欠的陽圧呼吸〈IPPV〉
- d.持続的陽圧呼吸〈CPPV〉
- e.間欠的強制呼吸〈IMV〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
人工呼吸の換気モードは、自発呼吸をどの程度利用するかで整理すると理解しやすくなります。間欠的陽圧呼吸(IPPV)とそれにPEEPを加えた持続的陽圧呼吸(CPPV)は、回数と量を人工呼吸器が決める調節呼吸で、自発呼吸がなくても換気を維持できます。一方、IMV(SIMV)は強制換気と自発呼吸の併用、補助呼吸やPSVは患者の吸気をトリガーとする補助、CPAPは自発呼吸に持続的な陽圧をかけるだけの方法で、いずれも自発呼吸を前提とします。PEEPは肺胞虚脱を防いで酸素化を改善する反面、静脈還流減少による血圧低下や圧外傷に注意が必要です。重症期の調節呼吸から自発呼吸を生かすモードへ段階的に移行するウィーニングの流れを押さえることは、ICUや手術室での呼吸管理を理解する基盤になります。
解答・解説
正解はc, dです
人工呼吸の換気モードは、「患者の自発呼吸をどの程度利用するか」という観点で大きく整理できる。 1. 調節呼吸(強制換気): 自発呼吸がない、あるいは自発呼吸を利用しない前提で、換気の回数・量(または圧)をすべて人工呼吸器が決めて送り込む。本問の選択肢では間欠的陽圧呼吸(IPPV)と、それに呼気終末陽圧(PEEP)を加えた持続的陽圧呼吸(CPPV)がこれにあたる。 2. 自発呼吸と強制換気の併用: 自発呼吸を残しつつ、設定した回数の強制換気を加える。間欠的強制呼吸(IMV)がこれにあたる。 3. 自発呼吸を前提とするモード: 患者の吸気努力を人工呼吸器が感知して換気を補助する補助呼吸や、自発呼吸に一定の陽圧をかけ続ける持続的気道陽圧法(CPAP)がこれにあたる。自発呼吸がなければ成り立たない。 一般に、呼吸不全が重い時期や、深い鎮静・筋弛緩薬を用いて自発呼吸がない時期には調節呼吸で換気を完全に肩代わりし、状態の改善とともにIMVや補助呼吸、最終的にCPAPへと自発呼吸の比重を高め、人工呼吸器からの離脱(ウィーニング)を進める。設問はこのうち1の「調節呼吸」にあたるものを問うている。 なお、IPPVという語は広い意味では「陽圧をかける人工呼吸全般」を指すこともあるが、本問では、呼気時に気道内圧を大気圧に戻す調節呼吸(持続的強制換気)の意味で用いられている。
選択肢考察
- ×a. 補助呼吸
自発呼吸を残すモードである。補助呼吸(assisted ventilation)は、患者が息を吸おうとするときに生じる気道内圧や流量のわずかな変化を人工呼吸器が感知(トリガー)し、その吸気のたびに陽圧換気を送り込んで補助する方式である。呼吸の開始(回数)は患者自身が決めるため、自発呼吸がなければ換気は行われない。
- ×b. 持続的気道陽圧法〈CPAP〉
自発呼吸を残すモードである。CPAP(continuous positive airway pressure)は、患者が自分で呼吸しているあいだ、吸気・呼気を通じて気道に一定の陽圧をかけ続ける方法である。人工呼吸器は換気を送り込まず、換気はすべて患者自身の呼吸による。陽圧により肺胞の虚脱を防ぎ、機能的残気量を増やして酸素化を改善する。人工呼吸器からの離脱の最終段階のほか、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療(鼻マスクによるCPAP)や新生児呼吸窮迫症候群などにも用いられる。
- ○c. 間欠的陽圧呼吸〈IPPV〉
自発呼吸を残さない人工呼吸である。IPPV(intermittent positive pressure ventilation)は、吸気時に人工呼吸器が陽圧をかけて肺にガスを送り込み、呼気時には圧を大気圧まで戻して肺の弾性で受動的に息を吐かせる方式である。換気回数や一回換気量を人工呼吸器側で設定して規則的に換気する調節呼吸であり、自発呼吸がない患者(全身麻酔中、筋弛緩薬使用時、呼吸停止など)でも換気を維持できる。人工呼吸を開始する際の基本的な方式である。
- ○d. 持続的陽圧呼吸〈CPPV〉
自発呼吸を残さない人工呼吸である。CPPV(continuous positive pressure ventilation)は、IPPVに呼気終末陽圧(PEEP: positive end-expiratory pressure)を加えたもので、呼気時にも気道内圧を大気圧に戻さず一定の陽圧を保つ。換気そのものは人工呼吸器が回数・量を決めて行う調節呼吸である点はIPPVと同じである。PEEPによって呼気終末の肺胞虚脱を防ぎ、酸素化を改善できるため、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や肺水腫などで用いられる。一方、胸腔内圧の上昇により静脈還流が減り、血圧低下や心拍出量減少を起こしうる点に注意する。
- ×e. 間欠的強制呼吸〈IMV〉
自発呼吸を残すモードである。IMV(intermittent mandatory ventilation)は、設定した回数だけ人工呼吸器による強制換気を行い、その合間は患者が自由に自発呼吸できるようにした方式である。自発呼吸と強制換気が混在するため、強制換気の回数を段階的に減らすことで、患者の呼吸仕事量を徐々に増やすウィーニングに用いられてきた。現在は、強制換気を患者の吸気努力に同期させる同期式間欠的強制換気(SIMV: synchronized IMV)が主に用いられる。
主な換気モードの整理
・IPPV(CMV: controlled mechanical ventilation、調節呼吸とほぼ同義): 人工呼吸器がすべての換気を担う。自発呼吸は前提としない。 ・CPPV: IPPV+PEEP。自発呼吸は前提としない。 ・A/C(assist/control、補助・調節換気): 自発呼吸があれば同調して換気し、なければ設定回数で強制換気する。現在の臨床で広く用いられる。 ・IMV/SIMV: 設定回数の強制換気+その間の自発呼吸。 ・PSV(pressure support ventilation、圧支持換気): 自発呼吸の吸気ごとに設定した圧で支える。自発呼吸が必須。 ・CPAP: 自発呼吸に持続的な陽圧をかける。換気の補助は行わない。
PEEPの効果と副作用
効果: 肺胞の虚脱防止、機能的残気量の増加、換気血流比の改善による酸素化の改善。 副作用: 胸腔内圧上昇による静脈還流減少・心拍出量低下・血圧低下、過剰な圧による圧外傷(気胸など)、頭蓋内圧の上昇。
ウィーニングの流れ(一例)
調節呼吸(IPPV/CPPV)→ 自発呼吸の回復に応じてSIMVやPSVへ → CPAP → 抜管。現在は自発呼吸トライアル(SBT)により離脱可能かを判断することが一般的である。
POINT
・自発呼吸を必要としない調節呼吸: IPPV、CPPV(=IPPV+PEEP)。 ・自発呼吸を残す(前提とする)モード: 補助呼吸、IMV/SIMV、PSV、CPAP。 ・CPAPは換気を送り込まず、自発呼吸に一定の陽圧をかけるだけである。 ・PEEPは酸素化を改善するが、静脈還流減少による血圧低下に注意する。 ・重症期は調節呼吸で開始し、改善に伴い自発呼吸を生かすモードへ移行してウィーニングする。
