StudyMed医師国家試験

カリウムを捨てる鍵はアルドステロン―降圧薬で読み解く高カリウム血症

第102回医師国家試験 G問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第102回 G問題 第24問

高カリウム血症の原因となるのはどれか。

  1. a.α遮断薬
  2. b.ループ利尿薬
  3. c.カルシウム拮抗薬
  4. d.サイアザイド系利尿薬
  5. e.アンジオテンシン変換酵素阻害薬

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、高カリウム血症の原因になる薬を選ぶ問題だ。選択肢はどれも降圧薬や利尿薬として日常的に使われるものばかり。ポイントは「腎臓がカリウムをどこで、何の働きで捨てているか」を思い出すことだよ。
医学生医学生
カリウムはほとんどが細胞内にあって、血清カリウムは3.5〜5.0 mEq/Lくらいが正常でしたよね。
ドクタードクター
その通り。血清カリウム値は「摂取」「細胞内外の移動」「腎臓からの排泄」の3つで決まる。日常的な排泄の主役は腎臓の集合管で、ここでアルドステロンが働き、Naを再吸収する代わりにKを尿中へ分泌させているんだ。
医学生医学生
ということは、アルドステロンの働きを弱める薬なら、Kが体にたまるということですか。
ドクタードクター
まさにそれが一番大事な考え方だ。では、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の流れを言えるかな。
医学生医学生
生理学の講義で習いました。レニンがアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠにして、ACEがアンジオテンシンⅡに変換して、アンジオテンシンⅡが副腎皮質球状層からアルドステロンを出させます。
ドクタードクター
完璧だね。だからACE阻害薬でアンジオテンシンⅡが減ると、アルドステロン分泌も低下して、集合管でのK分泌が減る。これが正解の高カリウム血症の機序だ。
医学生医学生
ACE阻害薬といえば空咳の副作用のほうが印象に残っていました。
ドクタードクター
CBTでもよく問われるね。ACEはブラジキニンの分解酵素でもあるから、阻害するとブラジキニンが蓄積して空咳や血管性浮腫が起こる。そしてカリウムについては、腎機能低下例、糖尿病、高齢者、K保持性利尿薬やK製剤、NSAIDsとの併用で特に高カリウム血症が起こりやすい。だから投与開始後は血清Kとクレアチニンを確認する必要があるんだ。
医学生医学生
利尿薬はおしっこと一緒にKも出してしまうので、ループ利尿薬もサイアザイド系も低カリウム血症のほうですよね。
ドクタードクター
そう、ただ機序まで言えるとさらにいい。ループ利尿薬はヘンレループ上行脚のNa-K-2Cl共輸送体を、サイアザイド系は遠位曲尿細管のNa-Cl共輸送体を阻害する。すると下流の集合管に届くNaと尿流量が増えて、K分泌が促される。さらに体液量が減るとレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が亢進して、Kの喪失に拍車がかかるんだ。
医学生医学生
サイアザイド系は高カルシウム血症、ループ利尿薬は低カルシウム血症のほう、という違いもありましたね。
ドクタードクター
よく覚えているね。サイアザイド系はCaの再吸収を促すから高カルシウム血症になりうる。両者とも高尿酸血症を起こしうる点も共通だ。次にカルシウム拮抗薬はどうかな。
医学生医学生
名前に「カルシウム」と入っているので、電解質に影響しそうな気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこが引っかけポイントだね。カルシウム拮抗薬は血管平滑筋のL型カルシウムチャネルを遮断して血管を拡張させる薬で、血清CaやKを変化させるわけではない。副作用として覚えておきたいのは、頭痛、顔面紅潮、動悸、下腿浮腫、歯肉増殖だ。
医学生医学生
α遮断薬も、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系とは関係なさそうです。泌尿器科の実習で、前立腺肥大症の患者さんに処方されていました。
ドクタードクター
その通り。α1受容体を遮断して血管を拡張させる薬で、腎尿細管のK輸送にも直接作用しないから、臨床的に問題となるK異常は起こさない。注意すべきは初回投与時の起立性低血圧だね。
医学生医学生
整理すると、アルドステロンを弱める薬は高K、集合管へのNa到達を増やす利尿薬は低K、血管だけに作用する薬はK不変、ということですね。
ドクタードクター
その整理ができれば応用が利く。発展として、同じ理屈で高カリウム血症を起こす薬には、ARB、直接的レニン阻害薬、スピロノラクトンやエプレレノンといったミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、ヘパリン、NSAIDsがある。また集合管のNaチャネルを塞ぐトリアムテレンやST合剤のトリメトプリム、Kを細胞外へ移動させるβ遮断薬、ジギタリス中毒、スキサメトニウムも原因になる。
医学生医学生
もし実際に高カリウム血症になってしまったら、どう対応しますか。
ドクタードクター
まず心電図だ。テント状T波、PR延長やP波消失、QRS幅の拡大があれば致死的不整脈の危険がある。心筋保護にグルコン酸カルシウムを静注し、グルコース・インスリン療法やβ2刺激薬吸入でKを細胞内へ移し、陽イオン交換樹脂やループ利尿薬、血液透析で体外へ除去する。「守る・移す・出す」の順で覚えておくといいよ。

まとめ

腎臓からのカリウム排泄は主に集合管で行われ、アルドステロンがNa再吸収と引き換えにKの分泌を促しています。ACE阻害薬はアンジオテンシンⅡの産生を抑えてアルドステロン分泌を低下させるため高カリウム血症の原因となり、腎機能低下例やK保持性利尿薬・NSAIDsとの併用で特に注意が必要です。一方、ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬は集合管へのNa到達量を増やしてK分泌を促すため低カリウム血症を起こし、カルシウム拮抗薬やα遮断薬はK値にほとんど影響しません。ARB、MR拮抗薬、トリアムテレン、ST合剤なども同様の理屈で高カリウム血症をきたします。薬の作用点を腎臓のK排泄の仕組みと結びつけて理解することは、日常診療での電解質モニタリングや致死的不整脈の予防に直結します。

解答・解説

正解はeです

血清カリウム(K)の正常値はおおむね 3.5〜5.0 mEq/L であり、5.0〜5.5 mEq/L を超えると高カリウム血症とされる。高度になると心電図でテント状T波、PR 延長・P 波消失、QRS 幅の拡大などが現れ、致死的不整脈(心室細動や心停止)を起こしうる。 体内の K の大部分は細胞内にあり、血清 K 値は「摂取」「細胞内外の移動」「腎臓からの排泄」の3つで決まる。このうち日常的な K 排泄の主役は腎臓の集合管であり、ここではアルドステロンが働いて Na の再吸収と引き換えに K を尿中へ分泌させる。 したがって薬剤性の高カリウム血症は、主に次のようにして起こる。 1)アルドステロンの産生や作用を抑える薬:ACE 阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、直接的レニン阻害薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)、ヘパリン、NSAIDs(レニン分泌抑制)など。 2)集合管の Na チャネル(ENaC)を遮断する薬:トリアムテレン、アミロライド、ST 合剤中のトリメトプリム、ペンタミジンなど。 3)細胞内から細胞外へ K を移動させる薬:β遮断薬、ジギタリス中毒、スキサメトニウムなど。 逆に、ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬は集合管へ届く Na と水の量を増やして K 分泌を促し、低カリウム血症を起こす。本問の選択肢では、アルドステロン作用を低下させる ACE 阻害薬が高カリウム血症の原因となる。

選択肢考察

  1. ×a.  α遮断薬

    α遮断薬(ドキサゾシン、プラゾシンなど)は血管平滑筋のα1受容体を遮断して血管を拡張させる降圧薬であり、前立腺肥大症の排尿障害にも用いられる。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系や腎尿細管の K 輸送に直接作用しないため、臨床的に問題となる K 異常は起こさない。主な副作用は、初回投与時の起立性低血圧(ファーストドーズ現象)である。

  2. ×b.  ループ利尿薬

    ループ利尿薬(フロセミドなど)はヘンレループ上行脚の Na-K-2Cl 共輸送体を阻害する。その結果、下流の集合管に届く Na と尿流量が増えて K の分泌が促進され、さらに体液量減少によってレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が亢進するため、低カリウム血症をきたしやすい。代謝性アルカローシスや低マグネシウム血症、高尿酸血症も起こしうる。

  3. ×c.  カルシウム拮抗薬

    カルシウム拮抗薬(アムロジピン、ニフェジピンなど)は血管平滑筋の L 型カルシウムチャネルを遮断して血管を拡張させる降圧薬である。名前に「カルシウム」とあるが血清 Ca 値や K 値を変化させる作用はなく、電解質異常の原因とはならない。主な副作用は頭痛、顔面紅潮、動悸、下腿浮腫、歯肉増殖などである。

  4. ×d.  サイアザイド系利尿薬

    サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジドなど)は遠位曲尿細管の Na-Cl 共輸送体を阻害する。ループ利尿薬と同様に集合管への Na 到達量が増えて K 分泌が亢進し、低カリウム血症を起こす。そのほか、低ナトリウム血症、高カルシウム血症(Ca 再吸収の促進による)、高尿酸血症、耐糖能悪化、脂質異常症などの副作用がある。

  5. ○e.  アンジオテンシン変換酵素阻害薬

    アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は、アンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡへの変換を阻害する。アンジオテンシンⅡは副腎皮質球状層からのアルドステロン分泌を刺激しているため、その産生が減るとアルドステロン分泌も低下し、集合管での K 分泌が減って高カリウム血症をきたす。特に腎機能低下例、糖尿病、高齢者、K 保持性利尿薬・K 製剤・NSAIDs との併用時に起こりやすく、投与開始後は血清 K 値とクレアチニン値のモニタリングが必要である。なお ACE はブラジキニンの分解酵素でもあるため、ブラジキニンの蓄積による空咳や血管性浮腫も特徴的な副作用である。

降圧薬・利尿薬と血清 K の関係

高カリウム血症をきたすもの ・ACE 阻害薬、ARB、直接的レニン阻害薬(アリスキレン) ・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン) ・ENaC 遮断による K 保持性利尿薬(トリアムテレン) ・β遮断薬(K の細胞内への取り込みを抑制するが、通常は軽度) 低カリウム血症をきたすもの ・ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬 K 値にほとんど影響しないもの ・カルシウム拮抗薬、α遮断薬

レニン活性の変化

ACE 阻害薬や ARB、MR 拮抗薬は、アンジオテンシンⅡやアルドステロンによる負のフィードバックが弱まるため、血漿レニン活性が上昇する。一方、直接的レニン阻害薬ではレニン活性は低下する。

その他の薬剤性高カリウム血症の原因

NSAIDs、ヘパリン、カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス)、ST 合剤(トリメトプリム)、ジギタリス中毒、スキサメトニウムなど。

高カリウム血症の緊急対応

心電図変化があれば、心筋保護のためにグルコン酸カルシウムを静注し、グルコース・インスリン療法やβ2刺激薬吸入で K を細胞内へ移動させ、陽イオン交換樹脂、ループ利尿薬、血液透析などで体外へ除去する。

POINT

・高カリウム血症の代表的な薬剤は、アルドステロン作用を低下させる ACE 阻害薬・ARB・MR 拮抗薬と、K 保持性利尿薬である。 ・ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬は低カリウム血症を起こす。 ・カルシウム拮抗薬・α遮断薬は K 値に影響しない。 ・ACE 阻害薬は腎機能低下例や K 保持性利尿薬との併用で高カリウム血症が起こりやすく、空咳・血管性浮腫も特徴的な副作用である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。