StudyMed医師国家試験

減らすべきは「材料」と「お酒」―尿酸の出入りで考える痛風の栄養指導

第102回医師国家試験 G問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第102回 G問題 第23問

痛風の栄養指導で制限すべきものはどれか。2つ選べ。

  1. a.プリン体
  2. b.アルコール
  3. c.水分
  4. d.食塩
  5. e.食物線維

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は痛風の患者さんに対する栄養指導の問題だ。丸暗記で解くこともできるけれど、尿酸が「どう作られ、どう出ていくか」という流れから考えると迷わなくなる。まず、痛風がどんな病気だったか確認しておこう。
医学生医学生
血清尿酸値が高い状態が続いて、関節に尿酸の結晶がたまって炎症を起こす病気ですよね。臨床実習で、足の親指の付け根が赤く腫れた中年男性の患者さんを見ました。
ドクタードクター
そう、第1中足趾節関節が好発部位で、中年男性に多い。高尿酸血症は血清尿酸値7.0 mg/dLを超える状態と定義される。では、血清尿酸値は何で決まると思う?
医学生医学生
生化学の講義で、尿酸はプリン体の最終代謝産物だと習いました。だから、作られる量でしょうか。
ドクタードクター
それが半分。もう半分は、主に腎臓から尿中へ出ていく排泄量だ。つまり「産生」と「排泄」のバランスで決まる。栄養指導は、産生を減らす、排泄を促す、尿中で溶けやすくする、肥満を是正する、という4つの方針で整理するといい。
医学生医学生
産生を減らすなら、まず原料のプリン体を控えるわけですね。プリン体は完全に避けるべきなんですか。
ドクタードクター
いい質問だ。プリン体は核酸やATPの構成成分で、分解されて尿酸になる。だから食事からの過剰摂取は控えるべきで、ガイドラインでは1日400 mg程度が目安とされている。レバーなどの内臓類、白子、鰹節、煮干し、干物、マイワシやエビ、干し椎茸などに多い。ただ、体内の尿酸の多くは体内で合成されたプリン体に由来するから、極端な制限ではなく「摂り過ぎない」ことが基本なんだ。
医学生医学生
アルコールは、ビールにプリン体が多いから控える、という理解でいいですか。
ドクタードクター
それだけだと不十分だね。アルコールは、肝臓でのエタノール代謝の過程でATPの分解を進めて尿酸産生を増やす。さらに代謝で生じる乳酸が腎尿細管で尿酸の排泄と競合して、尿中への排泄を減らす。産生増加と排泄低下の両方に効いてしまうんだ。だから「プリン体ゼロのお酒なら大丈夫」ではなく、酒の種類にかかわらず飲酒量そのものを制限する。目安は日本酒1合、ビール500 mL、ウイスキー60 mL程度までだ。
医学生医学生
なるほど、プリン体とアルコールが制限すべきものですね。水分は、むくみを気にして減らすイメージがあったのですが。
ドクタードクター
そこは逆なんだ。水分をしっかりとって尿量を増やすと、尿酸の尿中排泄が増え、尿中の尿酸濃度も下がって尿路結石の予防になる。1日尿量2,000 mL以上を保つのが目安だ。ただし清涼飲料水は果糖が多く、尿酸産生を高めるから、水やお茶で補うように伝える。
医学生医学生
食塩はどうでしょう。生活習慣病の指導だと、とりあえず減塩というイメージがあります。
ドクタードクター
気持ちはわかる。でも食塩は尿酸の産生にも排泄にも直接は関係しないから、痛風そのものに対する制限項目ではない。ただ、痛風の患者さんは高血圧、脂質異常症、肥満、糖尿病、慢性腎臓病を合併しやすいので、高血圧があればその治療として減塩を指導する、という位置づけだ。
医学生医学生
食物線維は、むしろ積極的にとったほうがよさそうですね。
ドクタードクター
その通り。食物線維は糖や脂質の吸収を緩やかにして、痛風に合併しやすい代謝異常の改善に役立つ。それに野菜や海藻はアルカリ性食品で、尿をアルカリ化してくれる。尿酸は酸性尿で析出しやすいから、尿のアルカリ化は結石予防になるんだ。干し椎茸はプリン体が多いという例外はあるけれどね。
医学生医学生
整理すると、減らすのはプリン体とアルコール、増やすのは水分と野菜・海藻、食塩は合併症次第、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床での注意点も押さえておこう。肥満の是正は大切だけれど、絶食のような急激な減量や激しい無酸素運動は、かえって尿酸値を上げてしまう。適正なエネルギー摂取と有酸素運動で、ゆっくり減量するのが基本だ。
医学生医学生
薬物療法では、尿酸値の目標はどれくらいですか。
ドクタードクター
発作を繰り返す場合などには、アロプリノールやフェブキソスタットなどの尿酸生成抑制薬や、ベンズブロマロンなどの尿酸排泄促進薬を使い、血清尿酸値6.0 mg/dL以下を目指す。排泄促進薬を使うときは尿中の尿酸が増えるから、十分な水分摂取とクエン酸製剤による尿アルカリ化が特に重要になる。食事指導と薬物療法は同じ「尿酸の出入り」の理屈でつながっているんだ。

まとめ

痛風は高尿酸血症により関節内に尿酸ナトリウム結晶が析出して起こる関節炎で、血清尿酸値は尿酸の産生と腎臓からの排泄のバランスで決まります。栄養指導では、尿酸の原料となるプリン体の過剰摂取を控え(1日400 mg程度が目安)、尿酸の産生増加と排泄低下の両方を招くアルコールを種類にかかわらず制限します。一方、水分は尿量2,000 mL/日以上を目標に十分とり、野菜・海藻などのアルカリ性食品で尿をアルカリ化して結石を予防します。食塩制限は痛風そのものではなく合併する高血圧への対策であり、肥満の是正は急激な減量や激しい運動を避けて行います。尿酸の「産生と排泄」という視点を持てば、食事指導から薬物療法まで一貫して理解できます。

解答・解説

正解はa, bです

痛風は、血清尿酸値が高い状態(高尿酸血症:血清尿酸値 7.0 mg/dL 超)が続き、関節内に尿酸ナトリウム結晶が析出して急性関節炎(痛風発作)を起こす疾患である。第1中足趾節関節(足の親指の付け根)に好発し、中年男性に多い。 尿酸はプリン体の最終代謝産物であり、血清尿酸値は「産生量」と「排泄量(主に腎臓から尿中へ)」のバランスで決まる。したがって栄養指導は次の方針で考えるとよい。 1)尿酸の産生を減らす:原料となるプリン体の過剰摂取を控える。尿酸産生を高めるアルコールや果糖(フルクトース)の摂り過ぎを避ける。 2)尿酸の排泄を促す:水分を十分にとり尿量を増やす。尿酸の尿中排泄を妨げるアルコールを控える。 3)尿酸を尿中で溶けやすくする:尿酸は酸性尿で析出しやすいため、野菜・海藻などで尿をアルカリ化し、尿路結石を予防する。 4)肥満を是正する:内臓脂肪の蓄積やインスリン抵抗性は尿酸の産生増加・排泄低下の両方に関わる。 この考え方に照らすと、制限すべきものはプリン体とアルコールであり、水分や食物線維はむしろ積極的にとるべきものである。

選択肢考察

  1. ○a.  プリン体

    プリン体は核酸(DNA・RNA)や ATP などの構成成分で、体内で分解されて最終的に尿酸となる。食事由来のプリン体を過剰にとると尿酸の産生が増えるため、摂取量を制限する。日本のガイドラインでは1日のプリン体摂取量をおおむね 400 mg 程度に抑えることが推奨されている。プリン体を多く含む食品には、レバーなどの内臓類、白子、鰹節、煮干し、干物、一部の魚介類(マイワシ、エビなど)、干し椎茸などがある。ただし体内の尿酸の多くは体内で合成されたプリン体に由来するため、極端な制限よりも「過剰摂取を避ける」ことが基本である。

  2. ○b.  アルコール

    アルコールは複数の機序で血清尿酸値を上げる。1)肝臓でのエタノール代謝の過程で ATP の分解が進み、プリン体の分解が亢進して尿酸産生が増える。2)エタノールの代謝で生じる乳酸が、腎尿細管での尿酸の排泄と競合し、尿酸の尿中排泄が低下する。3)ビールなど一部の酒類はそれ自体がプリン体を含む。このため酒の種類にかかわらず飲酒量そのものを制限する必要があり、目安として日本酒1合、ビール 500 mL、ウイスキー 60 mL 程度までとされる(週2日程度の休肝日も勧められる)。

  3. ×c.  水分

    水分は制限せず、むしろ十分に摂取させる。尿量が増えると尿酸の尿中排泄量が増え、同時に尿中の尿酸濃度が下がって尿酸結石(尿路結石)の予防にもなる。目安は1日尿量 2,000 mL 以上を保つことである。なお水分補給は、糖分(特に果糖)を多く含む清涼飲料水ではなく、水やお茶などで行うよう指導する。

  4. ×d.  食塩

    食塩は尿酸の産生や排泄に直接の影響はなく、痛風そのものに対する栄養指導の制限項目ではない。ただし痛風・高尿酸血症の患者は高血圧、脂質異常症、肥満、糖尿病、慢性腎臓病などを合併しやすく、高血圧を合併している場合には、その治療として食塩制限を行う。

  5. ×e.  食物線維

    食物線維は制限すべきものではない。糖・脂質の吸収を緩やかにし、肥満や脂質異常症、糖尿病など痛風に合併しやすい代謝異常の改善に役立つため、痛風に限らず十分な摂取が勧められる。食物線維を多く含む野菜・海藻・きのこ類(干し椎茸はプリン体が多いので注意)はアルカリ性食品でもあり、尿のアルカリ化にも寄与する。

高尿酸血症・痛風の生活指導の要点

・プリン体の過剰摂取を避ける(1日 400 mg 程度が目安)。 ・アルコールを控える(日本酒1合、ビール 500 mL、ウイスキー 60 mL 程度まで)。 ・果糖(フルクトース)を多く含む清涼飲料水・果汁の過剰摂取を避ける。果糖は肝臓での代謝過程で ATP を消費し、尿酸産生を増やす。 ・水分を十分にとり、尿量を1日 2,000 mL 以上に保つ。 ・野菜・海藻などで尿をアルカリ化する(尿酸は酸性尿で溶けにくく、結石ができやすい)。 ・適正なエネルギー摂取と有酸素運動で肥満を解消する。ただし激しい無酸素運動や急激な減量(絶食など)はかえって尿酸値を上げるので避ける。

プリン体を多く含む食品の例

鶏・豚・牛のレバー、白子、鰹節、煮干し、干物、マイワシ、大正エビ、干し椎茸など。

薬物療法との関係

痛風発作を繰り返す場合や尿酸値が高い場合には、尿酸生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタット)や尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン、ドチヌラドなど)を用い、血清尿酸値 6.0 mg/dL 以下を目標にする。尿酸排泄促進薬の使用時には尿路結石予防のため、十分な水分摂取と尿アルカリ化(クエン酸製剤)が特に重要となる。

POINT

・痛風の栄養指導で制限するもの:プリン体、アルコール(加えて果糖)。 ・積極的にとるもの:水分(尿量 2,000 mL/日以上)、野菜・海藻などのアルカリ性食品。 ・アルコールは尿酸の産生増加と排泄低下の両方を起こす。 ・食塩制限は痛風そのものではなく、合併する高血圧に対する指導である。 ・肥満の是正は重要だが、急激な減量や激しい運動は避ける。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。