StudyMed医師国家試験

確率に掛けてはいけない―「オッズ」を経由して読み解く尤度比と検査後確率

第102回医師国家試験 F問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第102回 F問題 第9問

ある疾患の検査前確率が20%であり,その後の検査結果の尤度比が4の時,検査後確率はどれか。

  1. a.5%
  2. b.20%
  3. c.24%
  4. d.50%
  5. e.80%

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、検査前確率と尤度比から検査後確率を求める計算問題だ。ポイントはただ一つ、「尤度比は確率ではなくオッズに掛ける」ということ。ここを押さえれば計算自体はとても簡単だよ。まず、どう計算しようと思った?
医学生医学生
20%に4を掛けて80%、と一瞬思ってしまいました。
ドクタードクター
多くの人がまずそう考えるし、選択肢にもちゃんと用意されている。でも、それは誤りなんだ。仮に検査前確率が30%で尤度比が4だったら、確率に掛けると120%になってしまう。確率が100%を超えるのはおかしいよね。
医学生医学生
確かに。だからオッズに変換するんですね。オッズって疫学の講義で症例対照研究のオッズ比のときに出てきた、あのオッズですか。
ドクタードクター
考え方は同じだ。オッズは「起こる」と「起こらない」の比で、確率をpとするとp÷(1−p)で表す。検査前確率20%なら、0.2÷0.8で0.25、つまり「疾患あり1人に対して疾患なし4人」という意味になる。
医学生医学生
そこに尤度比4を掛けると、検査後オッズは1ですね。
ドクタードクター
そう。検査後オッズ=検査前オッズ×尤度比、これが基本式だ。オッズ1は「疾患あり対なしが1対1」だから、確率に戻すと1÷(1+1)で50%。これが正解だよ。オッズから確率に戻す式はオッズ÷(1+オッズ)と覚えておこう。
医学生医学生
ほかの選択肢は、20を4で割った5%、20に4を足した24%、検査前確率そのままの20%ですね。
ドクタードクター
その通り。どれも想定される計算ミスだ。尤度比が1より大きければ、検査結果はその疾患の存在を支持するから、検査後確率は検査前より上がるはず。5%のように下がることはないし、20%のまま変わらないのは尤度比が1のとき、つまり役に立たない検査のときだけだ。足し算は根拠がない。
医学生医学生
そもそも尤度比の定義があいまいでした。CBTでは感度と特異度ばかり覚えていた気がします。
ドクタードクター
尤度比は「その検査結果が、疾患のある人ではない人に比べて何倍出やすいか」を表す値だ。陽性尤度比は感度÷(1−特異度)、つまり真陽性率÷偽陽性率。陰性尤度比は(1−感度)÷特異度だね。感度と特異度から決まる検査固有の指標で、有病率には左右されない。
医学生医学生
公式を忘れてしまったら、本番ではどうすればいいでしょう。
ドクタードクター
四分割表で確かめるのがおすすめだ。尤度比4になるよう、たとえば感度40%、特異度90%と仮定する。1,000人中、患者は200人、非患者は800人。患者のうち陽性は80人、非患者のうち偽陽性は800×0.1で80人。陽性者160人のうち患者は80人だから、50%になる。
医学生医学生
本当に一致しました。陽性的中率と同じことを計算しているんですね。
ドクタードクター
そう、陽性時の検査後確率は陽性的中率に相当する。感度と特異度の組み合わせを変えても、尤度比が4なら結果は同じになるよ。
医学生医学生
同じ検査でも、検査前確率が違えば検査後確率も変わるということですか。
ドクタードクター
まさにそこが臨床で大事なところだ。同じ尤度比4でも、検査前確率が1%なら検査後確率は約4%にとどまる。有病率の低い集団へのスクリーニングで陽性的中率が低くなりやすいのはこのためだ。だから病歴や身体所見で検査前確率をしっかり見積もることが重要なんだ。
医学生医学生
臨床実習で総合診療科の先生が「検査は検査前確率を見積もってから出せ」と言っていたのは、こういう意味だったんですね。
ドクタードクター
その通り。目安として、陽性尤度比が10以上、陰性尤度比が0.1以下なら確率を大きく動かし、診断の確定や除外に役立つ。尤度比が1に近い検査は、結果が出ても判断はほとんど変わらない。検査の結果だけでなく、その検査が確率をどれだけ動かすのかを意識できると、臨床推論がぐっと深まるよ。

まとめ

検査後確率は、検査前確率をオッズ(p÷(1−p))に変換し、尤度比を掛けて検査後オッズを求め、オッズ÷(1+オッズ)で確率に戻して計算します。本問では検査前オッズ0.25に尤度比4を掛けて検査後オッズ1となり、検査後確率は50%です。確率に尤度比を直接掛けると100%を超えうるため誤りであり、公式を忘れた場合は尤度比に合う感度・特異度を仮定して四分割表で確認できます。陽性尤度比は感度÷(1−特異度)、陰性尤度比は(1−感度)÷特異度で、有病率に依存しない検査固有の指標ですが、得られる検査後確率は検査前確率に大きく左右されます。検査前確率の見積もりと尤度比の理解は、根拠に基づく検査選択と臨床推論の土台となります。

解答・解説

正解はdです

検査前確率と尤度比から検査後確率を求める問題である。確率のまま尤度比を掛けることはできず、いったん「オッズ」に変換してから尤度比を掛け、最後に確率へ戻す、という手順を踏む。

用語の確認

・確率 p:全体のうち、その疾患をもつ人の割合。 ・オッズ:疾患をもつ人ともたない人の比。オッズ = p ÷(1 − p)。 ・尤度比:ある検査結果が、疾患のある人では疾患のない人に比べて何倍出やすいかを表す値。陽性尤度比 = 感度 ÷(1 − 特異度)。 ・基本式:検査後オッズ = 検査前オッズ × 尤度比

計算手順

1. 検査前確率をオッズに変換する:検査前オッズ = 0.2 ÷(1 − 0.2)= 0.2 ÷ 0.8 = 0.25(= 1/4) 2. 尤度比を掛ける:検査後オッズ = 0.25 × 4 = 1 3. オッズを確率に戻す:検査後確率 = 検査後オッズ ÷(1 + 検査後オッズ)= 1 ÷(1 + 1)= 0.5 よって検査後確率は50%である。

四分割表による確認

公式を覚えていなくても、尤度比が4となる感度・特異度を仮に設定すれば同じ答えが得られる。例えば感度40%、特異度90%とすると、陽性尤度比 = 0.4 ÷(1 − 0.9)= 4 となる。1,000人の集団で考えると、患者は200人(20%)、非患者は800人である。 ・患者200人のうち検査陽性は 200 × 0.4 = 80人 ・非患者800人のうち検査陽性(偽陽性)は 800 × 0.1 = 80人 陽性者160人のうち患者は80人なので、検査後確率(陽性的中率)は 80 ÷ 160 = 50% となり、上の計算と一致する。感度・特異度の組み合わせを変えても、尤度比が4であれば結果は同じになる。

オッズから確率への戻し方の導出

検査後確率を p とすると、検査後オッズ O = p ÷(1 − p)である。これを p について解くと、O(1 − p)= p → O = p(1 + O)→ p = O ÷(1 + O)となる。

選択肢考察

  1. ×a.  5%

    尤度比が1より大きい(陽性の結果が疾患の存在を支持する)ので、検査後確率は検査前確率の20%より高くなるはずであり、5%に下がることはない。検査前確率20%を尤度比4で割った値(20 ÷ 4 = 5)に相当し、掛けるべきところを割った誤りである。

  2. ×b.  20%

    検査前確率そのものであり、検査結果が確率をまったく変えない場合、すなわち尤度比が1の場合の値である。尤度比4の検査結果が得られた本問では、検査後確率は20%より上昇する。

  3. ×c.  24%

    検査前確率20%に尤度比4を足した値(20 + 4 = 24)に相当し、計算の根拠がない。尤度比は確率に加えるものではなく、オッズに掛けるものである。

  4. ○d.  50%

    検査前オッズは 0.2 ÷ 0.8 = 0.25、これに尤度比4を掛けて検査後オッズは1となる。オッズ1は「疾患あり:疾患なし = 1:1」を意味するので、検査後確率は 1 ÷(1 + 1)= 50% である。

  5. ×e.  80%

    検査前確率20%に尤度比4をそのまま掛けた値(20% × 4 = 80%)である。確率に直接尤度比を掛けるのは誤りで、必ずオッズに変換してから掛ける必要がある。確率に掛ける方法では、例えば検査前確率30%・尤度比4で120%となり、確率が100%を超えてしまうことからも誤りだとわかる。

尤度比の定義

・陽性尤度比(LR+)= 感度 ÷(1 − 特異度)= 真陽性率 ÷ 偽陽性率 ・陰性尤度比(LR−)=(1 − 感度)÷ 特異度 = 偽陰性率 ÷ 真陰性率 尤度比は感度と特異度から求まる検査固有の指標であり、有病率(検査前確率)には左右されない。

尤度比の目安

・LR+ が10以上、あるいはLR− が0.1以下:検査後確率を大きく動かし、診断の確定・除外に有用。 ・LR+ が5〜10、LR− が0.1〜0.2:中等度に有用。 ・LR が1:検査前後で確率が変わらず、診断に役立たない。

検査前確率と陽性的中率

同じ尤度比の検査でも、検査前確率(有病率)が高い集団では検査後確率も高くなり、低い集団では陽性でも検査後確率は低いままにとどまる。例えば本問と同じ尤度比4でも、検査前確率が1%(オッズ約0.0101)なら検査後オッズは約0.040、検査後確率は約3.9%にすぎない。スクリーニング検査で陽性的中率が低くなりやすいのはこのためである。

関連する指標

・感度:疾患のある人のうち検査陽性となる割合。 ・特異度:疾患のない人のうち検査陰性となる割合。 ・陽性的中率:検査陽性者のうち実際に疾患のある人の割合。検査陽性時の検査後確率に相当する。 ・陰性的中率:検査陰性者のうち実際に疾患のない人の割合。

POINT

・検査後オッズ = 検査前オッズ × 尤度比 ・オッズ = 確率 ÷(1 − 確率)、確率 = オッズ ÷(1 + オッズ) ・確率に尤度比を直接掛けてはいけない(必ずオッズに変換する)。 ・陽性尤度比 = 感度 ÷(1 − 特異度)、陰性尤度比 =(1 − 感度)÷ 特異度 ・公式を忘れたら、尤度比に合う感度・特異度を仮定して四分割表で確かめる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。