StudyMed医師国家試験

傷を埋める「赤いつぶつぶ」の正体―肉芽組織をつくる2つの細胞

第102回医師国家試験 E問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第102回 E問題 第23問

創傷の肉芽形成で増えるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.泡沫細胞
  2. b.脂肪細胞
  3. c.線維芽細胞
  4. d.横紋筋細胞
  5. e.血管内皮細胞

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は創傷治癒の途中でできる「肉芽組織」が何でできているかを問う問題だ。治癒の流れのどの段階で肉芽が出てくるのか、そしてそれが何を材料に組み立てられているのかを意識すると、答えは自然に見えてくるよ。まず、創傷治癒の時期を順番に言えるかな。
医学生医学生
止血期、炎症期、増殖期、成熟期の4つだったと思います。病理学総論の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。実際にはこれらが重なり合いながら進む。止血期には血小板が凝集してフィブリン塊ができ、PDGFやTGF-βといった増殖因子が放出される。炎症期には好中球、続いてマクロファージが集まり、細菌や壊死組織を片付けながら増殖因子を分泌して、次の段階の司令塔になるんだ。
医学生医学生
肉芽ができるのは増殖期ですね。でも肉芽って、結核で見る類上皮細胞の集まりとは違うんでしたっけ。
ドクタードクター
大事な指摘だね。結核やサルコイドーシスでみられる類上皮細胞や多核巨細胞の集簇は「肉芽腫(granuloma)」で、今回の「肉芽組織(granulation tissue)」とは別物だ。名前が似ているから混同しやすいけれど、肉芽組織は欠損部を埋める修復用の組織なんだ。
医学生医学生
では、肉芽組織の中身は何なんでしょう。
ドクタードクター
主役は、新しくできた毛細血管と、増殖した線維芽細胞、そして線維芽細胞がつくるコラーゲンなどの細胞外基質だ。そこにマクロファージなどの炎症細胞が混ざっている。つまり増える細胞は、毛細血管をつくる血管内皮細胞と、基質をつくる線維芽細胞の2つ。これが正解になる。
医学生医学生
形成外科を回ったとき、創の底が鮮やかな赤でつぶつぶしていて「いい肉芽だね」と言われていました。あの赤さは血管なんですね。
ドクタードクター
まさにそう。毛細血管が豊富だから鮮紅色で顆粒状に見え、触れると出血しやすい。granulationという名前もこの顆粒状の見た目から来ている。血管新生は、低酸素に反応してマクロファージなどから出るVEGFやFGFが血管内皮細胞の増殖・遊走を促すことで起こり、新生血管が線維芽細胞に酸素と栄養を届けるんだ。
医学生医学生
線維芽細胞のほうは、コラーゲンをつくるだけですか。
ドクタードクター
PDGFやTGF-βの刺激で創縁から遊走して増殖し、初めはⅢ型、成熟とともにⅠ型コラーゲンを主に産生する。さらに一部は収縮能をもつ筋線維芽細胞に分化して、創を縮める創収縮を担うんだ。では残りの選択肢を見ていこう。泡沫細胞はどうかな。
医学生医学生
泡沫細胞は脂質を取り込んだマクロファージで、動脈硬化の脂肪線条で見るものだったと思います。
ドクタードクター
正解。酸化LDLなどを大量に貪食して細胞質が泡状に見えるもので、粥状硬化の初期病変や黄色腫でみられる。創傷の肉芽で増える細胞ではないね。脂肪細胞や横紋筋細胞はどうだろう。
医学生医学生
脂肪や筋肉が欠損したら、それが再生して埋めるのかと一瞬思いました。
ドクタードクター
そう考えたくなるけれど、肉芽はあくまで血管と線維芽細胞でできた「つなぎ」の組織だ。損傷した皮下脂肪は肉芽を経て線維性瘢痕に置き換わる。骨格筋は衛星細胞である程度再生するものの、損傷が大きければ瘢痕になるし、心筋はほとんど再生しないから、心筋梗塞の壊死部は肉芽を経て瘢痕化する。どちらも肉芽形成で増えるわけではないんだ。
医学生医学生
欠けたところを元の細胞で戻すのではなく、血管と線維芽細胞でいったん埋めて、最後は瘢痕にするということですね。
ドクタードクター
その理解でいい。臨床的な話も足しておこう。縫合した清潔な切創のように創縁が密着した一次治癒では肉芽は少なく瘢痕も小さいが、欠損が大きかったり感染があったりする二次治癒では大量の肉芽が欠損を埋め、創収縮も目立つ。感染や血流不良があると浮腫状で蒼白な不良肉芽になり、逆に盛り上がりすぎる過剰肉芽は上皮化を妨げる。
医学生医学生
創傷治癒を遅らせる因子もCBTでよく出ました。糖尿病やステロイドなどですよね。
ドクタードクター
そう。ほかに低栄養、高齢、喫煙、そしてビタミンCや亜鉛の欠乏も重要だ。ビタミンCはコラーゲンのプロリン・リシンの水酸化に必要だから、欠乏すると壊血病となり創が治りにくい。コラーゲンが過剰に沈着すると、創の範囲にとどまる肥厚性瘢痕や、範囲を超えて広がるケロイドになる。肉芽の材料と調節因子を知っておくと、こうした治癒異常も理屈で理解できるよ。

まとめ

創傷治癒は止血期・炎症期・増殖期・成熟期が重なりながら進み、増殖期に欠損部を埋めるのが肉芽組織です。肉芽組織は、VEGFやFGFによる血管新生でできた毛細血管(血管内皮細胞)と、PDGFやTGF-βの刺激で増殖しコラーゲンを産生する線維芽細胞を主体とし、豊富な血管のため鮮紅色で顆粒状に見えます。線維芽細胞の一部は筋線維芽細胞となって創収縮を担い、最終的に組織は瘢痕へと成熟します。泡沫細胞は動脈硬化に特徴的な脂質貪食マクロファージであり、脂肪細胞や横紋筋細胞は肉芽をつくる細胞ではありません。肉芽組織と肉芽腫の区別、治癒を妨げる因子(感染、糖尿病、ステロイド、ビタミンC欠乏など)とあわせて理解することが、日常の創傷管理の基盤となります。

解答・解説

正解はc, eです

本問は、創傷治癒の過程でつくられる肉芽組織(granulation tissue)の構成要素を問うている。 創傷治癒は、おおむね次の4つの時期が重なり合いながら進む。 (1) 止血期:血小板が凝集し、フィブリン塊で出血を止める。血小板からは血小板由来増殖因子(PDGF)やトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)などが放出され、以後の修復を促す。 (2) 炎症期:好中球が、続いてマクロファージが集まり、細菌や壊死組織を除去する。マクロファージは増殖因子を分泌し、次の段階の司令塔となる。 (3) 増殖期:欠損部を肉芽組織が埋め、表面を上皮が覆う(受傷後数日〜数週)。 (4) 成熟期(再構築期):コラーゲンが再配列・架橋され、血管が減少して白色の瘢痕となる(数か月〜1年以上)。 肉芽組織は増殖期の主役であり、主に「新生した毛細血管」「増殖した線維芽細胞」「線維芽細胞が産生する細胞外基質(コラーゲンなど)」から成る。これに炎症細胞(マクロファージなど)が混在する。豊富な毛細血管のため、健康な肉芽は鮮紅色で、表面が細かい顆粒状(granular)にみえ、触れると出血しやすい。 したがって、肉芽形成で増える細胞は、毛細血管をつくる血管内皮細胞と、細胞外基質をつくる線維芽細胞である。

選択肢考察

  1. ×a.  泡沫細胞

    泡沫細胞(foam cell)は、血管壁内に入り込んだ単球由来のマクロファージ(および一部の平滑筋細胞)が、酸化LDLなどの脂質を大量に取り込み、細胞質が泡状にみえるようになったものである。動脈硬化(粥状硬化)の初期病変である脂肪線条の主な構成要素であり、黄色腫などでもみられる。創傷の肉芽形成で増える細胞ではない。

  2. ×b.  脂肪細胞

    肉芽組織は血管と線維芽細胞・細胞外基質から成り、脂肪細胞が増殖してつくられるものではない。損傷を受けた皮下脂肪組織は、肉芽組織を経て最終的には線維性の瘢痕に置き換わるため、瘢痕部の脂肪組織はむしろ失われる。

  3. ○c.  線維芽細胞

    線維芽細胞(fibroblast)は紡錘形の間葉系細胞で、PDGFやTGF-βなどの増殖因子の刺激を受けて創縁の周囲組織から遊走し、欠損部で盛んに増殖する。はじめはⅢ型コラーゲンを多く、成熟とともにⅠ型コラーゲンを主体に産生し、フィブロネクチンやプロテオグリカンなどの細胞外基質も分泌して欠損部を埋める。一部は収縮能をもつ筋線維芽細胞(myofibroblast)に分化し、創を縮める創収縮を担う。肉芽組織の主要な構成細胞であり、肉芽形成で増える。

  4. ×d.  横紋筋細胞

    骨格筋や心筋などの横紋筋細胞は、肉芽組織の構成要素ではない。骨格筋は衛星細胞(筋幹細胞)によりある程度再生するが、損傷が大きいと線維性瘢痕で置き換えられる。心筋細胞は再生能がほぼなく、心筋梗塞後の壊死部は肉芽組織を経て線維性瘢痕となる。いずれにしても、肉芽形成で増えるのは横紋筋細胞ではない。

  5. ○e.  血管内皮細胞

    肉芽形成では、既存の血管から新たな毛細血管が芽を出すように伸びる血管新生(angiogenesis)が盛んに起こる。低酸素に反応してマクロファージなどから血管内皮増殖因子(VEGF)や線維芽細胞増殖因子(FGF)が分泌され、血管内皮細胞が増殖・遊走して管腔をつくる。新生毛細血管は増殖する線維芽細胞に酸素と栄養を供給し、肉芽の鮮紅色で顆粒状の外観の元となる。したがって肉芽形成で増える細胞である。

肉芽組織の構成

・新生毛細血管(血管内皮細胞、周皮細胞) ・線維芽細胞・筋線維芽細胞 ・細胞外基質(コラーゲン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸などのプロテオグリカン) ・炎症細胞(マクロファージ、リンパ球、形質細胞など)

創傷治癒にかかわる主な因子

・PDGF:線維芽細胞・平滑筋細胞の遊走と増殖 ・TGF-β:線維芽細胞のコラーゲン産生促進、筋線維芽細胞への分化 ・VEGF、FGF:血管新生 ・EGF(上皮成長因子)など:表皮細胞の増殖と遊走

一次治癒と二次治癒

・一次治癒:縫合された清潔な切創など、創縁が密着している場合。肉芽形成は少なく、瘢痕も小さい。 ・二次治癒:組織欠損が大きい、感染がある、創が開いたままなどの場合。欠損部を大量の肉芽組織が埋め、創収縮が目立ち、瘢痕も大きくなる。

肉芽の異常

・不良肉芽:感染や血流不良などにより、浮腫状で蒼白・暗赤色となった肉芽で、治癒が遅れる。 ・過剰肉芽:創面から盛り上がり、上皮化を妨げる。 ・肥厚性瘢痕・ケロイド:コラーゲンの過剰な沈着による。肥厚性瘢痕は創の範囲にとどまり、ケロイドは創の範囲を超えて広がる。

創傷治癒を遅らせる因子

感染、血流障害、低栄養(低たんぱく血症、ビタミンC・亜鉛の欠乏)、糖尿病、ステロイド使用、高齢、喫煙など。ビタミンCはコラーゲンのプロリン・リシンの水酸化に必要であり、欠乏すると壊血病となり創傷治癒が遅れる。

用語の注意

「肉芽組織(granulation tissue)」と、結核やサルコイドーシスでみられる「肉芽腫(granuloma:類上皮細胞や多核巨細胞の集簇)」は別の概念である。

POINT

・肉芽組織=新生毛細血管(血管内皮細胞)+線維芽細胞+細胞外基質(コラーゲンなど)+炎症細胞。 ・創傷治癒は止血期→炎症期→増殖期(肉芽形成・上皮化)→成熟期(瘢痕化)で進む。 ・線維芽細胞はコラーゲンを産生し、筋線維芽細胞として創収縮も担う。 ・血管新生はVEGF・FGFにより促される。 ・泡沫細胞は脂質を貪食したマクロファージで、動脈硬化の病変に特徴的。 ・肉芽組織と肉芽腫を混同しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。