下がる総ビリルビン、上がり続ける直接ビリルビン―新生児黄疸の「内訳」を読む
第102回医師国家試験 B問題 第49問
国試問題にチャレンジ
生後10日の新生児。黄疸を主訴に入院している。在胎39週3日,体重2,950gで出生した。出生後の血清ビリルビン値の変動を表に示す。 (単位:mg/dl) 出生当日 生後2日 生後5日 生後10日 総ビリルビン 1.0 5.0 13.2 4.5 直接ビリルビン 0.4 2.0 2.6 2.8 異常なのはどれか。
- a.出生当日の直接ビリルビン値
- b.生後2日の総ビリルビン値
- c.生後5日の総ビリルビン値
- d.生後10日の総ビリルビン値
- e.生後10日の直接ビリルビン値
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
正期産児の生理的黄疸は間接ビリルビン優位で、生後2〜3日に出現し4〜5日頃にピーク、1〜2週で消退するため、ピークが15mg/dL未満で順調に下がっていれば総ビリルビンの推移としては正常です。一方、直接ビリルビンの上昇は抱合後の排泄障害、すなわち胆汁うっ滞を意味し、総ビリルビンが低下していても増加し続け総量の過半を占めるような場合は明らかな異常です。直接ビリルビン優位の黄疸では胆道閉鎖症を最優先に考え、灰白色便の確認と生後60日以内の葛西手術を念頭に置いた速やかな精査が必要です。母乳性黄疸は間接ビリルビン優位であり、遷延性黄疸を安易に母乳性と判断しないためにも分画の測定が欠かせません。総ビリルビンの値だけでなく「内訳」と「推移」を読む姿勢は、新生児黄疸の見逃しを防ぐ基本となります。
解答・解説
正解はeです
所見の整理
在胎39週3日、出生体重2,950gの正期産・正常体重児である。血清ビリルビン値(mg/dL)の推移は次のとおりである。 ・出生当日:総1.0、直接0.4 ・生後2日:総5.0、直接2.0 ・生後5日:総13.2、直接2.6 ・生後10日:総4.5、直接2.8
考え方
新生児の黄疸を評価するときは、①総ビリルビン値が日齢に比して高すぎないか、②黄疸の出現時期と持続期間は正常か、③直接(抱合型)ビリルビンが上昇していないか、の3点に注目する。 総ビリルビンは、生後2日に上昇し始め、生後5日に13.2mg/dLでピークとなり、生後10日には4.5mg/dLまで低下している。これは正期産児の生理的黄疸(生後2〜3日に出現し、4〜5日頃にピーク、1〜2週で消退)の典型的な経過であり、ピーク値も15mg/dL未満で、光線療法を要する水準ではない。 一方、直接ビリルビンは0.4→2.0→2.6→2.8mg/dLと、総ビリルビンが下がった後も増え続けている。生後10日には総ビリルビン4.5mg/dLのうち2.8mg/dL、すなわち約62%を直接ビリルビンが占め、直接ビリルビン優位の高ビリルビン血症となっている。生理的黄疸や母乳性黄疸は間接(非抱合型)ビリルビンの上昇によるものであり、直接ビリルビンの上昇は説明できない。直接ビリルビンの上昇は、肝細胞で抱合されたビリルビンが胆汁中へうまく排泄されない状態(胆汁うっ滞)を意味し、胆道閉鎖症や新生児肝炎などの病的な原因を必ず検索しなければならない。 したがって、示された値のうち明らかな異常と判断すべきなのは生後10日の直接ビリルビン値である。
選択肢考察
- ×a. 出生当日の直接ビリルビン値
出生当日の直接ビリルビンは0.4mg/dLで、総ビリルビン1.0mg/dLとともに低値である。一般的な直接ビリルビンの基準(おおむね1.0mg/dL未満)を下回っており、出生直後の値として異常とはいえない。なお、新生児の直接ビリルビンは測定法によってやや高めに出ることがあり、単独でわずかな値を異常と判断することはない。
- ×b. 生後2日の総ビリルビン値
生後2日の総ビリルビン5.0mg/dLは、生理的黄疸が出現し始める時期の値として正常範囲である。生後24時間以内に黄疸が出る早発黄疸や、日齢に比して急激に上昇している場合は溶血性疾患などを疑うが、本例はそれにあたらない。
- ×c. 生後5日の総ビリルビン値
正期産児の生理的黄疸は生後4〜5日頃にピークを迎え、その値は多くが12〜13mg/dL前後までである。13.2mg/dLは生理的黄疸のピークとして説明でき、病的とされる目安の15mg/dLを超えていない。また、在胎39週・出生体重2,950gの児で日齢5であれば、光線療法の開始基準にも達していない。
- ×d. 生後10日の総ビリルビン値
総ビリルビン4.5mg/dLは、生後5日のピークから順調に低下した値であり、生理的黄疸が消退していく過程として正常である。総ビリルビン値だけを見れば問題はない。ただし、その内訳の過半が直接ビリルビンである点が異常である。
- ○e. 生後10日の直接ビリルビン値
直接ビリルビン2.8mg/dLは基準(おおむね1.0mg/dL未満)を明らかに超え、総ビリルビン4.5mg/dLの約62%を占める直接ビリルビン優位の上昇である。さらに、総ビリルビンが低下しているにもかかわらず直接ビリルビンは出生後から増加し続けている。これは生理的黄疸や母乳性黄疸では説明できない胆汁うっ滞の所見であり、胆道閉鎖症、新生児肝炎、先天性胆道拡張症、代謝性疾患などの検索が必要である。
ビリルビン代謝と間接・直接ビリルビン
赤血球のヘモグロビンが分解されて生じたビリルビンは、脂溶性の間接(非抱合型)ビリルビンとしてアルブミンに結合して肝へ運ばれる。肝細胞内でUGT1A1(ウリジン二リン酸グルクロン酸転移酵素)によりグルクロン酸抱合を受けると水溶性の直接(抱合型)ビリルビンとなり、胆汁中へ排泄される。 ・間接ビリルビン優位の上昇:ビリルビン産生の増加(溶血)や肝での抱合能の未熟・低下による。 ・直接ビリルビン優位の上昇:抱合後の排泄障害(肝内・肝外の胆汁うっ滞)による。
生理的黄疸
新生児では、①赤血球量が多く寿命も短い(約70〜90日)ためビリルビン産生が多い、②肝のUGT1A1活性が未熟で抱合能が低い、③腸肝循環が亢進している、などの理由で間接ビリルビンが上昇しやすい。正期産児では生後2〜3日に出現し、4〜5日頃にピーク、1〜2週で消退する。早産児では出現・ピークがやや遅れ、長引きやすい。
病的黄疸を疑う所見
・生後24時間以内に出現する黄疸(早発黄疸):血液型不適合などによる溶血性疾患を疑う。 ・総ビリルビンが日齢に比して高い(正期産児で15mg/dLを超えるなど)、または急速に上昇する。 ・遷延性黄疸:正期産児で2週間以上、早産児で3週間以上続く黄疸。 ・直接ビリルビンの上昇:直接ビリルビンがおおむね1.0〜1.5mg/dLを超える、あるいは総ビリルビンの20%程度以上を占める場合は胆汁うっ滞として精査する(基準値は文献によりやや異なる)。
母乳性黄疸
母乳栄養児で生後2週以降も間接ビリルビン優位の黄疸が遷延するもので、全身状態は良好で予後はよい。母乳中の成分が腸肝循環やビリルビン抱合に影響すると考えられている。直接ビリルビンは上昇しないため、遷延性黄疸で直接ビリルビンが高ければ母乳性黄疸と判断してはならない。
直接ビリルビン優位の黄疸をきたす主な疾患
・胆道閉鎖症:肝外胆管が閉塞し、灰白色便、濃い黄色尿、肝腫大をきたす。生後60日以内(できるだけ早期)に葛西手術(肝門部空腸吻合術)を行うと予後が改善するため、早期発見が重要である。母子健康手帳の便色カードはこのスクリーニングのためのものである。 ・新生児肝炎、先天性胆道拡張症、Alagille症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、先天性代謝異常(ガラクトース血症、シトリン欠損症など)、先天性甲状腺機能低下症、先天感染(TORCH症候群)、敗血症、長期の経静脈栄養など。
核黄疸(ビリルビン脳症)
アルブミンと結合していない間接ビリルビン(アンバウンドビリルビン)は血液脳関門を通過し、大脳基底核などに沈着して神経障害をきたす。高間接ビリルビン血症に対しては、日齢・出生体重に応じた基準に基づいて光線療法や交換輸血を行う。光線療法は間接ビリルビンを水溶性の異性体に変えて排泄を促す治療であり、直接ビリルビンが高い状態で行うと皮膚が青銅色になるブロンズベビー症候群をきたすことがある。
POINT
・生理的黄疸は間接ビリルビン優位で、正期産児では生後4〜5日にピーク、1〜2週で消退する。 ・直接ビリルビンの上昇(おおむね1.0〜1.5mg/dL超、または総ビリルビンの20%程度以上)は常に異常と考え、胆汁うっ滞の原因を検索する。 ・総ビリルビンが下がっていても、直接ビリルビンが上昇し続けていれば病的である。 ・直接ビリルビン優位の遷延性黄疸では胆道閉鎖症を見逃さない(灰白色便、生後60日以内の葛西手術)。 ・母乳性黄疸は間接ビリルビン優位であり、直接ビリルビンは上昇しない。
