StudyMed医師国家試験

解熱しない肺炎の陰に膿胸あり―「刺して確かめる」急性膿胸の基本

第102回医師国家試験 A問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第102回 A問題 第20問

急性膿胸で正しいのはどれか。

  1. a.結核由来が多い。
  2. b.肺炎は原因とならない。
  3. c.発熱は軽度である。
  4. d.胸腔穿刺で診断する。
  5. e.抗菌薬は局所投与する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は急性膿胸の原因・症状・診断・治療を一通り確認する問題だ。膿胸は胸膜腔、つまり肺と胸壁のすき間に膿がたまった状態のこと。発症からおおむね3か月未満を急性、それ以上続くものを慢性と呼ぶ。この「急性か慢性か」を意識すると選択肢が整理しやすいよ。
医学生医学生
膿胸というと、結核のイメージが強いです。病理の講義で結核性胸膜炎のスライドを見たからかもしれません。
ドクタードクター
そのイメージが一つ目の落とし穴だね。結核性膿胸はゆっくり進んで慢性膿胸の形をとることが多く、結核は慢性膿胸の代表的な原因なんだ。急性膿胸の多くは一般細菌によるもので、原因として最も多いのは何だと思う?
医学生医学生
細菌性肺炎でしょうか。肺炎で胸水がたまった患者さんを呼吸器内科の実習で見ました。
ドクタードクター
正解。肺炎のとき胸膜の炎症で胸水がたまることがあり、これを肺炎随伴性胸水という。そこに細菌が入り込んで増えると膿胸になる。だから「肺炎は原因とならない」は明らかに誤りだ。起炎菌は誤嚥に関連した口腔内の嫌気性菌、黄色ブドウ球菌や肺炎球菌・連鎖球菌、大腸菌やクレブシエラなどが多い。
医学生医学生
閉じた空間に膿がたまるわけですから、熱もかなり出そうですね。
ドクタードクター
そう。高熱や悪寒・戦慄、呼吸で増悪する胸膜痛、咳、呼吸困難を伴い、白血球増加やCRP上昇もみられる。「発熱は軽度」とはいえない。臨床で大事なのは、肺炎に抗菌薬を使っているのに解熱しない、いったん下がった熱がまた上がる、というときに膿胸の合併を疑うことだ。
医学生医学生
では正しいのは胸腔穿刺で診断する、ですね。でも、CTで胸水が見えれば十分じゃないかと思ってしまいます。
ドクタードクター
画像は胸水があるか、膜で区切られて被包化しているかを評価するのには役立つ。でも、それが膿かどうかは画像だけでは確定できない。だから胸腔穿刺で胸水を採って性状を確認するんだ。肉眼的に混濁して悪臭があるような膿性なら膿胸と診断でき、グラム染色と培養で起炎菌を同定して抗菌薬選びに生かす。
医学生医学生
膿性に見えないときは、どう判断するんですか。
ドクタードクター
胸水のpHが7.2未満に下がっている、糖が低い、LDHが著明に高い、塗抹や培養が陽性、といった所見は細菌感染が進んだ「複雑性」胸水を示し、ドレナージが必要と判断する根拠になる。ちなみに膿胸は滲出性胸水だ。滲出性か漏出性かを分けるLightの基準は覚えているかな。
医学生医学生
胸水/血清の蛋白比が0.5超、LDH比が0.6超、胸水LDHが血清基準値上限の2/3超のどれかを満たせば滲出性、ですよね。CBTのときに必死に覚えました。
ドクタードクター
完璧だ。最後に治療。「抗菌薬は局所投与する」はどうだろう。
医学生医学生
膿がたまっている場所に直接入れたほうが効きそうに思えますが……。
ドクタードクター
直感的にはそう思えるけれど、胸腔内への抗菌薬の局所注入は有効性が示されておらず、標準治療ではない。抗菌薬は点滴静注による全身投与で、嫌気性菌もカバーできるβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系などを選び、培養結果で調整する。そして膿そのものは胸腔ドレナージで外に出す。この二本柱が基本なんだ。
医学生医学生
胸腔内に入れるのは抗菌薬ではなくて、ドレナージのほうなんですね。
ドクタードクター
そういうこと。ただし胸腔内に薬を入れる場面もある。病期の流れで説明しよう。肺炎随伴性胸水は、さらさらした無菌の胸水がたまる滲出期、細菌が入ってフィブリンが析出し多房化する線維素膿性期、線維芽細胞が増えて胸膜が厚い皮になる器質化期と進む。多房化してドレーンで排液しきれないときは、ウロキナーゼなどの線維素溶解薬を胸腔内に注入したり、胸腔鏡下手術で隔壁を壊して洗浄したりするんだ。
医学生医学生
器質化まで進むと肺が膨らめなくなって、慢性膿胸に移行してしまうんですね。
ドクタードクター
その通り。だから時期を逃さず十分に排膿して肺を再膨張させることが大切だ。慢性化すると肺剥皮術や開窓術が必要になることもあるし、長い経過の慢性膿胸ではEBウイルス関連の膿胸関連リンパ腫がまれに発生することも知っておこう。

まとめ

急性膿胸は胸膜腔に膿が貯留した状態で、その多くは細菌性肺炎に伴う肺炎随伴性胸水への感染から生じ、結核はむしろ慢性膿胸の代表的な原因です。高熱、胸膜痛、呼吸困難を呈し、肺炎治療中に解熱しない場合は膿胸の合併を疑います。診断は胸腔穿刺による胸水の性状確認で確定し、膿性胸水、グラム染色・培養陽性、pH7.2未満、糖低値、LDH高値はドレナージを要する根拠になります。治療は抗菌薬の全身投与と胸腔ドレナージが二本柱で、抗菌薬の胸腔内局所投与は行わず、多房化例には線維素溶解薬の注入や胸腔鏡下手術を検討します。滲出期から器質化期への進展を理解し、慢性化させる前に適切な時期にドレナージする判断は、呼吸器診療の基本として重要です。

解答・解説

正解はdです

本問は急性膿胸の原因・症状・診断・治療の基本を問う問題である。

急性膿胸とは

膿胸は胸膜腔(肺と胸壁の間のすき間)に膿が貯留した状態である。発症からおおむね3か月未満のものを急性膿胸、それ以上続くものを慢性膿胸と呼ぶ。

考え方

・原因:急性膿胸の多くは細菌性肺炎や肺化膿症に続いて起こる。肺炎に伴う胸水(肺炎随伴性胸水)に細菌が侵入して増殖すると膿胸になる。ほかに胸部手術後、胸部外傷、食道穿孔、横隔膜下膿瘍の波及などがある。結核はむしろ慢性膿胸の代表的な原因である。 ・症状:細菌感染による強い炎症を反映し、高熱、悪寒、胸痛(呼吸で増悪する胸膜痛)、咳嗽、呼吸困難がみられ、血液検査では白血球増加・CRP上昇を示す。 ・診断:画像(胸部X線・CT・超音波)で胸水を確認したうえで、胸腔穿刺により胸水を採取し、膿性であること、あるいは塗抹・培養で細菌が証明されることで確定する。 ・治療:抗菌薬の全身投与と胸腔ドレナージが二本柱である。 したがって正しいのは「胸腔穿刺で診断する」である。

選択肢考察

  1. ×a.  結核由来が多い。

    急性膿胸の原因は一般細菌による肺炎・肺化膿症が大部分を占め、起炎菌としては嫌気性菌(口腔内常在菌、誤嚥に関連)、黄色ブドウ球菌や肺炎球菌・連鎖球菌などのグラム陽性菌、大腸菌・クレブシエラ・緑膿菌などのグラム陰性菌が多い。結核菌による膿胸(結核性膿胸)は緩徐に進行して慢性膿胸の形をとることが多く、急性膿胸の原因として多いとはいえない。誤り。

  2. ×b.  肺炎は原因とならない。

    肺炎は急性膿胸の最も多い原因である。肺炎の際には胸膜の炎症によって胸水がたまること(肺炎随伴性胸水)が少なくなく、そこに細菌が侵入・増殖すると、胸水は線維素(フィブリン)の析出を伴う段階を経て膿性へと変化する。誤り。

  3. ×c.  発熱は軽度である。

    急性膿胸は閉じた腔に膿がたまった状態であり、全身性の炎症反応が強く、通常は38℃以上の高熱や悪寒・戦慄を伴う。検査では白血球増加(好中球優位)、CRP上昇、赤沈亢進がみられる。肺炎に対して抗菌薬を投与しても解熱しない、あるいは再び発熱する場合には膿胸の合併を疑う。誤り。

  4. ○d.  胸腔穿刺で診断する。

    膿胸の診断は、胸腔穿刺で得た胸水の性状によって確定する。肉眼的に膿性(混濁・悪臭など)であれば膿胸と診断でき、さらにグラム染色と培養で起炎菌を同定して抗菌薬選択に役立てる。膿性でない場合でも、胸水のpH低下(7.2未満)、糖の低下、LDHの著明な上昇、塗抹・培養陽性などは細菌感染が進んだ胸水であることを示し、ドレナージが必要と判断する根拠になる。画像検査で胸水の存在や被包化(膜で区切られること)を評価できるが、膿であるかどうかの確定には穿刺が必要である。正しい。

  5. ×e.  抗菌薬は局所投与する。

    急性膿胸の抗菌薬は全身投与(主に点滴静注)で行う。嫌気性菌の関与が多いことを考慮し、嫌気性菌にも有効な薬剤(βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系など)を選び、培養結果に応じて調整する。胸腔内への抗菌薬の局所注入は有効性が示されておらず、標準的な治療ではない。膿の排出には胸腔ドレナージを行い、フィブリンで隔壁ができて排液が不十分な場合には線維素溶解薬(ウロキナーゼなど)の胸腔内注入や、胸腔鏡下手術(VATS)による隔壁の除去・洗浄を検討する。誤り。

肺炎随伴性胸水から膿胸への進展(3病期)

①滲出期:胸膜の透過性亢進により、比較的さらさらした無菌の胸水が貯留する。抗菌薬のみで改善することが多い。 ②線維素膿性期:細菌が侵入し、フィブリンが析出して胸水が被包化・多房化する。胸水のpH・糖は低下し、LDHは上昇する。 ③器質化期:線維芽細胞が増殖して胸膜が厚い皮(胸膜皮)となり、肺の膨張が妨げられる。慢性膿胸への移行につながる。

胸水検査の基本

・滲出性と漏出性の区別にはLightの基準を用いる。胸水/血清総蛋白比>0.5、胸水/血清LDH比>0.6、胸水LDHが血清LDH基準値上限の2/3を超える、のいずれかを満たせば滲出性である。膿胸は滲出性胸水である。 ・ドレナージを要する「複雑性」胸水を示唆する所見:肉眼的膿性、グラム染色または培養陽性、pH<7.2、糖の低値(おおむね60mg/dL未満)など。

治療のまとめ

・抗菌薬の全身投与(嫌気性菌もカバー) ・胸腔ドレナージ(時期を逃さず十分に排膿し、肺を再膨張させて死腔を残さない) ・多房化例:線維素溶解薬の胸腔内注入、VATSによる掻爬・洗浄 ・慢性化例:肺剥皮術(胸膜皮の除去)、開窓術、胸郭形成術など

慢性膿胸

3か月以上持続する膿胸で、結核性膿胸や急性膿胸の治療不十分例から移行する。長期経過例では胸膜の石灰化がみられ、まれに膿胸関連リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、EBウイルス関連)が発生することがある。

POINT

・急性膿胸の原因で最も多いのは細菌性肺炎(肺炎随伴性胸水の感染)。結核は慢性膿胸の原因として重要。 ・症状は高熱、胸痛、呼吸困難。肺炎治療中に解熱しなければ膿胸を疑う。 ・診断は胸腔穿刺:膿性胸水、グラム染色・培養で起炎菌同定、pH<7.2・糖低値・LDH高値。 ・治療は抗菌薬の全身投与+胸腔ドレナージ。抗菌薬の胸腔内局所投与は行わない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。