鼻の奥の「見えない扁桃」―アデノイドは塞いで症状を起こす
第102回医師国家試験 A問題 第19問
国試問題にチャレンジ
口蓋・咽頭扁桃肥大症〈アデノイド〉が原因となるのはどれか。2つ選べ。
- a.難聴
- b.いびき
- c.鼻出血
- d.開鼻声
- e.嚥下障害
対話形式の解説
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ドクターまとめ
アデノイド(咽頭扁桃肥大)と口蓋扁桃肥大は幼児期に生理的に目立ち、その症状は「どこを塞ぐか」で整理できます。後鼻孔を塞げば鼻閉・口呼吸・閉鼻声、耳管咽頭口を塞げば滲出性中耳炎による伝音難聴、上気道を狭めればいびきや閉塞性睡眠時無呼吸が生じます。一方、開鼻声は口蓋裂や軟口蓋麻痺などの鼻咽腔閉鎖不全で起こる声であり、アデノイドでは逆に閉鼻声となる点が重要な引っかけです。鼻出血や嚥下障害は扁桃肥大の典型症状ではなく、思春期男子の反復性鼻出血では若年性血管線維腫を考えます。小児の滲出性中耳炎や睡眠時無呼吸をみたら必ずアデノイドを確認するという姿勢は、耳鼻咽喉科・小児科の日常診療に直結します。
解答・解説
正解はa, bです
本問は、小児に多い口蓋扁桃肥大と咽頭扁桃肥大(アデノイド)が引き起こす症状を問う問題である。
考え方
・口蓋扁桃は口を開けたときに見える、のどの左右にあるリンパ組織である。咽頭扁桃(アデノイド)は鼻の奥の上咽頭(鼻咽腔)の後上壁にあるリンパ組織で、口からは直接見えない。いずれも幼児期に生理的に大きくなり(アデノイドは4〜6歳頃、口蓋扁桃は5〜7歳頃が最大)、その後は徐々に縮小する。 ・症状は「どこを塞ぐか」で整理するとわかりやすい。 ①上咽頭の後鼻孔を塞ぐ(アデノイド)→ 鼻閉、口呼吸、閉鼻声(鼻に抜けない声) ②上咽頭の側壁にある耳管咽頭口を塞ぐ(アデノイド)→ 耳管の換気障害 → 滲出性中耳炎 → 伝導(伝音)難聴 ③中咽頭・上咽頭の気道を狭める(両者)→ いびき、睡眠時無呼吸 ・このように、肥大した扁桃は「閉塞」による症状を起こすが、出血を起こしたり、軟口蓋の動きを妨げて鼻に息が漏れる(開鼻声)ような症状は起こさない。 よって原因となるのは難聴といびきである。
選択肢考察
- ○a. 難聴
耳管は中耳と上咽頭をつなぐ管で、中耳の換気と圧調整を担う。肥大したアデノイドが上咽頭側壁の耳管咽頭口を圧迫・閉塞したり、アデノイドの慢性炎症が耳管に波及したりすると、中耳が陰圧となって滲出液がたまる(滲出性中耳炎)。これにより鼓膜や耳小骨の振動が妨げられ、伝導(伝音)難聴をきたす。小児の滲出性中耳炎の重要な原因であり、正しい。
- ○b. いびき
肥大したアデノイドは鼻呼吸の通り道を狭め、口蓋扁桃肥大は中咽頭の気道を狭める。狭くなった上気道を空気が通る際に周囲の軟部組織が振動していびきが生じ、高度になると睡眠中に気道が閉塞して閉塞性睡眠時無呼吸を起こす。小児の閉塞性睡眠時無呼吸の最大の原因であり、正しい。
- ×c. 鼻出血
扁桃肥大は組織の増大による閉塞症状を起こすが、出血をきたす病態ではない。小児の鼻出血の大部分は鼻中隔前方のキーゼルバッハ部位からの出血である。なお、思春期男子の上咽頭腫瘤で反復する鼻出血を伴う場合は、アデノイドではなく若年性血管線維腫を考える。
- ×d. 開鼻声
開鼻声は、発声時に軟口蓋が上咽頭を十分に閉じられず(鼻咽腔閉鎖不全)、呼気が鼻へ漏れて鼻にかかった声になるもので、口蓋裂、粘膜下口蓋裂、軟口蓋麻痺などでみられる。アデノイド肥大では逆に鼻腔・上咽頭が塞がれて鼻へ共鳴が抜けにくくなるため、閉鼻声をきたす。したがって開鼻声の原因とはならない。なお、アデノイド切除術の後に一時的に開鼻声となることがあるが、これは肥大そのものによる症状ではない。
- ×e. 嚥下障害
アデノイドは上咽頭にあり、食物の通り道(中咽頭〜下咽頭)とは離れているため、嚥下を障害しない。口蓋扁桃肥大が極めて高度な場合に、食べるのに時間がかかる・固形物を嫌うといった摂食の問題がみられることはあるが、典型的な症状ではなく、本症の代表的な症状として嚥下障害は挙げられない。
アデノイド(咽頭扁桃肥大)の症状
・鼻閉、口呼吸、閉鼻声 ・いびき、睡眠時無呼吸(日中の眠気・集中力低下、夜尿、成長障害の原因にもなる) ・滲出性中耳炎による伝導難聴 ・アデノイド顔貌:長期の口呼吸により、口を開けたままの顔つき、上唇の挙上、鼻唇溝の消失、ぼんやりした表情を呈する。 ・副鼻腔炎の合併
口蓋扁桃肥大の程度分類(Mackenzie分類)
I度:前口蓋弓からわずかに突出。II度:I度とIII度の中間。III度:左右の扁桃が正中で接するほど大きい。
診断
アデノイドは口から見えないため、上咽頭の内視鏡(ファイバースコープ)検査や頭部側面単純X線(上咽頭の軟部陰影の大きさと気道の狭さを評価)で評価する。
治療
症状が軽ければ自然縮小を待つ。いびき・睡眠時無呼吸が強い場合や、滲出性中耳炎を繰り返す場合には、アデノイド切除術や口蓋扁桃摘出術を行う。滲出性中耳炎が遷延する場合は鼓膜換気チューブ留置術を併用する。
鼻声の区別
・閉鼻声:鼻腔・上咽頭の閉塞で鼻腔共鳴が不足(アデノイド、鼻閉、上咽頭腫瘍)。 ・開鼻声:鼻咽腔閉鎖不全で呼気が鼻に漏れる(口蓋裂、軟口蓋麻痺)。
POINT
・アデノイド=上咽頭の咽頭扁桃の肥大。幼児期に最大となり、その後縮小する。 ・症状は閉塞によるもの:鼻閉・口呼吸・閉鼻声、いびき・睡眠時無呼吸、耳管閉塞による滲出性中耳炎→伝導難聴。 ・開鼻声は口蓋裂・軟口蓋麻痺など鼻咽腔閉鎖不全で起こる。アデノイドでは閉鼻声。 ・小児の滲出性中耳炎と閉塞性睡眠時無呼吸では、アデノイドを必ず確認する。
