StudyMed医師国家試験

歩き方で見抜く障害部位―Parkinson病に「分回し」はない

第101回医師国家試験 F問題 第58問

国試問題にチャレンジ

第101回 F問題 第58問

Parkinson病の特徴でないのはどれか。

  1. a.小刻み歩行
  2. b.分回し歩行
  3. c.加速歩行
  4. d.すくみ足
  5. e.突進現象

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、Parkinson病の歩行障害を問う問題だ。ポイントは、それぞれの歩き方が錐体外路系、つまり大脳基底核の障害で生じるのか、それとも錐体路など別の系統の障害で生じるのかを見分けること。まずParkinson病の病態から確認しよう。
医学生医学生
中脳黒質のドパミン神経細胞が変性・脱落して、線条体へのドパミン供給が減る病気ですよね。病理実習でLewy小体を見ました。
ドクタードクター
その通り。Lewy小体はαシヌクレインを主成分とする封入体だ。運動症状の中核は安静時振戦、筋強剛、無動・寡動、姿勢保持障害の四大徴候。歩行障害はこれらが組み合わさって出てくるんだ。
医学生医学生
歩き方の異常は全部Parkinson病っぽく聞こえて、正直どれも当てはまりそうに思えてしまいます。
ドクタードクター
そこで、症状を無動・寡動由来と姿勢保持障害由来に分けて考えると整理しやすい。まず小刻み歩行から。
医学生医学生
歩幅が小さく、すり足で歩くのは無動・寡動のせいですね。腕の振りも減ると習いました。
ドクタードクター
そう。前傾姿勢を伴うことが多い。ちなみに小刻み歩行は多発性脳梗塞による脳血管性パーキンソニズムや正常圧水頭症でもみられるから、鑑別では頭部画像も大切だ。次はすくみ足。
医学生医学生
脳神経内科の実習で、ドアを通ろうとしたところで足が止まってしまう患者さんを見ました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。すくみ足は歩き始めや方向転換、狭い場所で足が床に貼り付いたように出なくなる現象で、無動の一症状とされる。面白いのは、床に引いた線をまたぐ、号令やリズム音に合わせるといった外的な手がかりで歩き出しやすくなること。これを矛盾性運動というんだ。
医学生医学生
では加速歩行と突進現象は、姿勢保持障害のほうですか。
ドクタードクター
その通り。加速歩行は前傾姿勢で小刻みに歩くうちに、前へ逃げる重心を足が追いかけて速足になり、自分では止まれなくなる現象だ。突進現象は、立っているときに軽く押されると立て直せず、押された方向へ小刻みに突進してしまうもの。診察では検者が肩を後ろへ引くpull testで評価する。
医学生医学生
OSCEの神経診察の練習で、後ろに立って必ず支えられる位置で行うように言われました。
ドクタードクター
大事な注意点だね。転倒させては検査にならない。さて残るのが分回し歩行だ。これはどんな歩き方だろう。
医学生医学生
脳卒中後の片麻痺の患者さんが、足を外側に回すように歩くものですよね。リハビリテーション科で見た気がします。
ドクタードクター
正解。分回し歩行は、脳梗塞や脳出血で錐体路が障害されて生じる痙性片麻痺の歩行だ。麻痺側の下肢は伸展位で突っ張り、足関節は尖足位、上肢は屈曲位をとる。これがWernicke-Mann肢位。脚が相対的に長くなって床をこすってしまうから、外側へ半円を描くように振り回して前に出すんだ。
医学生医学生
錐体路の障害なので、錐体外路系の病気であるParkinson病の特徴ではない、ということですね。
ドクタードクター
その通り。これが「特徴でないもの」の答えだ。ついでに異常歩行と障害部位の対応をまとめておこう。両側錐体路障害の痙性対麻痺ははさみ脚歩行、腓骨神経麻痺などの下垂足は鶏歩、筋ジストロフィーなど近位筋の筋力低下は動揺性歩行、小脳障害は失調性の開脚歩行、脊髄後索などの深部感覚障害は踵打ち歩行、正常圧水頭症は足が床に吸い付くような磁性歩行だ。
医学生医学生
歩き方を見るだけで、障害部位がかなり絞り込めるんですね。
ドクタードクター
そう、歩行観察は神経診察の入り口だ。臨床では、Parkinson病の進行期にすくみ足や姿勢保持障害が目立つと転倒・骨折のリスクが高くなる。外的キューを使った歩行訓練や環境整備も、薬物治療と並んで大切だよ。非運動症状として便秘、嗅覚低下、レム睡眠行動障害、うつなども先行しうるし、MIBG心筋シンチグラフィでの集積低下やドパミントランスポーターSPECTも診断の助けになる。

まとめ

Parkinson病は黒質ドパミン神経細胞の脱落による錐体外路系の疾患で、安静時振戦、筋強剛、無動・寡動、姿勢保持障害を四大徴候とします。歩行では、無動・寡動による小刻み歩行やすくみ足、姿勢保持障害による加速歩行や突進現象が特徴的で、すくみ足は視覚・聴覚の手がかりで改善する矛盾性運動を示します。一方、分回し歩行は脳血管障害などによる錐体路障害で生じる痙性片麻痺の歩行であり、Parkinson病の特徴ではありません。はさみ脚歩行、鶏歩、動揺性歩行、失調性歩行、踵打ち歩行など、異常歩行と障害部位の対応を整理しておくと、歩き方の観察だけで病変部位を推定できます。こうした歩行の見方は、神経診察の基本であると同時に転倒予防などの臨床判断にも直結します。

解答・解説

正解はbです

Parkinson病は、中脳黒質のドパミン神経細胞が変性・脱落し、線条体(被殻・尾状核)へのドパミン供給が減ることで生じる神経変性疾患である。運動症状の中核は、安静時振戦、筋強剛(固縮)、無動・寡動、姿勢保持障害の4つ(四大徴候)である。 歩行障害はこれらの徴候が組み合わさって現れる。 ・無動・寡動によるもの: 歩幅が小さくなる、第一歩が出ない、腕の振りが減る。 ・姿勢保持障害(姿勢反射障害)によるもの: 前傾姿勢のまま重心が前へ逃げ、止まれなくなる、押されると立て直せずに倒れる。 本問は「特徴でないもの」を選ぶ。各選択肢の歩行・姿勢異常が、錐体外路系(大脳基底核)の障害で生じるのか、別の系統(錐体路など)の障害で生じるのかを見分けるとよい。分回し歩行は錐体路障害による痙性片麻痺の歩行であり、Parkinson病の特徴ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  小刻み歩行

    Parkinson病の特徴である。無動・寡動のため一歩一歩の歩幅が小さくなり、足底を床からほとんど上げずにすり足気味に歩く。腕の振りの減少や前傾姿勢を伴うことが多い。なお小刻み歩行は多発性脳梗塞などによる脳血管性パーキンソニズムや、正常圧水頭症でもみられる。

  2. ○b.  分回し歩行

    Parkinson病の特徴ではなく、これが正解である。分回し歩行は、脳梗塞・脳出血などで錐体路が障害されて生じる痙性片麻痺の歩行である。麻痺側の下肢は伸展位で突っ張り(股関節・膝関節が曲がりにくく、足関節は尖足位)、上肢は屈曲位をとる(Wernicke-Mann肢位)。脚が相対的に長くなって床にすらないよう、麻痺側の足を外側へ半円を描くように振り回して前へ出す。錐体外路系の障害であるParkinson病ではみられない。

  3. ×c.  加速歩行

    Parkinson病の特徴である。前傾姿勢で小刻みに歩くうちに、前へ移動する重心を足が追いかける形となって次第に速足になり、自分の意思では止まれなくなる。姿勢保持障害(姿勢反射障害)の表れであり、壁や障害物にぶつかったり転倒したりしてようやく止まることもある。

  4. ×d.  すくみ足

    Parkinson病の特徴である。歩き始めの第一歩が出ない、方向転換時や狭い場所(ドアの通過など)で足が床に貼り付いたように止まってしまう現象で、無動の一症状とされる。床に引いた線をまたぐ、号令やリズム音に合わせるなど、視覚・聴覚の手がかり(外的キュー)を与えると歩き出しやすくなる(矛盾性運動)。進行期に目立ち、転倒の大きな原因となる。

  5. ×e.  突進現象

    Parkinson病の特徴である。立位で体を軽く押されると、倒れないように足を踏み出して立て直すことができず、押された方向へ小刻みに突進してしまう現象で、姿勢保持障害(姿勢反射障害)による。前方への突進を前方突進、後方への突進を後方突進という。診察では検者が患者の肩を後ろへ引く pull test(プルテスト)で評価する。

Parkinson病の概要

・中年以降(50〜60歳代)に好発する。病理学的には黒質ドパミン神経細胞の脱落とLewy小体(αシヌクレインを主成分とする封入体)の出現が特徴である。 ・四大徴候: 安静時振戦(丸薬まるめ様、4〜6Hz)、筋強剛(歯車様・鉛管様)、無動・寡動、姿勢保持障害。症状は一側から始まることが多い。 ・その他の運動症状: 仮面様顔貌、小声、小字症、前傾前屈姿勢、瞬目減少。 ・非運動症状: 便秘・起立性低血圧などの自律神経症状、嗅覚低下、レム睡眠行動障害、うつ、認知機能障害。 ・画像: MIBG心筋シンチグラフィで心臓への集積低下、ドパミントランスポーターSPECT(DaTscan)で線条体集積低下。 ・治療: L-ドパ(ドパ脱炭酸酵素阻害薬配合)、ドパミンアゴニスト、MAO-B阻害薬など。進行期には脳深部刺激療法も行われる。

代表的な異常歩行と障害部位

・小刻み歩行、すくみ足、加速歩行、突進現象: Parkinson病・パーキンソニズム(錐体外路障害) ・分回し歩行: 痙性片麻痺(一側の錐体路障害、脳血管障害など) ・はさみ脚歩行: 痙性対麻痺(両側錐体路障害、脳性麻痺など) ・鶏歩(鶏状歩行): 下垂足(腓骨神経麻痺、Charcot-Marie-Tooth病など) ・動揺性歩行(アヒル歩行): 近位筋の筋力低下(筋ジストロフィーなど) ・失調性歩行(酩酊様・開脚歩行): 小脳障害 ・踵打ち歩行: 深部感覚障害(脊髄後索障害など、Romberg徴候陽性) ・磁性歩行(足が床に吸い付くような歩行): 正常圧水頭症

POINT

・Parkinson病の歩行: 小刻み歩行、すくみ足、加速歩行、突進現象(姿勢保持障害)。 ・すくみ足は視覚・聴覚の手がかりで改善する(矛盾性運動)。 ・分回し歩行は錐体路障害による痙性片麻痺の歩行。 ・異常歩行と障害部位の対応を整理しておく。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。