StudyMed医師国家試験

両側の副鼻腔が真っ白―「どこに」「左右どちらに」で読み解く副鼻腔エックス線写真

第101回医師国家試験 F問題 第16問

国試問題にチャレンジ

第101回 F問題 第16問

副鼻腔エックス線単純写真で両側の副鼻腔に充満する陰影を認めた。 最も考えられるのはどれか。

  1. a.鼻癤
  2. b.肥厚性鼻炎
  3. c.鼻中隔彎曲症
  4. d.慢性副鼻腔炎
  5. e.上顎洞癌

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は副鼻腔エックス線単純写真の陰影から疾患を考える問題だ。注目すべきは2点、陰影が「副鼻腔の中」にあることと、それが「両側性」であることだ。まず基本から。副鼻腔は本来、エックス線写真でどう写るかな。
医学生医学生
副鼻腔は空気が入った空洞なので、黒く写るはずです。
ドクタードクター
その通り。空気はエックス線をよく通すから黒く見える。そこに粘膜の肥厚や膿・粘液などの貯留物、ポリープ、腫瘍があると、エックス線を通しにくくなって白っぽい陰影、つまり透過性の低下として描出されるんだ。
医学生医学生
放射線医学の講義で、上顎洞を見るにはWaters法と習いました。顔を上げて撮る撮り方ですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。Waters法は上顎洞を、Caldwell法は前頭洞や篩骨洞を観察しやすい撮影法だ。さて、両側の副鼻腔に充満する陰影、と聞いてまず何を考える?
医学生医学生
副鼻腔炎だと思いますが、上顎洞癌でも洞の中が白くなるので、少し迷いました。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。そこで2つ目のポイント「両側性」が効いてくる。炎症は粘膜全体にびまん性に広がりやすく、両側の複数の副鼻腔に及ぶことが多い。一方、上顎洞癌は上顎洞粘膜から発生する腫瘍だから、通常は片側に生じ、しかも洞壁の骨破壊像を伴うことが多いのが特徴だ。
医学生医学生
左右対称なら炎症、片側で骨が壊れていれば腫瘍、という見分け方ですね。
ドクタードクター
その通り。上顎洞癌は扁平上皮癌が大部分で、進展方向によって頬部腫脹、歯痛や歯の動揺、眼球突出や複視、片側の血性鼻漏などが出る。今回の所見とは合わないね。ということで正解は慢性副鼻腔炎だ。粘膜の肥厚、膿性・粘性分泌物の貯留、鼻茸の形成によって洞内が白くなる。症状としては何があるかな。
医学生医学生
鼻閉、膿性鼻漏、後鼻漏、嗅覚障害、それに頭重感でしょうか。耳鼻科の実習で、鼻茸のある患者さんの内視鏡を見せてもらいました。
ドクタードクター
いい経験をしているね。では残りの選択肢を見よう。鼻癤はどうだろう。
医学生医学生
鼻の入り口のおできのようなものですよね。副鼻腔とは場所が違う気がします。
ドクタードクター
正解。鼻癤は鼻前庭の毛包や皮脂腺に黄色ブドウ球菌などが感染した急性化膿性炎症で、病変は鼻の入り口の皮膚に限局する。副鼻腔に陰影は出ない。ただし臨床的には、顔面静脈を介して海綿静脈洞血栓症を起こしうる点が重要で、むやみに潰さないよう指導するんだ。
医学生医学生
肥厚性鼻炎も鼻の病気ですが、鼻腔の粘膜が腫れるなら副鼻腔にも影響しませんか。
ドクタードクター
いい疑問だね。肥厚性鼻炎は主に下鼻甲介の粘膜や粘膜下組織が肥厚して鼻閉を来す慢性鼻炎の一型で、病変の主座は鼻腔内の鼻甲介だ。血管収縮薬の点鼻でも縮みにくいのが特徴で、点鼻薬の乱用による薬剤性鼻炎から移行することもある。副鼻腔の内腔を埋める陰影を作る疾患ではない。
医学生医学生
鼻中隔彎曲症も鼻腔の形の問題なので、副鼻腔の陰影は説明できないですね。
ドクタードクター
その通り。鼻中隔の軟骨と骨の発育の不均衡で曲がるもので、軽度なら多くの人にみられる。症状が強ければ鼻中隔矯正術を行う。鼻癤、肥厚性鼻炎、鼻中隔彎曲症の3つは「場所が違う」ことで除外できるわけだ。
医学生医学生
「どこに陰影があるか」でまず絞って、「左右どちらか」で炎症と腫瘍を分ける、という2段階ですね。
ドクタードクター
完璧な整理だ。発展として、片側性の副鼻腔陰影の鑑別も押さえておこう。悪性腫瘍のほか、内反性乳頭腫、陰影内に石灰化様の高吸収域がみられる副鼻腔真菌症、原因歯の側に生じる歯性上顎洞炎、上顎洞根本術の既往がある術後性上顎嚢胞などがある。片側の陰影を見たら「なぜ片側なのか」を必ず考えることが大切だ。
医学生医学生
慢性副鼻腔炎の治療はマクロライド少量長期療法ですよね。
ドクタードクター
従来型の好中球優位のタイプではよく効くことが多い。ただ最近重要なのが好酸球性副鼻腔炎で、篩骨洞優位の陰影、多発性の鼻茸、嗅覚障害、気管支喘息、特にアスピリン喘息の合併が特徴だ。再発しやすく、ステロイドや生物学的製剤が使われる。保存的治療で改善しなければ内視鏡下鼻副鼻腔手術を行う。また、現在の診療では粘膜肥厚の範囲や骨破壊の有無を詳しく評価するためにCTが中心的な役割を担っているよ。

まとめ

副鼻腔は本来含気腔でエックス線写真では黒く写り、粘膜肥厚や貯留物、鼻茸、腫瘍があると透過性が低下して白い陰影となります。両側の副鼻腔に充満する陰影は、粘膜にびまん性に広がる炎症性疾患である慢性副鼻腔炎に典型的で、片側性で骨破壊を伴う陰影であれば上顎洞癌などの悪性腫瘍を疑います。鼻癤は鼻前庭、肥厚性鼻炎は下鼻甲介、鼻中隔彎曲症は鼻中隔の病変であり、副鼻腔に陰影は生じません。慢性副鼻腔炎には従来型と、喘息合併や多発鼻茸を特徴とする好酸球性副鼻腔炎があり、治療方針が異なります。陰影の「部位」と「左右性」から病態を推定する読影の考え方は、副鼻腔疾患の鑑別の基本となります。

解答・解説

正解はdです

副鼻腔(上顎洞・篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞)は本来空気で満たされた空洞であるため、エックス線単純写真では黒く(透過性が高く)写る。ここに粘膜の肥厚、膿や粘液などの貯留物、ポリープ、腫瘍が存在すると、その部分がエックス線を通しにくくなり、白っぽい陰影(透過性の低下)として描出される。 本問で読み取るべき所見は2点である。 1. 陰影が「副鼻腔の中」にある:病変が鼻腔や外鼻ではなく、副鼻腔の粘膜・内腔に及んでいることを示す。したがって、外鼻・鼻腔に限局する疾患(鼻癤、肥厚性鼻炎、鼻中隔彎曲症)は除外される。 2. 陰影が「両側性」で「充満する」:両側の副鼻腔に広く陰影がみられるのは、びまん性の粘膜病変である炎症性疾患の特徴である。これに対し腫瘍は通常片側性に発生し、骨破壊を伴うことが多い。 以上から、両側の副鼻腔に充満する陰影を来す疾患として最も考えられるのは慢性副鼻腔炎である。

選択肢考察

  1. ×a.  鼻癤

    鼻癤は、鼻前庭(鼻孔の入り口付近)の毛包や皮脂腺に黄色ブドウ球菌などが感染して生じる急性化膿性炎症である。外鼻・鼻前庭の発赤、腫脹、疼痛を来し、鼻をいじる癖などが誘因となる。顔面静脈を介して海綿静脈洞血栓症を起こしうる点が臨床上重要であるが、病変は鼻の入り口の皮膚に限局しており、副鼻腔に陰影を生じることはないため誤りである。

  2. ×b.  肥厚性鼻炎

    肥厚性鼻炎は慢性鼻炎の一型で、主に下鼻甲介の粘膜や粘膜下組織が肥厚し、鼻閉を来す。血管収縮薬の点鼻を用いても肥厚が改善しにくいのが特徴で、薬剤性鼻炎(点鼻薬の長期乱用)から移行することもある。病変は鼻腔内の鼻甲介にあり、副鼻腔の内腔に陰影を生じる疾患ではないため誤りである。

  3. ×c.  鼻中隔彎曲症

    鼻中隔彎曲症は、成長の過程で鼻中隔を構成する軟骨と骨の発育に不均衡が生じ、鼻中隔が左右どちらかに大きく曲がって鼻閉などの症状を来すものである。軽度の彎曲は多くの人にみられ、症状が強い場合に鼻中隔矯正術を行う。鼻腔の形態異常であり、副鼻腔そのものに病変はないため、両側副鼻腔の充満陰影は説明できず誤りである。

  4. ○d.  慢性副鼻腔炎

    慢性副鼻腔炎は副鼻腔粘膜の慢性炎症で、粘膜の肥厚、膿性・粘性の分泌物の貯留、鼻茸(鼻ポリープ)の形成により、副鼻腔内がエックス線を通しにくくなって陰影を生じる。炎症はびまん性に広がりやすく、両側の複数の副鼻腔に及ぶことが多い。症状は鼻閉、膿性鼻漏、後鼻漏、嗅覚障害、頭重感などである。両側の副鼻腔に充満する陰影に最もよく合致するため、正しい。

  5. ×e.  上顎洞癌

    上顎洞癌は上顎洞粘膜から発生する悪性腫瘍で、組織型は扁平上皮癌が大部分を占める。通常は片側に発生し、画像では一側の上顎洞の陰影とともに、洞壁の骨破壊像がみられるのが特徴である。進展方向により頬部腫脹、歯痛や歯の動揺、眼球突出・複視、片側の血性鼻漏などを呈する。両側の副鼻腔に充満する陰影という所見には合わないため誤りである。

副鼻腔の画像検査

・エックス線単純写真:Waters法(後頭前頭方向に顔を上げて撮影し、上顎洞を観察しやすい)とCaldwell法(前頭洞・篩骨洞を観察しやすい)が代表的な撮影法である。 ・CT:副鼻腔の粘膜肥厚や貯留物の範囲、骨破壊の有無、中鼻道(ostiomeatal complex)の閉塞などを詳しく評価でき、現在の診療や手術計画では中心的な役割を担う。 ・MRI:腫瘍と貯留液の区別、周囲組織(眼窩・頭蓋内)への進展の評価に有用である。

片側性の副鼻腔陰影で考えるもの

・上顎洞癌などの悪性腫瘍(骨破壊を伴う) ・乳頭腫(内反性乳頭腫) ・副鼻腔真菌症(陰影内の石灰化様の高吸収域が特徴) ・歯性上顎洞炎(原因歯の側に生じる) ・術後性上顎嚢胞(上顎洞根本術の既往)

慢性副鼻腔炎の分類と治療

・従来型(好中球優位):マクロライド少量長期療法が有効なことが多い。 ・好酸球性副鼻腔炎:篩骨洞優位の陰影、多発性鼻茸、嗅覚障害、気管支喘息(特にアスピリン喘息)の合併が特徴で、再発しやすい。ステロイドや生物学的製剤が用いられる。 ・保存的治療で改善しない場合は内視鏡下鼻副鼻腔手術を行う。

POINT

・副鼻腔は本来含気腔で、粘膜肥厚・貯留物・腫瘍があると陰影(透過性低下)となる ・両側性・びまん性の副鼻腔陰影 → 慢性副鼻腔炎などの炎症性疾患 ・片側性で骨破壊を伴う陰影 → 上顎洞癌などの悪性腫瘍を疑う ・鼻癤(鼻前庭)、肥厚性鼻炎(下鼻甲介)、鼻中隔彎曲症(鼻中隔)は副鼻腔に病変がない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。