両側の副鼻腔が真っ白―「どこに」「左右どちらに」で読み解く副鼻腔エックス線写真
第101回医師国家試験 F問題 第16問
国試問題にチャレンジ
副鼻腔エックス線単純写真で両側の副鼻腔に充満する陰影を認めた。 最も考えられるのはどれか。
- a.鼻癤
- b.肥厚性鼻炎
- c.鼻中隔彎曲症
- d.慢性副鼻腔炎
- e.上顎洞癌
対話形式の解説
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ドクターまとめ
副鼻腔は本来含気腔でエックス線写真では黒く写り、粘膜肥厚や貯留物、鼻茸、腫瘍があると透過性が低下して白い陰影となります。両側の副鼻腔に充満する陰影は、粘膜にびまん性に広がる炎症性疾患である慢性副鼻腔炎に典型的で、片側性で骨破壊を伴う陰影であれば上顎洞癌などの悪性腫瘍を疑います。鼻癤は鼻前庭、肥厚性鼻炎は下鼻甲介、鼻中隔彎曲症は鼻中隔の病変であり、副鼻腔に陰影は生じません。慢性副鼻腔炎には従来型と、喘息合併や多発鼻茸を特徴とする好酸球性副鼻腔炎があり、治療方針が異なります。陰影の「部位」と「左右性」から病態を推定する読影の考え方は、副鼻腔疾患の鑑別の基本となります。
解答・解説
正解はdです
副鼻腔(上顎洞・篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞)は本来空気で満たされた空洞であるため、エックス線単純写真では黒く(透過性が高く)写る。ここに粘膜の肥厚、膿や粘液などの貯留物、ポリープ、腫瘍が存在すると、その部分がエックス線を通しにくくなり、白っぽい陰影(透過性の低下)として描出される。 本問で読み取るべき所見は2点である。 1. 陰影が「副鼻腔の中」にある:病変が鼻腔や外鼻ではなく、副鼻腔の粘膜・内腔に及んでいることを示す。したがって、外鼻・鼻腔に限局する疾患(鼻癤、肥厚性鼻炎、鼻中隔彎曲症)は除外される。 2. 陰影が「両側性」で「充満する」:両側の副鼻腔に広く陰影がみられるのは、びまん性の粘膜病変である炎症性疾患の特徴である。これに対し腫瘍は通常片側性に発生し、骨破壊を伴うことが多い。 以上から、両側の副鼻腔に充満する陰影を来す疾患として最も考えられるのは慢性副鼻腔炎である。
選択肢考察
- ×a. 鼻癤
鼻癤は、鼻前庭(鼻孔の入り口付近)の毛包や皮脂腺に黄色ブドウ球菌などが感染して生じる急性化膿性炎症である。外鼻・鼻前庭の発赤、腫脹、疼痛を来し、鼻をいじる癖などが誘因となる。顔面静脈を介して海綿静脈洞血栓症を起こしうる点が臨床上重要であるが、病変は鼻の入り口の皮膚に限局しており、副鼻腔に陰影を生じることはないため誤りである。
- ×b. 肥厚性鼻炎
肥厚性鼻炎は慢性鼻炎の一型で、主に下鼻甲介の粘膜や粘膜下組織が肥厚し、鼻閉を来す。血管収縮薬の点鼻を用いても肥厚が改善しにくいのが特徴で、薬剤性鼻炎(点鼻薬の長期乱用)から移行することもある。病変は鼻腔内の鼻甲介にあり、副鼻腔の内腔に陰影を生じる疾患ではないため誤りである。
- ×c. 鼻中隔彎曲症
鼻中隔彎曲症は、成長の過程で鼻中隔を構成する軟骨と骨の発育に不均衡が生じ、鼻中隔が左右どちらかに大きく曲がって鼻閉などの症状を来すものである。軽度の彎曲は多くの人にみられ、症状が強い場合に鼻中隔矯正術を行う。鼻腔の形態異常であり、副鼻腔そのものに病変はないため、両側副鼻腔の充満陰影は説明できず誤りである。
- ○d. 慢性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎は副鼻腔粘膜の慢性炎症で、粘膜の肥厚、膿性・粘性の分泌物の貯留、鼻茸(鼻ポリープ)の形成により、副鼻腔内がエックス線を通しにくくなって陰影を生じる。炎症はびまん性に広がりやすく、両側の複数の副鼻腔に及ぶことが多い。症状は鼻閉、膿性鼻漏、後鼻漏、嗅覚障害、頭重感などである。両側の副鼻腔に充満する陰影に最もよく合致するため、正しい。
- ×e. 上顎洞癌
上顎洞癌は上顎洞粘膜から発生する悪性腫瘍で、組織型は扁平上皮癌が大部分を占める。通常は片側に発生し、画像では一側の上顎洞の陰影とともに、洞壁の骨破壊像がみられるのが特徴である。進展方向により頬部腫脹、歯痛や歯の動揺、眼球突出・複視、片側の血性鼻漏などを呈する。両側の副鼻腔に充満する陰影という所見には合わないため誤りである。
副鼻腔の画像検査
・エックス線単純写真:Waters法(後頭前頭方向に顔を上げて撮影し、上顎洞を観察しやすい)とCaldwell法(前頭洞・篩骨洞を観察しやすい)が代表的な撮影法である。 ・CT:副鼻腔の粘膜肥厚や貯留物の範囲、骨破壊の有無、中鼻道(ostiomeatal complex)の閉塞などを詳しく評価でき、現在の診療や手術計画では中心的な役割を担う。 ・MRI:腫瘍と貯留液の区別、周囲組織(眼窩・頭蓋内)への進展の評価に有用である。
片側性の副鼻腔陰影で考えるもの
・上顎洞癌などの悪性腫瘍(骨破壊を伴う) ・乳頭腫(内反性乳頭腫) ・副鼻腔真菌症(陰影内の石灰化様の高吸収域が特徴) ・歯性上顎洞炎(原因歯の側に生じる) ・術後性上顎嚢胞(上顎洞根本術の既往)
慢性副鼻腔炎の分類と治療
・従来型(好中球優位):マクロライド少量長期療法が有効なことが多い。 ・好酸球性副鼻腔炎:篩骨洞優位の陰影、多発性鼻茸、嗅覚障害、気管支喘息(特にアスピリン喘息)の合併が特徴で、再発しやすい。ステロイドや生物学的製剤が用いられる。 ・保存的治療で改善しない場合は内視鏡下鼻副鼻腔手術を行う。
POINT
・副鼻腔は本来含気腔で、粘膜肥厚・貯留物・腫瘍があると陰影(透過性低下)となる ・両側性・びまん性の副鼻腔陰影 → 慢性副鼻腔炎などの炎症性疾患 ・片側性で骨破壊を伴う陰影 → 上顎洞癌などの悪性腫瘍を疑う ・鼻癤(鼻前庭)、肥厚性鼻炎(下鼻甲介)、鼻中隔彎曲症(鼻中隔)は副鼻腔に病変がない
