StudyMed医師国家試験

膵臓に浮かぶ小さな島―β細胞が主役のLangerhans島を細胞・腫瘍・病理でつなぐ

第101回医師国家試験 B問題 第45問

国試問題にチャレンジ

第101回 B問題 第45問

膵島で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.外分泌系に属する。
  2. b.インスリノーマはα〈A〉細胞腫瘍である。
  3. c.細胞数はβ〈B〉細胞が最も多い。
  4. d.ソマトスタチンはδ〈D〉細胞が分泌する。
  5. e.2型糖尿病ではリンパ球浸潤を認める。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は膵島、つまりLangerhans島の問題だ。どの細胞がどれくらいあって、何を分泌するか。その知識が、腫瘍の名前や糖尿病の病理にまでつながっていく。この「細胞とホルモンの対応表」を頭の中に描けるかがポイントだよ。まず、膵臓は外分泌腺と内分泌腺のどちらだと思う?
医学生医学生
両方の機能がありますよね。膵島もその中にあるので、外分泌系に入るのかと一瞬迷いました。
ドクタードクター
そこは整理しておこう。膵臓の大部分は腺房細胞で、アミラーゼやリパーゼ、トリプシノゲンといった消化酵素を膵管へ出す。導管から出す、これが外分泌だ。膵島はその外分泌組織の中に島のように散らばる細胞の集まりで、ホルモンを導管を介さず直接血中に分泌する。だから内分泌系に属するんだ。体積としては膵全体の1〜2%ほどしかない。
医学生医学生
組織学実習で、H-E染色の膵臓に淡く抜けて見える島があったのを思い出しました。あれが膵島ですね。
ドクタードクター
そう、腺房細胞よりも淡く染まる細胞集団として見える。では膵島を構成する細胞と、それぞれのホルモンを挙げてみよう。
医学生医学生
β細胞がインスリン、α細胞がグルカゴン、δ細胞がソマトスタチン、それにPP細胞が膵ポリペプチドです。
ドクタードクター
完璧だ。ソマトスタチンはδ細胞が分泌する、という記述は正しい。ソマトスタチンは近くの細胞に作用する傍分泌でβ細胞のインスリン分泌とα細胞のグルカゴン分泌をどちらも抑え、膵島の中のブレーキ役として働く。視床下部では成長ホルモンの分泌を抑えるホルモンとしても出てくるね。
医学生医学生
じゃあ数が一番多いのは……血糖を上げる側も下げる側も大事なので、αとβが同じくらいでしょうか。
ドクタードクター
そこはよく間違えるところ。実際にはβ細胞が圧倒的で、膵島細胞の約60〜80%を占める。α細胞は15〜20%ほど、δ細胞とPP細胞はさらに少ない。配置も特徴的で、β細胞は中心部、α細胞は辺縁部に多い。血流は中心から辺縁に向かうとされていて、β細胞が出したインスリンが周りのα細胞に作用しやすいつくりなんだ。だからβ細胞が最多という記述も正しい。
医学生医学生
β>α>δ>PPの順ですね。次のインスリノーマは、名前の通りインスリンを出す腫瘍なのでβ細胞由来だと思います。α細胞というのは違いますね。
ドクタードクター
その通り。膵島から出る腫瘍、膵神経内分泌腫瘍は産生するホルモンで名前が付くから、細胞とホルモンの対応を知っていれば迷わない。インスリノーマは膵神経内分泌腫瘍で最も多く、多くは良性で単発だ。空腹時や運動後の低血糖発作で見つかり、Whippleの三徴、つまり低血糖症状、発作時の低血糖、糖投与で症状が改善すること、が診断の手がかりになる。
医学生医学生
α細胞の腫瘍はグルカゴノーマで、血糖が上がるので糖尿病になるんでしたよね。
ドクタードクター
そう。それに加えて壊死性遊走性紅斑という特徴的な皮疹や体重減少をきたす。δ細胞由来のソマトスタチノーマは、ソマトスタチンがいろいろな分泌を抑えるせいで、糖尿病、胆石、脂肪便がそろうのが特徴だ。
医学生医学生
最後の2型糖尿病のリンパ球浸潤ですが、リンパ球が入り込むのは自己免疫の1型のほうではないでしょうか。
ドクタードクター
いい判断だ。膵島へのリンパ球浸潤、いわゆる膵島炎は、自己免疫でβ細胞が壊される1型糖尿病、特に発症早期の特徴的な所見だ。主にCD8陽性T細胞が浸潤し、GAD抗体などの膵島関連自己抗体が陽性になることが多い。一方、2型糖尿病はインスリン分泌低下とインスリン抵抗性が基盤で、リンパ球浸潤は通常みられない。代わりに目立つのがアミロイドの沈着なんだ。
医学生医学生
病理の講義で出てきたアミリンですね。β細胞がインスリンと一緒に出すペプチドが沈着する、と習いました。
ドクタードクター
その通り。膵島アミロイドポリペプチド、IAPPとも呼ばれる。1型はリンパ球、2型はアミロイド、とセットで覚えておこう。というわけで、正しいのはβ細胞が最多であることと、ソマトスタチンがδ細胞から分泌されることの2つだ。
医学生医学生
細胞の割合、分泌ホルモン、腫瘍名、糖尿病の病理を一本の表にまとめれば、全部の選択肢が解けるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。発展として、膵神経内分泌腫瘍はMEN1、つまり多発性内分泌腫瘍症1型の構成病変としても重要だ。副甲状腺機能亢進症や下垂体腫瘍と一緒に見つかったら、遺伝性の背景を考える必要がある。また、ガストリノーマやVIPomaも膵神経内分泌腫瘍に含まれるけれど、正常な膵島の主要細胞に対応するものではない点も押さえておくといい。
医学生医学生
臨床実習の救急外来で、原因のはっきりしない低血糖を繰り返す人がいたら、インスリノーマも鑑別に入れるべきなんですね。
ドクタードクター
そうだね。糖尿病の治療をしていないのに低血糖を繰り返す場合は、発作時の血糖とインスリン値を同時に測ることが診断の第一歩になる。基礎の組織学が、そのまま目の前の患者さんの診断につながる好例だよ。

まとめ

膵島(Langerhans島)は膵外分泌組織の中に散在する内分泌組織で、膵体積の1〜2%を占めます。構成細胞はβ細胞(インスリン、約60〜80%で最多、中心部)、α細胞(グルカゴン、辺縁部)、δ細胞(ソマトスタチン)、PP細胞(膵ポリペプチド)の順に多く、ソマトスタチンは傍分泌でインスリン・グルカゴン分泌をともに抑制します。膵神経内分泌腫瘍は産生ホルモンで命名され、インスリノーマはβ細胞、グルカゴノーマはα細胞、ソマトスタチノーマはδ細胞に由来し、MEN1の構成病変としても重要です。膵島へのリンパ球浸潤(膵島炎)は自己免疫性の1型糖尿病の特徴で、2型糖尿病ではアミリン由来のアミロイド沈着がみられます。細胞・ホルモン・腫瘍・病理を一つの対応表として理解することが、低血糖や糖尿病の臨床推論の土台になります。

解答・解説

正解はc, dです

膵島(Langerhans島)の組織構成、各細胞が分泌するホルモン、関連する腫瘍と疾患の病理を問う問題である。 膵臓は、消化酵素を膵管へ分泌する外分泌部(腺房細胞)と、ホルモンを血中へ分泌する内分泌部からなる。内分泌部が膵島で、外分泌組織の中に島状に散在する細胞集団である。膵全体の体積に占める割合は1〜2%程度にすぎず、膵尾部にやや多い。 膵島を構成する主な細胞は次の4種類で、数の多い順に並べると理解しやすい。 ・β〈B〉細胞:インスリン(およびアミリン)を分泌。膵島細胞の約60〜80%を占め最多で、膵島の中心部に多い。 ・α〈A〉細胞:グルカゴンを分泌。約15〜20%で、膵島の辺縁部に多い。 ・δ〈D〉細胞:ソマトスタチンを分泌。約5〜10%。 ・PP細胞:膵ポリペプチドを分泌。数%で、膵頭部に多い。 膵島細胞から発生する腫瘍(膵神経内分泌腫瘍)は、由来細胞の産生ホルモンによって名前が付くため、「どの細胞が何を分泌するか」が分かれば腫瘍名も対応づけられる。また、1型糖尿病と2型糖尿病では膵島の病理像が異なり、1型では自己免疫によるリンパ球浸潤(膵島炎)、2型ではアミロイド沈着が特徴である。 これらの知識から、β細胞が最多であることと、ソマトスタチンがδ細胞から分泌されることが正しいと判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  外分泌系に属する。

    膵島はホルモンを導管を介さず直接血中へ分泌する内分泌組織であり、内分泌系に属する。膵臓の外分泌系は、アミラーゼ・リパーゼ・トリプシノゲンなどの消化酵素を分泌する腺房細胞と、重炭酸イオンを分泌する導管系である。膵島は外分泌組織の中に島状に散在しているが、機能的には別の系統である。

  2. ×b.  インスリノーマはα〈A〉細胞腫瘍である。

    インスリノーマはインスリンを産生するβ〈B〉細胞由来の腫瘍である。空腹時や運動後の低血糖発作(Whippleの三徴:低血糖症状、発作時の低血糖、糖投与による症状改善)で発見され、膵神経内分泌腫瘍の中で最も頻度が高く、多くは良性・単発である。α〈A〉細胞由来の腫瘍はグルカゴノーマで、耐糖能異常(糖尿病)、壊死性遊走性紅斑、体重減少などをきたす。

  3. ○c.  細胞数はβ〈B〉細胞が最も多い。

    膵島を構成する細胞のうち、インスリンを分泌するβ〈B〉細胞が約60〜80%を占めて最も多く、主に膵島の中心部に位置する。次いでグルカゴンを分泌するα〈A〉細胞が約15〜20%で、主に辺縁部に分布する。δ〈D〉細胞、PP細胞はさらに少ない。

  4. ○d.  ソマトスタチンはδ〈D〉細胞が分泌する。

    膵島のδ〈D〉細胞はソマトスタチンを分泌する。ソマトスタチンは近傍の細胞に作用して(傍分泌)、β細胞からのインスリン分泌とα細胞からのグルカゴン分泌をともに抑制し、膵島内のホルモン分泌を調節している。ソマトスタチンは視床下部(成長ホルモン分泌を抑制)や消化管の内分泌細胞でも産生される。δ細胞由来の腫瘍はソマトスタチノーマで、糖尿病、胆石、脂肪便などをきたす。

  5. ×e.  2型糖尿病ではリンパ球浸潤を認める。

    膵島へのリンパ球浸潤(膵島炎、insulitis)は、自己免疫機序でβ細胞が破壊される1型糖尿病(特に発症早期)の特徴的所見である。GAD抗体などの膵島関連自己抗体が陽性となることが多い。2型糖尿病はインスリン分泌低下とインスリン抵抗性を基盤とし、リンパ球浸潤は通常みられない。2型糖尿病の膵島ではβ細胞量の減少と、β細胞がインスリンとともに分泌するアミリン(膵島アミロイドポリペプチド、IAPP)に由来するアミロイドの沈着が特徴的である。

膵島の細胞・ホルモン・腫瘍の対応

・β〈B〉細胞:インスリン(血糖低下)、アミリン → インスリノーマ(低血糖発作) ・α〈A〉細胞:グルカゴン(血糖上昇) → グルカゴノーマ(糖尿病、壊死性遊走性紅斑) ・δ〈D〉細胞:ソマトスタチン(インスリン・グルカゴン分泌抑制) → ソマトスタチノーマ(糖尿病、胆石、脂肪便) ・PP細胞:膵ポリペプチド(膵外分泌抑制など) なお、ガストリノーマ(Zollinger-Ellison症候群)やVIPoma(WDHA症候群:水様性下痢・低カリウム血症・無胃酸症)も膵神経内分泌腫瘍に含まれるが、正常な膵島の主要細胞に対応するものではない。ガストリノーマは十二指腸・膵頭部周囲(ガストリノーマ三角)に好発する。膵神経内分泌腫瘍は多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)の構成病変としても重要である。

1型糖尿病と2型糖尿病の膵島病理

・1型:自己免疫によるβ細胞破壊。膵島へのリンパ球(主にCD8陽性T細胞)浸潤(膵島炎)。進行するとβ細胞がほぼ消失し、α細胞などが残る。膵島関連自己抗体(GAD抗体、IA-2抗体、インスリン自己抗体、ZnT8抗体など)陽性。 ・2型:インスリン分泌低下とインスリン抵抗性。β細胞量の減少、膵島アミロイド(アミリン由来)の沈着。リンパ球浸潤は目立たない。

膵島内の相互調節

インスリンはα細胞のグルカゴン分泌を抑え、ソマトスタチンはβ・α両細胞を抑制する。膵島内の血流はβ細胞の多い中心部から辺縁部へ向かうとされ、β細胞の分泌物が周囲のα細胞に作用しやすい構造になっている。

POINT

・膵島は内分泌組織。膵体積の1〜2%。 ・細胞数はβ(約60〜80%)>α(約15〜20%)>δ>PP。 ・β=インスリン、α=グルカゴン、δ=ソマトスタチン、PP=膵ポリペプチド。 ・インスリノーマはβ細胞腫瘍、グルカゴノーマはα細胞腫瘍。 ・膵島へのリンパ球浸潤(膵島炎)は1型糖尿病、アミロイド沈着は2型糖尿病の特徴。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。