膵臓に浮かぶ小さな島―β細胞が主役のLangerhans島を細胞・腫瘍・病理でつなぐ
第101回医師国家試験 B問題 第45問
国試問題にチャレンジ
膵島で正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.外分泌系に属する。
- b.インスリノーマはα〈A〉細胞腫瘍である。
- c.細胞数はβ〈B〉細胞が最も多い。
- d.ソマトスタチンはδ〈D〉細胞が分泌する。
- e.2型糖尿病ではリンパ球浸潤を認める。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
膵島(Langerhans島)は膵外分泌組織の中に散在する内分泌組織で、膵体積の1〜2%を占めます。構成細胞はβ細胞(インスリン、約60〜80%で最多、中心部)、α細胞(グルカゴン、辺縁部)、δ細胞(ソマトスタチン)、PP細胞(膵ポリペプチド)の順に多く、ソマトスタチンは傍分泌でインスリン・グルカゴン分泌をともに抑制します。膵神経内分泌腫瘍は産生ホルモンで命名され、インスリノーマはβ細胞、グルカゴノーマはα細胞、ソマトスタチノーマはδ細胞に由来し、MEN1の構成病変としても重要です。膵島へのリンパ球浸潤(膵島炎)は自己免疫性の1型糖尿病の特徴で、2型糖尿病ではアミリン由来のアミロイド沈着がみられます。細胞・ホルモン・腫瘍・病理を一つの対応表として理解することが、低血糖や糖尿病の臨床推論の土台になります。
解答・解説
正解はc, dです
膵島(Langerhans島)の組織構成、各細胞が分泌するホルモン、関連する腫瘍と疾患の病理を問う問題である。 膵臓は、消化酵素を膵管へ分泌する外分泌部(腺房細胞)と、ホルモンを血中へ分泌する内分泌部からなる。内分泌部が膵島で、外分泌組織の中に島状に散在する細胞集団である。膵全体の体積に占める割合は1〜2%程度にすぎず、膵尾部にやや多い。 膵島を構成する主な細胞は次の4種類で、数の多い順に並べると理解しやすい。 ・β〈B〉細胞:インスリン(およびアミリン)を分泌。膵島細胞の約60〜80%を占め最多で、膵島の中心部に多い。 ・α〈A〉細胞:グルカゴンを分泌。約15〜20%で、膵島の辺縁部に多い。 ・δ〈D〉細胞:ソマトスタチンを分泌。約5〜10%。 ・PP細胞:膵ポリペプチドを分泌。数%で、膵頭部に多い。 膵島細胞から発生する腫瘍(膵神経内分泌腫瘍)は、由来細胞の産生ホルモンによって名前が付くため、「どの細胞が何を分泌するか」が分かれば腫瘍名も対応づけられる。また、1型糖尿病と2型糖尿病では膵島の病理像が異なり、1型では自己免疫によるリンパ球浸潤(膵島炎)、2型ではアミロイド沈着が特徴である。 これらの知識から、β細胞が最多であることと、ソマトスタチンがδ細胞から分泌されることが正しいと判断できる。
選択肢考察
- ×a. 外分泌系に属する。
膵島はホルモンを導管を介さず直接血中へ分泌する内分泌組織であり、内分泌系に属する。膵臓の外分泌系は、アミラーゼ・リパーゼ・トリプシノゲンなどの消化酵素を分泌する腺房細胞と、重炭酸イオンを分泌する導管系である。膵島は外分泌組織の中に島状に散在しているが、機能的には別の系統である。
- ×b. インスリノーマはα〈A〉細胞腫瘍である。
インスリノーマはインスリンを産生するβ〈B〉細胞由来の腫瘍である。空腹時や運動後の低血糖発作(Whippleの三徴:低血糖症状、発作時の低血糖、糖投与による症状改善)で発見され、膵神経内分泌腫瘍の中で最も頻度が高く、多くは良性・単発である。α〈A〉細胞由来の腫瘍はグルカゴノーマで、耐糖能異常(糖尿病)、壊死性遊走性紅斑、体重減少などをきたす。
- ○c. 細胞数はβ〈B〉細胞が最も多い。
膵島を構成する細胞のうち、インスリンを分泌するβ〈B〉細胞が約60〜80%を占めて最も多く、主に膵島の中心部に位置する。次いでグルカゴンを分泌するα〈A〉細胞が約15〜20%で、主に辺縁部に分布する。δ〈D〉細胞、PP細胞はさらに少ない。
- ○d. ソマトスタチンはδ〈D〉細胞が分泌する。
膵島のδ〈D〉細胞はソマトスタチンを分泌する。ソマトスタチンは近傍の細胞に作用して(傍分泌)、β細胞からのインスリン分泌とα細胞からのグルカゴン分泌をともに抑制し、膵島内のホルモン分泌を調節している。ソマトスタチンは視床下部(成長ホルモン分泌を抑制)や消化管の内分泌細胞でも産生される。δ細胞由来の腫瘍はソマトスタチノーマで、糖尿病、胆石、脂肪便などをきたす。
- ×e. 2型糖尿病ではリンパ球浸潤を認める。
膵島へのリンパ球浸潤(膵島炎、insulitis)は、自己免疫機序でβ細胞が破壊される1型糖尿病(特に発症早期)の特徴的所見である。GAD抗体などの膵島関連自己抗体が陽性となることが多い。2型糖尿病はインスリン分泌低下とインスリン抵抗性を基盤とし、リンパ球浸潤は通常みられない。2型糖尿病の膵島ではβ細胞量の減少と、β細胞がインスリンとともに分泌するアミリン(膵島アミロイドポリペプチド、IAPP)に由来するアミロイドの沈着が特徴的である。
膵島の細胞・ホルモン・腫瘍の対応
・β〈B〉細胞:インスリン(血糖低下)、アミリン → インスリノーマ(低血糖発作) ・α〈A〉細胞:グルカゴン(血糖上昇) → グルカゴノーマ(糖尿病、壊死性遊走性紅斑) ・δ〈D〉細胞:ソマトスタチン(インスリン・グルカゴン分泌抑制) → ソマトスタチノーマ(糖尿病、胆石、脂肪便) ・PP細胞:膵ポリペプチド(膵外分泌抑制など) なお、ガストリノーマ(Zollinger-Ellison症候群)やVIPoma(WDHA症候群:水様性下痢・低カリウム血症・無胃酸症)も膵神経内分泌腫瘍に含まれるが、正常な膵島の主要細胞に対応するものではない。ガストリノーマは十二指腸・膵頭部周囲(ガストリノーマ三角)に好発する。膵神経内分泌腫瘍は多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)の構成病変としても重要である。
1型糖尿病と2型糖尿病の膵島病理
・1型:自己免疫によるβ細胞破壊。膵島へのリンパ球(主にCD8陽性T細胞)浸潤(膵島炎)。進行するとβ細胞がほぼ消失し、α細胞などが残る。膵島関連自己抗体(GAD抗体、IA-2抗体、インスリン自己抗体、ZnT8抗体など)陽性。 ・2型:インスリン分泌低下とインスリン抵抗性。β細胞量の減少、膵島アミロイド(アミリン由来)の沈着。リンパ球浸潤は目立たない。
膵島内の相互調節
インスリンはα細胞のグルカゴン分泌を抑え、ソマトスタチンはβ・α両細胞を抑制する。膵島内の血流はβ細胞の多い中心部から辺縁部へ向かうとされ、β細胞の分泌物が周囲のα細胞に作用しやすい構造になっている。
POINT
・膵島は内分泌組織。膵体積の1〜2%。 ・細胞数はβ(約60〜80%)>α(約15〜20%)>δ>PP。 ・β=インスリン、α=グルカゴン、δ=ソマトスタチン、PP=膵ポリペプチド。 ・インスリノーマはβ細胞腫瘍、グルカゴノーマはα細胞腫瘍。 ・膵島へのリンパ球浸潤(膵島炎)は1型糖尿病、アミロイド沈着は2型糖尿病の特徴。
