糸球体はどこにある?―ネフロンの地図とホルモンで読み解く腎臓の基本
第101回医師国家試験 B問題 第38問
国試問題にチャレンジ
腎臓の構造と機能で正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.糸球体は皮質と髄質とに分布している。
- b.抗利尿ホルモンによって尿は濃縮される。
- c.エリスロポエチンは腎臓から分泌される。
- d.アルドステロンはカリウム再吸収を増加させる。
- e.糸球体で濾過されたナトリウムの約10%が再吸収される。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
腎臓は皮質と髄質からなり、糸球体は皮質にのみ存在し、髄質にはHenle係蹄・集合管・直血管が分布します。ADHは集合管のV2受容体からアクアポリン2を介して水の再吸収を増やして尿を濃縮し、アルドステロンはナトリウム再吸収とカリウム・H⁺の分泌を促進するため、過剰になると低カリウム血症をきたします。腎臓はエリスロポエチン、レニン、活性型ビタミンDを産生する内分泌臓器でもあり、慢性腎臓病では腎性貧血や低カルシウム血症、二次性副甲状腺機能亢進症につながります。また、濾過されたナトリウムの99%以上が再吸収され、近位尿細管がその約3分の2を担うという量的な感覚は、FENaの解釈や利尿薬の作用部位の理解に直結します。構造・ホルモン・再吸収の量をセットで押さえることが、腎疾患や電解質異常を理解する土台になります。
解答・解説
正解はb, cです
腎臓の基本的な解剖(ネフロンの配置)と、尿細管機能を調節するホルモン、腎臓自身が産生するホルモンについての基礎知識を問う問題である。 考え方の軸は次の3点である。 1. 構造:腎臓は外側の皮質と内側の髄質からなる。ネフロンのうち糸球体(腎小体)と近位・遠位曲尿細管は皮質にあり、Henle係蹄と集合管が髄質へ伸びる。 2. 尿細管の調節ホルモン:抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)は集合管で水の再吸収を、アルドステロンは集合管でNa再吸収とK・H⁺分泌を促す。 3. 腎臓が産生するホルモン:エリスロポエチン、レニン、活性型ビタミンD〔1,25-(OH)₂D₃〕などがある。 さらにNaの再吸収率のように「濾過量に対してどれだけ再吸収されるか」という量的な感覚も押さえておく必要がある。これらに照らして各選択肢を検討すると、ADHによる尿濃縮と、エリスロポエチンの腎での産生が正しい記述となる。
選択肢考察
- ×a. 糸球体は皮質と髄質とに分布している。
糸球体は腎皮質にのみ存在し、髄質には存在しない。ネフロンは糸球体の位置により、皮質の表層側にある皮質ネフロン(Henle係蹄が短い)と、皮質の深部で皮髄境界近くにある傍髄質ネフロン(Henle係蹄が長く髄質深部まで達し、尿濃縮に重要)に分けられるが、いずれも糸球体自体は皮質内にある。髄質に分布するのはHenle係蹄、集合管、直血管である。誤りである。
- ○b. 抗利尿ホルモンによって尿は濃縮される。
抗利尿ホルモン(ADH、アルギニンバソプレシン)は視床下部で産生され下垂体後葉から分泌される。血漿浸透圧の上昇や循環血液量の減少で分泌が増える。集合管主細胞の基底側膜にあるV2受容体に結合するとcAMPを介して水チャネルのアクアポリン2(AQP2)が管腔側膜へ移動し、水の透過性が高まる。Henle係蹄の対向流系によって作られた高浸透圧の髄質間質へ水が引き込まれて再吸収され、尿は濃縮される。ADHの作用が最大のとき、尿浸透圧は約1,200 mOsm/kg H₂Oまで上昇しうる。正しい。
- ○c. エリスロポエチンは腎臓から分泌される。
エリスロポエチン(EPO)は主に腎皮質の尿細管周囲間質にある線維芽細胞様細胞で産生される糖タンパクホルモンである(成人では約90%が腎由来で、残りは主に肝臓)。腎組織の酸素分圧が低下すると低酸素誘導因子(HIF)を介して産生が増え、骨髄の赤芽球系前駆細胞(CFU-Eなど)の増殖・分化を促して赤血球産生を高める。慢性腎臓病ではEPO産生が低下して腎性貧血をきたすため、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)やHIF-PH阻害薬で治療する。正しい。
- ×d. アルドステロンはカリウム再吸収を増加させる。
アルドステロンは副腎皮質球状層から分泌される鉱質コルチコイドで、主に集合管(皮質集合管)や遠位尿細管後半の主細胞にある鉱質コルチコイド受容体に作用する。管腔側の上皮型Naチャネル(ENaC)と基底側のNa⁺/K⁺-ATPaseを増やしてNa⁺の再吸収を促進し、それに伴う管腔内の電位変化によってK⁺の分泌(尿中排泄)を増加させる。また間在細胞からのH⁺分泌も促す。したがってカリウムの「再吸収」ではなく「分泌」を増加させるのであり、誤りである。原発性アルドステロン症で低カリウム血症をきたすのはこのためである。
- ×e. 糸球体で濾過されたナトリウムの約10%が再吸収される。
糸球体で濾過されたNaの約99%以上が尿細管で再吸収され、尿中に排泄されるのは1%未満である(Na排泄分画〈FENa〉は通常1%未満)。部位別の目安は、近位尿細管で約60〜70%、Henle係蹄の太い上行脚で約20〜25%、遠位曲尿細管で約5〜10%、集合管で約2〜5%である。「約10%」はおおむね遠位曲尿細管での再吸収割合程度にすぎず、全体としての再吸収率としては著しく過小であるため誤りである。
腎臓の構造
腎臓は皮質と髄質(腎錐体)からなり、1側の腎臓に約100万個のネフロンが存在する。ネフロンは腎小体(糸球体+Bowman嚢)と尿細管(近位尿細管→Henle係蹄→遠位尿細管)からなり、複数のネフロンが集合管に合流して腎乳頭から腎杯へ尿を排出する。
腎臓の内分泌機能
・エリスロポエチン:赤血球産生の促進 ・レニン:傍糸球体細胞から分泌され、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を起動する ・活性型ビタミンD:近位尿細管の1α-水酸化酵素により25(OH)D₃が1,25(OH)₂D₃に変換される。腸管からのCa・P吸収を促進する ・その他、プロスタグランジンやカリクレインなども産生する 慢性腎臓病では腎性貧血(EPO低下)や、活性型ビタミンD低下による低Ca血症・二次性副甲状腺機能亢進症が生じる。
尿細管の部位別の主な働き
・近位尿細管:Na・水の大部分、ブドウ糖・アミノ酸のほぼ全量、HCO₃⁻の大部分を再吸収 ・Henle係蹄の太い上行脚:Na⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体(ループ利尿薬の標的)。水は透過しないため、対向流増幅系により髄質の高浸透圧を形成 ・遠位曲尿細管:Na⁺-Cl⁻共輸送体(サイアザイド系利尿薬の標的) ・集合管:アルドステロン(Na再吸収・K分泌)とADH(水再吸収)による最終調節
ADH作用の異常
ADHの分泌不足は中枢性尿崩症、集合管の反応低下は腎性尿崩症となり、いずれも低張の多尿をきたす。逆にADHが不適切に過剰となるとSIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)となり、低Na血症をきたす。
POINT
・糸球体は皮質のみに存在し、髄質にはHenle係蹄・集合管・直血管がある ・ADHは集合管のV2受容体→AQP2を介して水再吸収を増やし尿を濃縮する ・腎臓はエリスロポエチン、レニン、活性型ビタミンDを産生する ・アルドステロンはNa再吸収とK・H⁺分泌(排泄)を促進する ・濾過されたNaの99%以上が再吸収され、近位尿細管がその約2/3を担う
