StudyMed医師国家試験

白い輪が並ぶトンネルの先に―軟骨輪と分岐部で見抜く気管支鏡像

第100回医師国家試験 I問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第100回 I問題 第15問

63歳の男性。血痰と食思不振とを主訴に来院した。この患者の内視鏡写真を別に示す。 部位はどれか。

第100回 I問題 第15問の問題画像
  1. a.喉頭腔
  2. b.気管
  3. c.細気管支
  4. d.食道
  5. e.十二指腸

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、血痰を訴える中高年男性の内視鏡写真を見て、どこを観察しているかを答える問題だ。病名ではなく「部位」を問われている点に注意しよう。カギになるのは、内腔の壁にどんな構造が見えるか、そして奥がどうなっているかの2点だ。
医学生医学生
血痰と食思不振なので、胃や十二指腸から出血していて、それを上部消化管内視鏡で見ているのかと最初は思いました。
ドクタードクター
吐血と血痰の区別は臨床でもよく迷うところだね。ただ、中高年男性の血痰でまず念頭に置くべきなのは肺癌、とくに太い気管支に発生しやすい中心型の扁平上皮癌だ。その場合は気管支鏡で気道の内腔を観察することになる。では写真を言葉にしてみよう。壁には横方向に走る白っぽい輪状の隆起が、一定の間隔で規則正しく並んでいる。
医学生医学生
その輪っかが気になっていました。十二指腸のKerckringひだにも少し似ている気がします。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。でも十二指腸の輪状ひだは軟らかくて高さも不揃いで、粘膜は絨毛のためにビロードのように見える。胆汁を含む液体が見えることも多い。今回の輪はもっと硬そうで等間隔、粘膜は平滑だ。これは粘膜越しに透けて見える軟骨、つまり気管軟骨なんだ。
医学生医学生
解剖学実習で気管を触ったとき、C字形の軟骨が連なっていて、後ろ側だけ柔らかかったのを覚えています。
ドクタードクター
まさにそれが2つ目のポイント。気管軟骨はC字形で、後壁は軟骨を欠く膜様部、平滑筋と結合組織でできている。だから内腔は正円ではなく、輪が途切れる側がやや平坦に見える。そして3つ目、奥を見ると中央の稜線で内腔が左右に分かれかけている。
医学生医学生
それが気管分岐部、カリナですね。その先が左右の主気管支の入口ということですか。
ドクタードクター
その通り。規則的な軟骨輪、平坦な膜様部、奥の分岐部。この3点がそろえば、気管支鏡で気管を見ている像だと判断できる。他の候補も確認しておこう。喉頭腔ならどう見えるかな。
医学生医学生
耳鼻咽喉科の実習でファイバーを見せてもらったときは、喉頭蓋と白い声帯が見えて、声門が三角形の隙間になっていました。
ドクタードクター
よく覚えているね。喉頭では声帯や披裂部が主役で、規則的に並ぶ軟骨輪は見えない。食道はどうだろう。
医学生医学生
食道は軟骨がない筋性の管なので、輪状の構造は見えないはずです。縦走するひだが見えるんでしたっけ。
ドクタードクター
そう。送気しないと内腔は虚脱していて、縦走ひだが見える。上部では大動脈弓や左主気管支による外からの圧排が見えることはあるけれど、軟骨輪そのものは見えないし、奥が分岐することもない。では細気管支は?
医学生医学生
細気管支は軟骨がなくなるところだとCBTの勉強で覚えました。だから軟骨輪が見えるこの像は合わないですね。
ドクタードクター
正解。細気管支は直径およそ1mm以下で壁に軟骨をもたない。そもそも通常の気管支鏡では亜区域支くらいまでしか直接は観察できないんだ。気道は気管、主気管支、葉気管支、区域気管支と分岐するにつれ、軟骨がC字形から不規則な板状になり、細気管支で消失する、と流れで覚えよう。
医学生医学生
軟骨の形の変化で、どの高さの気道かがわかるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。解剖の数字も押さえておきたい。気管は第6頸椎の高さ、輪状軟骨の下縁から始まり、長さ約10〜12cm、胸骨角の高さ、第4〜5胸椎あたりで左右に分岐する。右主気管支は左より太く短く、垂直に近い角度で分かれるから、誤嚥物は右に入りやすい。
医学生医学生
血痰の患者さんでは、気管支鏡で腫瘍を探して生検するんですよね。
ドクタードクター
そうだね。血痰の原因には肺癌のほか、気管支拡張症、肺結核、肺真菌症、気管支炎などがある。喫煙歴のある中高年では肺癌の除外が特に重要で、中心型肺癌は胸部X線で異常がはっきりしないこともある。だから喀痰細胞診や気管支鏡で気道内腔を直接確認し、生検や細胞診で組織診断をつけるんだ。

まとめ

気管支鏡像で、横走する白い輪状の隆起が等間隔に並び、後壁が平坦で、奥に左右へ分かれる稜線が見えれば、気管を観察していると判断できます。これはC字形の気管軟骨、軟骨を欠く膜様部、気管分岐部(カリナ)をそれぞれ反映した所見です。喉頭腔では声帯や喉頭蓋、食道では縦走ひだ、十二指腸では軟らかく不揃いな輪状ひだと絨毛が見られ、細気管支には軟骨がなく通常の気管支鏡では直接観察できません。中高年男性の血痰では肺癌、とくに中心型扁平上皮癌を疑い、胸部X線で異常が乏しくても気管支鏡で気道内腔を評価することが重要です。解剖学の知識を内視鏡像に結びつけて読む力は、画像問題だけでなく実際の検査や手技の理解にも直結します。

解答・解説

正解はbです

臨床背景

63歳男性の血痰と食思不振である。中高年男性の血痰では、まず肺癌(とくに太い気管支に発生しやすい中心型の扁平上皮癌)を念頭に置き、気管支鏡検査で気道内腔を観察する。本問はその内視鏡像から、観察している部位を答える問題である。

画像の読み方

・内腔の壁に、横方向に走る白っぽい輪状の隆起が一定の間隔で規則正しく並んでいる。これは気管軟骨(気管輪)が粘膜越しに透けて見えたものである。 ・内腔は正円ではなく、画像の一側(手前側に並ぶ輪が途切れる側)がやや平坦である。気管軟骨はC字形(馬蹄形)で、後壁は軟骨を欠く膜様部(平滑筋と結合組織)になっているため、このような断面形になる。 ・奥の方で内腔が中央の稜線によって左右に分かれかけているように見え、気管分岐部(カリナ)とその先の左右主気管支の入口に相当する。

結論

規則的な軟骨輪、後壁の膜様部、奥に見える分岐部という3点から、気管支鏡で気管を観察した像と判断できる。消化管のような粘膜ひだや内容物、喉頭の声帯・喉頭蓋などの構造は見られない。

選択肢考察

  1. ×a.  喉頭腔

    喉頭腔を観察すると、喉頭蓋、左右の声帯(白色の帯状構造)、披裂部などが見え、声門は三角形の隙間として認められる。規則的に並ぶ輪状の軟骨の走行は喉頭では見られず、本像とは合わない。

  2. ○b.  気管

    気管は16〜20個程度のC字形の気管軟骨が縦に連なり、内腔から見ると横走する輪状の隆起が等間隔に並ぶ。軟骨を欠く後壁(膜様部)は平坦に見える。さらに奥に気管分岐部(カリナ)と左右主気管支への分かれ目が見えることから、気管の像と確定できる。

  3. ×c.  細気管支

    細気管支は直径約1mm以下の末梢気道で、壁に軟骨をもたない。通常の気管支鏡では亜区域支程度までしか直接観察できず、細気管支の内腔をこのように観察することは困難である。また本像のような明瞭な軟骨輪は細気管支には存在しない。

  4. ×d.  食道

    食道は軟骨をもたない筋性の管で、内視鏡では縦走するひだが見え、送気しないと内腔は虚脱している。規則正しい横走の輪状構造や奥の分岐構造は見られない。胸部食道の上部では左主気管支や大動脈弓による外からの圧排が見えることはあるが、軟骨輪そのものは見えない。

  5. ×e.  十二指腸

    十二指腸では輪状ひだ(ケルクリング襞)が見られるが、粘膜表面は絨毛のためビロード状で、ひだは軟らかく高さも不揃いである。胆汁を含む消化液が見えることも多い。本像の平滑な粘膜と硬い軟骨輪、奥の分岐部とは異なる。

気管の解剖

・輪状軟骨の下縁(第6頸椎の高さ)から始まり、成人で長さ約10〜12cm、直径約2cm。第4〜5胸椎の高さ(胸骨角の高さ)で左右の主気管支に分岐する。 ・前壁と側壁はC字形の気管軟骨(硝子軟骨)が支え、後壁は軟骨を欠く膜様部で、食道の前面に接している。 ・右主気管支は左より太く短く、垂直に近い角度で分岐するため、誤嚥物は右側に入りやすい。

気道の分岐と軟骨

気管 → 主気管支 → 葉気管支 → 区域気管支 → … → 細気管支 → 終末細気管支 → 呼吸細気管支 → 肺胞管・肺胞。気管支では軟骨は板状・不規則になり、細気管支(径約1mm以下)で軟骨は消失する。

血痰と気管支鏡検査

血痰の原因には肺癌、気管支拡張症、肺結核、肺真菌症、気管支炎などがある。喫煙歴のある中高年男性では肺癌の除外が重要であり、胸部X線・CTに加え、気管支鏡で気道内腔の腫瘍の有無を確認し、生検や細胞診で組織診断を行う。中心型肺癌は胸部X線で異常が乏しいこともあり、喀痰細胞診や気管支鏡が有用である。

POINT

・横走する規則的な軟骨輪+平坦な後壁(膜様部)+奥の分岐部(カリナ) → 気管の気管支鏡像。 ・気管軟骨はC字形で後壁は膜様部。細気管支には軟骨がない。 ・気管分岐部は第4〜5胸椎(胸骨角)の高さ。 ・中高年男性の血痰では肺癌を疑い、気管支鏡で気道内腔を評価する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。