右向きでも左向きでも大丈夫―妊娠末期健診で「胎向」が重視されない理由
第100回医師国家試験 G問題 第88問
国試問題にチャレンジ
妊娠末期の妊婦健康診査で重要でないのはどれか。
- a.胎位
- b.胎向
- c.頸管成熟度
- d.児頭下降度
- e.陣痛
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生まとめ
妊娠末期の妊婦健診では、分娩様式を左右する胎位、分娩準備状態を示す頸管成熟度と児頭下降度、分娩開始を示す陣痛が重要な評価項目となります。胎位は頭位・骨盤位・横位の区別で経腟分娩の可否に直結し、頸管成熟度と児頭下降度はBishopスコアの構成要素として分娩時期や誘発の成否の予測に使われます。一方、胎向は児背が母体の左右どちらにあるかを示すもので、第1・第2胎向のいずれも正常であり分娩方針を変えないため重視されません。分娩中に問題となるのは胎向ではなく回旋異常や反屈位などの胎勢の異常です。胎位・胎向・胎勢の定義を区別し、その情報が臨床判断を変えるかという視点で整理することが、産科の理解の土台になります。
解答・解説
正解はbです
妊娠末期(妊娠28週以降)の妊婦健康診査は、分娩が近づいた時期に「どのような分娩になりそうか」「分娩の準備がどの程度整っているか」「分娩がすでに始まっていないか」を確認する場である。そのため評価の中心は、(1) 胎児の産道に対する位置関係のうち分娩様式を左右するもの、(2) 子宮頸管や児頭の状態から見た分娩準備状態(Bishopスコアなど)、(3) 陣痛の有無、である。 胎児の子宮内での位置を表す用語は区別して覚える必要がある。胎位は胎児の縦軸と子宮の縦軸の関係(縦位=頭位・骨盤位、横位、斜位)、胎向は児背(横位では児頭)が母体の左右どちらを向いているか(左側が第1胎向、右側が第2胎向)、胎勢は胎児の姿勢(屈位・反屈位)である。このうち胎位は経腟分娩の可否に直結するが、胎向は左右どちらであっても正常であり、分娩の経過や方針を変えない。したがって妊娠末期の健診で重要でないものとして胎向が選ばれる。
選択肢考察
- ×a. 胎位
胎位は分娩様式を決める最も基本的な情報であり、妊娠末期に必ず確認する。頭位であれば通常は経腟分娩を目指すが、骨盤位(いわゆる逆子)では臍帯脱出や後続児頭の娩出困難などのリスクがあり、帝王切開や外回転術を検討する。横位は経腟分娩が不可能で、放置すると子宮破裂や臍帯脱出の危険があるため帝王切開の適応となる。レオポルド触診法や超音波検査で評価する。
- ○b. 胎向
胎向は児背が母体の左側にあるか(第1胎向)右側にあるか(第2胎向)を示すもので、第1胎向の方が頻度は高いが、どちらでも正常である。胎向の違いによって分娩の難易度や新生児のリスク、分娩方針が変わることはないため、妊娠末期の健診で重視する項目ではない。なお胎向は胎児心音を最もよく聴取できる位置の目安にはなる。分娩中に問題となるのは胎向ではなく、児頭の回旋異常(後方後頭位や低在横定位など)や反屈位といった胎勢・回旋の異常である。
- ×c. 頸管成熟度
分娩が近づくと子宮頸管は軟化し、短縮(展退)、開大し、位置が後方から前方へ移動する。この変化を頸管成熟と呼び、Bishopスコア(子宮口開大度、頸管展退度、児頭の位置〈station〉、頸管の硬さ、子宮口の位置の5項目、13点満点)で評価する。点数が高いほど頸管が熟化して分娩が近く、分娩誘発の成功も見込みやすい(一般に9点以上で熟化と判断する)。分娩時期の予測や誘発の判断に不可欠である。
- ×d. 児頭下降度
児頭下降度は、児頭の先進部が坐骨棘を結ぶ線からどれだけ上下にあるか(station、坐骨棘の高さを0として cm で表す)で評価し、Bishopスコアの項目にも含まれる。初産婦では妊娠末期に児頭が骨盤入口に固定されてくるのが通常であり、分娩直前になっても児頭が浮動している場合には児頭骨盤不均衡(CPD)などを疑う手がかりになる。分娩の進行や経腟分娩の可能性の予測に重要である。
- ×e. 陣痛
陣痛の有無と性状(間隔・持続・強さ・規則性)は妊娠末期の重要な観察事項である。規則的な陣痛がおおむね10分以内の間隔(または1時間に6回以上)となった時点が分娩開始とされ、入院管理に移る。妊娠37週未満であれば切迫早産として治療を要し、また不規則で分娩に進まない前駆陣痛との区別も必要である。分娩監視装置(胎児心拍陣痛図)で子宮収縮と胎児心拍を同時に評価する。
胎児の位置に関する用語
・胎位: 胎児の縦軸と子宮の縦軸の関係。縦位(頭位・骨盤位)、横位、斜位。頭位が約95%を占める。 ・胎向: 縦位では児背、横位では児頭が母体の左右どちらにあるか。左側が第1胎向、右側が第2胎向。 ・胎勢: 胎児の姿勢。頤が胸につく屈位が正常で、反屈位(前頭位・額位・顔位)は分娩が困難になりやすい。 ・胎向の細分類: 児背が前方にあれば第1分類、後方にあれば第2分類とする。
Bishopスコア(頸管成熟度の評価)
子宮口開大度(0〜3点)、頸管展退度(0〜3点)、児頭の位置(station、0〜3点)、頸管の硬さ(0〜2点)、子宮口の位置(0〜2点)の合計で最高13点。点数が高いほど頸管は熟化している。
妊娠末期の健診で確認する主な項目
血圧、尿蛋白・尿糖、体重、浮腫、子宮底長・腹囲、胎位、胎児心拍、胎児発育(超音波)、羊水量、内診による頸管成熟度と児頭下降度、陣痛・破水・性器出血の有無、胎動の自覚。妊娠36週以降は週1回の健診が標準である。
POINT
・胎位(頭位・骨盤位・横位)は分娩様式に直結し重要、胎向(第1・第2胎向)はどちらでも正常で分娩経過に影響しない。 ・頸管成熟度と児頭下降度はBishopスコアの構成項目で、分娩時期と誘発の成否を予測する。 ・規則的な陣痛の発来は分娩開始を意味し、入院管理の判断に直結する。 ・胎位・胎向・胎勢の定義を正確に区別すること。
