内膜・中膜・外膜―血管壁の「3層」と境界線を一枚の切片で読み解く
第100回医師国家試験 G問題 第39問
国試問題にチャレンジ
血管の構造で正しいのはどれか。
- a.動脈壁は4層からなる。
- b.動脈では外膜が最も厚い層である。
- c.外膜は平滑筋細胞からなる。
- d.中膜と外膜とは内弾性板で区切られている。
- e.血管壁の内腔側は単層の内皮細胞からなる。
対話形式の解説
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医学生まとめ
血管壁は内腔側から内膜・中膜・外膜の3層からなり、内膜と中膜の境界には内弾性板、中膜と外膜の境界には外弾性板があります(弾性板は層として数えません)。内膜の内腔面は単層扁平の内皮細胞で覆われ、NOやプロスタサイクリンの産生を通じて血管拡張や抗血栓性を担います。中膜は平滑筋と弾性線維からなり動脈で最も厚く、外膜は膠原線維主体の結合組織で、太い静脈では最も厚い層となります。弾性型動脈・筋型動脈・細動脈での中膜の違いや、粥状硬化(内膜)・大動脈解離(中膜)といった病変の場との対応まで押さえると、組織学の知識を病理や臨床の理解につなげることができます。
解答・解説
正解はeです
血管壁の基本構造を問う組織学の問題である。 毛細血管を除く動脈・静脈の壁は、内腔側から順に内膜(tunica intima)、中膜(tunica media)、外膜(tunica adventitia/externa)の3層で構成される。 ・内膜: 血液に接する単層扁平の内皮細胞と、それを支える薄い内皮下結合組織からなる。 ・中膜: 平滑筋細胞と弾性線維・膠原線維からなり、血管の収縮・拡張と弾性を担う。 ・外膜: 膠原線維・弾性線維を主体とする疎性結合組織で、血管を周囲組織につなぎ留める。太い血管では栄養血管(vasa vasorum)や神経が走る。 層と層の境界には弾性線維の膜が存在する。内膜と中膜の間にあるのが内弾性板、中膜と外膜の間にあるのが外弾性板である。とくに筋型動脈(中等大の動脈)では内弾性板が明瞭で、組織切片では波打つ好酸性の線として見える。 動脈は高い内圧に耐え、血流量を調節する必要があるため中膜が発達し、3層のうち中膜が最も厚い。一方、静脈は内圧が低いため中膜が薄く、太い静脈では外膜が最も厚い層となる。 この構造を押さえれば、「3層」「中膜が最厚(動脈)」「外膜は結合組織」「内弾性板は内膜と中膜の境界」「内腔面は単層内皮」という5つの事実から各選択肢を判定できる。
選択肢考察
- ×a. 動脈壁は4層からなる。
誤り。動脈壁は内膜・中膜・外膜の3層構造である。内弾性板や外弾性板は層の境界をなす弾性線維の膜であり、独立した層としては数えない。
- ×b. 動脈では外膜が最も厚い層である。
誤り。動脈で最も厚いのは中膜である。中膜は平滑筋細胞と弾性線維が同心円状に重なった層で、高い血圧に抗して壁を支え、血管径を変えて血流を調節する。大動脈のような弾性型動脈では中膜に弾性板が多数層状に重なり、筋型動脈では平滑筋が主体となる。外膜が最も厚くなるのは太い静脈(大静脈など)であり、動脈と静脈を取り違えないことが大切である。
- ×c. 外膜は平滑筋細胞からなる。
誤り。平滑筋細胞を主体とするのは中膜である。外膜は膠原線維と弾性線維を主体とする結合組織で、線維芽細胞を含み、血管を周囲に固定する役割をもつ。太い血管の外膜には壁自体を栄養する血管(vasa vasorum)や自律神経線維が分布する。なお大静脈の外膜には縦走する平滑筋束がみられることがあるが、外膜の基本構成は結合組織である。
- ×d. 中膜と外膜とは内弾性板で区切られている。
誤り。中膜と外膜の境界にあるのは外弾性板である。内弾性板は内膜と中膜の境界に位置する弾性線維の膜で、筋型動脈で特に発達している。外弾性板は内弾性板に比べ不明瞭なことが多い。
- ○e. 血管壁の内腔側は単層の内皮細胞からなる。
正解。血管の内腔面は、一層の扁平な内皮細胞(単層扁平上皮)で覆われている。内皮は動脈・静脈・毛細血管・リンパ管に共通し、毛細血管では内皮と基底膜(および周皮細胞)のみで壁ができている。内皮細胞は単なる裏打ちではなく、一酸化窒素(NO)やプロスタサイクリンを産生して血管拡張・抗血栓性を保ち、物質透過や白血球接着の調節にも関わる。
動脈の種類と中膜の特徴
・弾性型動脈(大動脈、肺動脈など心臓に近い太い動脈): 中膜に多数の弾性板が層状に配列する。収縮期に伸展してエネルギーを蓄え、拡張期に戻って血流を連続的にする(ふいご・Windkessel作用)。 ・筋型動脈(橈骨動脈、冠動脈など中等大の動脈): 中膜は平滑筋が主体で、内弾性板が明瞭。血流配分を調節する。 ・細動脈: 平滑筋が1〜数層で、末梢血管抵抗の主な調節部位である。
静脈の特徴
・動脈に比べ壁が薄く中膜の平滑筋が少ない。太い静脈では外膜が最も厚い。 ・四肢の静脈には内膜のひだからなる静脈弁があり、逆流を防ぐ。
毛細血管
・内皮細胞と基底膜のみからなり、周皮細胞(pericyte)が取り巻く。構造により連続型、有窓型、洞様(不連続型)に分けられる。
臨床との関連
・動脈硬化(粥状硬化)は主に内膜に脂質が沈着して生じる病変である。 ・大動脈解離は中膜が裂けて偽腔が形成される病態で、中膜の変性(中膜嚢胞状壊死など)が背景となる。
POINT
・血管壁は内膜・中膜・外膜の3層構造 ・内膜と中膜の境界=内弾性板、中膜と外膜の境界=外弾性板 ・動脈で最も厚いのは中膜(平滑筋と弾性線維)、太い静脈では外膜が最も厚い ・外膜は結合組織が主体(vasa vasorumや神経が走る) ・内腔面は単層扁平の内皮細胞で覆われ、NO産生などの機能をもつ
