StudyMed医師国家試験

子宮内膜に「移行上皮」はない―外から内へたどる女性生殖器の上皮地図

第100回医師国家試験 G問題 第32問

国試問題にチャレンジ

第100回 G問題 第32問

組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.腟粘膜 ―― 重層扁平上皮
  2. b.子宮頸管腺 ―― 円柱上皮
  3. c.子宮内膜 ―― 移行上皮
  4. d.子宮体部筋層 ―― 平滑筋細胞
  5. e.卵管粘膜 ―― 線毛上皮

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は女性生殖器の各部位と、それを覆う上皮や構成組織の組合せを問う組織学の問題だ。誤っているものを一つ選ぶ形式だね。コツは、外界に近い部位から奥へと順にたどって、部位ごとの「役割」と上皮の形を結びつけることだよ。
医学生医学生
組織学実習でプレパラートを見ましたが、正直、部位ごとの上皮は混ざって覚えてしまっています。
ドクタードクター
それなら原則から考えよう。こすれや機械的刺激を受ける場所は丈夫な重層扁平上皮、分泌や輸送を担う場所は単層円柱上皮になる。この流れでまず腟を考えてみて。
医学生医学生
腟は性交や分娩で強い刺激を受けるので、重層扁平上皮ですね。
ドクタードクター
その通り。ただし皮膚と違って通常は角化しない非角化型だ。エストロゲンで上皮が厚くなり、表層細胞はグリコーゲンを豊富に含む。これを乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)が乳酸に変えて、腟内をpH4前後の酸性に保つ。これが腟の自浄作用だよ。
医学生医学生
閉経後に萎縮性腟炎が起きやすいのは、エストロゲンが減ってこの仕組みが弱まるからなんですね。
ドクタードクター
よくつながったね。次は子宮頸管。頸管腺が円柱上皮という組合せはどうかな。
医学生医学生
頸管粘液を出すところなので、粘液を分泌する円柱上皮で正しいと思います。
ドクタードクター
正しい。排卵期にはエストロゲンの作用で頸管粘液が増え、透明で糸を引くようになって精子の通過を助ける。それから臨床で大事なのが、子宮腟部の重層扁平上皮と頸管の円柱上皮が接する扁平円柱上皮境界、SCJだ。その近くで扁平上皮化生が起こる移行帯は子宮頸癌の好発部位なんだ。
医学生医学生
婦人科の実習で細胞診の採取を見学したとき、先生がこの境界をねらってブラシを当てていました。
ドクタードクター
まさにそこを採っているんだ。では子宮内膜はどうだろう。
医学生医学生
移行上皮…。子宮頸部に「移行帯」があるので、内膜も移行上皮でいい気がしてしまいました。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。「移行帯」は扁平上皮と円柱上皮が入れ替わる領域の名前で、上皮の種類の名前ではない。子宮内膜の表面は単層円柱上皮で、分泌細胞に線毛細胞が混じる。その下には内膜間質があり、単層円柱上皮でできた管状の子宮腺がたくさん入り込んでいる。移行上皮、つまり尿路上皮は、腎杯・腎盂から尿管、膀胱、尿道の近位部にかけての尿路に特有の上皮なんだ。
医学生医学生
尿をためて伸び縮みする臓器のための上皮だから、生殖器にはないんですね。これが誤りの組合せだとわかりました。
ドクタードクター
そう、これが正解だ。残りも確認しよう。子宮体部の筋層は平滑筋細胞という組合せだ。
医学生医学生
子宮筋腫が平滑筋由来の良性腫瘍なので、筋層は平滑筋で正しいですね。
ドクタードクター
正しい。子宮壁は内膜・筋層・漿膜の3層からなり、筋層が最も厚く、平滑筋の束が縦・輪・斜めに交錯して走る。妊娠中は平滑筋細胞が肥大・増生して子宮が大きくなり、分娩時はオキシトシンで収縮して胎児を娩出する。産後は筋層の収縮が胎盤剝離面の止血に欠かせない。弛緩出血を思い浮かべるといいね。
医学生医学生
卵管粘膜の線毛上皮は、卵子や受精卵を子宮へ運ぶための線毛だと理解しています。
ドクタードクター
その理解でいい。卵管粘膜は線毛細胞と分泌細胞などからなる単層円柱上皮で、線毛運動は子宮方向に向かっている。粘膜のひだは特に膨大部でよく発達しているよ。炎症後の癒着や線毛機能の障害は、卵管性不妊や卵管妊娠の原因になる。
医学生医学生
外陰から卵管まで、重層扁平上皮から円柱上皮へと切り替わっていく流れで整理できました。
ドクタードクター
最後に発展知識を。子宮内膜は機能層と基底層からなり、機能層は増殖期にエストロゲンで厚くなって腺がまっすぐ伸び、排卵後の分泌期にはプロゲステロンで腺が屈曲・拡張し、間質が浮腫状になって着床に備える。黄体が退縮してホルモンが下がると、機能層が剝がれて月経になる。基底層は残って次の周期の再生の源になるんだ。上皮の種類だけでなく、こうした機能とあわせて覚えると忘れにくいよ。

まとめ

女性生殖器の上皮は、機械的刺激を受ける外側ほど重層扁平上皮、分泌・輸送を担う内側ほど単層円柱上皮という原則で整理できます。腟・子宮腟部は非角化型重層扁平上皮、子宮頸管は粘液分泌性の円柱上皮、子宮内膜は線毛細胞を混じる単層円柱上皮と子宮腺、卵管は線毛細胞をもつ単層円柱上皮、子宮筋層は平滑筋からなります。移行上皮(尿路上皮)は腎盂・尿管・膀胱など尿路に特有であり、子宮内膜にはみられないため、これが誤った組合せです。扁平円柱上皮境界付近の移行帯が子宮頸癌の好発部位であること、筋層の平滑筋から子宮筋腫が生じることなど、組織学の知識は婦人科疾患の理解や検査の意味づけに直結します。

解答・解説

正解はcです

問われているテーマ

女性生殖器の各部位を覆う上皮・構成組織の組合せを問う組織学の問題である。「誤っているのはどれか」という形式なので、組合せとして正しくないものを一つ選ぶ。

考え方

女性生殖器の上皮は、外界に近く機械的刺激を受ける部位ほど丈夫な重層扁平上皮、内側の分泌や輸送を担う部位ほど単層円柱上皮になる、という流れで整理するとわかりやすい。 ・腟〜子宮腟部(外子宮口より外側): 重層扁平上皮 ・子宮頸管: 粘液を分泌する単層円柱上皮 ・子宮内膜: 単層円柱上皮(一部に線毛細胞)と、その下の内膜間質・子宮腺 ・卵管: 線毛細胞と分泌細胞からなる単層円柱上皮 ・子宮の壁の主体(筋層): 平滑筋 移行上皮(尿路上皮)は腎盂・尿管・膀胱・尿道の一部など尿路に特有の上皮であり、女性生殖器の上皮には通常みられない。したがって「子宮内膜 ―― 移行上皮」が誤った組合せである。

選択肢考察

  1. ×a.  腟粘膜 ―― 重層扁平上皮

    正しい組合せである。腟粘膜は重層扁平上皮に覆われ、性交や分娩時の機械的刺激から組織を守っている。皮膚と異なり通常は明らかな角化を示さない(非角化型)が、エストロゲンの作用で上皮が厚くなり、表層細胞はグリコーゲンを豊富に含む。このグリコーゲンを乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)が乳酸に変えることで腟内は酸性(pH 4前後)に保たれ、病原菌の増殖が抑えられる(腟の自浄作用)。

  2. ×b.  子宮頸管腺 ―― 円柱上皮

    正しい組合せである。子宮頸管の内面と頸管腺は、丈の高い粘液分泌性の単層円柱上皮で構成される。頸管粘液は排卵期にはエストロゲンの作用で量が増えて透明・牽糸性が高くなり、精子の通過を助ける。子宮腟部の重層扁平上皮と頸管の円柱上皮が接する部分を扁平円柱上皮境界(SCJ)といい、その近くの扁平上皮化生が起こる領域(移行帯)は子宮頸癌の好発部位である。

  3. ○c.  子宮内膜 ―― 移行上皮

    誤った組合せであり、これが正解である。子宮内膜の表面を覆う上皮は単層円柱上皮で、分泌細胞に線毛細胞が混在する。上皮の下には内膜間質があり、そこに単層円柱上皮からなる管状の子宮腺が多数存在する。移行上皮(尿路上皮)は尿の貯留に伴う伸展に対応できる尿路特有の上皮で、子宮内膜にはみられない。

  4. ×d.  子宮体部筋層 ―― 平滑筋細胞

    正しい組合せである。子宮壁は内側から内膜・筋層・漿膜(外膜)の3層からなり、筋層は子宮壁で最も厚い層で平滑筋細胞の束が縦・輪・斜めに交錯して走行している。妊娠中はエストロゲンなどの作用で平滑筋細胞が肥大・増生し、子宮は大きく増大する。分娩時にはオキシトシンの作用で収縮して胎児を娩出し、産後は筋層の収縮が胎盤剝離面の止血に重要な役割を果たす。平滑筋由来の良性腫瘍が子宮筋腫である。

  5. ×e.  卵管粘膜 ―― 線毛上皮

    正しい組合せである。卵管粘膜は単層円柱上皮で、線毛細胞、分泌細胞(無線毛細胞)、小桿細胞(介在細胞)からなる。線毛細胞の線毛運動は子宮方向へ向かっており、卵管の蠕動運動とともに卵子や受精卵を子宮へ運ぶ。卵管粘膜は多数のひだを形成し、特に膨大部で発達している。線毛の機能障害や炎症後の癒着は卵管性不妊や異所性妊娠(卵管妊娠)の原因となる。

女性生殖器の上皮のまとめ

・外陰: 角化型重層扁平上皮(皮膚) ・腟: 非角化型重層扁平上皮(グリコーゲンに富む) ・子宮腟部: 非角化型重層扁平上皮 ・子宮頸管: 粘液分泌性単層円柱上皮 ・子宮内膜: 単層円柱上皮(線毛細胞を混じる)+内膜間質+子宮腺 ・卵管: 単層円柱上皮(線毛細胞・分泌細胞) ・卵巣表面: 単層の立方〜扁平上皮(表層上皮)

子宮内膜の周期的変化

子宮内膜は機能層と基底層からなる。機能層は性ホルモンの影響で周期的に変化し、月経時に剝がれ落ちる。基底層は剝脱せず、次の周期の再生の源となる。 ・増殖期: エストロゲンの作用で内膜が厚くなり、子宮腺は直線的に伸びる ・分泌期: 排卵後のプロゲステロンの作用で腺が屈曲・拡張し、グリコーゲンなどを分泌する。間質は浮腫状となり着床に備える(脱落膜様変化) ・月経期: 黄体の退縮によりホルモンが低下し、らせん動脈の収縮を経て機能層が剝脱する

移行上皮(尿路上皮)がみられる部位

腎杯・腎盂、尿管、膀胱、尿道の近位部。伸展時には細胞層が薄く、収縮時には厚くみえるのが特徴で、表層には大型の被蓋細胞(アンブレラ細胞)がある。

POINT

・腟・子宮腟部=重層扁平上皮、子宮頸管=粘液分泌性円柱上皮、子宮内膜=単層円柱上皮、卵管=線毛を持つ単層円柱上皮 ・子宮筋層は平滑筋、子宮筋腫はこの平滑筋由来の良性腫瘍 ・移行上皮(尿路上皮)は尿路(腎盂・尿管・膀胱・尿道近位)に特有 ・扁平円柱上皮境界付近の移行帯は子宮頸癌の好発部位

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。