StudyMed医師国家試験

18番が3本並ぶとき―核型から読み解くEdwards症候群の厳しい予後

第100回医師国家試験 B問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第100回 B問題 第5問

羊水染色体検査結果の写真を示す。 正しいのはどれか。

第100回 B問題 第5問の問題画像
  1. a.巨大児が多い。
  2. b.羊水過少が多い。
  3. c.児は猫のように泣く。
  4. d.表現型は女児である。
  5. e.生後6か月の生存率は低い。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は羊水染色体検査の核型写真から疾患を同定し、その臨床像を問う問題だ。着眼点は2つ。どの番号の染色体の本数がおかしいか、そして性染色体を見落とさないこと。まず写真をどう読むかな。
医学生医学生
番号順に並べて数えていくと、18番だけが3本あります。18トリソミー、Edwards症候群ですね。
ドクタードクター
その通り。羊水中の胎児由来細胞を培養して、分裂中期の染色体をGバンド法で染め分けたものだ。では性染色体はどうだった?
医学生医学生
あ、そこはあまり見ていませんでした。18トリソミーは女児に多いと覚えていたので、なんとなく女の子かと……。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴だね。性染色体はXとYが1本ずつで、核型は47,XY,+18。Y染色体上のSRY遺伝子によって精巣が分化するから、表現型は男児だ。確かに出生児では女児に多いとされるけれど、それは男児の胎児が子宮内で亡くなりやすいためで、目の前の核型を読むことが最優先になる。
医学生医学生
疫学の知識で写真を上書きしちゃいけないんですね。気をつけます。
ドクタードクター
次に胎児期の特徴。18トリソミーでは子宮内発育不全が多い。出生体重はどうなると思う?
医学生医学生
発育が悪いなら低出生体重ですよね。巨大児は逆で、母体糖尿病やBeckwith-Wiedemann症候群で出てくるものだと思います。
ドクタードクター
正解。在胎週数に比べて小さいSGA児として生まれることが多い。では羊水量はどうだろう。
医学生医学生
産婦人科の講義で、羊水過少は腎無形成のPotter症候群とか前期破水で起こると習いました。18トリソミーは…腎奇形もあるなら羊水過少でしょうか。
ドクタードクター
惜しいけれど、18トリソミーではむしろ羊水過多が多い。羊水は胎児が飲み込んで処理しているから、小顎や中枢神経の異常で嚥下がうまくできなかったり、食道閉鎖を合併したりすると羊水がたまるんだ。腎奇形もありうるけれど、全体としては羊水過多の傾向と覚えておこう。
医学生医学生
「飲めない胎児は羊水過多」ですね。猫のように泣く、というのは別の病気でしたよね。
ドクタードクター
そう、それは5番染色体短腕の部分欠失による猫鳴き症候群、5p−症候群だ。喉頭の形態異常による甲高い泣き声が特徴で、核型なら5番の片方の短腕が短く見える。今回の写真とは所見が違うね。
医学生医学生
そうすると残るのは生後6か月の生存率が低い、という選択肢ですね。
ドクタードクター
その通り、これが正解だ。18トリソミーは心室中隔欠損などの先天性心疾患を約9割に合併し、食道閉鎖、中枢神経の異常、中枢性無呼吸なども多い。生存期間の中央値は数日から2週間程度とされ、1歳まで生きられるのは1割前後と報告されている。
医学生医学生
小児科の実習でNICUを回ったとき、18トリソミーの赤ちゃんのご家族と治療方針を話し合う場面に立ち会いました。心臓手術をするかどうか、とても悩まれていました。
ドクタードクター
大事な経験をしたね。近年は心臓手術などの積極的治療で長期生存する例も報告されていて、一律に治療を控える時代ではなくなっている。だからこそ、予後の見通しを正確に伝えたうえで、家族と一緒に方針を考える姿勢が求められるんだ。
医学生医学生
外表所見も覚えておきたいです。手の指が重なる握り方が有名でしたよね。
ドクタードクター
そう、第2指が第3指に、第5指が第4指に重なる独特の握り方だ。ほかに後頭部突出、小顎、耳介低位、胸骨短小、揺り椅子状足底などがある。三大トリソミーで比べると、21トリソミーは筋緊張低下や心内膜床欠損、十二指腸閉鎖があって予後は比較的良好、13トリソミーは全前脳胞症、口唇口蓋裂、多指症が特徴で予後不良だ。
医学生医学生
羊水検査自体についても確認させてください。NIPTで陽性なら、それで確定ですか。
ドクタードクター
いいえ、NIPTは母体血を使う非確定的検査だから、陽性なら羊水検査などで確定する必要がある。羊水検査は妊娠15〜18週ごろに行う確定検査だけれど、0.3%程度の流産リスクがある。検査の前後には遺伝カウンセリングを丁寧に行うことも忘れないでほしい。

まとめ

羊水染色体検査の核型で18番染色体が3本あれば18トリソミー(Edwards症候群)であり、性染色体まで確認して47,XY,+18なら表現型は男児と判断します。18トリソミーは胎児発育不全による低出生体重、嚥下障害や食道閉鎖による羊水過多を特徴とし、先天性心疾患を約9割に合併するため生命予後は極めて不良で、1歳時の生存率は1割前後とされます。猫のような泣き声は5p−症候群、羊水過少はPotter症候群や前期破水でみられる所見であり、混同しないよう整理が必要です。手指の重なりや揺り椅子状足底などの外表所見、21・13トリソミーとの比較もあわせて押さえておきましょう。核型を正確に読み、予後を踏まえて家族と方針を話し合う力は、出生前診断や新生児医療の現場で欠かせません。

解答・解説

正解はeです

核型の読み取り

写真は羊水中の胎児由来細胞を培養し、分裂中期の染色体をGバンド法で染めて番号順に並べた核型(カリオタイプ)である。1〜17番、19〜22番の常染色体はそれぞれ2本ずつであるが、18番染色体のみ3本存在する。性染色体はXとYが1本ずつである。したがって核型は47,XY,+18であり、18トリソミー(Edwards症候群)の男児と診断できる。

設問の考え方

18トリソミーの臨床像(胎児期・新生児期の特徴と生命予後)を問う問題である。18トリソミーは子宮内発育不全を伴うことが多く、低出生体重で生まれる。胎児期には嚥下運動の低下などにより羊水過多を合併しやすい。心疾患(心室中隔欠損など)をはじめとする重い合併奇形が多く、生命予後は不良で、多くが乳児期早期に死亡する。これらの知識をもとに各選択肢を判断する。また、核型の性染色体を見落とさないことも本問のポイントである。

選択肢考察

  1. ×a.  巨大児が多い。

    18トリソミーでは胎児発育不全(FGR)が高頻度にみられ、在胎週数に比して小さい低出生体重児(SGA児)として生まれることが多い。巨大児(出生体重4,000g以上)とは逆である。巨大児は母体の糖尿病、Beckwith-Wiedemann症候群などでみられる。

  2. ×b.  羊水過少が多い。

    18トリソミーではむしろ羊水過多を合併することが多い。胎児の嚥下運動の低下(小顎・小口などの顔面の形態異常や中枢神経機能の異常による)や、合併する食道閉鎖などが、胎児が羊水を飲み込んで処理することを妨げるためと考えられる。羊水過少は、両側腎無形成(Potter症候群)などの尿路異常、前期破水、胎盤機能不全などでみられる。

  3. ×c.  児は猫のように泣く。

    新生児期に子猫のような甲高い泣き声を示すのは、5番染色体短腕の部分欠失による猫鳴き症候群(5p−症候群、cri-du-chat症候群)である。喉頭の形態異常によるとされ、小頭、円形顔貌、両眼開離、知的障害などを伴う。18トリソミーの特徴ではない。

  4. ×d.  表現型は女児である。

    核型の性染色体はXとYが1本ずつ(XY)であり、Y染色体上のSRY遺伝子により精巣が分化するため、表現型は男児である。なお18トリソミーは出生児では女児に多い(男児の胎児は子宮内で死亡しやすいため)とされるが、本問の核型は男性型である。

  5. ○e.  生後6か月の生存率は低い。

    18トリソミーは、先天性心疾患(心室中隔欠損、動脈管開存など)、食道閉鎖などの消化管奇形、中枢神経の異常、中枢性無呼吸などを高率に合併し、生命予後が極めて不良である。生存期間の中央値は数日〜2週間程度とされ、約半数が生後1〜2週以内に、大多数が1歳までに死亡する(1歳時の生存率は1割前後)。したがって生後6か月の生存率は低い。近年は心臓手術などの積極的治療により長期生存例も報告されているが、全体としての予後不良に変わりはない。

羊水染色体検査

妊娠15〜18週ごろに経腹的に羊水を採取(羊水穿刺)し、羊水中の胎児由来細胞を培養して核型を調べる確定的な出生前診断である。流産のリスク(約0.3%程度とされる)がある。採取時期がより早い方法として絨毛検査があり、非侵襲的な方法として母体血を用いる非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)があるが、NIPTは非確定的検査であり、陽性の場合は羊水検査などで確定する。

18トリソミー(Edwards症候群)の特徴

・頻度:出生3,500〜8,000人に1人程度。母体年齢が高いほど増加する。出生児では女児に多い。 ・胎児期:胎児発育不全、羊水過多、心奇形、手の握りこみ、単一臍帯動脈などが超音波で指摘されることがある。 ・外表所見:後頭部突出、小顎、耳介低位・変形、胸骨短小、特徴的な手指の重なり(第2指が第3指に、第5指が第4指に重なる握り方)、揺り椅子状足底(rocker-bottom foot)、短い母趾など。 ・合併症:先天性心疾患(約90%)、食道閉鎖、臍帯ヘルニア、腎奇形、重度の精神運動発達遅滞、無呼吸発作。 ・予後:生存期間中央値は数日〜2週間程度で、1年生存率は1割前後と不良。

三大常染色体トリソミーの比較

・21トリソミー(Down症候群):最多(約700〜1,000出生に1人)。筋緊張低下、特徴的顔貌、心内膜床欠損、十二指腸閉鎖、白血病。生命予後は比較的良好。 ・18トリソミー(Edwards症候群):手指の重なり、揺り椅子状足底、心疾患。予後不良。 ・13トリソミー(Patau症候群):全前脳胞症、口唇口蓋裂、小眼球症、多指症、頭皮欠損。予後不良。

猫鳴き症候群との区別

5p−(5番染色体短腕の部分欠失)による。甲高い猫様の泣き声、小頭症、知的障害。核型では5番染色体の片方の短腕が短く見える。

POINT

・核型で18番が3本、性染色体XY → 47,XY,+18(18トリソミー、男児)。性染色体の確認を忘れない。 ・18トリソミー:胎児発育不全による低出生体重、羊水過多、心奇形(約90%)、手指の重なり、揺り椅子状足底。 ・生命予後は極めて不良で、大多数が1歳までに死亡する。 ・猫のような泣き声は5p−症候群(猫鳴き症候群)。 ・羊水過少はPotter症候群、前期破水、胎盤機能不全などでみられる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。