痛い、たくさん、すぐ出る―外陰ヘルペスを性感染症の「対比」で見抜く
第100回医師国家試験 B問題 第45問
国試問題にチャレンジ
外陰ヘルペスで正しいのはどれか。
- a.潜伏期は約3週である。
- b.単発性の水疱を生じる。
- c.有痛性びらんを形成する。
- d.肝周囲炎に進展する。
- e.細胞診で核周囲空胞を認める。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
外陰ヘルペス(性器ヘルペス)は単純ヘルペスウイルス1型・2型による性感染症で、小水疱が集簇して多発し、破れて強い痛みを伴う浅いびらん・潰瘍となるのが特徴です。初感染の潜伏期は数日〜1週間前後と短く、その後は仙骨神経節に潜伏感染して再発を繰り返します。潜伏期約3週・単発・無痛性は梅毒、肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)はクラミジア・淋菌、細胞診のコイロサイトはHPVの所見であり、ヘルペスでは多核巨細胞や核内封入体がみられます。治療は抗ヘルペスウイルス薬で、分娩時に産道に病変がある場合などは新生児ヘルペス予防のため帝王切開が推奨されます。性器病変を「痛みの有無」「数」「潜伏期」で対比して整理することは、性感染症の鑑別全体の土台になります。
解答・解説
正解はcです
外陰ヘルペス(性器ヘルペス)の臨床像を問う一般問題である。性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルス(HSV)の1型または2型による性感染症で、性器に多数の小さな水疱ができ、それが破れて痛みの強い浅い潰瘍(びらん)になるのが基本的な経過である。 選択肢を検討するには、次の3点を押さえておくとよい。(1) 潜伏期は短く、感染から数日〜1週間前後で発症する。(2) 皮疹は小水疱が集まって多発し、破れて有痛性のびらん・潰瘍になる。(3) 細胞診・病理ではウイルス感染による多核巨細胞と核内封入体がみられる。 誤りの選択肢には他の性感染症の特徴が混ぜ込まれている。肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)はクラミジアや淋菌の上行感染、核周囲空胞をもつ細胞(コイロサイト)はヒトパピローマウイルス(HPV)感染の所見である。性感染症ごとの特徴を対比して整理しておくことが重要である。
選択肢考察
- ×a. 潜伏期は約3週である。
HSVによる性器ヘルペスの初感染では、感染機会から2〜10日程度(多くは数日〜1週間前後)で発症する。3週という長い潜伏期は本症には当てはまらない。潜伏期が約3週の性感染症としては、梅毒の第1期病変(初期硬結・硬性下疳)が代表的である。なお、HSVは初感染後に仙骨神経節に潜伏感染し、疲労・月経・ストレスなどを契機に再活性化して再発を繰り返すが、これは潜伏期とは別の概念である。
- ×b. 単発性の水疱を生じる。
性器ヘルペスでは、外陰部や腟前庭、子宮腟部などに小水疱が集簇して多発するのが典型である。水疱はまもなく破れて、浅いびらん・潰瘍が複数生じる。したがって「単発性」は誤りである。初感染(初発)では皮疹が広範囲で、発熱や鼠径リンパ節の有痛性腫脹、排尿痛・排尿困難(尿閉を起こすこともある)を伴い、症状が強い。再発例では病変が小範囲で症状も軽いことが多い。単発の病変が特徴的なのは梅毒の初期硬結や硬性下疳(無痛性)である。
- ○c. 有痛性びらんを形成する。
性器ヘルペスでは、集簇した小水疱が破れて浅いびらん・潰瘍となり、強い痛みを伴うのが特徴である。外陰部の痛みのため歩行や排尿が困難になることもある。性器に潰瘍をつくる疾患の鑑別では痛みの有無が大切な手がかりとなり、有痛性なら性器ヘルペスや軟性下疳、無痛性なら梅毒の硬性下疳を考える。診断は臨床像に加え、病変部からのHSV抗原検出やPCR法などで行い、治療にはアシクロビルやバラシクロビルなどの抗ヘルペスウイルス薬を用いる。
- ×d. 肝周囲炎に進展する。
肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)は、子宮頸管炎から卵管を経て骨盤内・腹腔内へ上行した感染が肝臓の被膜に炎症を起こすもので、右季肋部痛を呈する。原因は主にクラミジア・トラコマティスで、淋菌でも起こる。腹腔鏡では肝表面と腹壁の間にバイオリンの弦のような癒着がみられる。性器ヘルペスは主に外陰・腟・子宮頸部の局所病変であり、肝周囲炎の原因とはならない。
- ×e. 細胞診で核周囲空胞を認める。
核周囲空胞(核の周りが明るく抜けて見える所見)をもつ細胞はコイロサイト(koilocyte)と呼ばれ、HPV感染に特徴的である。尖圭コンジローマや、子宮頸部異形成(上皮内腫瘍)・子宮頸癌などでみられる。一方、HSV感染細胞では、細胞診で多核巨細胞と、すりガラス状の核や核内封入体(Cowdry A型)がみられる。ヘルペスとHPVの細胞所見は取り違えやすいので区別して覚える。
性器ヘルペスの概要
・病原体:HSV-1またはHSV-2。従来は性器にはHSV-2が多いとされたが、口腔性交の影響で近年はHSV-1による性器初感染も増えている。 ・経過:初感染後、仙骨神経節に潜伏し、再活性化で再発を繰り返す。再発時には前駆症状として外陰部の違和感・神経痛様の痛みがみられることがある。 ・合併症:初感染時の無菌性髄膜炎、仙髄神経障害による排尿障害(尿閉)など。 ・治療:アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルの内服(重症例ではアシクロビル点滴)。再発を年6回以上繰り返す例などでは再発抑制療法が行われる。
妊娠との関係
分娩時に産道に病変があると新生児ヘルペス(全身型・中枢神経型など)を起こしうるため、分娩時に外陰部に病変がある場合や、分娩前1か月以内に初感染を起こした場合などには帝王切開が推奨される。
性器の潰瘍性病変の鑑別
・性器ヘルペス:多発性、有痛性の浅い潰瘍。有痛性の鼠径リンパ節腫脹を伴うことがある。 ・梅毒(第1期):潜伏期約3週。単発の無痛性硬結・潰瘍(硬性下疳)と無痛性の鼠径リンパ節腫脹。 ・軟性下疳:軟性下疳菌による。有痛性で辺縁不整の潰瘍、有痛性リンパ節腫脹。
主な性感染症と特徴的所見
・クラミジア・淋菌:子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患、Fitz-Hugh-Curtis症候群(肝周囲炎) ・HPV:尖圭コンジローマ、子宮頸部異形成・子宮頸癌、細胞診でコイロサイト ・HSV:有痛性の多発びらん・潰瘍、細胞診で多核巨細胞・核内封入体
POINT
・外陰ヘルペスは多発する小水疱が破れて有痛性のびらん・潰瘍を形成する。 ・潜伏期は短く、数日〜1週間前後である(約3週は梅毒)。 ・細胞診ではHSVは多核巨細胞と核内封入体、コイロサイト(核周囲空胞)はHPV。 ・肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)はクラミジア・淋菌による。 ・HSVは仙骨神経節に潜伏感染して再発を繰り返す。
