父の血友病は子に出るか?―X連鎖劣性遺伝は「誰から誰へ」で解く
第100回医師国家試験 B問題 第40問
国試問題にチャレンジ
血友病家族歴のない女性が血友病の男性と結婚した。 生まれる子に血友病が発症する確率に最も近いのはどれか。
- a.0%
- b.25%
- c.50%
- d.75%
- e.100%
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
血友病A・Bは原因遺伝子がX染色体上にあるX連鎖劣性遺伝で、男性はXhYで発症し、女性はXXhで通常は保因者にとどまります。患者の父と保因者でない母の組合せでは、息子は父からY染色体を受け取るため全員正常、娘は父のXhを必ず受け継ぐため全員保因者となり、子に発症する確率は0%です。25%・50%は保因者の母親が関わる場合や常染色体遺伝の場合の数値であり、100%は娘が保因者になる確率であって発症確率ではありません。X連鎖遺伝では父から息子への伝達がなく、患者の孫の世代で男性に再び現れる一方、症候性保因者や新規突然変異も存在します。染色体が誰から誰へ渡るかを一つずつ追う習慣は、遺伝カウンセリングや他のX連鎖疾患の理解にもそのまま役立ちます。
解答・解説
正解はaです
血友病の遺伝形式(X 連鎖劣性遺伝)をもとに、子に発症する確率を求める問題である。
前提の整理
血友病 A(第Ⅷ因子欠乏)と血友病 B(第Ⅸ因子欠乏)の原因遺伝子(F8、F9)はどちらも X 染色体上にあり、X 連鎖劣性遺伝(伴性劣性遺伝)の形式をとる。原因遺伝子をもつ X 染色体を Xh、正常な X 染色体を X と表すと、 ・男性(XY):X 染色体が 1 本しかないため、Xh をもてば発症する(XhY=患者)。 ・女性(XX):もう 1 本の正常な X 染色体が補うため、Xh を 1 本もつだけでは通常発症せず保因者(XXh)となる。
本問の両親
・父親:血友病患者 → XhY ・母親:血友病の家族歴がない → 保因者ではないと考え XX とする
子の遺伝子型
・息子は父から Y 染色体、母から X 染色体を受け取る → XY(すべて正常) ・娘は父から必ず Xh、母から X を受け取る → XXh(すべて保因者) したがって、息子は 0% が発症、娘は 100% が保因者となるが発症はしない。子に血友病が発症する確率は 0% である。 設問が「最も近いのは」という聞き方をしているのは、母親の X 染色体に新たな突然変異が生じる可能性や、保因者女性がまれに軽い症状を示す可能性がごくわずかに残るためで、理論上の答えは 0% と考えてよい。
選択肢考察
- ○a. 0%
正しい。父親の X 染色体(Xh)は娘にのみ伝わり、息子には伝わらない(息子へは Y 染色体が伝わる)。母親は保因者ではないので、息子は XY で正常となる。娘は XXh の保因者となるが、正常な X 染色体を 1 本もつため原則として発症しない。よって子が血友病を発症する確率は 0% である。
- ×b. 25%
誤り。25% は、保因者の母親(XXh)と正常な父親(XY)の組合せで、子ども全体のうち血友病の息子が生まれる確率(1/4)に相当する。本問の母親は家族歴がなく保因者ではないため当てはまらない。また、常染色体劣性遺伝で両親がともに保因者の場合の発症確率も 25% であるが、血友病は X 連鎖劣性遺伝であり、この考え方は用いない。
- ×c. 50%
誤り。50% は、保因者の母親(XXh)から生まれた息子に限った場合の発症確率、あるいは常染色体優性遺伝で片親が患者の場合の子の発症確率である。本問では母親が保因者ではなく、血友病は優性遺伝でもないため当てはまらない。
- ×d. 75%
誤り。75% は、常染色体優性遺伝で両親がともにヘテロ接合の患者である場合に、子が少なくとも 1 本の変異遺伝子を受け継ぐ確率である。X 連鎖劣性遺伝の血友病で、父のみが患者という本問の条件では生じない数値である。
- ×e. 100%
誤り。本問の条件で 100% となるのは「娘が保因者となる確率」であり、発症する確率ではない。保因者の女性は正常な X 染色体を 1 本もつため、原則として発症しない。なお、患者の父(XhY)と保因者の母(XXh)の組合せでは娘の 50%、息子の 50% が発症するが、それでも 100% にはならない。
X 連鎖劣性遺伝の組合せ別の子の表現型
①父が患者(XhY)×母が正常(XX) 息子:全員正常 娘:全員保因者 ②父が正常(XY)×母が保因者(XXh) 息子:1/2 が患者、1/2 が正常 娘:1/2 が保因者、1/2 が正常 ③父が患者(XhY)×母が保因者(XXh) 息子:1/2 が患者 娘:1/2 が患者(XhXh)、1/2 が保因者
X 連鎖劣性遺伝の特徴
・患者はほとんどが男性である。 ・父から息子へは伝わらない(男性から男性への伝達がない)。 ・患者の娘は必ず保因者になり、その息子(患者の孫)は 1/2 の確率で発症する。このため、家系図では一世代飛ばして男性に現れるようにみえる。 ・女性の患者は、患者の父と保因者の母の組合せ、X 染色体不活化の偏り(lyonization の偏り)、Turner 症候群(45,X)などの場合にみられる。 ・保因者の女性でも、X 染色体不活化の偏りにより凝固因子活性が低下し、出血傾向を示すことがある(症候性保因者)。 ・血友病患者の約 3 分の 1 は家族歴のない新規突然変異による。
X 連鎖劣性遺伝をとる主な疾患
血友病 A・B、Duchenne 型・Becker 型筋ジストロフィー、赤緑色覚異常、G6PD 欠乏症、慢性肉芽腫症(X 連鎖型)、X 連鎖無 γ グロブリン血症(Bruton 型)、Wiskott-Aldrich 症候群、Fabry 病、Lesch-Nyhan 症候群、副腎白質ジストロフィーなど。
POINT
・血友病は X 連鎖劣性遺伝。 ・患者の父(XhY)×正常な母(XX)→ 息子は全員正常、娘は全員保因者、発症する子は 0%。 ・保因者の母(XXh)×正常な父 → 息子の 1/2 が発症、娘の 1/2 が保因者。 ・X 連鎖遺伝では父から息子への伝達はない。
