StudyMed医師国家試験

ステロイドが効かないネフローゼ―病態から読み解く腎疾患と症候の組合せ

第100回医師国家試験 B問題 第41問

国試問題にチャレンジ

第100回 B問題 第41問

疾患と症候の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.腎性尿崩症 ―― 難聴
  2. b.シスチン尿症 ―― 性腺機能障害
  3. c.IgA腎症 ―― 高カルシウム尿症
  4. d.巣状分節性糸球体硬化症 ―― 難治性ネフローゼ
  5. e.溶血性尿毒症症候群 ―― 低カリウム血症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は腎疾患と症候の組合せを問う問題だ。丸暗記で挑むより、それぞれの病気が「腎臓のどこを障害し、その結果何が起こるか」を考えると正誤を判断しやすい。順番に病態を整理していこう。
医学生医学生
組合せ問題は苦手で、何となく聞いたことのある言葉に引っ張られてしまいます。
ドクタードクター
だからこそ病態から考えるのが有効なんだ。まず腎性尿崩症。どこの異常で、どんな症状が出るかな。
医学生医学生
集合管がバソプレシンに反応しない病気で、尿を濃縮できず多尿になります。難聴は……腎臓と耳というとAlport症候群が浮かびます。
ドクタードクター
その通り。腎性尿崩症はバソプレシンV2受容体やアクアポリン2の遺伝子異常、あるいはリチウム製剤や高カルシウム血症などでも起こり、低張尿の多尿・口渇・多飲が主体だ。乳児では脱水や高ナトリウム血症が問題になる。腎疾患と感音難聴の組合せはIV型コラーゲン異常によるAlport症候群で、腎性尿崩症とは結びつかない。
医学生医学生
シスチン尿症は、生化学の講義でCOLAと覚えたアミノ酸の再吸収障害ですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。シスチン・オルニチン・リジン・アルギニンの近位尿細管と小腸での再吸収が障害される常染色体劣性遺伝の病気だ。溶けにくいシスチンが析出して、再発を繰り返す尿路結石をつくるのが主な症候で、性腺機能障害とは関係しない。
医学生医学生
性腺の異常を伴う腎疾患というと、WT1の異常が関わるものでしたっけ。
ドクタードクター
そう。Denys-Drash症候群やFrasier症候群がWT1遺伝子異常による疾患で、腎障害と性腺異常を伴う。次はIgA腎症だ。
医学生医学生
腎臓内科を回ったとき、健診の血尿で見つかって腎生検を受ける患者さんが多かったです。かぜの直後に肉眼的血尿が出るのが特徴ですよね。
ドクタードクター
その通り。メサンギウム領域にIgAが沈着する慢性糸球体腎炎で、日本の成人では最も多い原発性糸球体腎炎だ。カルシウム代謝とは関係がないので、高カルシウム尿症は当てはまらない。高カルシウム尿症は特発性のもの、原発性副甲状腺機能亢進症、サルコイドーシス、遠位尿細管性アシドーシスなどでみられ、カルシウム結石の原因になる。
医学生医学生
溶血性尿毒症症候群は、溶血があるならカリウムは上がる方向だと思います。
ドクタードクター
鋭いね。HUSは微小血管障害性溶血性貧血・血小板減少・急性腎障害を三徴とする血栓性微小血管症で、小児では腸管出血性大腸菌の志賀毒素による典型例が多い。急性腎障害でカリウムの排泄が減り、さらに溶血で赤血球内のカリウムが放出されるので、高カリウム血症をきたす。低カリウム血症は逆だね。
医学生医学生
ということで、巣状分節性糸球体硬化症と難治性ネフローゼの組合せが正しいですね。
ドクタードクター
正解。FSGSは一部の糸球体の、さらにその一部の係蹄に硬化病変がみられる疾患で、ポドサイト障害から高度の蛋白尿をきたし、多くはネフローゼ症候群として発症する。微小変化型と違ってステロイドが効きにくく、ステロイド抵抗性ネフローゼの代表的な原因だ。
医学生医学生
微小変化型との違いをもう少し整理したいです。病理実習ではどちらも光顕で目立たない像があると聞いて混乱しました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。初期のFSGSは硬化病変が一部にしかないので、生検で採れた糸球体に病変が含まれないと微小変化型と見分けにくいことがある。臨床的には、微小変化型は小児に多く急激に発症し、蛋白尿の選択性が高く、ステロイドがよく効くが再発しやすい。FSGSは蛋白尿が非選択的で、血尿や高血圧を伴うこともあり、寛解しないと末期腎不全に進みやすい。
医学生医学生
ステロイドが効かないときの治療はどうするんですか。
ドクタードクター
シクロスポリンなどの免疫抑制薬を併用し、LDLアフェレシスが用いられることもある。また腎移植後に再発することがあるのも臨床上の注意点だ。ステロイドに反応しないネフローゼをみたら、FSGSを念頭に置いて腎生検の結果を慎重に解釈しよう。
医学生医学生
腎疾患の腎外症状として、Alportの難聴やWT1異常の性腺異常、Fabry病の四肢疼痛なども一緒に覚えておきます。
ドクタードクター
それがいい。病態から症候を導く習慣をつければ、初見の組合せ問題にも対応できるよ。

まとめ

腎疾患と症候の組合せは、障害部位と病態から考えると判断しやすくなります。巣状分節性糸球体硬化症はポドサイト障害による高度蛋白尿でネフローゼ症候群を呈し、ステロイド抵抗性(難治性)ネフローゼの代表で、寛解しないと末期腎不全に進行しやすく、移植後再発もありえます。腎性尿崩症はバソプレシン不応による多尿、シスチン尿症はシスチン結石、IgA腎症は上気道感染後の肉眼的血尿が特徴で、溶血性尿毒症症候群では急性腎障害と溶血により低カリウムではなく高カリウム血症をきたします。難聴はAlport症候群、性腺異常はWT1遺伝子異常(Denys-Drash症候群、Frasier症候群)と結びつけて覚えておくと紛らわしい選択肢を見抜けます。ネフローゼ症候群の病型ごとの治療反応性の違いを理解することは、治療方針の決定や予後予測に直結します。

解答・解説

正解はdです

腎疾患とそれに特徴的な症候(あるいは合併症・検査異常)の対応を問う一般問題である。各疾患について「どこが障害されるのか」「その結果何が起こるのか」という病態から考えると、組合せの正誤を判断しやすい。 腎性尿崩症は集合管のバソプレシン反応性の低下、シスチン尿症は近位尿細管のアミノ酸輸送異常、IgA腎症はメサンギウム領域へのIgA沈着による糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)はポドサイト(糸球体上皮細胞)障害を背景とするネフローゼ症候群、溶血性尿毒症症候群(HUS)は血栓性微小血管症による急性腎障害である。これらの病態から自然に導かれる症候を思い浮かべ、選択肢の症候と照合する。 難聴を伴う腎疾患としてはAlport症候群、性腺機能障害を伴う腎疾患としてはDenys-Drash症候群やFrasier症候群などのWT1遺伝子異常が知られる。紛らわしい組合せは、本来どの疾患の症候なのかを思い出すと誤りと判断できる。FSGSはステロイドが効きにくく、ネフローゼ症候群のなかでも難治例の代表である。

選択肢考察

  1. ×a.  腎性尿崩症 ―― 難聴

    腎性尿崩症は、集合管のバソプレシン2型受容体(AVPR2、X連鎖性)や水チャネルのアクアポリン2(AQP2)の遺伝子異常、あるいは高カルシウム血症・低カリウム血症・リチウム製剤などの後天的要因によって、バソプレシン(抗利尿ホルモン)に腎臓が反応しなくなる病態である。尿を濃縮できず、低張尿による多尿・口渇・多飲を示し、乳児では脱水・高ナトリウム血症や発育障害をきたす。難聴は腎性尿崩症の症候ではない。腎疾患と難聴の組合せで想起すべきは、IV型コラーゲン遺伝子異常による Alport症候群(血尿・進行性腎障害・感音難聴・眼病変)である。

  2. ×b.  シスチン尿症 ―― 性腺機能障害

    シスチン尿症は常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患で、近位尿細管と小腸における二塩基性アミノ酸(シスチン・オルニチン・リジン・アルギニン、頭文字でCOLAと覚える)の再吸収が障害される。溶解度の低いシスチンが尿中で析出して、再発を繰り返すシスチン結石(尿路結石)をきたすのが主な症候である。尿沈渣では六角形のシスチン結晶が特徴的で、治療は大量飲水・尿のアルカリ化・チオプロニン(キレート剤)などである。性腺機能障害とは関連しない。

  3. ×c.  IgA腎症 ―― 高カルシウム尿症

    IgA腎症は糸球体のメサンギウム領域にIgAが沈着する慢性糸球体腎炎で、日本の成人で最も頻度が高い原発性糸球体腎炎である。健診での持続的な顕微鏡的血尿・蛋白尿で見つかることが多く、上気道感染の直後(1〜3日以内)に肉眼的血尿が出現するのが特徴である。血清IgAの上昇を認めることがある。カルシウム代謝とは関係がなく、高カルシウム尿症は本症の症候ではない。高カルシウム尿症は、特発性高カルシウム尿症、原発性副甲状腺機能亢進症、サルコイドーシス、遠位尿細管性アシドーシスなどでみられ、カルシウム結石の原因となる。

  4. ○d.  巣状分節性糸球体硬化症 ―― 難治性ネフローゼ

    巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、一部の糸球体(巣状)の、さらにその一部の係蹄(分節性)に硬化病変を認める疾患である。ポドサイト障害によって高度の蛋白尿をきたし、多くはネフローゼ症候群として発症する。微小変化型ネフローゼ症候群と異なりステロイドへの反応が乏しく、ステロイド抵抗性(難治性)ネフローゼ症候群の代表的な原因疾患である。蛋白尿が非選択的で、血尿や高血圧を伴うこともあり、寛解が得られないと末期腎不全へ進行しやすい。治療はステロイドに加え、シクロスポリンなどの免疫抑制薬、LDLアフェレシスなどが用いられる。したがってこの組合せは正しい。

  5. ×e.  溶血性尿毒症症候群 ―― 低カリウム血症

    溶血性尿毒症症候群(HUS)は、微小血管障害性溶血性貧血・血小板減少・急性腎障害を三徴とする血栓性微小血管症である。小児では腸管出血性大腸菌(O157など)が産生する志賀毒素が原因となる典型例が多く、腹痛・血性下痢に続いて発症する。電解質としては、急性腎障害によるカリウム排泄の低下と、溶血による赤血球内カリウムの放出が重なり、高カリウム血症をきたす。したがって低カリウム血症との組合せは誤りである。高カリウム血症は致死的不整脈の原因となるため、HUSでは透析を含めた管理が必要になることがある。

腎疾患と腎外症候の代表的な組合せ

・Alport症候群:血尿、進行性腎障害、感音難聴、眼病変(円錐水晶体など)。IV型コラーゲン(α3・α4・α5鎖)の遺伝子異常で、X連鎖型が多い。 ・Denys-Drash症候群:WT1遺伝子異常。早期発症の腎障害(びまん性メサンギウム硬化)、Wilms腫瘍、男性仮性半陰陽などの性腺異常。 ・Frasier症候群:WT1遺伝子異常。FSGSによるステロイド抵抗性ネフローゼと性腺異形成(性腺腫瘍の合併あり)。 ・Fabry病:α-ガラクトシダーゼA欠損。蛋白尿・腎不全、四肢疼痛、被角血管腫、低汗症、心肥大。 ・爪膝蓋骨症候群:爪形成不全、膝蓋骨低形成、腎障害。

ネフローゼ症候群をきたす主な一次性糸球体疾患

・微小変化型:小児に最多。急激に発症し、蛋白尿は選択性が高い。ステロイドがよく効くが再発しやすい。 ・巣状分節性糸球体硬化症:ステロイド抵抗性が多く、腎不全に進行しやすい。腎移植後に再発することがある。 ・膜性腎症:中高年に多い。悪性腫瘍・薬剤・感染症などに伴う二次性に注意する。 ・膜性増殖性糸球体腎炎:低補体血症を伴うことが多い。

HUSの電解質・検査異常

破砕赤血球、LD上昇、間接ビリルビン上昇、ハプトグロビン低下、血小板減少、BUN・クレアチニン上昇、高カリウム血症、代謝性アシドーシスなど。

POINT

・巣状分節性糸球体硬化症は、ステロイド抵抗性(難治性)ネフローゼ症候群の代表である。 ・腎疾患+難聴はAlport症候群。 ・シスチン尿症はシスチン結石(COLAの再吸収障害)。 ・IgA腎症は上気道感染後の肉眼的血尿が特徴で、カルシウム代謝とは無関係である。 ・HUSは急性腎障害と溶血により高カリウム血症をきたす。 ・腎性尿崩症はバソプレシン不応による多尿である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。