StudyMed医師国家試験

「握りこぶしのへこみ」が教えてくれる―Turner症候群の骨格・性腺・成長を整理する

第99回医師国家試験 E問題 第63問

国試問題にチャレンジ

第99回 E問題 第63問

Turner症候群について正しいのはどれか。

  1. a.高齢出産の児に多い。
  2. b.出生時に筋緊張低下を示す。
  3. c.中手骨の短縮を認める。
  4. d.低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を示す。
  5. e.低身長に対して成長ホルモンは無効である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はTurner症候群の基本的な特徴を問う知識問題だ。カギは「モノソミーとトリソミーの違い」「性腺障害がどこで起きているか」「低身長への治療」の3つ。これを押さえれば選択肢は一気に絞れるよ。まず、Turner症候群がどんな染色体異常か説明できるかな。
医学生医学生
X染色体が1本しかない、45,Xの女性ですよね。遺伝医学の講義で、性染色体異常の代表として習いました。
ドクタードクター
その通り。45,Xが約半数で、残りは45,X/46,XXのようなモザイクや、同腕染色体などX染色体の構造異常だ。頻度は出生女児2,000〜2,500人に1人くらい。二大症状は低身長と卵巣形成不全だね。では、染色体異常といえば「高齢出産」というイメージはどうだろう。
医学生医学生
染色体異常はみんな母体年齢と関係があると思っていました。違うんですか。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。母体年齢とともに増えるのは、卵子の減数分裂での不分離によるトリソミー、つまりDown症候群や18トリソミー、13トリソミーなんだ。Turner症候群の45,Xでは、失われるX染色体の多くが父親由来であることが知られていて、母体年齢との関連は認められていない。
医学生医学生
なるほど。じゃあ出生時の筋緊張低下も、Down症候群のイメージですね。小児科実習でフロッピーインファントの話を聞きました。
ドクタードクター
そう、筋緊張低下が目立つのはDown症候群やPrader-Willi症候群だ。Turner症候群の新生児で手がかりになるのは、手背・足背のリンパ浮腫と、うなじの皮膚のたるみ。胎児期のリンパ管の発育不全によるもので、うなじのたるみが後に翼状頸になる。
医学生医学生
リンパ浮腫が新生児期のサインなんですね。それでは性腺機能低下のほうは、低ゴナドトロピン性で合っていますか。
ドクタードクター
ここが引っかけだよ。Turner症候群の卵巣は、胎生期にいったん卵胞ができても急速に消えて、線維性の索状性腺になる。障害されているのは卵巣そのもの、つまり原発性だ。するとエストロゲンが出ないから、下垂体への負のフィードバックはどうなるかな。
医学生医学生
ブレーキがかからないので、LHとFSHが上がる……あ、高ゴナドトロピン性になるんですね。
ドクタードクター
正解。低ゴナドトロピン性になるのは、Kallmann症候群のように視床下部や下垂体に障害がある場合だ。「どこが壊れているか」でゴナドトロピンの向きが決まる、と考えると間違えにくい。次は低身長への成長ホルモン療法。Turner症候群では成長ホルモンの分泌自体は保たれていることが多いけれど、効くと思う?
医学生医学生
分泌が正常なら、補っても意味がなさそうに思えますが……。
ドクタードクター
理屈ではそう考えたくなるよね。でも実際には、成長ホルモンを投与すると成長速度が増して最終身長の改善が得られる。だから分泌能にかかわらず成長ホルモン療法の適応があるんだ。無効というのは誤りだね。
医学生医学生
そうすると、残る中手骨の短縮が正しい記述ですね。
ドクタードクター
その通り。X染色体上の成長に関わるSHOX遺伝子の量が半分になることなどで、骨格の異常が起こる。代表が第4中手骨の短縮で、握りこぶしをつくると第4指の付け根の出っ張りがへこんで見える。ほかに外反肘、楯状胸、Madelung変形も骨格徴候として大事だ。
医学生医学生
OSCEの身体診察みたいに、手を握ってもらうだけで気づける所見なんですね。
ドクタードクター
まさに。最後に臨床での注意点をまとめよう。心血管では大動脈縮窄症や大動脈二尖弁が多く、成人期には大動脈拡張や解離のリスクがあるから長期のフォローが欠かせない。腎では馬蹄腎、ほかに難聴、橋本病、耐糖能異常、骨粗鬆症にも注意が必要だ。
医学生医学生
治療は成長ホルモンだけでなく、女性ホルモンも必要になりますか。
ドクタードクター
そうだね。思春期年齢からエストロゲン補充を始めて二次性徴を誘導し、その後はプロゲスチンを併用するKaufmann療法などで月経を起こしつつ骨量も守る。それから、核型にY染色体成分が含まれる場合は性腺芽腫などのリスクがあるので、予防的な性腺摘出を検討する。比較として、Klinefelter症候群も原発性の性腺機能低下だから高ゴナドトロピン性になる点もセットで覚えておこう。
医学生医学生
性染色体異常の性腺障害は、どちらも「高ゴナドトロピン性」とまとめて覚えます。

まとめ

Turner症候群は45,XなどX染色体の数や構造の異常をもつ女性の疾患で、低身長と卵巣形成不全が二大症状です。第4中手骨短縮、外反肘、翼状頸などの骨格・外表所見に加え、大動脈縮窄症や馬蹄腎などの合併にも注意が必要です。卵巣自体の障害であるためゴナドトロピンは高値(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)となり、母体年齢との関連や出生時の筋緊張低下はトリソミー側の特徴として区別します。低身長には成長ホルモン療法が有効で、思春期以降はエストロゲン補充により二次性徴を誘導します。「障害部位からホルモンの向きを考える」「モノソミーとトリソミーを対比する」視点は、染色体異常や内分泌疾患全般の理解に役立ちます。

解答・解説

正解はcです

Turner症候群は、2本あるべきX染色体のうち1本が欠失している、あるいは構造異常をもつことによって生じる女性の性染色体異常症である。核型は45,Xが約半数を占め、残りはモザイク(45,X/46,XXなど)や、X染色体の構造異常(同腕染色体Xq、部分欠失、環状X染色体など)である。頻度は出生女児約2,000〜2,500人に1人とされる。 本症の主要症状は、低身長と原発性の性腺機能不全(卵巣形成不全)の2つである。これに、翼状頸、外反肘、第4中手骨短縮などの骨格・外表の奇形徴候、大動脈縮窄症や大動脈二尖弁などの心血管奇形、馬蹄腎などの腎奇形が加わる。 本問を解くには、次の3点を押さえておけばよい。 ・母体の高齢化と関連し、出生時の筋緊張低下が目立つのはDown症候群などのトリソミーであり、モノソミーのTurner症候群とは区別する。 ・性腺機能不全は卵巣自体の障害(原発性)なので、下垂体からのゴナドトロピン(LH、FSH)は負のフィードバックが外れて高値となる(高ゴナドトロピン性)。 ・低身長には成長ホルモン療法の適応があり、有効である。 これらを踏まえると、骨格徴候である中手骨短縮が正しい記述となる。

選択肢考察

  1. ×a.  高齢出産の児に多い。

    母親の年齢上昇とともに頻度が増えるのは、減数分裂時の染色体不分離によって生じるトリソミー(21トリソミーのDown症候群、18トリソミー、13トリソミーなど)である。Turner症候群の45,Xでは失われるX染色体の多くが父親由来であることが知られており、母体年齢との関連は認められない。

  2. ×b.  出生時に筋緊張低下を示す。

    出生時からの筋緊張低下(フロッピーインファント)が特徴的なのはDown症候群やPrader-Willi症候群などである。Turner症候群の新生児期にみられる所見は、胎児期のリンパ管発育不全に由来する手背・足背のリンパ浮腫と、項部(うなじ)の皮膚のたるみ(のちの翼状頸)であり、筋緊張低下は特徴ではない。

  3. ○c.  中手骨の短縮を認める。

    Turner症候群では、X染色体上にある成長に関わる遺伝子SHOX(short stature homeobox)の量が半分になることなどにより、骨格の異常がみられる。代表的なのが第4中手骨の短縮(握りこぶしをつくると第4指の付け根の突出がへこんで見える)で、第4中足骨の短縮を伴うこともある。外反肘、楯状胸(幅広い胸郭と乳頭間距離の開大)、Madelung変形なども骨格徴候として重要である。

  4. ×d.  低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を示す。

    Turner症候群の卵巣は、胎生期には卵胞が形成されるものの急速に閉鎖・消失し、線維性の索状性腺(streak gonad)となる。卵巣そのものの障害(原発性性腺機能低下症)であるため、エストロゲンが低下して下垂体への負のフィードバックが働かず、LH・FSHは高値となる。したがって高ゴナドトロピン性性腺機能低下症を示す。低ゴナドトロピン性は視床下部・下垂体の障害(Kallmann症候群など)でみられる。

  5. ×e.  低身長に対して成長ホルモンは無効である。

    Turner症候群の低身長は成長ホルモン分泌不全によるものではないが、成長ホルモンを投与すると成長速度が増し、最終身長の改善が得られる。このため、成長ホルモン分泌能の有無にかかわらず成長ホルモン療法の適応が認められており、無効という記述は誤りである。

Turner症候群の主な臨床像

・新生児期:手背・足背のリンパ浮腫、項部の皮膚のたるみ ・低身長:ほぼ全例にみられ、無治療での成人身長は平均140cm前後とされる ・性腺:卵巣形成不全により二次性徴の欠如・遅延、原発性無月経、不妊。モザイク例では自然な月経がみられることもある ・外表・骨格:翼状頸、後頭部毛髪線の低位、外反肘、第4中手骨短縮、楯状胸、多発性色素性母斑、爪の低形成 ・心血管:大動脈縮窄症、大動脈二尖弁。成人期には大動脈拡張・解離のリスクがある ・腎:馬蹄腎などの腎奇形 ・その他:中耳炎・難聴、甲状腺機能低下症(橋本病)、耐糖能異常、骨粗鬆症 ・知能は多くが正常範囲であるが、空間認知などの特定領域に苦手さがみられることがある

治療

・低身長:成長ホルモン療法 ・性腺機能不全:思春期年齢からエストロゲン補充を開始し、二次性徴を誘導する。その後は周期的にプロゲスチンを併用するKaufmann療法などで月経を起こし、骨量の維持も図る ・核型にY染色体成分が含まれる場合は、性腺芽腫などの腫瘍発生リスクがあるため予防的に性腺摘出を検討する

比較:Klinefelter症候群

47,XXYなどの男性。高身長、小さく硬い精巣、無精子症、女性化乳房を示し、やはり原発性性腺機能低下のため高ゴナドトロピン性となる。

POINT

・Turner症候群:45,Xなど、X染色体の数・構造異常をもつ女性。 ・二大症状は低身長と卵巣形成不全(原発性無月経)。 ・ゴナドトロピンは高値(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)。 ・翼状頸、外反肘、第4中手骨短縮、大動脈縮窄症、馬蹄腎。 ・新生児期は手背・足背のリンパ浮腫が手がかり。 ・母体年齢とは関連しない(高齢出産で増えるのはトリソミー)。 ・低身長には成長ホルモン療法が有効、二次性徴にはエストロゲン補充。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。