StudyMed医師国家試験

日焼けしていないのに肌が黒い―Addison病の色素沈着はACTHのサイン

第99回医師国家試験 E問題 第62問

国試問題にチャレンジ

第99回 E問題 第62問

Addison病でみられるのはどれか。

  1. a.浮腫
  2. b.皮膚線条
  3. c.色素沈着
  4. d.高血圧
  5. e.糖尿病

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はAddison病でみられる所見を選ぶ問題だ。ポイントは、副腎皮質ホルモンが「足りない」病態をきちんと思い描けるかどうか。そして、ホルモンが足りないときに上位の下垂体で何が起きるか、というフィードバックの視点も大事になる。まずAddison病とはどんな病気か、説明してみてくれるかな。
医学生医学生
副腎皮質そのものが壊れて、ホルモンが出なくなる病気です。原発性の慢性副腎皮質機能低下症ですね。
ドクタードクター
その通り。副腎皮質の3層がすべて障害されるから、コルチゾール、アルドステロン、副腎アンドロゲンのいずれもが低下する。症状は「欠乏そのものの症状」と「フィードバックによる上位ホルモン増加の症状」に分けて考えると整理しやすいよ。選択肢を眺めて、何か気づくことはある?
医学生医学生
浮腫、皮膚線条、高血圧、糖尿病……これ、Cushing症候群の症状ばかりに見えます。
ドクタードクター
鋭いね。その4つはコルチゾールやミネラルコルチコイドが「過剰」なときに出やすい所見で、Addison病とはちょうど逆の病態なんだ。一つずつ理由を確認していこう。まず高血圧。アルドステロンが欠乏すると腎ではどうなる?
医学生医学生
集合管でNaを再吸収できなくなるので、Naと水が失われて、循環血液量が減ります。だから血圧は下がる方向ですね。
ドクタードクター
そう。さらにコルチゾールが欠乏すると、カテコールアミンに対する血管の反応性も落ちる。だからAddison病ではむしろ低血圧、特に起立性低血圧が目立つ。同じ理屈で浮腫も考えられるかな。
医学生医学生
Naと水が抜けて脱水傾向なら、むくむ方向にはならないですね。低アルブミン血症や心不全があるわけでもないですし。
ドクタードクター
完璧だ。次は糖尿病。コルチゾールは糖新生を促し、インスリンの作用に拮抗して血糖を上げるホルモンだから、欠乏すれば逆に空腹時やストレス時の低血糖が起こりやすくなる。そして皮膚線条。CBTでもよく出る赤紫色の幅広い線条は、何が原因だったか覚えている?
医学生医学生
コルチゾール過剰で真皮のコラーゲンが減って皮膚が薄くなったところに、中心性肥満で急に皮膚が引き伸ばされてできる、でしたよね。
ドクタードクター
その通り。だから赤色皮膚線条はCushing症候群に特徴的で、Addison病ではみられない。そうなると残るのが色素沈着だ。なぜホルモンが足りないのに皮膚が黒くなるのか、ここが今回の核心だよ。
医学生医学生
生理学で習った負のフィードバックが外れて、ACTHが増えるからだと思います。でも、ACTHがどうしてメラニンに関係するのかはあいまいです。
ドクタードクター
いいところに疑問を持ったね。ACTHはPOMC、つまりプロオピオメラノコルチンという大きな前駆体から切り出される。このときα-MSH、メラノサイト刺激ホルモンなどの関連ペプチドも一緒に増えるんだ。しかもACTH自体がMSHと共通のアミノ酸配列をもっていて、メラノサイトのMC1受容体を刺激できる。その結果、メラニン産生が促されて皮膚や粘膜に色素沈着が起きる。
医学生医学生
名前にメラノが入っているのはそういう意味だったんですね。どこに出やすいんですか。
ドクタードクター
日光の当たる部位に加えて、手掌のしわ、肘や膝のような摩擦を受ける部位、手術瘢痕、乳輪、それから口腔粘膜や歯肉が典型的だ。日焼けでは説明しにくい場所に色がついているのが手がかりになる。診察では口の中まで見るのを忘れないようにね。
医学生医学生
OSCEの頭頸部診察で口腔内を見る練習はしましたが、歯肉の色まで意識したことはありませんでした。
ドクタードクター
ぜひ意識してみて。ここで発展問題だ。下垂体の病気でACTHが出なくなる続発性副腎皮質機能低下症でも、色素沈着は起こると思う?
医学生医学生
ACTHが低いなら、メラノサイトを刺激するものがないので、色素沈着は起きないはずです。
ドクタードクター
正解。むしろ皮膚は蒼白になる。しかもアルドステロンは主にレニン-アンジオテンシン系で調節されているから、続発性では高カリウム血症などの鉱質コルチコイド欠乏症状は目立たない。色素沈着の有無は原発性か続発性かを見分ける大きな手がかりなんだ。逆に、Cushing症候群の中でもACTHが高いCushing病や異所性ACTH産生腫瘍では、色素沈着を伴うことがある。
医学生医学生
色素沈着は「コルチゾールが少ないこと」ではなく「ACTHが多いこと」のサインだと考えればいいんですね。
ドクタードクター
その理解が一番大事だ。検査では血中コルチゾール低値とACTH高値、迅速ACTH負荷試験での反応不良、低Na血症、高K血症、低血糖、好酸球増多がそろう。原因は現在は自己免疫性が最も多く、かつて多かった結核性は減っている。治療はヒドロコルチゾンの補充が基本で、必要ならフルドロコルチゾンを追加する。臨床で特に注意してほしいのは、感染や手術などのストレス時に副腎クリーゼを起こしうることだ。ショックや意識障害をきたしたら、ヒドロコルチゾンの大量静注と生理食塩液、ブドウ糖の補液をただちに行う。普段から患者さんにシックデイの増量ルールを指導しておくことも大切だよ。

まとめ

Addison病は副腎皮質自体の障害による原発性副腎皮質機能低下症で、コルチゾール、アルドステロン、副腎アンドロゲンがすべて低下し、低血圧、低Na血症、高K血症、低血糖、体重減少などをきたします。コルチゾール低下による負のフィードバックの解除でPOMC由来のACTHやα-MSHが増加し、メラノサイトが刺激されて皮膚・粘膜の色素沈着が生じるのが特徴的な所見です。浮腫、赤色皮膚線条、高血圧、糖尿病はいずれもCushing症候群などホルモン過剰側の所見であり、Addison病ではむしろ逆の所見がみられます。ACTHが低下する続発性副腎皮質機能低下症では色素沈着を欠き、鉱質コルチコイド欠乏症状も目立たないため、色素沈着の有無は原発性と続発性の鑑別に役立ちます。「欠乏症状」と「フィードバックによる上位ホルモン増加の症状」を分けて考える視点は、内分泌疾患全般を理解するうえでの基本となります。

解答・解説

正解はcです

Addison病は、副腎皮質そのものが障害されて副腎皮質ホルモンの分泌が慢性的に不足する病態(原発性慢性副腎皮質機能低下症)である。副腎皮質の3層すべてが障害されるため、糖質コルチコイド(コルチゾール)、鉱質コルチコイド(アルドステロン)、副腎アンドロゲンのいずれもが低下する。 症候は「ホルモン欠乏そのものによる症状」と「フィードバックによる上位ホルモン増加の症状」に分けて考えると整理しやすい。 ・コルチゾール欠乏:易疲労感、食欲不振、体重減少、悪心・嘔吐などの消化器症状、低血糖、好酸球増多 ・アルドステロン欠乏:腎でのNa再吸収低下による低Na血症、K排泄低下による高K血症、循環血液量減少による低血圧・脱水 ・副腎アンドロゲン欠乏:女性での腋毛・恥毛の脱落 ・コルチゾール低下に伴う負のフィードバックの解除:下垂体からのACTH(副腎皮質刺激ホルモン)とその前駆体由来のペプチドが過剰に分泌され、皮膚・粘膜の色素沈着を生じる 本問の選択肢のうち、浮腫・皮膚線条・高血圧・糖尿病はいずれもコルチゾールやミネラルコルチコイドが「過剰」なときにみられる所見であり、Cushing症候群などの逆の病態を想起させる。Addison病では「欠乏」の病態を思い浮かべれば、残る色素沈着が正解と判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  浮腫

    Addison病ではアルドステロン欠乏により腎集合管でのNa再吸収が減り、Naと水が失われて細胞外液量はむしろ減少する(脱水傾向)。低アルブミン血症や心不全を伴う病態でもないため、浮腫は生じない。浮腫はむしろNa貯留をきたす原発性アルドステロン症以外の病態(ネフローゼ症候群、心不全、肝硬変など)やCushing症候群の一部でみられる。

  2. ×b.  皮膚線条

    幅の広い赤紫色の皮膚線条(赤色皮膚線条)は、コルチゾール過剰によって真皮の膠原線維が減少・菲薄化し、中心性肥満で皮膚が急速に伸展されることで生じる。Cushing症候群に特徴的な所見であり、コルチゾールが欠乏するAddison病ではみられない。

  3. ○c.  色素沈着

    副腎皮質でコルチゾールが作られなくなると、視床下部・下垂体への負のフィードバックが外れ、下垂体前葉からACTHが過剰に分泌される。ACTHは前駆体であるPOMC(プロオピオメラノコルチン)から切り出され、同時にα-MSH(メラノサイト刺激ホルモン)などの関連ペプチドも増える。ACTH自体もMSHと共通のアミノ酸配列をもち、メラノサイトのMC1受容体を刺激してメラニン産生を促進する。その結果、皮膚・粘膜に色素沈着が生じる。好発部位は日光露出部、手掌のしわ、肘・膝などの摩擦部、手術瘢痕、乳輪、口腔粘膜・歯肉などで、Addison病の大多数でみられる重要な所見である。

  4. ×d.  高血圧

    アルドステロン欠乏によるNa喪失と循環血液量減少、さらにコルチゾール欠乏によるカテコラミンに対する血管反応性の低下が加わるため、Addison病ではむしろ低血圧(起立性低血圧を含む)を呈する。高血圧はアルドステロンやコルチゾールの過剰(原発性アルドステロン症、Cushing症候群)でみられる所見である。

  5. ×e.  糖尿病

    コルチゾールは肝臓での糖新生を促進し、末梢でのインスリン作用に拮抗して血糖を上昇させるホルモンである。Addison病ではコルチゾールが不足するため糖新生が不十分となり、特に空腹時やストレス時に低血糖をきたしやすい。耐糖能異常・糖尿病はコルチゾール過剰のCushing症候群でみられる。

Addison病の概要

副腎皮質の90%以上が破壊されて初めて症状が顕在化するとされる。原因としては、現在は自己免疫性副腎皮質炎が最も多く、かつて多かった結核性のものは減少している。その他、真菌感染症、癌の副腎転移、副腎出血、AIDS関連感染症、先天性疾患(副腎白質ジストロフィーなど)がある。自己免疫性のものは1型糖尿病や橋本病など他の自己免疫性内分泌疾患を合併することがあり、自己免疫性多内分泌腺症候群として知られる。

検査所見

・血中コルチゾール低値、血漿ACTH高値 ・迅速ACTH負荷試験でコルチゾールの増加が乏しい ・低Na血症、高K血症、低血糖、好酸球増多、血漿レニン活性高値

原発性と続発性の鑑別

下垂体や視床下部の障害でACTH分泌が低下する続発性副腎皮質機能低下症では、ACTHが低値のため色素沈着はみられず、むしろ皮膚は蒼白となる。また、アルドステロン分泌は主にレニン-アンジオテンシン系で調節されるため、続発性では鉱質コルチコイド欠乏症状(高K血症など)は目立たない。色素沈着の有無は原発性か続発性かを見分ける重要な手がかりである。

Cushing症候群との対比

Cushing症候群(コルチゾール過剰):中心性肥満、満月様顔貌、赤色皮膚線条、高血圧、耐糖能異常、骨粗鬆症、浮腫など。ACTH依存性のCushing病や異所性ACTH産生腫瘍ではACTH高値により色素沈着を伴うこともある。 Addison病(コルチゾール欠乏):体重減少、低血圧、低血糖、色素沈着など。

治療と急性増悪

ヒドロコルチゾンによる補充が基本で、必要に応じて鉱質コルチコイド(フルドロコルチゾン)を追加する。感染や手術などのストレス時には補充量を増やす必要がある(シックデイルール)。感染などを契機に急性副腎不全(副腎クリーゼ)を起こすと、ショック、意識障害、高度の脱水をきたし致死的となりうるため、ヒドロコルチゾンの大量静注と生理食塩液・ブドウ糖の補液を直ちに行う。

POINT

・Addison病=原発性副腎皮質機能低下症。糖質・鉱質コルチコイド、副腎アンドロゲンがすべて低下する。 ・コルチゾール低下→ACTH(およびPOMC由来のMSH)上昇→皮膚・粘膜の色素沈着。 ・低血圧、低Na血症、高K血症、低血糖、好酸球増多、体重減少が特徴。 ・浮腫、赤色皮膚線条、高血圧、糖尿病はCushing症候群など「過剰」側の所見。 ・続発性(下垂体性)副腎皮質機能低下症では色素沈着を欠く。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。