StudyMed医師国家試験

足りないホルモンから導く―Addison病の「低Na・高K・低血糖」

第120回医師国家試験 D問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第120回 D問題 第5問

Addison病にみられる代謝異常の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.高ナトリウム血症 ―― 高カリウム血症 ―― 低血糖
  2. b.高ナトリウム血症 ―― 低カリウム血症 ―― 高血糖
  3. c.高ナトリウム血症 ―― 低カリウム血症 ―― 低血糖
  4. d.低ナトリウム血症 ―― 高カリウム血症 ―― 低血糖
  5. e.低ナトリウム血症 ―― 低カリウム血症 ―― 高血糖

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はAddison病で起こる電解質と血糖の異常を問う問題だ。丸暗記でも解けるけれど、「副腎皮質のどのホルモンが不足すると何が起こるか」を順に考えれば、迷わず導ける。まず、Addison病とはどんな病気か確認しよう。
医学生医学生
原発性の慢性副腎皮質機能低下症です。副腎そのものが壊れる病気ですよね。
ドクタードクター
そう。原因は現在では自己免疫性副腎炎が最多で、ほかに結核などがある。副腎皮質そのものが破壊されるから、皮質ホルモンがまとめて足りなくなる。副腎皮質の3層と、それぞれが分泌するホルモンを言えるかな。
医学生医学生
組織学の実習で習いました。外側から球状層がアルドステロン、束状層がコルチゾール、網状層が副腎アンドロゲンです。
ドクタードクター
完璧だ。では、まずアルドステロンが不足するとどうなるか考えよう。アルドステロンは腎臓のどこで、何をしているかな。
医学生医学生
遠位尿細管や集合管でNaを再吸収して、代わりにKを排泄させます。だから不足すると…Naが失われて低Na血症、Kが溜まって高K血症ですね。
ドクタードクター
その通り。H⁺の分泌も落ちるから、軽い代謝性アシドーシスを伴うこともある。次にコルチゾール不足。血糖への影響はどうだろう。
医学生医学生
コルチゾールは糖新生を促すので、足りないと低血糖になると思います。
ドクタードクター
正解。肝臓での糖新生が落ちるうえに、インスリンに拮抗する作用も失われるから、空腹時やストレス時に低血糖を起こしやすい。さらにコルチゾールには自由水の排泄を助ける働きがあって、不足するとADHを抑えにくくなる。循環血液量の減少もADH分泌を刺激するから、水が貯留して希釈性の低Na血症が上乗せされるんだ。
医学生医学生
低Na血症はアルドステロンとコルチゾールの両方から起こるんですね。だから高Na血症が入っている組合せは全部外れる、と。
ドクタードクター
そういうこと。これで「低Na血症・高K血症・低血糖」の組合せが正解だとわかる。ほかの組合せが何を表しているかも見ておくと理解が深まるよ。高Na・低K・高血糖の組合せはどんな状態だろう。
医学生医学生
全部Addison病の逆なので、ホルモン過剰の状態…Cushing症候群でしょうか。
ドクタードクター
いい発想だ。Cushing症候群ではコルチゾール過剰によって耐糖能異常や高血糖が起こり、大量のコルチゾールがもつミネラルコルチコイド作用で低K血症も起こりうる。では、高Na・低K・低血糖の組合せは?
医学生医学生
高Naと低Kは原発性アルドステロン症のパターンですけど、低血糖だけAddison病側なので、ちぐはぐな組合せですね。
ドクタードクター
その通り。ちなみに原発性アルドステロン症では、Naは基準範囲内から高値にとどまることが多い。残りの低Na・低K・高血糖も、低NaはAddison病に合うけれど、Kと血糖の向きが逆だね。
医学生医学生
内分泌は「過剰なら逆」と考えると、選択肢の構造がよく見えますね。
ドクタードクター
そうなんだ。最後に臨床的に大事な点をまとめよう。Addison病ではコルチゾールが低いのでネガティブフィードバックが外れてACTHが高値になり、前駆体のPOMCから作られるα-MSHなども増えて、皮膚や歯肉、手掌のしわに色素沈着が出る。これが下垂体性の続発性副腎皮質機能低下症との鑑別点だ。
医学生医学生
続発性ならACTHが低いので色素沈着はなくて、アルドステロンはレニン-アンジオテンシン系で保たれるから高K血症も目立たない、ということですね。
ドクタードクター
よく理解できている。ただし続発性でも、コルチゾール不足によるADHの影響で低Na血症は起こりうるから注意しよう。そしてもう一つ、感染や手術などのストレス、ステロイドの急な中断をきっかけに起こる副腎クリーゼは命に関わる。ショック、意識障害、高度の低Na・高K血症、低血糖を呈したら、検査結果を待たずにヒドロコルチゾールの静注と、生理食塩液・ブドウ糖液の補液を始めることが大切だ。
医学生医学生
原因不明のショックで低Naと高Kがあったら、副腎クリーゼを思い浮かべるようにします。
ドクタードクター
それが救急の現場で患者さんを救う発想だ。普段の治療はヒドロコルチゾールの補充で、必要に応じてフルドロコルチゾンを併用し、発熱時などには増量するシックデイルールを患者さんに指導しておくことも忘れずに。

まとめ

Addison病は原発性副腎皮質機能低下症で、コルチゾール・アルドステロン・副腎アンドロゲンがすべて不足します。アルドステロン不足により集合管でのNa再吸収とK分泌が低下して低Na血症・高K血症が起こり、コルチゾール不足により糖新生が低下して低血糖、ADHが抑制されにくくなることで希釈性の低Na血症が加わります。Cushing症候群や原発性アルドステロン症などホルモン過剰症では向きが逆になると考えると、組合せ問題を理屈で解けます。ACTH高値による色素沈着は続発性副腎皮質機能低下症との鑑別点であり、ストレス時の副腎クリーゼでは検査結果を待たずにヒドロコルチゾール投与と補液を開始することが重要です。ホルモンの作用から異常を導く考え方は、内分泌疾患全般の理解の土台になります。

解答・解説

正解はdです

Addison病は原発性の慢性副腎皮質機能低下症である。副腎皮質そのものが破壊されるため、副腎皮質から分泌されるホルモンがまとめて足りなくなる。具体的には、束状層のグルココルチコイド(コルチゾール)、球状層のミネラルコルチコイド(アルドステロン)、網状層の副腎アンドロゲンが不足する。原因としては、現在は自己免疫性副腎炎が最多であり、ほかに結核などがある。 電解質と血糖の異常は、どのホルモンが不足するかを順に考えると導ける。

アルドステロン不足

アルドステロンは腎臓の遠位尿細管・集合管に作用する。Na⁺を再吸収し、それと引き換えにK⁺とH⁺を尿中へ分泌させる。これが不足すると、Na⁺が尿中に失われて低ナトリウム血症に、K⁺が排泄されにくくなって高カリウム血症になる(軽い代謝性アシドーシスも伴いうる)。

コルチゾール不足

コルチゾールは肝臓での糖新生を促し、インスリンの作用に拮抗して血糖を保つ。これが不足すると、空腹時やストレス時に低血糖を起こしやすくなる。またコルチゾールには自由水の排泄を助ける働きがある。不足するとバソプレシン(抗利尿ホルモン、ADH)の分泌が抑えにくくなり、水が体内に貯留して希釈性の低ナトリウム血症も加わる。 したがってAddison病の代謝異常は「低Na血症・高K血症・低血糖」の組合せとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  高ナトリウム血症 ―― 高カリウム血症 ―― 低血糖

    誤り。高カリウム血症と低血糖はAddison病に合致する。しかしNaについては、アルドステロン不足でNa⁺が腎から失われ、さらにADHの作用で水が貯留して希釈される。そのため高ナトリウム血症ではなく低ナトリウム血症となる。

  2. ×b.  高ナトリウム血症 ―― 低カリウム血症 ―― 高血糖

    誤り。これはAddison病とは逆で、ミネラルコルチコイドやグルココルチコイドが過剰な状態の組合せである。例えばCushing症候群では、コルチゾール過剰によって低カリウム血症(ミネラルコルチコイド作用)と耐糖能異常・高血糖が起こる。Addison病は3項目すべてがこの逆になる。

  3. ×c.  高ナトリウム血症 ―― 低カリウム血症 ―― 低血糖

    誤り。低血糖はコルチゾール不足として合致する。しかし高ナトリウム血症と低カリウム血症は、原発性アルドステロン症のようなアルドステロン過剰でみられる所見である(原発性アルドステロン症では、Naは基準範囲内〜高値にとどまることが多い)。アルドステロンが不足するAddison病では、低ナトリウム血症と高カリウム血症になる。

  4. ○d.  低ナトリウム血症 ―― 高カリウム血症 ―― 低血糖

    正しい。アルドステロン不足で、集合管でのNa⁺再吸収とK⁺分泌が低下するため、低ナトリウム血症と高カリウム血症が起こる。コルチゾール不足では、肝臓の糖新生が低下し、インスリンに拮抗する作用も失われるため低血糖が起こる。さらにコルチゾール不足ではADHが抑えにくくなり、循環血液量の減少もADH分泌を刺激する。その結果、水が貯留して低ナトリウム血症が強まる。これらはいずれもAddison病の典型的な検査所見である。

  5. ×e.  低ナトリウム血症 ―― 低カリウム血症 ―― 高血糖

    誤り。低ナトリウム血症はAddison病に合致する。しかしアルドステロンが不足するとK⁺の分泌が低下するので、カリウムは低値ではなく高値になる。また、コルチゾールが欠乏すると血糖は上がらず、低血糖になる。

Addison病の主な症状・所見

・全身倦怠感、易疲労感、食欲不振、体重減少、悪心・嘔吐、腹痛 ・低血圧(特に起立性)、脱水:Na⁺と水が失われ、循環血液量が減るため ・色素沈着(皮膚、歯肉や口腔粘膜、手掌のしわ、爪床など):コルチゾールが不足すると、ネガティブフィードバックが外れてACTH分泌が増える。ACTHの前駆体であるPOMC(プロオピオメラノコルチン)から作られるα-MSH(メラニン細胞刺激ホルモン)なども増え、メラニンが増える。 ・女性では、腋毛・恥毛が減少する(副腎アンドロゲンの不足による)。 ・検査所見:低Na血症、高K血症、低血糖、好酸球増多、リンパ球増多、軽度の高Ca血症などがみられる。血中コルチゾールは低値、ACTHは高値、血漿レニン活性は高値となる。迅速ACTH試験ではコルチゾールの反応が低下する。

続発性(下垂体性)副腎皮質機能低下症との違い

・ACTHは低値なので、色素沈着は起こらない。 ・アルドステロンは主にレニン-アンジオテンシン系で調節されているため、比較的保たれる。そのため高K血症は目立たない。 ・低Na血症は、コルチゾール不足によるADH分泌の亢進(SIADHに似た病態)のために起こりうる。

副腎クリーゼ(急性副腎不全)

感染や手術などのストレスや、ステロイドの急な中断をきっかけに起こる。ショック、意識障害、高度の低Na血症・高K血症、低血糖を起こし、命に関わる。疑ったら検査結果を待たずに、ヒドロコルチゾールの静注と生理食塩液・ブドウ糖液の補液を開始する。

治療

ヒドロコルチゾールで補充する。必要に応じて、ミネラルコルチコイド作用をもつフルドロコルチゾンを併用する。発熱や手術などのストレス時には増量する(シックデイルール)。

POINT

・Addison病=原発性副腎皮質機能低下症。コルチゾール、アルドステロン、副腎アンドロゲンのすべてが不足する。 ・アルドステロン不足 → 低Na血症・高K血症(代謝性アシドーシス) ・コルチゾール不足 → 低血糖、ADH分泌亢進による希釈性低Na血症、好酸球増多 ・ACTHが高値となり、色素沈着が起こる(続発性との鑑別点)。 ・覚え方:Addison病は「低Na・高K・低血糖」。過剰症(Cushing症候群・原発性アルドステロン症)ではその逆向き。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。