StudyMed医師国家試験

夏の激痛とCTの白い影―尿路結石症の基本を総点検

第99回医師国家試験 E問題 第45問

国試問題にチャレンジ

第99回 E問題 第45問

尿路結石症について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.無症候性肉眼的血尿を認めることが多い。
  2. b.夏季に発症することが多い。
  3. c.腹部CTは診断に有用である。
  4. d.上部尿路より下部尿路に多い。
  5. e.尿酸結石が70%以上を占める。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は尿路結石症の基本事項をまとめて確かめる問題だ。疫学、症状、診断、結石の成分という4つの切り口で、それぞれ正しい知識を持っているかが問われている。一つずつ確認していこう。
医学生医学生
尿路結石といえば、救急外来で七転八倒している患者さんのイメージがあります。
ドクタードクター
そのイメージは大事だよ。腎盂にとどまっている結石は無症状のこともあるけれど、尿管へ下降して尿の流れをせき止めると、側腹部から下腹部・陰部へ放散する激しい疝痛、悪心・嘔吐、そして血尿が出る。では、結石の血尿は「無症候性の肉眼的血尿」が多いと言えるかな。
医学生医学生
血尿が出るのは確かなので、正しいように思えてしまいました。
ドクタードクター
ひっかかりやすいところだね。結石の血尿は疝痛発作とともに出るのが典型で、症状を伴う血尿なんだ。しかも肉眼的とは限らず、尿沈渣で初めてわかる顕微鏡的血尿のことも多い。痛みのない肉眼的血尿をみたら、まず疑うべきは何だろう。
医学生医学生
泌尿器科の講義で、膀胱癌の初発症状として強調されていました。
ドクタードクター
その通り。無症候性肉眼的血尿は膀胱癌や腎盂・尿管癌といった尿路上皮癌を第一に考える所見だ。結石の特徴としては誤りだね。次は季節性。夏と冬、どちらに多いと思う?
医学生医学生
汗をかいて尿が濃くなるので、夏ではないでしょうか。
ドクタードクター
正解。発汗で尿量が減り、尿中のカルシウムやシュウ酸、尿酸の濃度が上がって過飽和になると、結晶が析出・成長しやすくなる。だから夏季に発症が多い。予防として1日尿量2L以上を目安に飲水を勧めるのも同じ理屈だ。これは正しい選択肢だよ。
医学生医学生
診断では腹部単純X線を撮るイメージがありますが、CTのほうが有用なんですか。
ドクタードクター
腹部単純CTは尿路結石の診断で最も感度・特異度が高い画像検査なんだ。単純X線で写らないX線透過性の尿酸結石も含め、ほぼすべての結石を高吸収域として描出できる。さらに水腎症の有無や、虫垂炎・大動脈瘤など他の急性腹症の除外も同時にできる。だから「腹部CTは診断に有用」は正しい。ただし妊婦や小児では被曝を避けるため、まず超音波で水腎症を評価するよ。
医学生医学生
救急科の実習で、側腹部痛の患者さんにまずエコーを当てて、腎盂の拡張を確認していたのを思い出しました。
ドクタードクター
エコーは被曝がなくベッドサイドですぐできるから、第一歩として優秀だね。次は部位。上部尿路と下部尿路、どちらに多いかな。
医学生医学生
膀胱に石がたまっているイメージもあって、少し迷います。
ドクタードクター
実際には逆で、わが国では約95%が腎・尿管の上部尿路結石だ。膀胱・尿道の下部尿路結石は少数で、前立腺肥大症や神経因性膀胱のように残尿がある患者に生じやすい。昔の栄養状態が悪い時代や途上国では小児の膀胱結石が多かったけれど、現代の日本では上部尿路が圧倒的だよ。最後に成分。最も多いのは何だろう。
医学生医学生
生化学でシュウ酸カルシウムの結晶を習ったので、カルシウム結石でしょうか。
ドクタードクター
その通り。シュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムを合わせたカルシウム結石が全体の約80〜90%を占める。尿酸結石は5%前後なので、70%以上というのは誤りだ。尿酸結石は酸性尿で生じやすく、単純X線では写らないけれどCTでは描出され、クエン酸製剤による尿のアルカリ化で溶解が期待できる点が特徴だね。
医学生医学生
まとめると、夏に多いことと、CTが診断に有用であることの2つが正しい、ということですね。
ドクタードクター
よくできました。最後に臨床の注意点を整理しよう。疼痛にはNSAIDsが第一選択で、おおむね10mm未満の尿管結石は自然排石が期待でき、α1遮断薬が排石促進に使われる。排石が見込めなければ体外衝撃波結石破砕術や経尿道的尿管砕石術、経皮的腎砕石術を選ぶ。そして一番怖いのが、閉塞に感染が加わった閉塞性腎盂腎炎だ。敗血症に進展しうるので、尿管ステントや腎瘻で速やかにドレナージする必要がある。
医学生医学生
結石で発熱している患者さんは、痛み止めだけで帰してはいけないということですね。
ドクタードクター
その通り。発熱を伴う結石は泌尿器科的緊急症として扱う、と覚えておこう。ほかにも、ウレアーゼ産生菌の感染で生じるリン酸マグネシウムアンモニウム結石はサンゴ状結石になりやすいこと、シスチン尿症によるシスチン結石があることも、成分の知識としてセットで押さえておくといいよ。

まとめ

尿路結石症は約95%が腎・尿管の上部尿路に生じ、成分はシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムからなるカルシウム結石が約80〜90%を占め、尿酸結石は5%前後にとどまります。発汗による尿の濃縮が結石形成を促すため夏季に多く、予防には十分な飲水が勧められます。診断では腹部単純CTがX線透過性の尿酸結石を含むほぼすべての結石と水腎症を描出でき最も有用で、妊婦や小児では超音波が優先されます。結石の血尿は疝痛を伴うのが典型であり、無症候性肉眼的血尿をみたら尿路上皮癌を疑うという鑑別の視点が重要です。閉塞に感染を合併した閉塞性腎盂腎炎は速やかなドレナージを要する緊急症であり、疫学から治療まで一貫して理解しておくことが救急外来での適切な判断につながります。

解答・解説

正解はb, cです

尿路結石症の疫学・症状・診断・結石成分という基本事項をまとめて確かめる問題である。

押さえるべき骨格

・部位: 結石の大部分(わが国では約95%)は腎・尿管の上部尿路にあり、膀胱・尿道の下部尿路結石は少数である。 ・症状: 腎盂にとどまる結石は無症状のこともあるが、尿管へ下降して尿の流れをせき止めると、側腹部から下腹部・陰部へ放散する激しい疝痛(仙痛)発作、悪心・嘔吐、血尿(肉眼的または顕微鏡的)が出現する。 ・誘因: 尿の濃縮(脱水)が結石形成を促すため、発汗の多い夏季に発作が増える。 ・診断: 単純CT(造影剤を使わないCT)は結石の成分によらずほぼすべての結石を描出でき、水腎症の有無も同時に評価できる。 ・成分: カルシウム結石(シュウ酸カルシウム・リン酸カルシウム)が大部分を占め、尿酸結石は少数である。 これらに照らすと、夏季に多いとするb、腹部CTが有用とするcが正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  無症候性肉眼的血尿を認めることが多い。

    誤り。尿路結石に伴う血尿は、結石が尿管へ下降する際の疝痛発作とともに出現するのが典型で、症状を伴う血尿である。血尿は肉眼でわかるものだけでなく、尿潜血・沈渣で初めてわかる顕微鏡的血尿のことも多い。痛みを伴わない肉眼的血尿(無症候性肉眼的血尿)は、膀胱癌や腎盂・尿管癌など尿路上皮癌を第一に疑う所見であり、結石の特徴としては不適切である。

  2. ○b.  夏季に発症することが多い。

    夏季は発汗により体内の水分が失われ、尿量が減って尿が濃縮される。尿中のカルシウム・シュウ酸・尿酸などの濃度が上がり過飽和になると結晶が析出・成長しやすくなるため、結石の形成と疝痛発作が夏に増える。予防として1日2L以上の尿量を保つよう飲水を勧めるのも同じ理由による。

  3. ○c.  腹部CTは診断に有用である。

    腹部単純CTは尿路結石の診断で最も感度・特異度が高い画像検査である。X線透過性の尿酸結石など腹部単純X線(KUB)で写らない結石も含め、ほぼすべての結石を高濃度域として描出できる。さらに結石の位置・大きさ、水腎症・水尿管症の有無、急性虫垂炎や大動脈瘤など他の急性腹症の除外も同時に行える。なお超音波検査は被曝がなく水腎症の評価に有用で、妊婦や小児ではまず超音波が選択される。

  4. ×d.  上部尿路より下部尿路に多い。

    誤り。逆で、腎結石・尿管結石からなる上部尿路結石が全体の約95%を占め、膀胱結石・尿道結石などの下部尿路結石は5%程度にすぎない。かつて栄養状態の悪い時代や発展途上国では小児の膀胱結石が多かったが、現在のわが国では上部尿路結石が圧倒的に多い。下部尿路結石は前立腺肥大症や神経因性膀胱など、尿の排出障害(残尿)がある患者に生じやすい。

  5. ×e.  尿酸結石が70%以上を占める。

    誤り。最も多いのはカルシウム結石(シュウ酸カルシウムおよびリン酸カルシウム)で、全体の約80〜90%を占める。尿酸結石は近年増えてきているものの5%前後である。尿酸結石は酸性尿で生じやすく、X線透過性で単純X線では写らないが、CTでは描出される。尿のアルカリ化(クエン酸製剤)で溶解が期待できる点も特徴である。

尿路結石の成分と特徴

・シュウ酸カルシウム結石: 最多。X線不透過。高カルシウム尿症、高シュウ酸尿症、低クエン酸尿症などが危険因子。 ・リン酸カルシウム結石: X線不透過。原発性副甲状腺機能亢進症、遠位尿細管性アシドーシスなどでみられる。 ・リン酸マグネシウムアンモニウム(ストルバイト)結石: ウレアーゼ産生菌(プロテウス属など)による尿路感染でアルカリ尿となり形成される。サンゴ状結石になりやすい。 ・尿酸結石: X線透過性。酸性尿、高尿酸血症・痛風で生じやすい。尿アルカリ化で溶解しうる。 ・シスチン結石: 常染色体潜性(劣性)遺伝のシスチン尿症で生じる。まれ。

疫学

・男性に多く(男女比はおよそ2〜2.5:1)、働き盛りの年代に多い。生涯罹患率は上昇傾向にある。 ・夏季に多い。動物性蛋白・塩分の過剰摂取、肥満、メタボリックシンドロームも危険因子とされる。

診断と治療の流れ

・症状: 疝痛発作、肋骨脊柱角(CVA)叩打痛、悪心・嘔吐、血尿。 ・検査: 尿検査(血尿)、超音波(水腎症)、腹部単純X線(KUB)、単純CT。 ・治療: 疼痛にはNSAIDsが第一選択。おおむね10mm未満の尿管結石は自然排石が期待でき、α1遮断薬が排石促進に用いられる。自然排石が見込めない場合は体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、経尿道的尿管砕石術(TUL)、経皮的腎砕石術(PNL)を選ぶ。 ・閉塞に感染を合併した場合(閉塞性腎盂腎炎)は敗血症に進展しうるため、尿管ステント留置や腎瘻造設で速やかにドレナージする。 ・予防: 十分な飲水(1日尿量2L以上)、食事指導。

POINT

・尿路結石の約95%は上部尿路(腎・尿管)に生じる。 ・最も多い成分はカルシウム結石(約80〜90%)で、尿酸結石は5%前後。 ・脱水で尿が濃縮される夏季に多い。 ・単純CTはほぼすべての結石を描出でき、診断に最も有用。 ・結石の血尿は疝痛を伴うのが典型。無症候性肉眼的血尿をみたら尿路上皮癌を疑う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。