StudyMed医師国家試験

肺は小さいのに息は速く吐ける―2つの数字で見抜く拘束性換気障害

第99回医師国家試験 D問題 第99問

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第99回 D問題 第99問

%VC 62%,FEV1.0% 82% を示すのはどれか。

  1. a.気管支喘息
  2. b.慢性気管支炎
  3. c.気管支拡張症
  4. d.特発性肺線維症
  5. e.びまん性汎細気管支炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、スパイロメトリの2つの数値から換気障害のタイプを判定し、疾患に結びつける問題だ。注目するのは%肺活量と1秒率の組み合わせ。それぞれの基準値を思い出しながら考えてみよう。
医学生医学生
%肺活量は80%未満で拘束性、1秒率は70%未満で閉塞性、でしたよね。CBTでも何度も出ました。
ドクタードクター
その通り。2つを組み合わせると、正常、拘束性、閉塞性、混合性の4つに分けられる。今回の数値をあてはめるとどうなる?
医学生医学生
%肺活量はかなり低いので拘束性、1秒率は保たれているので閉塞はない。純粋な拘束性換気障害ですね。
ドクタードクター
正解。拘束性というのは、肺が十分に広がらない状態のこと。選択肢の中で、肺そのものが硬くなって膨らまない代表疾患はどれだろう。
医学生医学生
特発性肺線維症だと思います。でも、1秒率が80%台と正常より高めなのが少し引っかかります。
ドクタードクター
そこが面白いところなんだ。肺線維症では線維化で肺が硬くなり、元に戻ろうとする弾性収縮力が強まる。さらに周囲の硬い組織が気道を外へ引っ張って開いているから、吐き出す速さはむしろ保たれ、1秒率は正常から高値になりやすい。だから80%台は肺線維症らしい所見なんだよ。
医学生医学生
肺活量が小さいうえに素早く吐き切れるから、割合としては高く出るわけですね。
ドクタードクター
そういうこと。特発性肺線維症は特発性間質性肺炎で最も多い病型で、病理では通常型間質性肺炎パターンを示す。肺胞壁が厚くなり毛細血管床も減るので、肺拡散能も低下するのが特徴だ。では、ほかの選択肢がなぜ違うかを見ていこう。まず気管支喘息は?
医学生医学生
気道炎症で気管支が狭くなるので、発作時は1秒率が下がる閉塞性ですね。
ドクタードクター
そう。気管支拡張薬の吸入で1秒量が12%以上かつ200mL以上改善すれば可逆性ありと判定する。非発作時は正常のこともあるけれど、%肺活量の著明な低下と1秒率正常の組み合わせは典型ではないね。
医学生医学生
慢性気管支炎はCOPDの一型なので、やはり閉塞性でしょうか。
ドクタードクター
その通り。喫煙を主因に気道壁が肥厚し、痰の分泌が増えて気道が狭くなる。1秒率が低下するから、今回の数値とは合わない。
医学生医学生
気管支拡張症は名前に「拡張」とあるので、気道が広がって吐きやすくなるのかと思ってしまいました。
ドクタードクター
ひっかかりやすいポイントだね。気管支自体は不可逆的に拡張していても、分泌物の貯留や気道壁の破壊、細気管支の炎症を伴うから、呼吸機能は主に閉塞性になる。広範な病変で混合性になることはあるけれど、1秒率が保たれた純粋な拘束性の代表ではない。
医学生医学生
びまん性汎細気管支炎は、呼吸細気管支の炎症で慢性副鼻腔炎を合併する病気でしたね。講義でエリスロマイシン少量長期療法が効くと習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。細気管支が狭くなるので閉塞性換気障害を示し、エアトラッピングで残気量が増える。HLA-B54との関連や東アジア人に多い点も特徴だ。
医学生医学生
結局、選択肢の中で拘束性になるのは間質の病気だけで、ほかは全部気道の病気、という整理ですね。
ドクタードクター
まさにそれ。最後に臨床的な話を補足しよう。特発性肺線維症は50歳以上の男性喫煙者に多く、乾性咳嗽と進行性の労作時呼吸困難、ばち指が出る。聴診では両側の肺底部で捻髪音、いわゆるベルクロラ音が聞こえ、血清ではKL-6やSP-Dが上がる。高分解能CTでは下葉の胸膜直下優位に網状影や蜂巣肺がみられるよ。
医学生医学生
臨床実習でベルクロラ音を聴かせてもらいました。マジックテープをはがすような音でした。
ドクタードクター
いい経験をしたね。治療はピルフェニドンやニンテダニブといった抗線維化薬、在宅酸素療法、適応があれば肺移植。急性増悪は予後不良なので注意が必要だ。また、拘束性障害は肺の病気だけでなく、胸水や側弯症などの胸郭の問題、神経筋疾患でも起こる。%肺活量の低下を見たら、肺・胸膜・胸郭・呼吸筋のどこに原因があるかを考える習慣をつけよう。

まとめ

スパイロメトリでは、%肺活量80%未満で拘束性、1秒率70%未満で閉塞性、両方満たせば混合性換気障害と判定します。%肺活量が低下し1秒率が保たれる純粋な拘束性パターンは、間質の線維化で肺が硬くなる特発性肺線維症の典型で、弾性収縮力の増強により1秒率はむしろ正常〜高値となり、肺拡散能の低下も伴います。一方、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎はいずれも気道病変が主体で閉塞性換気障害を示し、進行例で混合性になることはあっても純粋な拘束性の代表ではありません。拘束性障害は肺実質のほか胸膜・胸郭・神経筋疾患でも生じるため、2つの指標で障害のタイプを判定し、その原因部位を考える流れを身につけることが呼吸器診療の基本になります。

解答・解説

正解はdです

検査値の読み方

スパイロメトリによる換気障害の分類は、次の2つの指標の組み合わせで行う。 ・%肺活量(%VC):実測の肺活量が、性・年齢・身長から求めた予測値の何%かを示す。80%未満で拘束性換気障害(肺が十分に広がらない)。 ・1秒率(FEV1.0%=FEV1/FVC×100):努力肺活量のうち最初の1秒間に吐き出せた割合。70%未満で閉塞性換気障害(気道が狭く速く吐き出せない)。 これにより4つに分類される。 ・正常:%VC≧80%、1秒率≧70% ・拘束性換気障害:%VC<80%、1秒率≧70% ・閉塞性換気障害:%VC≧80%、1秒率<70% ・混合性換気障害:%VC<80%、1秒率<70%

本問の考え方

%VC 62%は80%を大きく下回り肺活量が低下している。一方、1秒率82%は70%以上で気道閉塞はない。したがって純粋な拘束性換気障害のパターンである。選択肢のうち、肺実質(間質)の線維化によって肺が硬くなり、容量が減少する代表疾患は特発性肺線維症であり、他はいずれも気道病変を主体とし閉塞性換気障害を示す疾患である。 なお、肺線維症では肺の弾性収縮力(元に戻ろうとする力)が強まり、気道も周囲から引っ張られて開いているため、1秒率はむしろ正常〜高値(本問のように80%台以上)となりやすい。

選択肢考察

  1. ×a.  気管支喘息

    気管支喘息は好酸球などによる慢性の気道炎症を背景に、気道過敏性の亢進と可逆性の気流制限をきたす疾患である。発作時には気管支平滑筋の収縮・気道壁の浮腫・粘液栓により1秒量・1秒率が低下し、閉塞性換気障害を示す。気管支拡張薬吸入後に1秒量が12%以上かつ200 mL以上改善すれば気道可逆性ありと判定する。非発作時には正常のこともあるが、本問のような%VCの著明な低下と1秒率正常の組み合わせは典型ではない。

  2. ×b.  慢性気管支炎

    慢性気管支炎は喀痰を伴う咳が年に3か月以上、2年以上連続して続く状態と定義され、主に喫煙が原因となる。気道壁の肥厚や粘液分泌の亢進により気道が狭くなり、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の一病型として1秒率が低下する閉塞性換気障害を示す。したがって1秒率82%とは合わない。

  3. ×c.  気管支拡張症

    気管支拡張症は、繰り返す気道感染・炎症により気管支が不可逆的に拡張する疾患で、慢性の咳・多量の膿性痰・血痰をきたす。拡張した気管支には分泌物が貯留し、気道壁の破壊や細気管支の炎症を伴うため、呼吸機能は主に閉塞性換気障害を示す。病変が広範で肺の破壊・線維化が進むと肺活量も低下し混合性となることはあるが、1秒率が保たれた純粋な拘束性障害の代表疾患ではない。

  4. ○d.  特発性肺線維症

    特発性肺線維症(IPF)は原因不明の特発性間質性肺炎のうち最も頻度が高い病型で、病理学的には通常型間質性肺炎(UIP)パターンを示す。肺胞壁(間質)の線維化が進行して肺が硬くなる(コンプライアンス低下)ため、肺が十分に膨らまず、肺活量・全肺気量が低下する拘束性換気障害を呈する。気道の閉塞はなく、線維化による肺の弾性収縮力の増強で呼出はむしろ速くなるため、1秒率は正常〜高値となる。本問の%VC 62%、1秒率82%に合致する。また、肺胞壁の肥厚と肺胞毛細血管床の減少により肺拡散能(DLCO)が低下し、労作時の低酸素血症をきたすのも特徴である。

  5. ×e.  びまん性汎細気管支炎

    びまん性汎細気管支炎(DPB)は両肺の呼吸細気管支に慢性炎症が生じる疾患で、東アジア人に多く、HLA-B54との関連や慢性副鼻腔炎の合併が知られる。細気管支の炎症・狭窄により閉塞性換気障害(1秒率低下)を示し、エアトラッピングにより残気量が増加する。病状が進むと肺活量も低下し混合性障害となることがあるが、1秒率が保たれる拘束性障害の典型ではない。治療はエリスロマイシン少量長期療法が有効である。

拘束性換気障害をきたす主な疾患

・肺実質の病変:特発性肺線維症などの間質性肺炎、じん肺、サルコイドーシス(進行例)、放射線肺炎、薬剤性肺障害 ・胸膜の病変:大量胸水、胸膜肥厚(胸膜癒着)、気胸 ・胸郭の病変:高度の脊柱側弯症、肺結核後遺症(胸郭形成術後)、肥満 ・神経筋疾患:筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、筋ジストロフィーなど(呼吸筋力の低下) ・肺切除後

閉塞性換気障害をきたす主な疾患

COPD(肺気腫・慢性気管支炎)、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、リンパ脈管筋腫症など。

特発性肺線維症の特徴

・50歳以上の男性、喫煙者に多い。 ・症状:乾性咳嗽、進行性の労作時呼吸困難、ばち指。 ・聴診:両側肺底部の捻髪音(fine crackles、ベルクロラ音)。 ・血液検査:KL-6、SP-A、SP-Dの上昇。 ・画像:高分解能CTで両側下葉・胸膜直下優位の網状影、蜂巣肺、牽引性気管支拡張。 ・呼吸機能:拘束性換気障害、DLCO低下、6分間歩行試験での酸素飽和度低下。 ・治療:抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)、在宅酸素療法、肺移植。急性増悪は予後不良である。

POINT

・%VC<80%で拘束性、1秒率<70%で閉塞性、両方満たせば混合性。 ・%VC低下+1秒率正常(むしろ高値)=拘束性換気障害→間質性肺炎・肺線維症を想起する。 ・肺線維症では肺拡散能(DLCO)も低下する。 ・気管支喘息、COPD(慢性気管支炎・肺気腫)、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎は閉塞性換気障害。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。