StudyMed医師国家試験

「成長とともに」開いていく肘―外反肘を招く上腕骨外顆骨折を見抜く

第99回医師国家試験 D問題 第85問

国試問題にチャレンジ

第99回 D問題 第85問

右肘関節を分解した模式図を別に示す。 小児期の骨折で成長とともに外反肘変形を生じる可能性が高いのはどれか。

第99回 D問題 第85問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、肘関節を分解した模式図の上で、小児期の骨折のうちどれが成長に伴って外反肘を生じやすいかを考える問題だ。カギは2つ。図の左右がどちら側か、そして「成長とともに」という言葉が何を意味するか。まず図の向きから確認しよう。
医学生医学生
前から見た右肘なので、向かって左が外側、つまり橈側ですよね。上腕骨の左下の丸いところが小頭で、右の糸巻き状のところが滑車でしょうか。
ドクタードクター
その通り。下段は左の細い骨が橈骨、右の太い骨が尺骨で、上端が肘頭だ。すると、外側の骨幹端から小頭を含んで斜めに関節面へ抜ける線が上腕骨外顆骨折、関節の上方で上腕骨を横断する線が顆上骨折、内側縁に沿う線が内顆・内側上顆の骨折、尺骨近位を横切る線が肘頭骨折、橈骨の骨頭直下を横切る線が橈骨近位端の骨折と読める。
医学生医学生
解剖実習で肘を分解したときの骨の形と重ねると、イメージしやすいです。
ドクタードクター
次に外反肘の定義だ。肘を伸ばして前腕を回外すると、前腕は上腕に対して少し外へ開いている。これが運搬角で、成人で約10〜15°。これが大きくなったのが外反肘、小さくなったり逆転したりするのが内反肘だ。
医学生医学生
小児の肘の骨折で変形といえば、顆上骨折が一番有名だと思うんですが、顆上骨折ではないんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。顆上骨折は小児の肘周辺骨折で最も多いけれど、晩期の変形として典型的なのは内反肘なんだ。遠位骨片が内側に傾いて内旋したまま癒合する変形治癒が原因で、骨折線が骨端線より近位にあるから成長障害は通常起こらない。つまり「成長とともに」悪化するタイプではないんだ。
医学生医学生
なるほど。じゃあ「成長とともに」というのは、成長軟骨そのものが傷ついている骨折を指しているんですね。
ドクタードクター
まさにそこがポイント。上腕骨外顆骨折は骨折線が骨端線と骨端核を横切って関節面に達する関節内骨折で、骨端線損傷でもある。外側の成長が止まったり、骨片が癒合せず偽関節になったりすると、内側だけが成長を続けるから、年月とともに肘が外側へ開いていくんだ。
医学生医学生
外側のブレーキがかかったまま内側だけ伸びるから、外に反っていくわけですね。だから正解は上腕骨外顆骨折。
ドクタードクター
正解。しかも外顆には前腕伸筋群が付着しているから、その牽引で骨片が転位・回転しやすいし、関節液に浸るので癒合しにくい。外顆骨折は小児肘周辺骨折で顆上骨折に次いで2番目に多く、5〜10歳前後に好発する。転位が2mm程度以上あれば観血的整復固定術が勧められるんだ。
医学生医学生
整形外科の外来実習で、転倒した子どもの肘のX線を見て「骨端核が小さいから外顆骨折は見逃しやすい」と指導医の先生に言われました。
ドクタードクター
大事な指摘だね。小児は骨端核が未完成で骨折線がわかりにくいから、健側との比較撮影が役立つこともある。では内側の骨折はどうかな。
医学生医学生
内側上顆骨折は肘関節脱臼に合併しやすいと習いました。内側なら、むしろ内反のほうに傾きそうな気がします。
ドクタードクター
そうだね。内側上顆骨折は屈筋群や内側側副靱帯の牽引による裂離骨折で、尺骨神経障害や外反不安定性、骨片の関節内嵌頓が問題になる。滑車を含む内顆骨折はまれだけれど、内側の成長障害で内反肘をきたすことがある。いずれにせよ成長とともに外反肘になる典型ではない。
医学生医学生
肘頭骨折と橈骨の骨折はどうですか。どちらも前腕側の骨なので、上腕骨の成長軟骨とは関係なさそうです。
ドクタードクター
その理解でいい。肘頭骨折は上腕三頭筋の牽引で骨片が近位に引き離され、伸展力が失われるのが問題で、転位例は引き寄せ締結法などで固定する。小児の橈骨近位端は頸部骨折が多く、骨端線の早期閉鎖や骨頭壊死、回内外制限が合併症だ。橈骨の短縮などで軽度の外反を生じることはあるけれど、成長とともに外反肘をきたす代表は外顆骨折だよ。
医学生医学生
顆上骨折は内反肘、外顆骨折は外反肘、と対にして覚えればよさそうですね。
ドクタードクター
その通り。そして外反肘で特に重要なのが遅発性尺骨神経麻痺だ。外反が強くなると、肘の内側の肘部管を通る尺骨神経が長年にわたって牽引・摩擦され、受傷から十年以上たって環指・小指のしびれや骨間筋の萎縮、鷲手、フロマン徴候陽性が現れる。治療は尺骨神経前方移行術などだ。だからこそ、子どもの外顆骨折は初期にきちんと整復・固定することが将来の神経障害の予防につながるんだ。

まとめ

小児の上腕骨外顆骨折は、骨折線が骨端線と関節面を横切る関節内かつ骨端線損傷で、前腕伸筋群の牽引により転位しやすく偽関節になりやすい骨折です。外側の成長障害や偽関節によって内側だけが成長を続けると、成長とともに運搬角が増大して外反肘となり、十年以上を経て遅発性尺骨神経麻痺をきたすことがあります。一方、最も頻度の高い顆上骨折の晩期変形は変形治癒による内反肘であり、成長障害によるものではない点が対照的です。内側上顆骨折は肘関節脱臼や尺骨神経障害、肘頭骨折は上腕三頭筋による転位、橈骨頸部骨折は骨端線早期閉鎖や回内外制限が問題となります。「顆上骨折→内反肘、外顆骨折→外反肘→遅発性尺骨神経麻痺」という流れを押さえ、転位のある外顆骨折を見逃さず早期に整復固定する重要性を理解しておきましょう。

解答・解説

正解はaです

模式図の読み取り

図は右肘関節を前方から見て、上腕骨遠位端(上段)と前腕骨近位端(下段)を分けて描いたものである。前方から見た右肘では、向かって左側が外側(橈側)、右側が内側(尺側)となる。上腕骨の左下の丸い関節面が上腕骨小頭(橈骨頭と関節する)、右側の糸巻き状の部分が上腕骨滑車(尺骨と関節する)であり、下段では左の細い骨が橈骨、右の太い骨が尺骨(上端が肘頭)である。 各線が示す骨折は次のように読める。 ・①:外側の骨幹端から斜めに走り、小頭を含んで滑車の方へ抜ける線 → 上腕骨外顆骨折 ・②:関節包の上方で上腕骨遠位を横断する線 → 上腕骨顆上骨折 ・③:上腕骨の内側縁(内側上顆〜内顆)に沿う線 → 上腕骨内側部(内顆・内側上顆)の骨折 ・④:尺骨近位端を横断する線 → 肘頭骨折 ・⑤:橈骨の骨頭直下を横断する線 → 橈骨近位端(橈骨頭・頸部)骨折

外反肘が生じる仕組み

肘を伸ばして前腕を回外したとき、前腕は上腕に対してやや外側に開いている(生理的外反角、運搬角。成人で約10〜15°)。この角度が異常に大きくなった状態が外反肘、逆に前腕が内側に向き角度が減少・逆転した状態が内反肘である。 小児の上腕骨遠位端は成長軟骨(骨端線)を含んでおり、外側部分が損傷されて外側の成長が止まったり、外顆骨片が癒合せず偽関節になったりすると、内側だけが成長を続けるため、年月とともに肘が外側へ開いていく。つまり「成長とともに」進行する外反肘の代表的原因は上腕骨外顆骨折(とくにその偽関節)である。一方、顆上骨折後の内反肘は、骨片が内側へ傾き回旋したまま癒合する変形治癒が主因であり、成長障害によるものではない点が対照的である。

選択肢考察

  1. ○a.  ①

    ①は上腕骨外顆骨折である。小児の肘周辺骨折のなかでは顆上骨折に次いで2番目に多く、5〜10歳前後に好発する。骨折線は外側の骨幹端から骨端線・骨端核を横切って関節面に達するため、関節内骨折かつ骨端線損傷(Salter-Harris分類でII型またはIV型)となる。外顆には前腕伸筋群が付着しており、その牽引で骨片が転位・回転しやすく、関節液に浸るため骨癒合が得られにくい。 転位を放置したり整復が不十分だったりすると偽関節や外側の成長障害をきたし、成長とともに外反肘が進行する。外反肘が高度になると、肘の内側を走る尺骨神経が長年にわたって伸展・摩擦され、受傷から十数年〜数十年を経て遅発性尺骨神経麻痺(手内在筋の萎縮、環指・小指のしびれ)を生じる。このため、2mm程度以上の転位があれば観血的整復固定術が勧められる。以上より正しい。

  2. ×b.  ②

    ②は上腕骨顆上骨折であり、小児の肘周辺骨折で最も頻度が高い(5〜8歳前後に多い)。肘を伸ばした状態で手をついて転倒する伸展型がほとんどを占める。急性期の合併症として、上腕動脈損傷や高度の腫脹によるフォルクマン拘縮(前腕屈筋群の阻血性拘縮)、正中神経(前骨間神経)・橈骨神経・尺骨神経の麻痺が重要である。 晩期の変形としては内反肘が代表的である。これは遠位骨片が内側に傾き、内旋したまま癒合する変形治癒によるもので、骨折線が骨端線より近位にあるため成長障害は通常生じない。外反肘をきたす可能性が高いものとしては誤りである。

  3. ×c.  ③

    ③は上腕骨内側部(内顆・内側上顆)の骨折である。小児では内側上顆骨折が比較的多く(肘周辺骨折の頻度で3番目程度)、屈筋群・内側側副靱帯の牽引による裂離骨折として生じ、肘関節脱臼に合併することも多い。内側上顆骨折では尺骨神経障害や肘の外反不安定性が問題となる。一方、滑車を含む内顆骨折はまれだが、変形治癒や内側の成長障害によって内反肘をきたすことがある。いずれにせよ成長とともに外反肘を生じる典型的な骨折ではなく、誤りである。

  4. ×d.  ④

    ④は尺骨近位端の肘頭骨折である。肘頭には上腕三頭筋が付着しているため、転位のある骨折では骨片が近位に引き離され、肘の伸展力が失われる。転位例では引き寄せ締結法(tension band wiring)などで固定する。合併症としては偽関節、関節面の不整による変形性関節症、可動域制限などがあるが、上腕骨遠位の成長軟骨とは無関係であり、外反肘の原因とはなりにくい。誤りである。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤は橈骨近位端(橈骨頭・橈骨頸部)の骨折である。小児では骨頭そのものより橈骨頸部の骨折が多く、手をついて肘に外反力が加わって生じる。合併症として、骨端線の早期閉鎖、橈骨頭の阻血性壊死、橈骨頭の過成長、前腕の回内・回外制限などが挙げられる。橈骨頭は外反ストレスに対する支えの一つであるため、橈骨の短縮や骨頭切除後に軽度の外反を生じることはあるが、成長とともに外反肘をきたす代表的な骨折は上腕骨外顆骨折であり、誤りである。

小児の肘周辺骨折と主な晩期合併症

・上腕骨顆上骨折:最多。急性期にフォルクマン拘縮・神経麻痺、晩期に内反肘(変形治癒による) ・上腕骨外顆骨折:2番目に多い。偽関節・成長障害 → 外反肘 → 遅発性尺骨神経麻痺。外側の過成長による軽度の内反肘や、滑車の部分壊死による魚尾状変形(fishtail deformity)をきたすこともある ・上腕骨内側上顆骨折:肘関節脱臼に合併しやすい。尺骨神経障害、骨片の関節内嵌頓 ・橈骨頸部骨折:骨端線早期閉鎖、骨頭壊死、回内外制限 ・肘頭骨折:上腕三頭筋による骨片の転位、偽関節

内反肘と外反肘の整理

・内反肘:顆上骨折後の変形治癒が代表。外見上の変形(ガンストック変形)が主で、機能障害は比較的軽い ・外反肘:外顆骨折後の偽関節・成長障害が代表。進行すると遅発性尺骨神経麻痺をきたす。ほかにターナー症候群などでも生理的外反角の増大がみられる

遅発性尺骨神経麻痺

外反肘により肘部管を走る尺骨神経が慢性的に牽引・圧迫されて生じる肘部管症候群の一型である。受傷から長期間(十年以上)を経て、環指尺側・小指のしびれ、骨間筋・小指球筋の萎縮、鷲手変形、フロマン徴候陽性などが出現する。治療は尺骨神経前方移行術などが行われる。

POINT

・小児の肘周辺骨折の頻度:顆上骨折>外顆骨折>内側上顆骨折 ・顆上骨折の晩期変形は内反肘(変形治癒)、外顆骨折の晩期変形は外反肘(偽関節・成長障害) ・外反肘は遅発性尺骨神経麻痺の原因となる ・外顆骨折は関節内かつ骨端線損傷で、伸筋群の牽引で転位しやすく偽関節になりやすい → 転位があれば観血的整復固定

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。