最初の一言は「はじめまして」―認知症の初診は自己紹介から始まる
第99回医師国家試験 B問題 第7問
国試問題にチャレンジ
認知症患者の初診時にまず行うのはどれか。
- a.患者の態度をしばらく観察する。
- b.患者の家族から病歴を聴取する。
- c.簡単な計算をさせる。
- d.身体診察を行う。
- e.自己紹介をする。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
認知症の患者さんの初診では、まず挨拶と自己紹介をし、本人の名前を確認して信頼関係(ラポール)を築くことから始めます。認知症の患者さんは不安や混乱を抱えやすく、家族とだけ話を進めたり、いきなり計算課題や身体診察を行ったりすると、自尊心を傷つけて協力が得にくくなります。診療の基本的な順序は、自己紹介、病歴聴取(家族からの情報も含む)、身体診察・認知機能検査・血液検査・画像検査であり、どれも必要ですが入口は自己紹介です。入室時からの観察や振り向き徴候、HDS-R・MMSE、治療可能な認知症の除外といった評価も、本人を尊重する姿勢の上に成り立ちます。医療面接の基本は、認知症に限らずすべての診療の土台となる技能です。
解答・解説
正解はeです
認知症の患者を初めて診察するとき、最初に何をすべきかを問う問題である。医学的な評価の手順ではなく、医療面接(問診)の基本姿勢が問われている。 医療面接は、患者との信頼関係(ラポール)を築くことから始まる。そのための第一歩が、挨拶をし、自分の名前と立場を伝え、患者本人の名前を確認することである。これは認知症の有無にかかわらずすべての患者に共通する基本であるが、認知症の患者では特に重要である。認知症の患者は、見知らぬ場所で知らない人に囲まれることで不安や混乱を強めやすく、自分が軽んじられていると感じると診察への協力が得られにくくなる。また、付き添いの家族にばかり話しかけ、本人を置き去りにする対応は、本人の尊厳を損なう。 したがって、病歴聴取、認知機能の検査、身体診察はいずれも必要な過程であるが、それらはまず自己紹介を行い、本人に一人の人として向き合う姿勢を示したうえで進めるものである。「まず行う」ものという設問の意図から、医療面接の導入にあたる行為を選べばよい。
選択肢考察
- ×a. 患者の態度をしばらく観察する。
最初に行うことではない。表情、身だしなみ、歩き方、付き添いへの依存の程度、問いかけに対して家族の方を振り返る仕草(振り向き徴候)など、入室時からの様子の観察は認知症の評価に役立つ情報であり、診察の間を通じて自然に行う。しかし、挨拶もせずに「しばらく観察する」ことは、患者に不安や不信感を与え、礼を欠く対応である。
- ×b. 患者の家族から病歴を聴取する。
最初に行うことではない。認知症の患者では本人が症状や経過を正確に語れないことが多く、家族など身近な人からの情報(いつから、どのような変化があったか、日常生活での支障など)は診断に欠かせない。しかし病歴聴取は自己紹介の後に行うものであり、まずは本人から話を聞く姿勢を示すことが大切である。本人の前で家族だけと話を進めると、本人の自尊心を傷つけるおそれがある。
- ×c. 簡単な計算をさせる。
最初に行うことではない。100から7を順に引く連続減算などの課題は、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMini-Mental State Examination(MMSE)にも含まれ、認知機能の障害の程度を大まかに知る手がかりになる。しかし、いきなり試験のような課題を課すと、患者は戸惑い、できないことで自尊心を傷つけられ、以後の協力が得られにくくなる。認知機能検査は、信頼関係を築き病歴を聴取した後に、目的を説明し了解を得て行う。
- ×d. 身体診察を行う。
最初に行うことではない。身体診察は、神経学的所見(麻痺、パーキンソン症状など)や、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、正常圧水頭症などの治療可能な認知症の原因を探るうえで重要である。しかし一般的な診療の順序として、身体診察は病歴聴取の後に行う。自己紹介もなく身体に触れることは、患者の不安や拒否を招く。
- ○e. 自己紹介をする。
まず行うべきこと(正解)。挨拶をして自分の名前と役割を伝え、本人の名前を確認することは医療面接の出発点であり、患者との信頼関係を築く第一歩である。認知症の患者は不安や混乱を抱えていることが多いため、目線を合わせて穏やかにゆっくり話しかけ、本人を尊重する姿勢を示すことで、その後の病歴聴取、検査、診察への協力が得られやすくなる。
医療面接の基本的な流れ
1. 導入:挨拶、自己紹介、患者の氏名確認、面接の目的の説明、話しやすい環境づくり。 2. 情報収集:主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活歴などを、開放型の質問(はい・いいえで答えられない質問)から閉鎖型の質問へと進めて聴取する。 3. 締めくくり:内容の要約と確認、今後の予定の説明。 その後に身体診察、必要な検査へと進む。
認知症患者を診察するときの配慮
・本人を尊重し、家族がいても本人に向けて話しかける。 ・短い文で、ゆっくり、わかりやすく話す。一度に多くのことを尋ねない。 ・否定したり叱ったりしない。 ・本人の話に加え、家族・介護者から、発症時期、経過、日常生活動作の変化、行動・心理症状(BPSD)などを聴取する。本人の前で話しにくい内容は、別に時間を設けて家族から聞く配慮も必要である。
認知症の診断で行う主な評価
・認知機能検査:HDS-R(30点満点、20点以下で認知症の疑い)、MMSE(30点満点、23点以下で認知症の疑い)など。 ・身体・神経学的診察。 ・血液検査:甲状腺機能、ビタミンB12などで治療可能な原因を除外する。 ・画像検査:頭部CT・MRIで脳萎縮、脳血管障害、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などを評価する。
POINT
・初診時はまず挨拶・自己紹介をし、信頼関係(ラポール)を築く。 ・診療の順序は、自己紹介 → 病歴聴取 → 身体診察・検査が基本。 ・認知症患者では家族からの情報も重要だが、本人を尊重して本人に向き合う姿勢を最初に示す。 ・自己紹介なしに観察・検査・診察を始めるのは不適切。
