StudyMed医師国家試験

「削れる関節」と「盛り上がる関節」―骨棘が関節リウマチの所見ではない理由

第120回医師国家試験 B問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第120回 B問題 第13問

関節リウマチでみられないのはどれか。

  1. a.関節腫脹
  2. b.骨棘形成
  3. c.CRP高値
  4. d.抗CCP抗体陽性
  5. e.リウマトイド因子〈RF〉陽性

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、関節リウマチでみられる所見とみられない所見を見分ける問題だ。ポイントは、関節リウマチが「何が起こる病気なのか」という病態の本質をつかむこと。そして、よく比較される変形性関節症との違いを意識することだよ。まず、関節リウマチの主役となる組織はどこだと思う?
医学生医学生
滑膜です。免疫の講義で、自己免疫による滑膜炎が本態だと習いました。
ドクタードクター
その通り。炎症を起こした滑膜は増殖してパンヌスという肉芽組織になり、軟骨や骨を侵食して壊していく。だから関節リウマチは「炎症」と「破壊」の病気だと覚えておこう。この視点で選択肢を眺めると、どれが仲間外れになるかな。
医学生医学生
関節腫脹は炎症そのものですし、CRPも炎症マーカーなのでみられますよね。骨棘形成は……骨が壊れる病気なら、壊れたところが尖ることもありそうな気がして少し迷います。
ドクタードクター
そこが引っかかりやすいところだね。骨棘は骨が削れてできるものではなく、関節の辺縁で骨が増殖して棘のように突き出したものなんだ。軟骨がすり減ったことに対する修復反応で、変形性関節症に特徴的な所見だよ。つまり骨棘は「増殖・修復」の所見で、「破壊」が主体の関節リウマチとは性質が逆。だから、関節リウマチでみられないのは骨棘形成になる。
医学生医学生
関節リウマチのX線では、骨が虫食い状に削れる骨びらんが見えるんでしたね。整形外科の実習で、膝の変形性関節症のX線で骨棘を見せてもらったのを思い出しました。
ドクタードクター
いい対比だね。関節リウマチのX線は関節周囲の骨粗鬆化、関節裂隙の均等な狭小化、骨びらん。変形性関節症は荷重部に偏った裂隙狭小化、軟骨下骨の硬化、骨棘、骨嚢胞。セットで覚えておくと強いよ。では、ほかの選択肢も確認しよう。関節腫脹にはどんな特徴があるかな。
医学生医学生
手関節やMCP関節、PIP関節などの小関節に、左右対称に出るんですよね。
ドクタードクター
そう。滑膜炎による腫脹だから、触ると軟らかく弾力がある。変形性関節症のヘバーデン結節のような骨性の硬い腫れとは手触りが違うんだ。腫れている関節の数は、分類基準や疾患活動性の評価にも使われる。CRPについてはどうだろう。
医学生医学生
滑膜でつくられるIL-6が肝臓に働いて、CRPが上がるという流れでしょうか。
ドクタードクター
正確だね。関節リウマチは関節にとどまらない全身性の炎症性疾患で、CRPや赤沈は活動性の指標になる。ただし、IL-6受容体を阻害するトシリズマブを使っていると、炎症があってもCRPが上がりにくいから注意が必要だ。次は自己抗体の2つ。リウマトイド因子と抗CCP抗体の違いは説明できる?
医学生医学生
CBTの勉強で、抗CCP抗体のほうが特異度が高いと覚えました。リウマトイド因子は他の病気でも陽性になるんですよね。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。リウマトイド因子はIgGのFc部分に対する自己抗体で、Sjögren症候群などの他の膠原病、C型肝炎のような慢性感染症、慢性肝疾患、さらに健康な高齢者でも陽性になることがある。一方、抗CCP抗体はシトルリン化された蛋白を認識する抗体で、感度はリウマトイド因子と同程度だけれど、特異度は約95%と高い。関節症状が出る前から陽性になることもあり、陽性例は骨破壊が進みやすいので予後予測にも役立つんだ。
医学生医学生
リウマトイド因子が陽性だからといって、すぐに関節リウマチと決めつけてはいけないんですね。
ドクタードクター
そういうこと。最後に臨床での注意点をまとめよう。手指の分布も鑑別に役立つ。関節リウマチはDIP関節がおかされにくく、変形性関節症はDIP関節のヘバーデン結節やPIP関節のブシャール結節が典型だ。朝のこわばりも、関節リウマチでは1時間以上続くことが多いのに対し、変形性関節症では短時間で治まる。
医学生医学生
でも、長く関節リウマチを患っている人の関節に骨棘が見えることはないんでしょうか。
ドクタードクター
鋭い質問だね。長い経過で関節が破壊されると、二次的に変形性の変化が加わることはある。ただ、関節リウマチ本来の所見としては骨棘はみられない、と理解しておけば試験でも臨床でも困らないよ。

まとめ

関節リウマチは滑膜の自己免疫性炎症を本態とし、増殖した滑膜(パンヌス)が軟骨や骨を侵食する「炎症と破壊」の疾患です。そのため、小関節の対称性の関節腫脹、CRP上昇や赤沈亢進、リウマトイド因子や特異度の高い抗CCP抗体の陽性がみられ、X線では関節周囲の骨粗鬆化や骨びらんが特徴となります。一方、骨棘形成は軟骨の摩耗に対する修復・増殖反応であり、変形性関節症に特徴的な所見で、関節リウマチ本来の所見ではありません。リウマトイド因子は他の膠原病や慢性感染症、健康な高齢者でも陽性になりうるため、抗CCP抗体と組み合わせて評価することが大切です。病態が「破壊」か「修復」かという視点で整理すると、関節リウマチと変形性関節症の画像・臨床所見の違いが自然に理解できます。

解答・解説

正解はbです

関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の特徴を、変形性関節症(osteoarthritis:OA)と対比して理解しているかを問う問題である。 RAは、関節を包む滑膜を主な場とする自己免疫性の慢性炎症性疾患である。炎症を起こした滑膜は増殖してパンヌス(肉芽組織)となり、軟骨と骨を侵食して破壊する。そのため、RAの病態は「炎症」と「破壊」が中心で、身体所見・検査所見には次のものが現れる。 ・局所の炎症所見:関節の腫脹・圧痛・熱感、朝のこわばり。 ・全身の炎症所見:CRP上昇、赤沈亢進、貧血など。 ・自己抗体:リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体。 ・画像所見:関節周囲の骨粗鬆化、関節裂隙の狭小化、骨びらん(辺縁から骨が虫食い状に削れる像)。 一方、OAは軟骨の変性・摩耗が出発点となる非炎症性(あるいは炎症が軽い)の疾患である。軟骨が減ると、その下の骨に硬化が起こり、関節の辺縁には修復反応として骨が増殖する(骨棘)。骨棘は「増殖・修復」の所見であり、「破壊」が主体のRAの所見とは性質が逆である。したがって、選択肢のうちRAでみられないのは骨棘形成である。

選択肢考察

  1. ×a.  関節腫脹

    RAでみられる。滑膜の炎症と増殖、関節液の貯留によって関節が腫れる。触ると軟らかく弾力のある腫脹(滑膜炎による腫脹)が特徴で、OAのヘバーデン結節などにみられる骨性の硬い腫れとは区別される。主に手関節、中手指節(MCP)関節、近位指節間(PIP)関節、中足趾節(MTP)関節などの小関節に、左右対称性に生じやすい。腫れている関節の数は、2010年ACR/EULAR分類基準や疾患活動性の評価(DAS28など)に用いられる。

  2. ○b.  骨棘形成

    RAの所見ではないので、本問の正解である。骨棘は、軟骨がすり減ったことへの反応として、関節の辺縁で骨が増殖して棘状に突き出したものである。OAに特徴的な所見で、変形性脊椎症やDIP関節のヘバーデン結節、PIP関節のブシャール結節もこれによる。RAでは、滑膜炎とパンヌスによる骨破壊(骨びらん)や関節周囲の骨粗鬆化が主体で、骨の増殖性変化は目立たない。なお、長い経過で関節が破壊されたRAでは、二次性の変形性変化が加わることはある。しかし、RA本来の所見としては骨棘はみられないと理解してよい。

  3. ×c.  CRP高値

    RAでみられる。RAは関節にとどまらない全身性の炎症性疾患である。滑膜で産生されるIL-6などの炎症性サイトカインが肝臓に働き、CRP(C反応性蛋白)の産生を増やす。CRPや赤沈は疾患活動性を反映し、分類基準の項目の一つでもある。また治療効果の判定にも使われる。なお、IL-6受容体を阻害する薬剤(トシリズマブなど)を使っているときは、炎症があってもCRPが上がりにくい点に注意する。

  4. ×d.  抗CCP抗体陽性

    RAでみられる。抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)は、蛋白中のアルギニンがシトルリンに変換された部分を認識する自己抗体である。感度はRFと同程度(おおむね70〜80%)だが、特異度は約95%と高く、陽性ならRAの可能性が非常に高い。関節症状が現れる前の早期から陽性になることがあり、早期診断に役立つ。また陽性例では骨破壊が進みやすく、予後予測の指標にもなる。喫煙は抗CCP抗体陽性RAの危険因子である。

  5. ×e.  リウマトイド因子〈RF〉陽性

    RAでみられる。RFは、IgGのFc部分に対する自己抗体である。日常の検査で主に測定されるのはIgM型である。RAの約70〜80%で陽性になるが、特異度は抗CCP抗体より低い。Sjögren症候群などの他の膠原病、C型肝炎などの慢性感染症、慢性肝疾患でも陽性になり、健康な高齢者でも陽性になることがある。高い値で陽性となる例は、重症化や関節外症状(リウマトイド結節、血管炎など)との関連が知られる。

RAとOAの対比

・病態:RAは滑膜の炎症(自己免疫)、OAは軟骨の変性・摩耗。 ・好発年齢・性別:RAは30〜50歳代の女性に多い。OAは中高年以降に多く、加齢とともに増える。 ・好発部位(手指):RAは手関節・MCP関節・PIP関節で、DIP関節はおかされにくい。OAはDIP関節(ヘバーデン結節)とPIP関節(ブシャール結節)。 ・朝のこわばり:RAでは1時間以上続くことが多い。OAでは短時間。 ・検査:RAではCRP上昇、赤沈亢進、RF・抗CCP抗体陽性。OAでは炎症反応は基本的に正常。 ・X線所見:RAでは関節周囲の骨粗鬆化、関節裂隙の均等な狭小化、骨びらん。進行すると亜脱臼や強直を起こす。OAでは関節裂隙の狭小化(荷重部に偏る)、軟骨下骨の硬化、骨棘形成、骨嚢胞。

2010年ACR/EULAR分類基準(要点)

1つ以上の関節に滑膜炎(腫脹)があり、他の疾患で説明できない場合に適用する。次の4項目の合計点(10点満点)が6点以上ならRAに分類する。 ・罹患関節:大関節か小関節か、およびその数(0〜5点) ・血清学的検査:RF・抗CCP抗体(0〜3点。陰性、低値陽性、高値陽性で区別する) ・急性期反応:CRP・赤沈(0〜1点) ・症状の持続期間:6週以上か(0〜1点)

RAの手指変形

尺側偏位、スワンネック変形、ボタン穴変形などがある。

POINT

・RAは滑膜炎による「炎症と骨破壊(骨びらん)」の疾患であり、骨棘形成はOAの所見である。 ・RAの所見:関節腫脹(対称性、小関節)、朝のこわばり、CRP上昇・赤沈亢進、RF陽性、抗CCP抗体陽性。 ・抗CCP抗体は特異度が高く(約95%)、早期診断と予後予測に有用。RFは感度は同程度だが特異度が低い。 ・X線像:RAは骨粗鬆化・骨びらん・均等な裂隙狭小化。OAは骨棘・軟骨下骨硬化・荷重部に偏った裂隙狭小化。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。