StudyMed医師国家試験

「mg」と「mL」を取り違えるな―モルヒネ持続皮下注の流量計算

第119回医師国家試験 E問題 第29問

国試問題にチャレンジ

第119回 E問題 第29問

65歳の男性。背部痛を主訴に来院した。肺癌の骨転移で治療を受けている。疼痛コントロール目的で入院となった。外来ではモルヒネ徐放製剤を内服していたが,指導医と相談の上,投与経路を皮下注射に変更することになった。塩酸モルヒネ注製剤と生理食塩液を混合して5mg/mLの溶液を調整した。1日投与量を24mg/日としたい。  この注射薬を持続皮下注射する場合の投与速度はどれか。

  1. a.0.1mL/時間
  2. b.0.2mL/時間
  3. c.0.4mL/時間
  4. d.0.5mL/時間
  5. e.0.8mL/時間

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、がん性疼痛の患者さんでモルヒネを持続皮下注射に切り替えるときの投与速度を求める計算問題だ。ポイントは、薬の量(mg)と液の量(mL)をきちんと区別して、単位を追いかけること。シリンジポンプに入力するのは何の値かな。
医学生医学生
1時間あたりに何mL流すか、ですよね。でも1日24mgで24時間だから、つい「1」と答えたくなります。
ドクタードクター
そこがまさに落とし穴だ。24÷24=1というのは「1mg/時間」、つまり薬の量の話。ポンプに設定するのは液量だから、ここから濃度で割る必要がある。今回の溶液は1mLあたり5mgのモルヒネを含んでいるよね。
医学生医学生
1mgを流すには、5mg/mLで割って0.2mLですね。だから0.2mL/時間です。
ドクタードクター
正解。別の順番でもいい。まず1日量24mgを濃度5mg/mLで割ると、1日に必要な液量は4.8mL。それを24時間で割っても0.2mL/時間になる。どちらから考えても答えが一致することを確認しておこう。
医学生医学生
薬理学の講義で「単位を必ず書け」と口を酸っぱくして言われたのを思い出しました。
ドクタードクター
本当にそれが大事なんだ。そして答えを出したら検算する。0.2mL/時間×24時間で4.8mL、それに5mg/mLを掛けると24mgに戻る。この「逆算して元の量に戻るか」を習慣にすると、桁違いのミスを防げるよ。
医学生医学生
ほかの選択肢は、計算ミスのパターンになっているんでしょうか。
ドクタードクター
そう考えると分かりやすい。0.1mL/時間だと1日12mgで、目標の半分しか入らず鎮痛が不十分になる。0.4mL/時間は48mgで2倍量、0.5mL/時間は60mgで2.5倍、0.8mL/時間に至っては96mgと4倍量になる。オピオイドの過量投与は眠気だけでなく呼吸抑制につながるから、流量設定のミスは命に関わるんだ。
医学生医学生
4倍は怖いですね……。臨床実習で緩和ケア病棟を回ったとき、看護師さんがポンプの設定をダブルチェックしていた理由がよく分かりました。
ドクタードクター
複数人での確認は医療安全の基本だね。ここで少し発展的な話もしておこう。今回の患者さんは、もともとモルヒネ徐放製剤を内服していた。経口から皮下に切り替えるとき、同じ量でいいと思う?
医学生医学生
経口だと肝臓の初回通過効果を受けるので、注射なら少なくていいはずです。
ドクタードクター
その通り。経口と皮下・静脈の換算比はおおむね2〜3対1とされる。たとえば経口48mg/日なら、皮下ではおよそ16〜24mg/日が目安になる。切り替えた直後は、鎮痛効果と眠気・呼吸抑制などの副作用をよく観察して調整することが大切だ。
医学生医学生
持続皮下注射って、静脈路がなくてもできるのが利点ですよね。
ドクタードクター
そう。在宅でも実施しやすい。ただし皮下からの吸収には限界があるので、流速はおおむね1mL/時間以下が望ましいとされ、少量の高濃度溶液で入れるのが一般的だ。今回の0.2mL/時間はその範囲に収まっている。刺入部に発赤や硬結が出たら穿刺部位を変えるのも忘れずに。
医学生医学生
痛みが急に強くなったときのレスキューはどうするんですか。
ドクタードクター
持続注射中なら、1時間量を早送りするのが目安だ。今回なら1mg、つまり0.2mLだね。経口のレスキューは1日量の約6分の1が目安とされる。さらに患者さん自身がボタンで追加投与できるPCAという方法もあって、ロックアウト時間を設けて過量投与を防ぐ仕組みになっている。
医学生医学生
副作用対策では、便秘には耐性ができにくいので下剤を続ける、とCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。悪心は投与初期に多く、眠気や呼吸抑制、せん妄にも注意が要る。また、モルヒネの活性代謝物は腎排泄なので、腎機能障害がある人では蓄積しやすい。計算だけでなく、こうした全体像も押さえておくと臨床で役立つよ。

まとめ

持続皮下注射の投与速度は「1日投与量(mg)÷濃度(mg/mL)÷24時間」で求め、本問では24mg÷5mg/mL=4.8mL/日、4.8mL÷24時間=0.2mL/時間となります。24÷24=1をそのまま答えるのは、薬物量(mg)と液量(mL)を取り違えた典型的な誤りで、算出後は「流速×24時間×濃度」で1日量に戻るかを検算する習慣が重要です。オピオイドの流量設定の誤りは呼吸抑制などの重大事故につながるため、ダブルチェックが欠かせません。あわせて、経口から皮下・静脈への換算比はおおむね2〜3対1、持続注射中のレスキューは1時間量の早送りが目安であることも押さえておきましょう。単位を意識した確実な計算力は、緩和ケアに限らずあらゆる薬物投与の安全を支える基本です。

解答・解説

正解はbです

状況の整理

肺癌の骨転移による背部痛(がん性疼痛)に対して、モルヒネ徐放製剤を内服していた65歳男性である。疼痛コントロールのため入院し、投与経路を経口から持続皮下注射に切り替えることになった。塩酸モルヒネ注射液を生理食塩液で希釈して濃度5mg/mLの溶液を作り、1日量24mg/日を24時間かけて一定速度で注入したい。求めるのは、シリンジポンプなどに設定する1時間あたりの注入量(mL/時間)である。

解き方

「1日に必要な薬物量(mg)」を「濃度(mg/mL)」で割って1日に必要な液量(mL)を求め、それを24時間で割れば投与速度になる。 方法1:先に1日の液量を求める ・1日に必要な液量=24mg÷5mg/mL=4.8mL/日 ・投与速度=4.8mL÷24時間=0.2mL/時間 方法2:先に1時間あたりの薬物量を求める ・1時間あたりの投与量=24mg÷24時間=1mg/時間 ・投与速度=1mg/時間÷5mg/mL=0.2mL/時間 どちらの方法でも0.2mL/時間となる。

検算

0.2mL/時間×24時間=4.8mL、4.8mL×5mg/mL=24mgとなり、目標の1日量と一致する。 計算では単位を必ず書き添え、mg(薬物量)とmL(液量)を取り違えないようにすることが大切である。特にオピオイドのような作用の強い薬物では、単位や桁の誤りが過量投与による呼吸抑制など重大な事故につながる。

選択肢考察

  1. ×a.  0.1mL/時間

    0.1mL/時間×24時間=2.4mL/日で、薬物量は2.4mL×5mg/mL=12mg/日となる。目標の24mg/日の半分しか投与されず、鎮痛が不十分になる。

  2. ○b.  0.2mL/時間

    24mg÷5mg/mL=4.8mL/日、4.8mL÷24時間=0.2mL/時間である。0.2mL/時間で24時間注入すると4.8mL×5mg/mL=24mg/日となり、目標の1日量に一致する。

  3. ×c.  0.4mL/時間

    0.4mL/時間×24時間=9.6mL/日で、薬物量は48mg/日となる。目標の2倍量であり、過量投与による眠気や呼吸抑制の危険がある。

  4. ×d.  0.5mL/時間

    0.5mL/時間×24時間=12mL/日で、薬物量は60mg/日となる。目標の2.5倍に相当する過量投与である。

  5. ×e.  0.8mL/時間

    0.8mL/時間×24時間=19.2mL/日で、薬物量は96mg/日となる。目標の4倍に相当し、重篤な呼吸抑制を招きうる危険な設定である。

オピオイドの投与経路の変更

経口投与が難しくなった場合(嚥下困難、悪心・嘔吐、消化管閉塞など)や、迅速な用量調節が必要な場合には、注射(持続皮下注射・持続静脈注射)への切り替えを検討する。モルヒネは経口では肝臓での初回通過効果を受けるため生物学的利用能が低く、等鎮痛用量の換算比はおおむね「経口:皮下・静脈=2〜3:1」とされる。例えば経口モルヒネ48mg/日は、皮下・静脈ではおよそ16〜24mg/日に相当する。切り替え直後は、鎮痛効果と副作用(眠気、呼吸抑制など)を注意深く観察して用量を調整する。

持続皮下注射の特徴

・静脈路を確保する必要がなく、在宅でも実施しやすい。 ・皮下からの吸収には限界があるため、注入速度はおおむね1mL/時間以下が望ましいとされ、少量の高濃度溶液で投与するのが一般的である。 ・刺入部の発赤・硬結・疼痛などがあれば、穿刺部位を変更する。

レスキュー薬(突出痛への追加投与)

持続投与中に一時的に強まる痛み(突出痛)には、速効性のオピオイドを追加投与する。持続皮下注射・持続静脈注射では、1時間量(本例では1mg=0.2mL)を目安に早送り(ボーラス投与)することが多い。経口投与ではレスキュー量の目安は1日量の約1/6である。

PCA(patient-controlled analgesia、自己調節鎮痛)

持続投与に加え、患者自身がボタンを押すことで設定量の鎮痛薬を追加投与できる方法である。過量投与を防ぐため、1回の追加投与後は一定時間(ロックアウト時間)が経過するまで追加投与されない仕組みになっている。皮下、静脈、硬膜外などの経路で用いられる。

モルヒネの主な副作用

便秘(耐性がほとんど形成されないため、下剤を継続的に併用する)、悪心・嘔吐(投与初期に多い)、眠気、呼吸抑制、せん妄など。モルヒネの活性代謝物(モルヒネ-6-グルクロニド)は腎排泄のため、腎機能障害のある患者では蓄積しやすく注意が必要である。

POINT

・投与速度(mL/時間)=1日投与量(mg/日)÷濃度(mg/mL)÷24(時間)。 ・本問は24mg÷5mg/mL=4.8mL/日、4.8mL÷24時間=0.2mL/時間。 ・計算後は「速度×24時間×濃度」で1日量に戻るかを検算し、mgとmLの取り違えを防ぐ。 ・モルヒネの経口から皮下・静脈への換算比はおおむね2〜3:1。 ・持続注射中のレスキューは1時間量の早送りが目安。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。