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「どこから入れるか」で体位が決まる―膀胱鏡検査と砕石位

第119回医師国家試験 D問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第119回 D問題 第5問

膀胱鏡検査をする体位で,最も適切なのはどれか。

  1. a.立位
  2. b.座位
  3. c.腹臥位
  4. d.側臥位
  5. e.砕石位

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は膀胱鏡検査をどんな体位で行うか、という問題だ。体位を丸暗記するのではなく、「器具をどこから入れて、どこを観察するのか」から考えると、自然に答えが出てくるよ。まず、膀胱鏡はどこから挿入する検査だったかな。
医学生医学生
外尿道口から内視鏡を入れて、尿道と膀胱の中を直接見る検査ですよね。
ドクタードクター
その通り。血尿の精査、特に膀胱癌などの尿路上皮癌の検索で欠かせない検査だ。ということは、体位に求められる条件は何だろう。
医学生医学生
外尿道口がしっかり見えること……でしょうか。でも、患者さんが楽な姿勢というだけなら座位でもよさそうな気がします。
ドクタードクター
楽さも大事な条件だけど、座位だと会陰部が座面に接して隠れてしまうから、外尿道口に内視鏡を入れられない。必要なのは、会陰部を術者の正面に大きく露出できて、しかも患者さんが長時間保持しやすい体位なんだ。
医学生医学生
それなら砕石位ですね。泌尿器科の臨床実習で外来の膀胱鏡を見学したとき、患者さんが仰向けで脚を台に乗せていました。
ドクタードクター
まさにそれが砕石位(截石位)。仰臥位から股関節と膝関節を曲げて外に開き、両下肢を支脚器に乗せる体位だ。外尿道口が正面に来て内視鏡の挿入・操作がしやすく、同時に外陰部や陰茎・陰嚢の視診もできる。名前は、昔この体位で膀胱結石を取り出す砕石術をしていたことに由来するんだ。
医学生医学生
名前の由来を知ると、膀胱との結びつきで覚えやすいですね。ほかの体位はなぜ駄目なんでしょう。腹臥位は?
ドクタードクター
腹臥位だと外尿道口が下を向いてしまい、視野も操作性も確保できない。腹臥位が活躍するのは、経皮的腎生検や経皮的腎砕石術のように、背中側から腎臓にアプローチする手技だね。
医学生医学生
側臥位はOSCEの直腸診で練習した体位です。会陰部に近いので使えそうに思ったんですが。
ドクタードクター
いいところに目をつけたね。側臥位、特にSims位は直腸診や経直腸的前立腺超音波で使う。ただ、両脚を開いて会陰部を正面に向けることはできないから、尿道からの内視鏡操作には向かない。腰椎穿刺も側臥位だったね。
医学生医学生
立位はさすがに不安定そうです。
ドクタードクター
そうだね。会陰部を固定できず、操作も不安定で、迷走神経反射で失神する危険もある。泌尿器科で立位をとるのは、精索静脈瘤の診察のように、立つことで静脈の怒張がはっきりする場面だ。こうして並べると、体位はそれぞれ「どこを診たいか」で選ばれているのが分かるだろう。
医学生医学生
会陰からのアプローチなら砕石位、背中からなら腹臥位、という対応で整理できますね。婦人科の内診台も同じ形でした。
ドクタードクター
その通り。砕石位は膀胱鏡のほか、経尿道的手術、婦人科の内診、肛門・会陰部の手術でも標準の体位だ。もう少し発展させておこう。膀胱鏡には金属製の硬性鏡と、先端が曲がる軟性鏡がある。軟性鏡は苦痛が少なく、今は外来検査の主流だね。関節の拘縮などで砕石位がとれない人では、軟性鏡を使って仰臥位で行うこともある。
医学生医学生
手術で長時間砕石位をとる場合に注意することはありますか。
ドクタードクター
大事な視点だ。支脚器で腓骨頭のあたりが圧迫されると総腓骨神経麻痺を起こして下垂足になることがある。ほかにも下腿のコンパートメント症候群や深部静脈血栓症に注意が必要だ。体位をとったら、圧迫部位の確認まで含めて「体位管理」だと覚えておこう。
医学生医学生
体位は検査の前提条件であると同時に、合併症の原因にもなりうるんですね。

まとめ

膀胱鏡検査は外尿道口から内視鏡を挿入して尿道・膀胱を観察する検査で、会陰部を術者の正面に大きく露出でき、患者も保持しやすい砕石位(截石位)で行うのが標準です。座位では会陰部が隠れ、腹臥位では外尿道口が下を向き、側臥位では両下肢を開けないため、いずれも内視鏡操作に適しません。腹臥位は経皮的腎生検など背側からの腎アプローチ、側臥位は直腸診や腰椎穿刺、立位は精索静脈瘤の診察と、体位は「どこからアプローチし何を診るか」で選ばれます。砕石位を長時間とる際は総腓骨神経麻痺やコンパートメント症候群などの合併症にも注意が必要です。体位を目的と結びつけて理解することは、検査介助や周術期管理の基本につながります。

解答・解説

正解はeです

問われていること

膀胱鏡検査は、外尿道口から内視鏡(膀胱尿道鏡)を挿入し、尿道と膀胱の内腔を直接観察する検査である。血尿の精査(膀胱癌などの尿路上皮癌の検索)、膀胱腫瘍の経過観察、尿道狭窄や膀胱結石の評価、尿管ステント留置・抜去などに用いられる。

考え方

検査の体位は「どこから器具を入れ、どこを観察するか」から考える。膀胱鏡は外尿道口から挿入するため、会陰部・外陰部を術者の正面に大きく露出でき、かつ患者が長時間楽に保持できる体位が必要である。仰向けに寝て股関節と膝関節を屈曲し、両下肢を開いて支脚器に乗せる砕石位(截石位)がこの条件を最もよく満たす。砕石位は膀胱鏡のほか、経尿道的手術、婦人科の内診、肛門・会陰部の手術など、会陰からアプローチする検査・処置の標準的な体位である。

選択肢考察

  1. ×a.  立位

    誤り。立位では会陰部を十分に露出・固定できず、内視鏡の操作も不安定で、迷走神経反射による失神の危険もあるため膀胱鏡には用いない。泌尿器科領域で立位をとるのは、精索静脈瘤の診察(立位で陰嚢内の静脈の怒張が目立ち、Valsalva法で増強する)や、腹圧性尿失禁の誘発試験などである。

  2. ×b.  座位

    誤り。座位では会陰部が座面に接して隠れるため、外尿道口からの内視鏡挿入や観察ができない。座位は胸部の聴診・打診(胸水貯留の評価など)や、起座呼吸のある心不全患者の診察などで用いられる体位である。

  3. ×c.  腹臥位

    誤り。腹臥位では外尿道口が下を向き、術者からの視野と操作性が確保できないため、膀胱鏡には適さない。腹臥位は背側からの腎臓の超音波検査、経皮的腎生検、経皮的腎砕石術(PCNL)、経皮的腎瘻造設など、背部から腎へアプローチする手技で用いられる。

  4. ×d.  側臥位

    誤り。側臥位では両下肢を開いて会陰部を正面に向けることができず、膀胱鏡の挿入・操作に適さない。側臥位は腎臓の超音波検査、経直腸的前立腺超音波検査や直腸指診(Sims位を含む)、腰椎穿刺などで用いられる。

  5. ○e.  砕石位

    正しい。砕石位(截石位)は仰臥位から股関節・膝関節を屈曲・外転させ、両下肢を支脚器に乗せる体位で、会陰部・外尿道口を術者の正面に大きく露出できる。内視鏡の挿入・操作が容易で、患者も比較的楽に姿勢を保てるため、膀胱鏡検査の標準体位である。検査時には外陰部・陰茎・陰嚢の視診も併せて行える。名称はかつて膀胱結石の摘出(砕石術)をこの体位で行ったことに由来する。なお、関節拘縮などで砕石位がとれない場合は、軟性膀胱鏡を用いて仰臥位で行うこともある。

膀胱鏡の種類

・硬性膀胱鏡: 金属製でまっすぐな鏡。視野が明るく処置用の器具を通しやすいが、とくに男性では挿入時の苦痛が大きい。 ・軟性膀胱鏡: 先端が屈曲するファイバースコープ(電子スコープ)。苦痛が少なく、外来での検査の主流となっている。

膀胱鏡の主な適応

・肉眼的血尿や顕微鏡的血尿の精査(膀胱癌の検索) ・膀胱癌の経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)後の再発監視 ・尿道狭窄、膀胱結石、膀胱憩室などの評価 ・尿管ステントの留置・抜去、逆行性腎盂造影

主な体位と代表的な用途

・砕石位: 膀胱鏡、経尿道的手術、婦人科内診、肛門・会陰部の手術 ・仰臥位: 腹部診察、多くの外科手術 ・側臥位(Sims位を含む): 直腸診、経直腸超音波、腰椎穿刺 ・腹臥位: 経皮的腎生検、経皮的腎砕石術 ・立位: 精索静脈瘤の診察、鼠径ヘルニアの診察 ・座位: 胸部診察

砕石位の注意点

長時間の砕石位では、支脚器による腓骨頭付近の圧迫で総腓骨神経麻痺(下垂足)を生じたり、下腿のコンパートメント症候群や深部静脈血栓症をきたしたりすることがある。

POINT

・膀胱鏡検査は外尿道口から挿入するため、会陰部を正面に露出できる砕石位で行う。 ・砕石位がとれない場合は軟性膀胱鏡を用いて仰臥位で行うこともある。 ・精索静脈瘤は立位、経直腸前立腺超音波は側臥位、経皮的腎生検は腹臥位で行う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。