お金ではなく「医療そのもの」を届ける―生活保護の現物給付は医療扶助と介護扶助
第118回医師国家試験 F問題 第14問
国試問題にチャレンジ
生活保護で現物給付されるのはどれか。
- a.医療扶助
- b.教育扶助
- c.住宅扶助
- d.生活扶助
- e.葬祭扶助
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
生活保護の扶助は生活・教育・住宅・医療・介護・出産・生業・葬祭の8種類で、このうち医療扶助と介護扶助の2つが原則として現物給付、残る6つは原則として金銭給付です。医療扶助では受給者が福祉事務所から交付された医療券を指定医療機関に提示して受診し、窓口負担はなく、費用は公費から医療機関へ直接支払われます。受給中は国民健康保険の資格を失いますが、被用者保険があればそれが優先され、自己負担分が医療扶助の対象になるという補足性の原理も重要です。また教育扶助は義務教育が対象で高校就学費用は生業扶助から支給されること、保護費の約半分を医療扶助が占めることも押さえておきましょう。生活保護は医師が日常診療で直接関わる制度であり、その仕組みの理解は経済的困窮を抱える患者さんへの適切な支援につながります。
解答・解説
正解はaです
生活保護は、生活保護法に基づき、生活に困窮するすべての国民に対して、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長する制度である(憲法第25条の生存権の理念に基づく)。 保護の種類は次の8つである。 生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助 給付の方法には、金銭を支給する「金銭給付」と、物品の給与・貸与、医療の給付、役務(サービス)の提供など金銭以外の形で保護を行う「現物給付」がある。8種類のうち、医療扶助と介護扶助の2つは原則として現物給付で行われ、残る6つ(生活・教育・住宅・出産・生業・葬祭扶助)は原則として金銭給付で行われる。 医療や介護は、受給者に現金を渡して本人が購入するよりも、指定を受けた医療機関・介護事業者がサービスそのものを提供し、費用を公費から直接支払うほうが確実かつ適切に必要なサービスを届けられる。このため現物給付とされている。本問は「医療扶助・介護扶助=現物給付」と覚えていれば解ける。
選択肢考察
- ○a. 医療扶助
医療扶助は原則として現物給付である。受給者は福祉事務所から交付される医療券を指定医療機関に提示して診療を受け、窓口での支払いは生じない。診療費は医療機関から請求され、公費から直接支払われる。生活保護を受給すると国民健康保険の被保険者資格を失う(同法の適用除外となる)ため、医療費は原則として全額が医療扶助でまかなわれる。
- ×b. 教育扶助
教育扶助は義務教育(小・中学校)に必要な教科書・学用品、通学用品、学校給食費などを対象とする扶助で、原則として金銭給付である。高等学校の修学費用は教育扶助ではなく生業扶助(技能修得費)で支給される点も押さえておくとよい。
- ×c. 住宅扶助
住宅扶助は家賃・間代・地代や、住宅の補修費などを対象とする扶助で、原則として金銭給付である。地域ごとに上限額(基準額)が定められている。
- ×d. 生活扶助
生活扶助は食費・被服費・光熱水費など日常生活に必要な費用を対象とする、生活保護の中心的な扶助である。原則として金銭給付であり、世帯の人数や年齢、居住地域(級地)などに応じて基準額が定められている。
- ×e. 葬祭扶助
葬祭扶助は、困窮のため葬祭を行うことができない場合に、検案、死体の運搬、火葬・埋葬、納骨など葬祭に必要な費用を対象とする扶助で、原則として金銭給付である。
生活保護の8種類の扶助と給付方法
・生活扶助:食費・被服費・光熱水費など(金銭給付) ・教育扶助:義務教育に必要な学用品・給食費など(金銭給付) ・住宅扶助:家賃・地代、住宅の補修費など(金銭給付) ・出産扶助:分娩の介助、分娩前後の処置、衛生材料など(金銭給付) ・生業扶助:生業に必要な資金・器具、技能修得費(高校就学費用を含む)、就労のための支度費用(金銭給付) ・葬祭扶助:火葬・埋葬・納骨などの費用(金銭給付) ・医療扶助:診察、薬剤、処置・手術、入院、看護、移送など(現物給付) ・介護扶助:居宅介護、施設介護、介護予防、福祉用具など(現物給付) ※金銭給付が原則の扶助でも、必要に応じて現物給付が行われることがある(例:保護施設への入所)。
生活保護の原理・原則
4つの基本原理:国家責任の原理、無差別平等の原理、最低生活保障の原理、保護の補足性の原理(資産・能力・扶養・他法他施策をまず活用し、それでも不足する分を補う)。 4つの原則:申請保護の原則(急迫時は職権保護も可能)、基準及び程度の原則、必要即応の原則、世帯単位の原則。
実施体制と費用
・保護の決定・実施は福祉事務所(都道府県・市が設置)が行い、現業員(ケースワーカー)が相談・訪問を担う。 ・保護費の負担割合は国が4分の3、地方自治体が4分の1である。 ・保護費の内訳では医療扶助が約半分を占め、最も大きい。
医療扶助の実際
・受給者は福祉事務所から医療券(調剤券)の交付を受け、指定医療機関で受診する。指定は、国が開設する医療機関については厚生労働大臣、それ以外は都道府県知事(指定都市・中核市では市長)が行う。 ・国民健康保険の被保険者資格は失うが、被用者保険(健康保険)に加入している場合は保険が優先され、自己負担分が医療扶助の対象となる(他法優先)。 ・後発医薬品の使用が原則とされている。 ・介護扶助についても、65歳以上の受給者は介護保険の第1号被保険者であり続け、介護保険の自己負担分が介護扶助として現物給付される(保険料は生活扶助に加算される)。
POINT
・生活保護の扶助は8種類:生活・教育・住宅・医療・介護・出産・生業・葬祭。 ・現物給付は医療扶助と介護扶助の2つのみ。他の6つは原則として金銭給付。 ・医療扶助は医療券を指定医療機関に提示して受ける。受給中は国民健康保険の資格を失う。 ・生活保護費の約半分は医療扶助。費用負担は国3/4、地方1/4。 ・補足性の原理:資産・能力・扶養・他法を先に活用する。
