StudyMed医師国家試験

まばたきが止まらない男の子―チック症の「誰に・いつ・どう出て・どう消えるか」

第118回医師国家試験 D問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第118回 D問題 第4問

小児のチック症で正しいのはどれか。

  1. a.男性に多い。
  2. b.思春期に好発する。
  3. c.緩徐な運動症状が多い。
  4. d.症状は睡眠時に多くみられる。
  5. e.生涯にわたり症状が続くことが多い。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は小児のチック症の基本的な特徴を問う問題だ。押さえるべきは4つ。どんな子に多いか、いつ始まるか、症状の性質と出やすい状況、そして経過。まず、チックとはどんな症状か説明できるかな。
医学生医学生
本人の意思と関係なく、まばたきや首振りが出てしまう症状ですよね。精神科の講義で聞きました。
ドクタードクター
その通り。もう少し正確に言うと、突然起こり、素早く、繰り返し、リズムをもたない運動または発声だ。本人の意思とは無関係に出るけれど、短時間なら意識して抑えられることもある。そして出る直前にむずむずするような不快な感覚、前駆衝動を伴うことが多いのも特徴なんだ。
医学生医学生
性別でいうと男の子に多いイメージがあります。小児科の外来で見学した子も男の子でした。
ドクタードクター
正解だ。チック症は男児に多く、男女比はおよそ3〜4対1とされる。トゥレット症でも男性優位は同じで、ADHDや自閉スペクトラム症といった男児に多い神経発達症を合併しやすいことも知られている。
医学生医学生
発症時期は思春期かと思っていました。中学生くらいで目立つ子がいた記憶があって。
ドクタードクター
そう感じる人は多いけれど、実は発症の多くは幼児期から学童期、おおむね4〜6歳ころがピークだ。DSM-5でも18歳未満での発症が診断の条件になっている。思春期はむしろ症状が軽快に向かいやすい時期なんだ。
医学生医学生
思春期は「始まる時期」ではなく「落ち着いていく時期」なんですね。
ドクタードクター
そういうこと。次に症状の性質だ。ゆっくりとした運動症状が多い、という記述はどう思う?
医学生医学生
チックはパッと出るものなので、ゆっくりではないと思います。ゆっくり体がねじれるのは、神経内科の講義で習ったジストニアやアテトーゼでしょうか。
ドクタードクター
その通り。チックはまばたき、顔しかめ、首を急に振る、肩をすくめるといった素早い動きが典型だ。咳払いや鼻を鳴らすような音声チックもある。緩徐な不随意運動はチックとは区別しよう。では、症状が出やすい状況はどうだろう。
医学生医学生
寝ているときに多い……と言われると、なんとなくありそうな気もします。
ドクタードクター
そこは逆なんだ。チックは覚醒中に出て、緊張、ストレス、疲労、興奮で増える。一方、何かに集中しているときやリラックスしているときは減り、睡眠中は著しく少なくなる。睡眠中に目立つ不随意運動なら、周期性四肢運動障害やてんかん発作などを考えたい。
医学生医学生
最後の経過ですが、一生続くものだと思うと家族は心配しますよね。
ドクタードクター
多くは一過性で、数か月から1年以内に自然に消える。1年以上続く慢性例やトゥレット症でも、10歳代前半ころに最も強くなり、その後思春期から成人期にかけて軽快・消失する例が多い。成人まで目立つ症状が残るのは一部にとどまるんだ。
医学生医学生
ということは、正しいのは男性に多いという記述だけですね。発症は幼児期〜学童期、素早い動き、睡眠中は少ない、多くは自然に消える、と整理できました。
ドクタードクター
よくまとまった。発展として分類も押さえておこう。運動チックと音声チックがあり、それぞれ単純型と複雑型に分かれる。複雑音声チックには汚言や反響言語が含まれる。DSM-5では、1年未満なら暫定的チック症、運動か音声の一方だけが1年以上なら持続性運動または音声チック症、多彩な運動チックと1つ以上の音声チックが1年以上続けばトゥレット症だ。
医学生医学生
トゥレット症は、運動チックと音声チックが同時に出ていなくてもいいんですか。
ドクタードクター
いい質問だね。経過中に両方が見られれば、同時でなくてもよい。病態としては大脳基底核を含む皮質-線条体-視床-皮質回路の機能異常とドパミン系の関与が考えられている。ADHDや強迫症の合併も多く、生活の困りごとの原因がチックそのものより併存症にあることも少なくない。
医学生医学生
治療は薬が中心なんでしょうか。
ドクタードクター
基本は心理教育と環境調整だ。本人や家族、学校に、チックは本人のわざとでもしつけの問題でもないと伝える。注意したり叱ったりすると緊張が高まって悪化するから、避けるよう説明するのが大切なんだ。行動療法ではハビット・リバーサルを中核とした包括的行動介入が有効とされ、症状が強く生活に大きな支障があるときに、抗精神病薬やα2作動薬などの薬物療法を考慮する。
医学生医学生
「やめなさい」と言いたくなる親御さんの気持ちもわかりますが、まずそこを説明するのが医師の役目なんですね。
ドクタードクター
その通り。家族の不安を受け止めつつ、自然に軽快することが多いという見通しを伝えるだけでも、子どもの緊張がほぐれて症状が和らぐことがあるよ。

まとめ

チックは突然起こる素早い反復性・非律動性の運動または発声で、小児では男児に多く(男女比約3〜4対1)、幼児期から学童期に発症するのが典型です。緊張やストレス、疲労で増え、集中時やリラックス時に減り、睡眠中は著しく少なくなります。多くは一過性で自然に消え、慢性例やトゥレット症でも10歳代前半をピークに思春期以降に軽快することが多いため、思春期好発、緩徐な運動、睡眠時に多い、生涯持続といった記述は誤りです。ADHDや強迫症などの併存症にも目を向け、チックを叱らないよう心理教育と環境調整を行うことが対応の基本となります。疫学と経過を正しく理解しておくことは、不安を抱える家族に適切な見通しを示すうえで欠かせません。

解答・解説

正解はaです

チックとは、突然起こり、素早く、繰り返し、リズムをもたない(非律動性の)運動または発声である。本人の意思とは無関係に出るが、短時間なら意識して抑えられることもある。出る直前に、むずむず感などの不快な感覚(前駆衝動)を伴うことが多い。 小児のチック症について押さえるべき疫学と経過は次のとおりである。 【性差】男児に多く、男女比はおよそ3〜4:1である。 【発症年齢】多くは幼児期から学童期(おおむね4〜6歳ころ)に発症する。DSM-5(米国精神医学会の診断基準 第5版)では、18歳未満での発症が診断の条件になっている。 【症状の性質】まばたき、顔しかめ、首振り、肩すくめなどが素早く起こる。緩徐な動きではない。 【状況による変動】緊張、ストレス、疲労、興奮で増え、何かに集中しているときやリラックスしているときは減る。睡眠中は著しく少なくなる。 【経過】多くは一過性で、数か月〜1年以内に消える。慢性化しても10歳代前半ころに最も強くなり、その後は思春期から青年期にかけて軽快・消失する例が多い。 これらを照らし合わせると、正しい記述は「男性に多い」だけである。

選択肢考察

  1. ○a.  男性に多い。

    チック症は男児に多く、男女比はおよそ3〜4:1とされる。トゥレット症(多彩な運動チックと音声チックが1年以上続くもの)でも男性優位は同じである。注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)など、男児に多い神経発達症を合併しやすいことも知られている。

  2. ×b.  思春期に好発する。

    チック症の発症は幼児期から学童期に多く、おおむね4〜6歳ころがピークで、2〜12歳ころまでにほとんどが発症する。就学前後など環境が大きく変わる時期にきっかけを得ることもある。思春期は好発時期ではなく、むしろ症状が軽快に向かいやすい時期である。

  3. ×c.  緩徐な運動症状が多い。

    チックの特徴は、突発的・急速・反復性・非律動性という点である。まばたき、顔しかめ、首を急に振る、肩をすくめるといった素早い動き(単純運動チック)が典型である。咳払いや鼻を鳴らす、短い声を出す(単純音声チック)こともある。ゆっくりと身体がねじれるような緩徐な不随意運動は、ジストニアやアテトーゼの特徴であり、チックとは区別する。

  4. ×d.  症状は睡眠時に多くみられる。

    チックは覚醒時に現れ、緊張・不安・疲労・興奮で増える。一方、集中して何かに取り組んでいるときやくつろいでいるときには目立たなくなる。睡眠中は著しく減り、通常はほとんど観察されない。睡眠中に多いという記述は誤りである。睡眠中に目立つ不随意運動としては、周期性四肢運動障害やてんかん発作などを鑑別に挙げる。

  5. ×e.  生涯にわたり症状が続くことが多い。

    小児のチックの多くは一過性で、数か月〜1年以内に自然に消える(暫定的チック症)。1年以上続く慢性チック症やトゥレット症でも、症状は10歳代前半ころに最も強くなり、その後は思春期から成人期にかけて軽快・消失する例が多い。成人期まで目立つ症状が残るのは一部にとどまる。

チックの分類

・運動チック  単純運動チック:まばたき、顔しかめ、首振り、肩すくめなど  複雑運動チック:跳ぶ、物や人に触る、他人の動作をまねる(反響動作)など ・音声チック  単純音声チック:咳払い、鼻を鳴らす、短い発声など  複雑音声チック:単語や文を言う、汚言(卑猥な言葉や社会的に不適切な言葉を口にする)、反響言語など 【DSM-5のチック症群】いずれも18歳未満での発症が条件である。 ・暫定的チック症:運動チックか音声チック(または両方)があり、続いた期間が1年未満のもの ・持続性(慢性)運動または音声チック症:運動チックか音声チックのどちらか一方だけが1年以上続くもの ・トゥレット症:多彩な運動チックと1つ以上の音声チックが(同時でなくてもよい)1年以上続くもの

病態

大脳基底核を含む皮質-線条体-視床-皮質回路の機能異常と、ドパミン系の関与が考えられている。遺伝的要因も関わる。

併存症

ADHD、強迫症、ASD、不安症、学習障害などを合併しやすく、生活の困難さの原因が、チックそのものより併存症にあることも少なくない。

対応・治療

1. 心理教育と環境調整:本人・家族・学校に、チックは本人の意思やしつけの問題ではないことを説明する。チックを注意したり叱ったりすると、緊張が高まって悪化させるので、避けるよう伝える。 2. 行動療法:チックの前駆衝動に気づき、チックと両立しない動作で対処する「ハビット・リバーサル」を中核とした包括的行動介入(CBIT)が有効とされる。 3. 薬物療法:症状が強く、日常生活や学業に大きく支障がある場合に考慮する。ドパミンの働きを抑える抗精神病薬(アリピプラゾール、ハロペリドール、リスペリドンなど)や、α2アドレナリン受容体作動薬(クロニジン、グアンファシン)が使われる。

POINT

・チックは突発的・急速・反復性・非律動性の運動または発声である。 ・男児に多い(男女比は約3〜4:1)。 ・幼児期〜学童期に発症し、18歳未満の発症が診断の条件となる。 ・緊張やストレスで増え、集中時やリラックス時に減り、睡眠中は著しく減る。 ・多くは一過性で自然に消え、慢性例も思春期以降に軽快することが多い。 ・トゥレット症は多彩な運動チックと音声チックが1年以上続くもので、ADHDや強迫症の合併が多い。 ・対応の基本は心理教育と環境調整(チックを叱らない)である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。