StudyMed医師国家試験

8020は達成、野菜はまだ―健康日本21(第二次)中間評価の明暗

第117回医師国家試験 C問題 第35問

国試問題にチャレンジ

第117回 C問題 第35問

健康日本21(第二次)の中間評価報告(2018年)について正しいのはどれか。

  1. a.成人の喫煙率の増加
  2. b.野菜と果物の摂取量の目標達成
  3. c.20歳代女性のやせの者の割合の増加
  4. d.20歳代における歯肉に炎症所見を有する者の割合の増加
  5. e.80歳で20歯以上の自分の歯を有する者の割合の目標達成

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は健康日本21(第二次)の中間評価の問題だ。暗記問題に見えるけれど、着眼点は「各指標がどちらの方向に動いたか」。増えたのか減ったのか、目標に届いたのか届かなかったのかを整理しよう。そもそも健康日本21がどんな運動か説明できるかな。
医学生医学生
健康増進法に基づく国民健康づくり運動ですよね。第二次は2013年度から始まったと公衆衛生の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。最上位の目標は健康寿命の延伸と健康格差の縮小で、栄養・食生活、身体活動、休養、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康などの分野ごとに、ベースライン値と目標値をもつ具体的な指標を設定した。2018年にはその中間評価報告が出て、指標ごとの進み具合が評価されたんだ。
医学生医学生
まず喫煙率ですが、加熱式たばこも出てきたので、もしかして増えているのかなと思いました。
ドクタードクター
そう感じる人もいるけれど、成人の喫煙率はベースラインの19.5%から中間評価時の18.3%へとわずかに減少している。増加ではない。ただ目標値の12%にはまだ遠く、このままでは達成が難しいと評価されたんだ。
医学生医学生
野菜と果物はどうでしょう。健康志向で食べる人が増えている印象があります。
ドクタードクター
残念ながら、そこはほとんど変わっていない。野菜摂取量の目標は1日350gだけれど、成人の平均は300g弱にとどまっているし、果物摂取量が少ない人の割合も改善していない。栄養分野の中でも目標との差が大きい項目だよ。
医学生医学生
20歳代女性のやせは社会問題として増えていると思っていました。
ドクタードクター
やせ志向が問題視されているのは事実だけれど、中間評価では20歳代女性のやせの割合はベースラインの29.0%から有意に減少し、目標の20%に近づいていた。だから「増加」は誤りだ。ただし体重の項目全体では、20〜60歳代男性の肥満者の割合が増えていて、十分に改善したとは評価されていない。
医学生医学生
歯肉の炎症も「増加」とありますが、これも減っているんですか。
ドクタードクター
そう。20歳代で歯肉に炎症所見をもつ者の割合は31.7%から27.1%へ減少した。一方で、40歳代・60歳代で進行した歯周炎をもつ者の割合は増えていて、歯周病対策全体には課題が残るとされたんだ。
医学生医学生
そうすると、80歳で20本以上の歯を持つ人の割合、つまり8020が目標達成ということですね。
ドクタードクター
正解。8020達成者の割合はベースラインの25.0%から51.2%へと大きく上昇し、目標値の50%を中間評価の段階で前倒し達成した。そのため目標値が60%に引き上げられている。20本以上の歯があれば多くの食品をかんで食べられるとされ、1989年から8020運動として推進されてきた成果だ。
医学生医学生
歯科口腔外科を臨床実習で回ったとき、高齢でも自分の歯が多く残っている方が増えていると先生がおっしゃっていました。
ドクタードクター
まさにそれを裏づけるデータだね。歯が残っていることは咀嚼や栄養状態、さらには誤嚥性肺炎やフレイルの予防にも関わるから、高齢者医療の面でも重要なんだ。
医学生医学生
選択肢の「増加」は全部ひっかけで、方向が逆になっているんですね。
ドクタードクター
その見抜き方は大事だ。ほかに改善した指標としては、健康寿命の伸びが平均寿命の伸びを上回ったことも押さえておこう。逆に悪化・横ばいの代表は、野菜・果物の摂取量、男性の肥満、中高年の進行した歯周炎、睡眠で休養が十分とれていない者の割合などだ。
医学生医学生
第二次はもう終わっているんですよね。今は第三次でしょうか。
ドクタードクター
そう。第二次は当初2022年度までの計画だったけれど1年延長されて2023年度までとなり、2022年に最終評価が公表された。2024年度からは12年計画の第三次が始まっていて、健康寿命の延伸・健康格差の縮小に加え、社会環境の質の向上やライフコースアプローチを踏まえた健康づくりが柱になっている。外来で生活指導をするときも、こうした国の目標値、たとえば野菜350gを具体的な数字として患者さんに伝えられると説得力が増すよ。

まとめ

健康日本21(第二次)は健康増進法に基づき2013年度に始まった国民健康づくり運動で、健康寿命の延伸と健康格差の縮小を最上位目標とし、2018年に中間評価が公表されました。中間評価では、80歳で20歯以上の自分の歯を有する者の割合が25.0%から51.2%へ上昇して目標値50%を前倒し達成し、目標が60%に引き上げられました。成人喫煙率・20歳代女性のやせ・20歳代の歯肉炎はいずれも減少しており、野菜・果物の摂取量はほぼ横ばいで目標未達成です。一方、男性の肥満や中高年の進行した歯周炎など悪化した指標もあり、2024年度からは第三次が始まっています。各指標の「方向」と代表的な数値を押さえることは、試験対策だけでなく、患者さんへの生活指導に具体的な根拠を持たせるうえでも役立ちます。

解答・解説

正解はeです

健康日本21(第二次)は、健康増進法に基づく「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」として2013年度に始まった国民健康づくり運動である。健康寿命の延伸と健康格差の縮小を最上位の目標に掲げ、生活習慣病の予防、栄養・食生活、身体活動、休養、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康などの分野で、ベースライン値と目標値を伴う具体的な指標(53項目)を設定した。2018年9月にはその中間評価報告書が公表され、各指標がどの程度改善したかが評価された。 本問では各指標の方向性を正しく把握しているかが問われる。中間評価の時点で、喫煙率や20歳代の歯肉炎、20歳代女性のやせはいずれも「減少」(改善の方向)であり、選択肢の「増加」はすべて誤りである。野菜・果物の摂取量はほとんど変化がなく、目標には届いていない。一方、80歳で20歯以上の自分の歯を有する者の割合(8020達成者)は大きく上昇し、中間評価の段階で目標値の50%を上回った。8020運動の成果として、目標を早期に達成した代表的な指標であることを覚えておくとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  成人の喫煙率の増加

    成人の喫煙率は、ベースラインの19.5%(2010年)から中間評価時の18.3%(2016年)へとわずかに減少しており、増加ではない。ただし目標値の12%(2022年度)との差は大きく、このままの推移では目標達成は難しいと評価された。

  2. ×b.  野菜と果物の摂取量の目標達成

    野菜摂取量の平均値(目標は1日350g)も、果物摂取量100g未満の者の割合も、ベースラインからほとんど変化がみられず、目標は達成されていない。野菜摂取量は成人で1日平均300g弱にとどまっており、目標との差が大きい分野である。

  3. ×c.  20歳代女性のやせの者の割合の増加

    20歳代女性のやせ(BMI 18.5未満)の割合は、ベースラインの29.0%(2010年)から有意に減少し、目標値(20%)に近づいている。増加ではない。なお「適正体重を維持している者の増加」という大項目全体としては、20〜60歳代男性の肥満者の割合が増加したこともあり、十分な改善とは評価されていない。

  4. ×d.  20歳代における歯肉に炎症所見を有する者の割合の増加

    20歳代で歯肉に炎症所見を有する者の割合は、ベースラインの31.7%から中間評価時の27.1%へ減少しており、増加ではない。ただし、40歳代・60歳代で進行した歯周炎を有する者の割合は増加しており、歯周病対策全体としては課題が残ると評価された。

  5. ○e.  80歳で20歯以上の自分の歯を有する者の割合の目標達成

    80歳で20歯以上の自分の歯を有する者の割合は、ベースラインの25.0%(2005年)から中間評価時の51.2%(2016年)へと大きく上昇し、目標値の50%(2022年度)を前倒しで達成した。これを受けて、中間評価では目標値が60%へ引き上げられた。20本以上の歯があれば多くの食品をかんで食べられるとされ、1989年から「8020(ハチマルニイマル)運動」として推進されてきた成果である。

健康日本21の変遷

・健康日本21(第一次):2000〜2012年度。一次予防の重視を打ち出した最初の国民健康づくり運動。 ・健康日本21(第二次):2013年度開始。当初は2022年度までの10年計画であったが、医療計画などとの整合を図るため1年延長され、2023年度までとなった。2018年に中間評価、2022年10月に最終評価報告書が公表された。 ・健康日本21(第三次):2024年度から開始(12年計画)。「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」をビジョンとし、健康寿命の延伸・健康格差の縮小、個人の行動と健康状態の改善、社会環境の質の向上、ライフコースアプローチを踏まえた健康づくりを柱とする。

健康日本21(第二次)の基本的な方向

1)健康寿命の延伸と健康格差の縮小 2)生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCD〈非感染性疾患〉の予防) 3)社会生活を営むために必要な機能の維持・向上(こころ、次世代、高齢者の健康) 4)健康を支え、守るための社会環境の整備 5)栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康に関する生活習慣および社会環境の改善

中間評価・最終評価の傾向(試験対策としての整理)

・改善がみられた主な指標:健康寿命の延伸(平均寿命の伸びを上回る伸び)、80歳で20歯以上の者の割合、20歳代女性のやせの減少など。 ・変化がない、または悪化した主な指標:野菜・果物の摂取量、成人男性の肥満者の割合、40歳代・60歳代の進行した歯周炎、睡眠による休養を十分とれていない者の割合など。 ・喫煙率は減少傾向だが、目標値(12%)との差が大きい。

POINT

・健康日本21(第二次)中間評価(2018年)で目標を前倒し達成した代表例は「80歳で20歯以上の自分の歯を有する者の割合」(目標50%、達成後60%に引き上げ)。 ・成人喫煙率、20歳代女性のやせ、20歳代の歯肉炎はいずれも「減少」。 ・野菜・果物の摂取量は変化なく、目標未達成。 ・第二次は2023年度まで延長され、2024年度から第三次が開始された。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。