StudyMed医師国家試験

「できる」ではなく「している」を数える―Barthel Indexで測る生活の自立度

第117回医師国家試験 C問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第117回 C問題 第28問

日常生活動作〈ADL〉の評価法はどれか。

  1. a.Barthel Index〈BI〉
  2. b.Japan Coma Scale〈JCS〉
  3. c.Glasgow Coma Scale〈GCS〉
  4. d.Brief Psychiatric Rating Scale〈BPRS〉
  5. e.Mini-Mental State Examination〈MMSE〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、臨床でよく使われる評価スケールが「何を測るためのものか」を区別できるかを問う問題だ。名前だけ暗記していると混乱しやすいから、スケールと評価対象をセットで整理していこう。まず、日常生活動作、つまりADLとは何を指すか説明できるかな。
医学生医学生
食事やトイレ、着替え、移動みたいな、毎日の生活で繰り返す基本的な動作のことですよね。
ドクタードクター
その通り。リハビリテーションや高齢者医療、介護の現場では、患者さんがこれらをどの程度自分でできているかを数値化して、治療効果の判定や退院先の検討、介護量の見積もりに使うんだ。では、選択肢の中でADLを評価するものはどれだと思う?
医学生医学生
Barthel Indexだと思います。リハビリテーション科の実習で、脳卒中の患者さんのカンファレンスで点数が読み上げられていました。
ドクタードクター
正解。Barthel Indexは基本的ADLを点数化する代表的な評価法だ。食事、車椅子とベッド間の移乗、整容、トイレ動作、入浴、平地歩行、階段昇降、更衣、排便コントロール、排尿コントロールの10項目を、自立度に応じて0・5・10・15点で評価して合計100点満点にする。100点なら全項目自立、点数が低いほど介助を多く必要とするということだね。
医学生医学生
項目ごとに配点が違うんですね。全部10点ずつだと思っていました。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいところだね。移乗や平地歩行は最大15点、整容や入浴は最大5点と、項目によって配点に差がつけてある。もう一つの特徴は、検査室で「できる能力」ではなく、実際の生活で「している能力」を簡便に評価できる点だ。だから病棟でも使いやすい。
医学生医学生
意識障害の評価で習ったJapan Coma ScaleとGlasgow Coma Scaleは、ADLとは関係ないですよね。
ドクタードクター
そう、どちらも意識レベルの評価法だ。Japan Coma Scaleは日本で広く使われていて、刺激しなくても覚醒しているⅠ桁、刺激で覚醒するⅡ桁、刺激しても覚醒しないⅢ桁に分ける。数字が大きいほど重い。Glasgow Coma Scaleは国際的なスケールで、開眼・言語・運動の3要素を合計3〜15点で評価し、点数が低いほど重症だ。
医学生医学生
救急科の実習で、GCS 8点以下は気道確保を考える目安だと教わりました。JCSとは点数の向きが逆なので、OSCEの練習のときに混乱しかけました。
ドクタードクター
その「向きが逆」という感覚はとても大事だよ。では、Brief Psychiatric Rating Scaleはどうかな。
医学生医学生
精神科で聞いた気がしますが、何を測るものかは自信がありません。
ドクタードクター
簡易精神症状評価尺度と訳される、精神症状の重症度を評価する尺度だ。面接と観察から、不安、抑うつ気分、猜疑心、幻覚、思考解体、情動鈍麻などを項目ごとに点数化する。もともと統合失調症などの精神病症状や向精神薬の効果判定のために作られたもので、身体的な生活動作を測るものではないんだ。
医学生医学生
Mini-Mental State Examinationは認知症のスクリーニングですよね。認知症の人はADLも落ちるので、少し迷いました。
ドクタードクター
迷う気持ちはわかる。でもMMSEが測っているのは見当識、記銘、計算、遅延再生、言語、図形模写などの認知機能で、30点満点のうち23点以下で認知症を疑う目安とされる。認知機能が低下した結果ADLが落ちることはあっても、ADLそのものを評価する検査ではない。この区別が問われているんだ。
医学生医学生
スケール名を覚えるときは、意識、認知、精神症状、ADLというように「何を測るか」で箱に分けておけばいいんですね。
ドクタードクター
その通り。発展として、ADLの中身も押さえておこう。身の回りの基本動作を基本的ADL、買い物や調理、金銭管理、服薬管理、交通機関の利用のような、より複雑で社会生活に必要な動作を手段的ADL、つまりIADLと呼ぶ。IADLの評価にはLawtonの尺度が使われる。
医学生医学生
Barthel Index以外にADLの評価法はありますか。
ドクタードクター
代表的なのがFIM、機能的自立度評価表だ。運動13項目と、コミュニケーションや社会的認知などの認知5項目の計18項目を、それぞれ1〜7点で評価して18〜126点で表す。認知面を含み、介助量をBarthel Indexより細かく評価できるのが強みだ。
医学生医学生
臨床では、同じ患者さんでも目的に合わせてスケールを使い分けるということですね。
ドクタードクター
そうなんだ。たとえば脳卒中の患者さんなら、急性期は意識レベルをJCSやGCSで追い、認知機能はMMSEや改訂長谷川式で確認し、リハビリテーションの進み具合や退院後の生活の見通しはBarthel IndexやFIMで評価する。数値で共有できれば、医師、看護師、療法士、ケアマネジャーの間で同じ言葉で話せるようになる。それがスケールを学ぶ一番の意義だね。

まとめ

日常生活動作〈ADL〉の代表的な評価法はBarthel Indexで、食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、更衣、排便・排尿コントロールの10項目を合計100点満点で評価し、実際に「している」生活の自立度を簡便に把握できます。Japan Coma ScaleとGlasgow Coma Scaleは意識レベル、Brief Psychiatric Rating Scaleは精神症状の重症度、Mini-Mental State Examinationは認知機能を評価するもので、ADLの評価法ではありません。ADLには基本的ADLと手段的ADL〈IADL〉の区別があり、IADLにはLawtonの尺度、認知項目を含むより詳細なADL評価にはFIMが用いられます。評価スケールは名称と「何を測るか」をセットで覚えることが、試験だけでなく多職種で患者さんの状態を共有するうえでの基本になります。

解答・解説

正解はaです

本問は、臨床で用いられる代表的な評価スケールが「何を測るものか」を区別できるかを問う問題である。 日常生活動作〈ADL:activities of daily living〉とは、食事・排泄・更衣・入浴・移動など、人が毎日の生活を送るうえで繰り返し行う基本的な身体動作を指す。リハビリテーション医学、高齢者医療、介護保険の現場では、患者がこれらをどの程度自分で行えるかを数値化して把握し、治療効果の判定や退院先の検討、介護量の見積もりに用いる。 選択肢に並ぶスケールを測定対象で分類すると次のようになる。 ・ADL(身体的な生活自立度):Barthel Index ・意識レベル:Japan Coma Scale、Glasgow Coma Scale ・精神症状の重症度:Brief Psychiatric Rating Scale ・認知機能:Mini-Mental State Examination したがって、ADLの評価法として該当するのはBarthel Indexである。スケール名と「評価対象」をセットで覚えておけば容易に解ける。

選択肢考察

  1. ○a.  Barthel Index〈BI〉

    Barthel Indexは基本的ADLを点数化する代表的な評価法である。食事、車椅子とベッド間の移乗、整容、トイレ動作、入浴、平地歩行(移動)、階段昇降、更衣、排便コントロール、排尿コントロールの10項目について、自立度に応じて0・5・10・15点のいずれかを与え、合計0〜100点で表す。100点が全項目自立、点数が低いほど介助を多く要する。「実際にできているか(している能力)」を簡便に評価でき、脳卒中後のリハビリテーションや高齢者の機能評価で広く使われるため、本問の正解である。

  2. ×b.  Japan Coma Scale〈JCS〉

    JCSは日本で広く使われる意識障害の深さの評価法であり、ADLを評価するものではない。意識清明を0とし、刺激しなくても覚醒している状態をⅠ桁(1・2・3)、刺激すると覚醒する状態をⅡ桁(10・20・30)、刺激しても覚醒しない状態をⅢ桁(100・200・300)に分類する。数値が大きいほど意識障害が重い。救急現場で迅速に判定できるのが利点である。

  3. ×c.  Glasgow Coma Scale〈GCS〉

    GCSは国際的に用いられる意識レベルの評価法であり、ADLの評価法ではない。開眼(E:1〜4点)、最良言語反応(V:1〜5点)、最良運動反応(M:1〜6点)の3要素をそれぞれ評価し、合計3〜15点で表す。点数が低いほど重症で、合計8点以下は重症意識障害として気道確保を検討する目安とされる。頭部外傷の重症度分類などにも用いられる。

  4. ×d.  Brief Psychiatric Rating Scale〈BPRS〉

    BPRS(簡易精神症状評価尺度)は、面接と観察に基づいて精神症状の重症度を評価する尺度である。もともと統合失調症を中心とした精神病症状の評価や抗精神病薬など向精神薬の効果判定のために開発されたが、特定の疾患に限定せず幅広い精神症状(不安、抑うつ気分、猜疑心、幻覚、思考解体、情動鈍麻など)を項目ごとに点数化できる。身体的な生活動作の評価法ではない。

  5. ×e.  Mini-Mental State Examination〈MMSE〉

    MMSEは認知機能障害(認知症)のスクリーニングに用いる検査である。時間・場所の見当識、記銘、注意と計算(シリアル7など)、遅延再生、物品呼称、文の復唱、口頭指示への従命、読字、書字、図形模写の各課題からなり、30点満点で評価する。一般に23点以下で認知症の疑いとされる。評価対象は認知機能であり、ADLそのものではない。

ADLの区分

ADLは、食事・排泄・入浴・更衣・移動・整容など身の回りの基本動作を指す基本的ADL〈BADL〉と、買い物・調理・洗濯・金銭管理・服薬管理・電話の使用・交通機関の利用など、より複雑で社会生活に必要な手段的ADL〈IADL:instrumental ADL〉に分けられる。

主なADL評価法

・Barthel Index:基本的ADL10項目、100点満点。簡便で「している」ADLを評価する。 ・FIM〈Functional Independence Measure:機能的自立度評価表〉:運動項目13(セルフケア、排泄コントロール、移乗、移動)と認知項目5(コミュニケーション、社会的認知)の計18項目を各1〜7点で評価し、18〜126点で表す。認知面も含み、Barthel Indexより細かく介助量を評価できる。 ・Lawtonの尺度:IADLの評価法。 ・Katz Index:入浴・更衣・トイレ・移乗・排泄コントロール・食事の6項目で自立度を評価する。

Barthel Indexの各項目の配点(概略)

・食事:0/5/10 ・車椅子とベッド間の移乗:0/5/10/15 ・整容:0/5 ・トイレ動作:0/5/10 ・入浴:0/5 ・移動(平地歩行):0/5/10/15(45 m以上の歩行が自立なら15点、車椅子駆動のみ可能なら5点など) ・階段昇降:0/5/10 ・更衣:0/5/10 ・排便コントロール:0/5/10 ・排尿コントロール:0/5/10 合計100点。点数が高いほど自立しており、一般に60点前後が「部分的に自立」と「介助を多く要する」の境目の目安とされる。

その他の評価スケールの対象

・意識レベル:JCS、GCS ・認知機能:MMSE、改訂長谷川式簡易知能評価スケール〈HDS-R〉(30点満点、20点以下で認知症の疑い) ・精神症状:BPRS、陽性・陰性症状評価尺度〈PANSS〉 ・うつ症状:ハミルトンうつ病評価尺度〈HAM-D〉 ・全身状態(がん患者など):Performance Status〈PS〉、Karnofsky Performance Status〈KPS〉

POINT

・ADLの評価法:Barthel Index(10項目・100点満点)、FIM(18項目・126点満点、認知項目を含む)。 ・IADLの評価法:Lawtonの尺度。 ・意識レベル:JCS(日本、0〜300)、GCS(国際、3〜15点)。 ・認知機能:MMSE(30点満点、23点以下で認知症疑い)、HDS-R(30点満点、20点以下で認知症疑い)。 ・精神症状:BPRS。 ・スケールは「何を評価するか」とセットで覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。