StudyMed医師国家試験

妊娠14週、60gの命―「流産」なのに死産届が必要な理由

第116回医師国家試験 F問題 第75問

国試問題にチャレンジ

第116回 F問題 第75問

40歳の経産婦(4妊3産)。妊娠14週,下腹部痛と性器出血を主訴に来院した。腟鏡診で腟内に胎胞を認めたため入院した。入院後腹痛が増強し,胎嚢に包まれた状態で児を娩出した。児の体重は60gであった。  診断と死産届の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.早期流産 ―― 死産届不要
  2. b.早期流産 ―― 死産届必要
  3. c.後期流産 ―― 死産届不要
  4. d.後期流産 ―― 死産届必要
  5. e.早産 ―― 死産届不要
  6. f.早産 ―― 死産届必要

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、妊娠の終わり方を週数で正しく分類し、さらに法律上の届出が必要かどうかを判断する問題だ。医学的な診断名と法律上の扱いが一致しない点が最大の落とし穴になる。着目すべきは妊娠週数だよ。
医学生医学生
児が娩出されているので早産かと一瞬思ったんですが、14週だとまだ早すぎますよね。
ドクタードクター
その感覚は正しい。妊娠22週未満で妊娠が終わるものが流産、22週以降37週未満の分娩が早産だ。22週は母体外で生存できる可能性が出てくる時期の目安として境界になっている。だから14週で早産という選択肢はまず外れる。
医学生医学生
流産はさらに早期と後期に分かれるんでしたよね。
ドクタードクター
そう。妊娠12週未満が早期流産、12週以降22週未満が後期流産だ。今回は14週だから後期流産になる。
医学生医学生
早期流産は胎児の染色体異常が多いと産婦人科の講義で習いましたが、後期流産は原因が違うんですか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。後期流産では頸管無力症や絨毛膜羊膜炎などの感染、子宮の形態異常といった母体側の要因が関わることが比較的多いとされている。今回は腟内に胎胞が見えている、つまり子宮頸管がすでに開いて胎嚢が下りてきている状態だ。
医学生医学生
出血と腹痛があるので、来院時は切迫流産かと思いました。
ドクタードクター
そこは注意が必要だね。切迫流産は頸管が閉じていて妊娠継続の可能性がある状態を指す。胎胞が腟内に見えるほど頸管が開いていれば、もう止められない進行流産と考える。そして胎嚢ごと娩出されたので、子宮内容がすべて出た完全流産に至ったと整理できる。
医学生医学生
では診断は後期流産で決まりですね。問題は死産届です。流産なら「死産」ではないので、届出はいらない気がするんですが。
ドクタードクター
まさにそこが多くの人がひっかかるポイントだ。死産の届出に関する規程では、死産を「妊娠第4月以後、つまり妊娠12週以降の死児の出産」と定義している。自然か人工かも問わない。だから医学的には流産であっても、12週以降なら法律上は死産として届出が必要になるんだ。
医学生医学生
届出が必要かどうかの境目は、流産か早産かではなく、12週かどうかなんですね。
ドクタードクター
その通り。だから後期流産で死産届不要、という組合せは誤り。早期流産はそもそも12週未満で今回の週数に合わないし、届出の対象でもない。早産の組合せは週数の時点で当てはまらない。正しいのは「後期流産―死産届必要」だ。
医学生医学生
届出の具体的な手続きも押さえておいたほうがいいですか。
ドクタードクター
ぜひ覚えておこう。死産後7日以内に市町村長へ届け出て、医師または助産師が作成した死産証書(死胎検案書)を添付する。さらに妊娠4か月以上の死胎は、墓地、埋葬等に関する法律により火葬や埋葬に市町村長の許可が必要になる。
医学生医学生
もし、ごく短い時間でも生きて生まれていたらどうなりますか。
ドクタードクター
大事な視点だ。週数にかかわらず、わずかでも生命徴候があれば生産になるから、出生届を出す。その後亡くなれば、死亡診断書を添えて死亡届も必要になる。死産届とはまったく別の扱いになるんだ。
医学生医学生
臨床実習で産婦人科を回ったとき、書類のことを丁寧に説明していた先生がいたのを思い出しました。ご家族にとっても大切な手続きなんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。後期流産では胎児が大きいので、子宮内容除去術ではなくプロスタグランジン製剤で陣痛を誘発して娩出させることが一般的だし、ご家族の心理的な負担も大きい。医学的な処置と同時に、届出や埋火葬の手続きを正確に案内することも医師の大切な役割だよ。

まとめ

妊娠22週未満の妊娠の中断は流産であり、12週未満を早期流産、12週以降22週未満を後期流産と呼び、22週以降37週未満の分娩は早産と区別されます。本例は妊娠14週で、腟内に胎胞を認める進行流産から胎嚢ごと娩出された完全流産に至った後期流産です。死産の届出に関する規程では妊娠12週以降の死児の出産を死産と定義するため、医学的に流産であっても届出が必要で、死産後7日以内に死産証書(死胎検案書)を添えて市町村長へ届け出ます。一方、週数にかかわらず生きて生まれた場合は出生届の対象となる点も重要です。医学的な分類と法的な定義の違いを正確に理解しておくことは、ご家族に適切な手続きを案内する臨床の場で欠かせない知識です。

解答・解説

正解はdです

所見の整理

・40歳の経産婦(4妊3産:これまで4回妊娠し、3回分娩している)。高年妊娠である。 ・妊娠14週で下腹部痛と性器出血が出現した。 ・腟鏡診で腟内に胎胞(羊膜に包まれた胎嚢の一部)が見えている。すなわち子宮頸管が開大しており、流産を止められない段階に進んでいる。 ・入院後に腹痛(子宮収縮)が強まり、胎嚢ごと児(60g)が娩出された。

診断へのプロセス

まず週数で妊娠の終わり方を分類する。妊娠22週未満で妊娠が終わるものが流産、22週以降37週未満の分娩が早産である。本例は妊娠14週なので流産であり、早産ではない。 流産はさらに、妊娠12週未満の早期流産と、12週以降22週未満の後期流産に分けられる。14週は後期流産に該当する。 臨床経過でみると、来院時は出血と腹痛を伴う状態、腟内に胎胞が見えた時点で頸管が開いた進行流産、胎嚢ごと娩出された時点で子宮内容がすべて排出された完全流産と考えられる。

死産届の要否

「死産の届出に関する規程」では、死産を「妊娠第4月以後(妊娠12週以降)における死児の出産」と定義し、自然死産・人工死産のいずれも届出の対象とする。届出は死産後7日以内に市町村長へ行い、医師(または助産師)が作成した死産証書(死胎検案書)を添付する。 したがって妊娠12週以降の後期流産は、医学的には「流産」であっても法律上は「死産」として扱われ、死産届が必要となる。一方、妊娠12週未満の早期流産は届出の対象外である。 以上から、本例は「後期流産 ―― 死産届必要」の組合せとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  早期流産 ―― 死産届不要

    早期流産は妊娠12週未満の流産を指す。早期流産なら死産届は不要という組合せ自体は制度上正しいが、本例は妊娠14週であり早期流産には当たらない。

  2. ×b.  早期流産 ―― 死産届必要

    本例は妊娠14週で早期流産(妊娠12週未満)ではない。また早期流産は死産届の対象外であり、「死産届必要」の部分も誤りである。流産であれば死産届が要らないと誤解しやすいが、要否の境界は「流産か死産か」ではなく「妊娠12週以上か未満か」である。

  3. ×c.  後期流産 ―― 死産届不要

    妊娠14週の流産なので診断は後期流産で正しい。しかし妊娠12週以降の死児の出産は死産として届出が義務づけられているため、「死産届不要」が誤りである。

  4. ○d.  後期流産 ―― 死産届必要

    妊娠12週以降22週未満の流産である後期流産に該当する。死産届に関する規程では妊娠12週(第4月)以後の死児の出産を死産と定義しており、本例は届出の対象となる。医師が死産証書を作成し、7日以内に市町村長へ届け出る。診断・届出の要否とも正しい組合せである。

  5. ×e.  早産 ―― 死産届不要

    早産は妊娠22週以降37週未満の分娩であり、妊娠14週の本例は早産ではない。また早産で児が死亡して娩出された場合は死産届が必要であり、「死産届不要」とする点も誤りである(生産であれば出生届を提出する)。

  6. ×f.  早産 ―― 死産届必要

    早産で死児が娩出された場合に死産届が必要という点は正しいが、本例は妊娠14週であり、早産(妊娠22週以降37週未満)ではなく流産に分類される。

妊娠週数による分類

・流産:妊娠22週未満の妊娠の中断  - 早期流産:妊娠12週未満(流産の大部分を占め、主な原因は胎児の染色体異常)  - 後期流産:妊娠12週以降22週未満(頸管無力症、絨毛膜羊膜炎などの感染、子宮形態異常などが原因となりやすい) ・早産:妊娠22週以降37週未満の分娩 ・正期産:妊娠37週以降42週未満の分娩 ・過期産:妊娠42週以降の分娩 妊娠22週は、母体外で生存可能となる時期の目安として流産と早産の境界とされている。

流産の臨床的分類

・切迫流産:出血や腹痛があるが、頸管は閉じており妊娠継続の可能性がある。 ・進行流産:頸管が開大し、子宮内容が排出されつつあり、妊娠継続は不可能。 ・完全流産:子宮内容がすべて排出された状態。 ・不全流産:子宮内容の一部が子宮内に残っている状態。 ・稽留流産:胎児が死亡しているが、症状がなく子宮内にとどまっている状態。 本例は胎胞の腟内への脱出から進行流産となり、胎嚢ごと娩出されて完全流産に至ったと考えられる。

死産届の要点

・根拠:死産の届出に関する規程 ・対象:妊娠12週(第4月)以後の死児の出産(自然死産・人工死産を含む) ・期限と届出先:死産後7日以内に、届出人の所在地または死産のあった場所の市町村長へ ・添付書類:医師または助産師が作成する死産証書(死胎検案書) ・関連:妊娠4か月以上の死胎は、墓地、埋葬等に関する法律により、埋葬・火葬に市町村長の許可が必要となる。

出生届との違い

妊娠週数にかかわらず、児がわずかでも生きて生まれた場合は生産であり、出生届(14日以内)を提出する。その後に死亡すれば死亡届(死亡診断書を添付)も必要となる。

後期流産の処置

妊娠12週以降では胎児が大きくなるため、子宮内容除去術ではなく、プロスタグランジン製剤(腟坐剤など)による陣痛誘発で娩出させる方法が一般的である。

POINT

・流産=妊娠22週未満。早期流産=12週未満、後期流産=12週以降22週未満。早産=22週以降37週未満。 ・死産届は妊娠12週以降の死児の出産で必要。医学的に流産でも12週以降なら法律上は死産として届け出る。 ・死産届は7日以内に市町村長へ、医師・助産師の死産証書(死胎検案書)を添付。 ・生きて生まれた場合は週数にかかわらず出生届が必要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。