StudyMed医師国家試験

最後のセーフティネットを読み解く―憲法25条から始める生活保護法

第116回医師国家試験 C問題 第30問

国試問題にチャレンジ

第116回 C問題 第30問

生活保護法について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.給付の申請は保健所で行う。
  2. b.分娩は扶助の対象外である。
  3. c.生存権の理念に基づき制定されている。
  4. d.介護扶助は原則として金銭給付によって行う。
  5. e.医療扶助では原則として後発医薬品を使用する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は生活保護法の基本を問う問題だ。押さえるべき軸は「何の理念に基づく法律か」「どこに申請するか」「どんな扶助があり、お金で渡すのかサービスで渡すのか」の3つ。まずは根っこの理念から考えてみよう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、生活保護法は憲法25条とセットで習いました。生存権ですよね。
ドクタードクター
その通り。憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」、つまり生存権を具体的に実現するための法律で、第1条に「日本国憲法第25条に規定する理念に基き」と明記されている。だから生存権の理念に基づくという記述は正しい。
医学生医学生
理念のもとに、いくつか基本原理があったと思うんですが、全部は自信がないです。
ドクタードクター
4つの基本原理だね。国が責任をもつ「国家責任」、困窮の理由を問わない「無差別平等」、健康で文化的な水準を保障する「最低生活保障」、そして資産や能力、家族の扶養、他の制度をまず活用して足りない分を補う「保護の補足性」。特に補足性は、他法優先の考え方として臨床でもよく関わってくる。
医学生医学生
では申請窓口です。保健所というのは、なんとなくありそうな気もしてしまいました。
ドクタードクター
そこが引っかけだ。生活保護の窓口は福祉事務所で、保健所ではない。保健所は地域保健法に基づく保健衛生の機関で、感染症対策や精神保健、難病などを扱う。福祉事務所は社会福祉法に基づく福祉の機関、と役割を分けて覚えるといい。
医学生医学生
社会医学実習で保健所を見学したとき、結核の患者さんの管理をしていたのを思い出しました。確かに生活保護の話は出ませんでした。
ドクタードクター
いい対比だね。次に扶助の種類。生活、教育、住宅、医療、介護、出産、生業、葬祭の8種類がある。分娩が扶助の対象外という記述はどうかな。
医学生医学生
出産扶助があるので、対象外というのは誤りですね。
ドクタードクター
正解。分娩介助や前後の処置、衛生材料などの費用が出産扶助として支給される。なお、異常分娩で医療行為が必要になれば医療扶助で対応する。では給付の方法。介護扶助は原則として金銭給付、という記述は?
医学生医学生
8種類のうち、医療と介護だけは現物給付だったはずです。なので誤り……で合っていますか。
ドクタードクター
合っている。医療扶助と介護扶助は、指定医療機関や指定介護機関からサービスそのものを受け取り、費用は福祉事務所から機関へ直接支払われる。それ以外の6つは原則として金銭給付だ。最後に、医療扶助での後発医薬品の扱いはどうだろう。
医学生医学生
ジェネリックを原則使用、というのは聞いたことがある気がしますが、法律で決まっているんですか。
ドクタードクター
2018年の法改正で、医師などが医学的知見に基づいて後発医薬品を使用できると判断した場合、原則として後発医薬品を給付することになった。医療扶助は保護費全体のおよそ半分を占めるほど大きいので、医療費の適正化が目的だ。だから正解は、生存権の理念と後発医薬品の原則使用の2つになる。
医学生医学生
臨床実習で内科を回ったとき、生活保護の患者さんは自己負担がないと聞きました。保険証はどうなっているんでしょう。
ドクタードクター
鋭い質問だね。被保護者は原則として国民健康保険の被保険者から外れ、医療費は全額が医療扶助、つまり公費で賄われる。受診は指定医療機関で行うのが基本だ。臨床では、福祉事務所が発行する医療券などの手続きが関わることも知っておくといい。
医学生医学生
申請は本人がしないといけないんですか。病棟で意識のない方が運ばれてきたらどうなるのかなと。
ドクタードクター
原則は本人や扶養義務者、同居の親族の申請に基づく「申請保護の原則」だけれど、急迫した状況では申請がなくても保護できる。ほかにも、個々の実情に応じる「必要即応」、世帯単位で要否を決める「世帯単位」の原則がある。医療者としては、経済的困窮で受診をためらう患者さんに気づいたら、医療ソーシャルワーカーにつなぎ、福祉事務所への相談を案内できることが大切だ。
医学生医学生
制度を知っていることが、そのまま患者さんを支える力になるんですね。

まとめ

生活保護法は憲法25条の生存権の理念に基づき、国家責任・無差別平等・最低生活保障・保護の補足性の4原理のもとで、困窮者の最低限度の生活を保障し自立を助長する法律です。申請窓口は保健所ではなく福祉事務所で、扶助は生活・教育・住宅・医療・介護・出産・生業・葬祭の8種類あり、分娩は出産扶助の対象となります。医療扶助と介護扶助は現物給付、その他は金銭給付が原則であり、2018年の改正で医療扶助では後発医薬品の使用が原則化されました。被保護者は原則として国民健康保険から外れ、医療費は全額公費で賄われます。制度の仕組みを理解しておくことは、経済的困窮を抱える患者を適切な支援につなぐうえで、臨床医にとっても欠かせない知識です。

解答・解説

正解はc, eです

生活保護法の基本理念、申請窓口、扶助の種類と給付方法、医療扶助の運用を問う問題である。 生活保護法は、日本国憲法第25条が定める生存権(「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」)を具体化する法律であり、生活に困窮するすべての国民に対し、困窮の程度に応じて国が必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに自立を助長することを目的とする(法第1条)。 保護は8種類の扶助(生活・教育・住宅・医療・介護・出産・生業・葬祭)からなり、原則として金銭給付で行われるが、医療扶助と介護扶助は医療機関・介護事業者からサービスそのものを受ける現物給付が原則である。申請窓口は福祉事務所であり、保健所ではない。さらに2018年の法改正により、医療扶助では後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用が原則化された。 以上から、生存権の理念(c)と後発医薬品の原則使用(e)が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  給付の申請は保健所で行う。

    生活保護の申請は、保護の実施機関(都道府県知事、市長、福祉事務所を管理する町村長)に対して行い、実際の窓口は居住地を所管する福祉事務所である。福祉事務所を設置していない町村では、町村役場を経由して申請することもできる。保健所は地域保健法に基づく保健衛生の機関であり、生活保護の申請窓口ではない。

  2. ×b.  分娩は扶助の対象外である。

    分娩に伴う費用は8種類の扶助の一つである出産扶助の対象となる。分娩の介助、分娩前後の処置、衛生材料などの費用が、原則として金銭給付で支給される。なお、異常分娩で医療行為が必要となる場合は医療扶助で対応される。

  3. ○c.  生存権の理念に基づき制定されている。

    生活保護法第1条は「日本国憲法第25条に規定する理念に基き」と明記しており、同条が保障する生存権を具体的に実現するための法律である。この理念のもと、国家責任、無差別平等、最低生活の保障、保護の補足性という4つの基本原理が定められている。

  4. ×d.  介護扶助は原則として金銭給付によって行う。

    介護扶助は、医療扶助と同様に原則として現物給付で行われる。被保護者は指定介護機関から介護サービスそのものを受け、費用は福祉事務所から介護機関へ直接支払われる。金銭給付が原則となるのは、生活扶助・教育扶助・住宅扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助である。

  5. ○e.  医療扶助では原則として後発医薬品を使用する。

    2018年の生活保護法改正により、医療扶助において、医師などが医学的知見に基づき後発医薬品を使用できると判断した場合には、原則として後発医薬品を給付することとされた。医療扶助は生活保護費全体のおよそ半分を占めており、医療費の適正化を図ることが目的である。

生活保護の4つの基本原理

・国家責任の原理:国が責任をもって最低限度の生活を保障し、自立を助長する。 ・無差別平等の原理:要件を満たせば、困窮に至った理由を問わず平等に保護を受けられる。 ・最低生活保障の原理:健康で文化的な最低限度の生活水準を維持できる保護を行う。 ・保護の補足性の原理:資産・能力などあらゆるものを活用し、扶養義務者による扶養や他の法律による給付を優先したうえで、なお不足する分を補う。

保護の4つの原則

・申請保護の原則:要保護者本人、扶養義務者、同居の親族の申請に基づいて開始する(急迫した状況では申請がなくても保護できる)。 ・基準及び程度の原則:厚生労働大臣が定める基準で測った需要のうち、本人の金銭・物品で満たせない不足分を補う。 ・必要即応の原則:年齢・性別・健康状態など個々の実情に応じて行う。 ・世帯単位の原則:世帯を単位として要否・程度を決める。

8種類の扶助と給付方法

・金銭給付が原則:生活扶助、教育扶助、住宅扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助 ・現物給付が原則:医療扶助、介護扶助

医療扶助の特徴

被保護者は原則として国民健康保険の被保険者から外れ、医療費は全額が医療扶助(公費)で賄われる。受診は指定医療機関で行い、自己負担はない。生活保護の保護費のうち医療扶助が最も大きな割合を占める。

POINT

・生活保護法は憲法第25条(生存権)の理念に基づく。 ・申請窓口は福祉事務所(保健所ではない)。 ・扶助は8種類。医療扶助と介護扶助は現物給付、その他は金銭給付が原則。 ・分娩は出産扶助の対象。 ・医療扶助では後発医薬品の使用が原則(2018年改正)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。